中国株 業界レポート

銀行業界 ~経済の重要セクター、景気減速下でも貸出増で業績拡大~

2012年7月3日

市場動向 ~貸出増とともに業績も引き続き拡大、金融引き締めから徐々に緩和へ~

11年の業界規模:

総資産:113.3兆元(前年比20.1%増)、貸出残高:58.2兆元(同14.3%増)、預金残高:82.7兆元(同12.7%増)、税引き後利益:1.3兆元(同39.2%増)

中国の銀行業界は11年も引き続き事業規模を拡大。税引き後利益は前年比39.2%増の約1.3兆元と1兆元の大台を超えた。資金需要は依然として強く、貸出残高は通年で7.3兆元増加。規制金利下で安定した純利息収入を上げた。さらにインフレから預金の魅力が低下したなか、「理財産品」(資産運用商品)などへの人気が高まり、手数料収入も大きく伸びた。それでも、一昨年と比べると貸出、預金ともに伸び率がやや鈍化。インフレ抑制に向けて金融引き締めが強化され、貸出増加の勢いが若干弱まった。こうしたなか、年後半にかけて国内外の景気減速が進むと、当局は12月に預金準備率の引き下げを実施。今度は金融緩和に方向転換し、景気重視の姿勢を鮮明にした。しかし今年に入っても経済全体は減速傾向が続く一方、銀行は12年1-3月期で巨額の利益を確保。規制に守られた銀行に対する世間からの批判が強まり、これが6月の利下げでの金利差調整に繋がった。今後も預金準備率・基準金利の引き下げを柱とした金融緩和策が続くとみられ、銀行にとっては追い風が続こう。反面、段階的な自由化も進み、銀行間の競争も強まると考えられる。

業界の特徴 ~「護送船団方式」の特徴を持つ重要セクター~

主力事業面:

銀行は経済の中核を占める重要セクター。市場のメインプレイヤーは四大国有商業銀行。資金調達面では中国の貯蓄率は高く、大量の預金を集めることができるほか、インターバンク市場からも調達している。運用面では、国有企業向けの貸出比率が高い。個人向けではマンションブームを追い風に住宅ローンが拡大傾向。好景気の局面では無尽蔵な貸出に走る傾向が強く、特に不動産や地方政府向け融資などで不良債権化のリスクもある。金利は規制されており、基準金利は一定の金利差(3.06%)が維持されている。

国際面:

世界の大手銀行はほとんどが進出済み。人民元業務の開放にともない、外資の進出は拡大しているものの、多くは沿海部に限られており、中国全体での市場シェアは小さい。一方、地場系の大手銀行も有力外資を戦略投資家として受け入れ、先進的な金融ノウハウの吸収に努めているほか、積極的に海外支店の設立、買収なども仕掛けている。

政策面:

規制が非常に厳しい業界。預金、貸出ともに基準金利が設定されており、日本と同様に準備預金制度がある。中央銀行にとって、基準金利の上げ下げ(利上げ・利下げ)、比率(預金準備率)の調整は金融政策の主要ツールで銀行の業績、株価に大きな影響を与える。当局の監視の目は厳しく、預貸率(貸出/預金)の上限、自己資本比率の下限などを設定している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~四大国有銀行などの大手が中心、景気減速下でも好業績を継続~

国内の銀行業界は規制金利下にあるため、貸出増が直接増益に繋がる。11年は多くの銀行が二桁増益を達成。利益は巨額に上り、“儲け過ぎ”との批判も受けた。資産規模でみると、四大国有銀行が上位を占める。最大手は中国工商銀行(01398)。これに中国建設銀行(00939)、中国銀行(03988)、中国農業銀行(01288)が続いている。交通銀行(03328)を加えた5行は規模の面で他行を引き離す存在。二番手グループには全国展開する株式制商業銀行が続いており、多くの銀行には政府系の資本が入っている。中信銀行(00998)、招商銀行(03968)、中国民生銀行(01988)などが代表的な銀行。各地には地方銀行も地盤を築いており、重慶農村商業銀行(03618)はその中でも数少ない香港上場の銀行といえる。一方、香港の銀行業界は自由金利を採用。人民元業務の拡大などを受け、多くの銀行が引き続き増益を確保した。香港ドル発行の資格を持つ匯豊控股(00005)、中銀香港(02388)、渣打集団(02888)の3行が有名。このうち、中銀香港だけが中国銀行の傘下にある中国資本で、残りはロンドンを本拠とする外資だ。このほかでは、東亜銀行(00023)などの香港地場系が一定のシェアを持つ。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
匯豊控股00005539,4084.31108,55927.651,262,350
ハンセン世界屈指の総合金融グループ。ロンドンに本部を置き、事業エリアは世界中に及ぶ。設立母体である傘下の香港上海匯豊銀行有限公司は香港ドルの発券銀行であり、恒生銀行(00011)を傘下に置く。中国事業にも積極的。交通銀行、興業銀行、平安保険(02318)などの大手金融機関に大株主として名を連ねている。
東亜銀行0002310,55714.283,6183.1759,639
ハンセン香港最大の地場銀行。香港、中華圏、米国、カナダ、英国などに拠点を設け、リテール・コーポレートバンキング、資産運用、投資銀行業務などを展開している。中国本土事業に積極的である点に注目。外銀としては初めて香港と中国本土の両方で人民元建債券を発行した実績を持つ。
中国建設銀行00939399,40322.60169,25825.521,327,962
ハンセン国内第2位の商業銀行。四大国有銀行の中では最初に香港に上場した。住宅ローンやインフラ建設向け融資などでの競争力、高めの自己資本比率などが強み。国内に広大な支店網を持つほか、香港、ニューヨーク、東京など海外の主要都市に拠点を置く。米銀大手のバンクオブアメリカを戦略投資家として迎えている。
中信銀行0099877,09236.7930,81943.28215,193
H株全国展開している株式制商業銀行。国有系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する。大株主であるスペインの大手銀行との提携関係を強化。強みとする法人向け業務に加えて、アッパーミドルのリテール顧客の開拓にも注力している。経済発展が著しい東部沿海地区を中心にネットワークを広げている点が特徴。
中国農業銀行01288379,75629.94121,92728.521,020,080
H株四大国有銀行の一角を占め、農業関連の金融事業では高い競争力を持つ。成長市場である農村部(県・県級市)を中心に広大な拠点網を設けている点が強み。四大銀のなかでは最後の香港上場となったが、調達額は約200億米ドルと当時では世界最大のIPOとなった。
中国工商銀行01398470,60123.60208,26526.101,630,899
ハンセン国内最大の国有商業銀行。金融機関で世界トップクラスの時価総額を誇り、国内に広大な支店網・顧客基盤を持つ。海外でも欧米やアジア各地などに進出。幅広い金融サービスを提供するほか、クレジットカードの発行数でも高いシェアを持つ。ゴールドマン・サックスなどが戦略投資家として出資している。
中国民生銀行0198864,82141.3127,92058.81208,326
H株民営企業が中心となって設立した株式制商業銀行。北京市に本店を置き、全国規模で事業を展開。主力は国内企業向けのコーポレートバンキング。リテールバンキングではアッパーミドル層からの預金受入などに積極的。中小企業向け融資に強みを持つ。
中銀香港0238831,3006.2016,96326.14248,460
ハンセン香港の大手商業銀行。中国銀行(03988)の傘下にあり、香港ドル発券銀行のなかでは唯一の中国資本。人民元のオフシェアセンターとして中長期的な成長が見込める香港において、強固な地盤を有している。人民元の国際化、中国本土と香港の経済緊密化というトレンドから恩恵を享受できる銘柄といえよう。
交通銀行03328102,60120.7150,73529.95331,942
ハンセン上海市を本拠に全国規模で事業展開する株式制商業銀行。国内第5位の資産規模を持つ。財政部が筆頭株主となっているが、世界的金融グループの匯豊控股(00005)を戦略投資家として迎え入れており、両社は提携関係にある。ニューヨーク、東京など海外の主要都市に進出している。
重慶農村商業銀行0361811,11843.564,24638.5829,109
H株重慶市政府系の地方銀行。主に重慶市の県・自治県などで銀行業務を手がけており、資産・預金額は同市内で最大級の規模を誇る。重慶市全体の成長から恩恵を受けられる銘柄。重慶市の農村信用合作社を前身とし、農業関連の金融サービスに強みを持つ。
招商銀行0396896,60334.7536,12940.20292,438
H株広東省を本拠に全国規模で事業展開する大手の株式制商業銀行。珠江デルタ、長江デルタ、環渤海地区など、経済水準の高い地域を中心に事業展開している。富裕層向けのプライベートバンキング業務の拡大に積極的。海外では香港に支店を構えているほか、ニューヨークなどに進出している。国有系コングロマリットの招商局集団が大株主。
中国銀行03988328,29818.73124,18218.93918,075
ハンセン四大国有銀行の一角を占める。国際・外為業務は四大銀のなかでも最も競争力がある。香港では香港ドル発券銀行でもある中銀香港(02388)を傘下に置き、人民元業務を積極的に展開。国際業務の進出都市数、事業規模などは国内トップクラス。金融市場、人民元の国際化という流れから、恩恵を受ける可能性が高い。

売上高・純利益はすべて11年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.463元。

時価総額は12年7月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

銀行(業種別一覧)

注目されるトピックス ~中国版バーゼルIII、金融緩和、銀行改革などの動向に注目~

中国版バーゼルIIIが13年1月からスタート:

銀行に一層の自己資本の拡充を求める新規制「中国版バーゼルⅢ」が、13年1月から適用される。当初は今年6月からの施行を予定していたが、銀行への影響を考慮し、半年延期された。新たな基準では自己資本比率の下限が大型銀行で11.5%、中型銀行で10.5%。自己資本比率が低めの銀行は、今後、エクイティファイナンスに動くものと予想される。

貸出残高増加額、マネーサプライの目標値:

政府は12年のマネーサプライM2の伸び率目標値を14%前後、貸出残高増加額を7.5兆元に設定。しかし国内外の景気減速が資金流動性に下振れ圧力をかけており、達成できるかは微妙といえよう。政策当局は経済状況を見ながら、買いオペによる資金放出、準備率・基準金利の引き下げといった金融緩和を今後も進めていくものと考えられる。

“儲け過ぎ”批判を受けた銀行改革の行方:

景気が低迷するなかでも巨額の利益を稼ぐ銀行業界に対して、金利の自由化を柱とする銀行改革の声が高まっている。6月の利下げでは銀行に対して預金金利の上方修正を初めて認め、これにより金利差は最大1.473%まで縮小することに。預金の獲得能力はそのまま貸出能力に直結する。銀行改革は時間をかけて進められると考えられ、銀行間での預金獲得競争も益々激しくなるだろう。(中国部 畦田)

銀行(業種別一覧)

ここ数年間の基準金利(1年物)の推移
過去の預金準備率操作
準備金利・預金準備率と物価の推移

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