中国株 業界レポート

陸運関連業界 ~輸送の中心を担う業界、効率性に課題も~

2012年6月27日

市場動向 ~引き続き輸送需要は増えるも、景気減速の影響でやや減速傾向~

11年の業界規模:

物流総費用:8兆4000億元(前年比18.5%増)、貨物輸送量:363億トン(同13.7%増)、鉄道営業距離:9.3万キロ(11年末、前年末比2.3%増)

広大な国土と世界最大の人口を持つ中国は、輸送規模も大きい。11年も輸送需要が増え、物流総額は前年比12.3%増の158.4兆元に上った。ただ、景気減速の影響から伸び率は低下。一方、物流総費用(物流業界の取り分)は通年で8兆4000億元、伸び率は16.7%→18.5%と加速。物流総費用のGDPに対する比率は前年と同水準の17.8%となり、先進国の8~10%を大きく上回っていることから、依然として物流コストの高さや、輸送網の非効率性が際立つ。輸送の中心は陸運であり、特に道路は貨物・旅客ともに第一の手段。鉄道輸送も鉱物資源の輸送手段として重要となるが、どちらも需要は概ね底堅かった。しかし、価格競争が激しく、経営環境は楽観できない状況。さらに引き締め政策や鉄道事故の影響から交通インフラ投資にブレーキがかかっており、12年も4月末時点で状況に大きな変化はない。それでも、交通インフラは依然として不足気味であり、この先も重要プロジェクトは着実に進もう。当局はサービス産業振興の一環として物流業界を重視しており、二重課税の軽減なども見込める。

業界の特徴 ~陸運を担う運送会社は“優勝劣敗”、一方の道路・鉄道は規制が厳しい~

事業環境面:

運送会社は官民含めて数多く存在し、競争も激しい。一方、インフラである道路・鉄道の経営はほぼ官が独占する。旅客輸送は旧正月の交通ダイヤ「春運」中に例年最大のピークを迎える。貨物輸送は国内の景気動向などが需要に影響する。両業界とも巨額の設備投資、投資回収の長期化が避けられないため、財務体質、資金調達力が重要。

道路は運営・管理の多くを政府系企業が担当しており、政府から付与される徴収権を基に通行料収入を得る事業形態。鉄道は鉄道部の各地方局が直接運営する形態が大半で、行政・企業の分離が進んでいないため、事業の効率・収益性は低い。

事業地域面:

道路網は「五縦七横」(南北に5本、東西に7本の幹線)、鉄道網は「四縦四横」(南北に4本、東西に4本の幹線)を中心に全国をカバー。今後5年はこれらを中心に高速化を進めていく。

政策面:

運送業界は市場原理に委ねられている一方、道路・鉄道インフラ業界は非常に規制が厳しく、料金設定は当局の管轄事項。交通インフラ不足が経済成長のボトルネックとなっているため、これまでインフラ建設に巨額の資金が投入されてきた。

主要企業、主な取扱銘柄 ~上場企業の多くが政府系、インフラ運営企業は安定増収を確保~

景気減速による需要の伸び鈍化を受け、関連企業の業績も減速感が目立った。上場している運送会社は限られており、その中でも国有系の中国外運(00598)は貨物フォワーダーを主力とする大手。同社は10.12期に大幅な増収増益となったが、11.12期は小幅な増収増益にとどまった。大衆交通集団(900903)と上海錦江国際実業投資(900914)の両社はいずれも上海市のタクシー会社で運送事業も幅広く展開。両社とも競争激化、燃料コスト高などの影響からタクシー事業の不振が続き、減益となった。

インフラ運営企業をみると道路は地域独占型であり、上場企業の多くが地元政府との関係が深く、安定性は高い。11年も各社は概ね増収を確保した。一方で高速料金の引き下げ方針を受け、伸び率は鈍化傾向。改修費用や非主力事業が足を引っ張り、利益を減らした企業もみられた。事業エリアの経済状況は企業規模を左右しており、珠江デルタをカバーする深セン高速道路(00548)、越秀交通(01052)、広東高速道路(200429)の3社が、国内最大の製造業エリアを本拠とする優位性を活かした。それでも、広東高速道路は工事の費用が嵩み、大幅減益と明暗が分かれる格好に。長江デルタ地帯でも江蘇高速道路(00177)と浙江高速道路(00576)の両社が非主力事業の影響から減益に後退した。こうした中、高い経済成長率を背景に安徽高速道路(00995)、四川高速道路(00107)という内陸部の道路会社が好業績を確保。このように最終利益段階でまちまちとなった道路事業者だが、12年に入ると景気減速、料金引き下げの影響から減益の企業が増えている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港鉄路0006627,75113.2312,21822.03151,025
ハンセン香港政府傘下の独占的な鉄道運営会社。傘下の鉄道・地下鉄網は香港全土を広くカバーし、安定した収益基盤などが強み。加えて鉄道事業者の利点を生かして沿線での不動産・商業開発を積極的に進めており、商業施設「エレメンツ・モール」は本土からの旅行者の間で観光スポットとして人気が出ている。
四川高速道路001076,23644.861,30413.8711,501
H株四川省の有料道路会社。地元政府が支配している。成都市と重慶市の2大都市を結ぶ成渝高速公路を中心に、複数の高速道路を経営。「西部大開発」で注目される同省は高い経済成長率を達成しており、これが交通量の増加、業績拡大に繋がっている。
江蘇高速道路001777,4019.552,429▲2.2035,876
H株江蘇省を本拠地とする国内最大手の有料道路会社。主力道路は上海南京高速道路の江蘇省区間(248.2km)など。江蘇省で運営・管理している道路の総延長は700キロを突破。江蘇省は経済が発展しており、自動車の普及率は比較的高い。沿線の不動産開発なども手掛けている。
広深鉄路0052514,6908.951,80421.4023,828
H株唯一海外上場している国有系の鉄道会社。深セン市-広州市-楽昌市の鉄道(全長481.2キロメートル)を経営する。同鉄道は広東省を縦断し、他地域へ向かう主要鉄道などに接続。香港鉄路(00066)と共同で本土と香港を結ぶ広九鉄道の旅客輸送を行う。
深セン高速道路005482,9516.7487517.348,618
H株深セン市を中心に有料道路を運営する地元政府系の企業。深セン国際(00152)の傘下にある。主要道路は東莞市と香港を結び、深セン市を横断する梅観高速公路。深センと内陸部を繋ぐ物流網の重要性が増すなか、同社のプレゼンスは大きい。ただ、今年6月から広東省で始まった新料金体系の影響で、通行料収入の減少が見込まれている。
浙江高速道路005766,7810.181,805▲3.5322,497
H株浙江省で有料道路を運営する地元政府系の企業。国内最大の経済都市である上海市と省都の杭州市を結ぶ「滬杭高速公路」、杭州市と寧波市を結ぶ「杭甬高速公路」などが主力道路。経済が発展する杭州湾の周辺を囲むかたちで道路網を張り巡らせていることが強み。本業とのシナジー効果が難しい証券業を抱えている点がリスク要因。
中国外運0059843,7472.826424.235,481
H株国有系の物流サービス大手。地場系では珍しい総合物流業者で、陸・海・空運すべてを網羅した貨物フォワーダーを主力事業とする。エクスプレスサービス、倉庫・ふ頭の運営なども展開。国内で最も経済が発展している華東地区を拠点としている点も強み。物流サービス”高度化”の担い手として期待される。
安徽高速道路009952,95915.948497.617,701
H株安徽省政府の傘下にある有料道路会社。傘下の主な有料道路は、合寧高速公路(江蘇省との境-合肥市、全長134キロメートル)。安徽省は成長余地が見込める中部地区に属する一方、経済発展で先行する長江デルタ地帯に隣接している。この地理的メリットを如何に活用していくか、注目される。
越秀交通基建010521,3215.535584.436,090
レッド広州市政府系の有料道路会社。広州市の環状高速道路の一部、広東省と湖南省を結ぶ清連高速公路、広西チワン族自治区を結ぶ蒼郁高速公路などを運営している。広東省以外での道路権益、広西チワン族自治区の港湾企業を買収するなど、輸送関連インフラの拡充に努めている。
広東高速道路2004291,0787.57216▲44.204,334
深セン広東省で高速道路・有料橋の開発・運営事業を展開する地元政府系企業。主力は広州~仏山~開平を結ぶ高速道路で、広東省の一大工業地帯を通っている点などが強み。一方、今年6月からの料金改定により、12.12期の純利益は減少する見込み。
大衆交通集団9009032,780▲19.36422▲20.298,691
上海上海市のタクシー最大手。労働組合支配の企業が、上海A株企業を通じて支配している。物流事業にも進出しており、佐川急便と宅配事業の合弁会社を設立。最近では上海万博の物流に携わったほか、上海での空港貨物の輸出入を担当するなど、地元で一定の存在感を示している。
上海錦江国際実業投資9009141,9194.25243▲14.344,661
上海タクシー、自動車販売などの事業を手がける上海市政府系の企業。近年は物流事業の強化に注力しており、国際フォワーダーや空港貨物倉庫などを展開。米国の運輸大手と合弁会社を設立している。三井物産を戦略パートナーとして迎え入れ、低温物流の競争力強化を図る。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は12年6月27日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.758HKドル。

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~政策動向、特に税制、通行料金、インフラ整備が焦点~

運送業界は徐々に“高度化“の流れへ:

中国の運送業界はインフラ、ソフト面ともに先進国に比べると依然として低い水準にあるとされ、これが業界、引いては経済全体の成長の足かせとなっている点が否めない。一方で、より高度な輸送サービスのニーズは日増しに高まっており、今後はこの需要に応えられない零細企業の淘汰・再編が進むだろう。大手にとっては市場シェアの拡大に繋がる。

インフラ整備の潜在的需要は大きく、政策的追い風も:

昨年7月の鉄道事故以来、交通インフラの整備がペースダウンしてきた。ただ、インフラは内陸部を中心に足りない状況にあり、重要プロジェクトは今後も着実に進む可能性が高い。交通網の整備は運送会社、荷主双方にとってメリットがある。さらに上海市で試験導入された営業税と増値税の一本化が、今後各地に広がる可能性がある。物流業者の税負担軽減に繋がるだけに、その動向が注目される。

インフラ運営企業は政策、財務リスクに注意:

鉄道、道路など交通インフラの運営事業者は、通行料金収入に依存している分、政策の影響を受けやすい。事業者のバックには各地方政府が控えているものの、料金設定、サービスの悪さを理由に利用者の不満は高まっており、料金引き下げの流れは当面、変わらないだろう。事業者や地方政府を含めた巨額の財務負担も問題視されている。(中国部 畦田)

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

旅客輸送量の推移(輸送手段別)
貨物輸送量の推移(輸送手段別)
中国の物流総費用の推移
高速道路網計画(11~15年)
高速鉄道網計画(11~15年)

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