中国株 業界レポート

保険・証券業界~国内外の金融・資本市場の低迷が重しに~

2012年7月3日

市場動向 ~景気減速、資本市場の低迷を受け、苦しい経営環境に~

11年の業界規模:

保険料収入:1兆4339億元(前年比1.3%減)、資産総額:6兆138億元(同19.1%増)、主要証券111社の営業収益:1364億元(同29.2%減)

中国の保険・証券業界は欧州など先進国の金融不安、国内外の景気減速を背景に、11年は苦しい経営環境が続いた。保険業界は景気減速、銀行窓口販売の規制強化、他の金融商品との競争などを背景に、保険料収入は前年に比べ1.3%減少。一方で、支払保険料は前年比で約2割増加したほか、資本市場の低迷で運用環境が悪化した。資本市場の仲介役を担う証券業界も業績下振れはさらに大きく、営業収益は約3割減少。株式市場の売買代金の低迷、手数料競争などの影響から主力のブローキング事業が不振だったほか、自己売買、投資銀行部門も振るわず、全体の純利益は5割以上も縮小した。

12年に入っても、厳しい経営環境に大きな変化はない。ただ、当局は温州市での金融特区構想、海外マネー流入に関する規制緩和など、矢継ぎ早に金融改革を実施。金融緩和を進めており、資金面の環境は改善してきた。下期に景気底入れを迎えれば、資本市場が再び勢いを取り戻し、保険・証券会社の業績悪化も歯止めかかかるものと考えられる。

業界の特徴 ~規制が厳しい業界、国内外の金融・資本市場の影響を大きく受ける~

主力事業面:

保険業界は政府系を中心とした大手数社の市場シェアが高い。保険商品は大きく生命、損害、医療、年金保険などに分けられ、全国的な社会保障制度がまだ確立されていない中国においては、保険の潜在的な需要は大きい。生保では年金、資産運用の要素を強めた保険の販売も多い。損保では自動車保険が主力であり、自動車販売の動向に左右されやすい。保険金の支払いは自然災害などで一気に膨らむリスクもあり、支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)は健全性の指標となっている。一方、証券業界は政府系企業が大手に名を連ねるものの、集約度は比較的低く、銀行など他業種からの参入組も多い。営業収益の半分は委託売買手数料から得ており、機関投資家としての役割を持つ保険会社は大口の顧客となる。保険・証券業界ともに金融政策、資本市場などの影響を大きく受ける。

国際面:

外資は保険・証券業界ともに出資比率の制限がネックとなり、シェアは小さい。日系では日本生命が合弁で参入するほか、大手損保が営業拠点を設置。証券大手も進出している。政府は海外との資本取引を規制しているが、投資マネーは国内外を行き来しているとみられ、両業界ともに海外の金融動向から影響を受けやすい。

政策面:

両業界とも規制が厳しいが、特に契約者保護に向けた説明責任は重視される方向にある。昨年11月の銀行窓口販売の規則改定は保険会社に逆風となった。一方、海外との資本取引規制については、徐々に緩和の方向。保険会社の運用に関する規制も見直しが進んでおり、当局は硬軟織り交ぜた政策対応をしているといえる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~規制強化、株式市場の低迷を受け、大手といえども業績を落とすケースも~

保険業界は国内勢を中心に寡占度が高い。11年の保険料収入ベースで見ると、生損保ともそれぞれ上位10社の合計シェアは8~9割に達する。特に上位3社は6割前後を占め、他を大きく引き離している。11年は保険料収入が減少に転じたほか、株式市場の低迷による運用難から利益を大きく減らす企業も。国有系を中心とする大手は苦戦を強いられた。特に生保は銀行販売の規制強化による影響が大きく、最大手の中国人寿保険(02628)は営業収益が前年を下回った。一方、損保は堅調な販売が続き、1位の中国人民財産保険(02328)は増収と、明暗が分かれた。生保・損保いずれも2番手に位置する平安保険(02318)は総合金融グループとしての強みを活かして前年に続き二桁増収を確保した。これら3社を太平洋保険(02601)、中国太平(00966)、生保専業の新華人寿保険(01336)などが追いかけている。

証券業界も大手は政府系企業が多い。株式市場の低迷、企業ファイナンスの停滞などの影響から、多くの企業で手数料収入が減少したほか、自己売買部門も厳しかった。香港上場企業をみると、中信証券(06030)は営業収益で2位以下を大きく引き離す最大手だが、手数料収入の不振から減収となった。2番手の海通証券(06837)、金融コングロマリットの中国光大控股(00165)は減益を計上。このほか、本体ではなく香港子会社が上場しているケースも多い。本土と海外を結ぶ香港マーケットのインフラを担う香港交易所(00388)は業績の伸びが鈍化。これは本土の市況低迷が香港にも影響を及ぼしていることを意味している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国光大控股001652,56539.561,596▲0.2318,892
レッド国務院系コングロマリット「中国光大集団」に属する金融持ち株会社。投資銀行、委託売買、資産運用、実業投資などの各業務を手掛ける。傘下に置く光大証券(601788)は営業収益で国内9位の大手証券会社。新規公開(IPO)の引受業務のほか、売出業務、企業買収、非公開化などの財務アドバイザーなどを手がけている。
香港交易所003886,5223.824,2281.11118,777
ハンセン香港の証券・先物取引所、関連清算機関などを運営する企業。業績は香港市場での売買金額、資金調達量などに左右されやすい。グローバルでの取引所間の競争に勝ち抜くため、年末までにロンドン金属取引所(LME)を傘下に収める見込み。高額といわれる買収額に見合う効果を上げられるか、注目される。
中国太平0096644,1463.19411▲77.9421,524
レッド本土の保険大手「中国太平保険集団」の中核企業。「太平」ブランドで生保、損保の各種保健サービスを提供している。保険料ベースの市場シェアは生保が7位、損保が12位。香港を拠点にアジア各国で展開している再保険事業に強みを持つ。
友邦保険0129992,989▲21.7810,340▲40.76329,403
ハンセン米国の大手保険会社「AIG」に属し、アジア太平洋地域を担当している企業。香港を本拠に、事業エリアは日本を除く東アジア、東南アジア、オセアニアに広がる。特に成長余地が見込める東南アジアでトップクラスのシェアを持つ点が特徴。AIGによる保有株売却の動きが懸念要因と考えられる。
新華人寿保険01336108,6105.752,79924.46120,596
H株国内3位の生命保険会社。中央政府系の企業だが、海外の有力保険会社など外国人株主の比率も大きい。銀行窓口販売による個人生命保険が一番の収益源。最近では健康保険、年金保険の販売に力を注いでいる。
平安保険02318272,24439.0319,47512.50461,638
ハンセン国内の生保、損保市場で業界2位のシェアを占める大手保険会社。広東省に本拠を置き、匯豊控股(00005)を筆頭株主に持つ民営企業でもある。傘下に信託投資会社、証券会社、銀行などを持ち、総合的な金融サービスを提供できる点が強み。他社と比べても海外投資を積極的に進めている。
中国人民財産保険02328173,96212.748,02751.80111,162
H株損害保険の国内最大手。親会社は国有企業の中国人民保険集団公司で、AIGも戦略投資家として資本参加している。車両保険、企業向けや一般家庭向けの損害保険、賠償責任保険、事故傷害保険などを取り扱う。モータリゼーションの拡大は、主力である自動車保険の販売に追い風。親会社による全体上場の計画が進んでいる。
太平洋保険02601155,51710.048,313▲2.85232,051
H株上海市を本拠に全国で事業展開する総合保険会社。傘下企業を通じて生保、損保商品を販売するほか、資産運用サービスも行う。保険料収入をみると、生保は業界4位、損保は業界3位の規模。前身は1991年に新中国で初めて設立された全国規模の総合保険会社「中国太平洋保険公司」。
中国人寿保険02628370,899▲3.8718,331▲45.49628,371
ハンセン国内最大の保険会社であり、生命保険の最大手。親会社は中央政府直轄の中国人寿保険(集団)公司。農村部を含め、全国規模の販売ネットワークを持っていることが強み。主力商品は個人向け・団体向けの生命保険や事故傷害保険、健康保険、年金保険などで、特に個人向け保険の競争力は強い。国内有数の機関投資家でもある。
中信証券0603026,370▲12.9112,57611.18170,293
H株営業収益ベースで国内1位(11年)の証券最大手。国務院系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する。委託売買、引受、アドバイザリー、アセット・マネジメントなど幅広い業務を展開。特に投資銀行部門は国内屈指の競争力を持っている。本土のほか、香港でも事業を展開。海外の金融機関と積極的に提携している。
海通証券0683711,8604.93,103▲ 15.8110,011
H株上海市を本拠とする地元政府系の老舗証券会社。営業収益ベースで国内2位(11年)に位置する。傘下に置く海通国際(00665)は一昨年に買収した香港地場系の証券会社を前身としており、海外業務の拠点となっている。国際金融センターを目指す上海で大きなプレゼンスを有している点が強み。

売上高・純利益は友邦保険(01299)が11年11月本決算、それ以外はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年7月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

保険(業種別一覧) その他金融(業種別一覧)

注目されるトピックス ~新たな収益源の確立が重要に、垣根を越えた再編に注目~

保険・証券ともに新たな収益源の確保が重要に:

当局は保険商品の販売チャネルに対して監督・管理を強化。自動車販売も昨年以来、伸びが鈍化しており、生保・損保ともに新たな収益源の獲得が将来の競争力を左右しよう。農村でのマイクロ保険、貯蓄型保険商品、自動車以外の損保などが注目分野だ。証券も株式手数料に依存する構造から脱却し、新たな収益源の確立が求められている。

運用環境は流動的:

保険・証券会社の運用収益に直結する資本市場の動向は流動的な部分が多い。利上げ局面で預金金利の収入増加が見込める一方、利上げにより株安に転じれば含み損が膨らむリスクも。投資できる金融商品も当局による規制網の下にあり、政策しだいという面が大きい。このため、機関投資家は安定した運用収益の確保に向けて、全体的に債券投資の比率を高くしている。

業種の垣根を超えた再編:

保険・証券会社はリスク商品での競争においても、銀行が展開する資産運用商品との競争を迫られる。一方で、銀行窓口は有力な販売ルートとして重要。それぞれの思惑を抱えつつ、3業種は提携・合併、買収などを通じて垣根を越えた再編を進めており、今後もこの傾向が続こう。保険会社と銀行間では特に相互参入の動きが活発になっており、注目される。(中国部 畦田)

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証券会社の営業収益上位10社(11年)
生命保険の保険料収入シェア(11年)
損害保険の保険料収入シェア(11年)
損年金保険の受託資産残高シェア(11年)
保険料収入の推移

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