中国株 業界レポート

IT・ソフトウエア業界

~世界最大のネット大国、スマートフォン関連サービスが好調~
2013年6月3日

市場動向 ~農村部を中心にネット普及が一層拡大、依然として成長余地が大きい~

12年の業界規模:

売上高:2兆4794億元(前年比31.5%増)、ネットユーザー数(13年3月末):5.78億人(ネット普及率:43.1%)

中国のIT業界は昨年も成長が続き、年間の業界売上高は前年に比べ約3割増加、2兆元の大台を大きく上回った。ネット接続の主力である携帯電話では、低価格帯スマートフォンが農村部を中心に普及。これにより世界最大のネットユーザー数は一層拡大した。主力のソフトウエア開発を含め、いずれの分野も2ケタの伸びを維持。このなかでも電子商取引(Eコマース)や、ミニブログ「微博」、チャットアプリ「微信」などスマートフォン向けアプリの関連市場などが好調だった。一方で、全体的に見れば成長スピードの減速感は否めず、業績不振の企業も目立つ。それでもネット普及率は4割を超える程度にあり、IT市場全体の成長余地は大きい。今後もネット環境の整備・進化を追い風に、引き続きサービスの多様化が進むと考えられる。当局は次世代ITを15年までの戦略的振興産業の一つに設定。これには、「三網融合」(電信、放送、インターネット網の一体化=トリプルプレイ)など多くの注目分野が盛り込まれており、政策的支援が見込める。

業界の特徴 ~民営・中小企業が大半を占める成長市場、技術革新が速く競争も激しい~

生産・販売面:

IT業界は民営・中小が大半を占め、数多くの企業が成長市場で激しい競争を繰り広げている。主にソフトウエア開発、システムインテグレーション(SI)、データ処理サービスなどに分けられ、売上高全体に占める割合はそれぞれ32%、23%、17%。成長性が高い反面、安定的な資金調達力、優秀な人材の確保などが課題。さらに製品・サービスは技術革新が速い上に他社に模倣されやすく、違法コピーも氾濫しており、業界の新陳代謝は速い。江蘇・広東省など東部沿海部での売上高が全体の76%を占めており、内陸部の割合は依然として低い。これはインターネットの普及度と重なる部分が大きい。

国際面:

中国企業は人材・コスト競争力などを武器に、日本をはじめとした海外企業からアウトソーシングの契約を受注するなど海外事業には積極的であり、規模も大きい。一方、外資の進出は進んでいるものの、規制の壁がその前に大きく立ちはだかっている。

政策面:

IT業界は特にネットメディアの分野で政府の規制が強く、ニュースサイトなどは外資による投資が禁止されている。このため、登記上では外国企業となる一部の地場系上場IT企業(騰訊控股(00700))などは、資本関係を持たずに契約を交わすことで経営実体を支配下に置いている(CCF方式)。一方、当局は国内IT産業の発展に積極的。特に戦略的新興産業に指定された分野には手厚い支援を行うとみられる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手でも業績が二極化、景気減速下で企業向けソフト開発が不振~

IT業界は民営・新興企業が多く成長性は高いものの、企業規模は概ね小さい。大手の上場企業は米国や香港・本土などに上場している。香港上場企業をみると12.12期も二極化の傾向が進んだ。「QQ」ブランドで多くのサービスを提供する大手の騰訊控股はチャットアプリ「微信」の成功でブランド力をさらに強め、広告収入も増加。主力のゲーム部門も好調で、2ケタの増収益を継続した。また、一昨年に同社の支配下に入った大手ソフト会社の金山軟件(03888)は経営モデルの転換を進め、好業績を記録。このほか、IT製品の販売、SIの有力企業である神州数碼(00861)も、12.4-12期まで増収増益を持続。民営中心の業界で、国有系企業の中国民航信息網路(00696)は航空システムの分野で独占的なシェアを持っており、増益を確保した。

一方で大手でも業績を落とした企業が目立った。オンラインソフト大手の網龍(00777)はデリバティブの評価損が嵩み、大幅減益に後退。制御システムを構築する中国自動化集団(00569)は主力である高速鉄道向けプロジェクトの多くが一時凍結・遅延に見舞われた。景気減速で経費節約の姿勢が強まる中、企業向けのソフトウエア企業が全般的に不振。中小企業向けに強い金蝶国際(00268)、大学発ベンチャーの方正控股(00418)といった民営企業や、地方政府系の浪潮国際(00596)も業績を落とした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
金蝶国際00268 1,765▲12.7▲140赤転 4,409
香港その他 深セン市を本拠とする民営のソフトウエア企業。「金蝶」を主力ブランドとし、中小企業向けの統合型(業務横断型)ソフトウエア(ERP)で国内最大級のシェアを誇る。内陸部の市場開拓に強みを持つほか、ソフトウエア販売以外の収益源を強化している。それでも法人向けソフトウエアの需要の影響を受けやすい。
方正控股00418 1,73329.436▲10.8559
レッドチップ 北京大学系の大手IT企業。主力事業はメディア系、非メディア系の企業に対するソフトウエア開発やSIなど。傘下に抱える方正数碼(00618)はプリンターなどのIT機器を販売している。国内トップクラスの北京大学から優秀な人材を確保できる点などが強み。電子出版システムの大手サプライヤーとしても注目できる。
浪潮国際00596 1,9528.1▲75赤転1,437
レッドチップ 山東省政府系のIT企業。米マイクロソフトが資本参加している。ソフトウエア開発、SI、電子部品の貿易などを展開しており、ITサービスは企業、税務、通信、金融、政府など幅広い分野を対象としている。クラウドコンピューティングを今後の成長分野に位置づけている。
中国民航信息網絡00696 4,06110.61,1338.216,006
H株 政府系のITソリューション大手。空港旅客システム関連では国内で大きなシェアを誇る。主力は航空券の予約販売サービスのプラットフォームとなる電子旅行販売システム、空港旅行者処理システムなど。本土の大手航空3社が大株主として出資しており、結びつきが強い。航空業界の発展による恩恵を直接享受できる企業といえる。
騰訊控股00700 43,894 54.012,73224.8561,408
ハンセン 「QQ」ブランドで様々なインターネットサービスを提供する大手IT企業。IM(インスタントメッセンジャー)、SNS、ミニブログ、オンラインゲームなど、多くの分野で業界トップクラスの規模を誇る。オープンプラットフォーム戦略を採用しており、ソフト会社が開発した豊富なゲーム、アプリなどを迅速に提供できる点が強み。近年はスマートフォンへの対応を強化しており、チャットアプリ「微信」(Wechat)は多くのユーザーを獲得している。
網龍00777 1,10845.639▲718,723
香港その他 民営のオンラインゲーム会社。08年にGEMから市場変更した。代表作は「魔城」「征服」など。ディズニー、エレクトロニック・アーツという米大手メディア会社と業務提携を結んでいる。モバイル・インターネット事業子会社のスピンオフ計画を進めている。
神州数碼00861 57,19723.81,01223.811,678
香港その他 国内有数のIT企業。MBOを通じて経営陣が大株主となっている。パソコン最大手の聯想控股有限公司と関係が深い。企業向けを中心に、各種IT製品を販売。SIやアプリケーションソフトウエア開発などのサービスも提供。海外事業を見ると、傘下にはジャスダック上場の株式会社SJIがある。
金山軟件03888 1,41138.343333.215,016
香港その他 民営の大手ソフトウエア開発会社。ゲーム、アプリケーションソフトウエアなどが主力。オンラインゲームの分野では中華圏でも高いブランド力を持つほか、アプリケーションでもセキュリティソフト「金山毒覇」、辞書ソフト「金山詞覇」が広く使われている。筆頭株主に迎えた騰訊控股との提携関係の効果が注目されている。

売上高・純利益は神州数碼(00861)が12年3月本決算。それ以外はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8134元。

時価総額は13年6月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

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注目されるトピックス ~4G時代の到来を控え、業界再編、規制動向などに注目~

4G(第四世代移動通信)、ブロードバンドなどのインフラ整備が追い風に:

中国の移動通信規格は3G普及を前に、一足飛びで今年から4G時代に突入する可能性がある。4Gの商用開始が実現すれば、これまで以上にスマートフォンの利用を前提としたネットサービスへの需要が高まろう。また、当局はブロードバンド普及を目的に光ファイバー網を今年中に3500万戸以上整備する計画。高付加価値のネットサービスがより注目されることとなり、ビジネスチャンスも広がろう。

業界再編に引き続き注目、アリババグループの全体上場観測が大きな関心事に:

世界的にIT企業間でのM&A、事業提携など、業界再編の動きが盛んとなっており、中国勢も例外ではない。アリババグル ープはミニブログ最大手の「新浪微博」と手を組み、Eコマース事業の更なる拡大を目指す。一方、業界の雄である騰訊控股も買収攻勢を今後も続ける構えだ。こうしたなか、アリババグループは昨年4月に上場廃止としたB2B事業(企業間)を含め、Eコマース事業全体を再度上場させる計画を掲げており、業界の大きな関心事となっている。

ネット業界の環境が目まぐるしいなか、ビジネスモデルが変更を迫られる可能性も:

無料化が進むネットサービスで如何に収益を拡大していくかが重要となるなか、無料通話で契約数を伸ばしたチャットア プリ「微信」に関して、通信キャリアからの課金圧力が強まっている。仮にこれが認められた場合、「微信」のビジネスモデルは大きな修正を迫られる可能性が高い。ほかにもミニブログなどへの規制、オンラインゲーム中毒対策などの動向次第では、ネット企業の経営に大きな影響を与えることとなる。 (中国部 畦田)

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中国のネットユーザー数の推移
中国のインターネット市場の発展状況

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