中国株 業界レポート

流通業界

~“世界の市場”としての地位を固める一方で、伸び悩みも~
2013年6月3日

市場動向 ~消費は初の20兆元台を記録、一方で伸び悩みも目立つ~

12年の業界規模:

小売総額(中国):21兆307億元(前年比14.3%増)、消費者物価指数(CPI):同2.6%上昇、小売総額(香港)4454億HKドル(同9.8%増)

所得水準の向上、減税、最低賃金引き上げなどの内需拡大策などを背景に、中国は「世界の市場」としての地位を益々固めている。12年の小売総額は初めて20兆元の大台を突破。04年から9年連続の2ケタ成長を確保した。インフレがやや落ち着いたこともあり、実質成長率は12.1%と前年を上回った。引き続き高級品市場が堅調で消費レベルが高度化。宝飾品、スマートフォンなどの売れ行きが好調だった。一方で昨年央までの景気低迷の影響は免れず、個人消費が景気全体のけん引役となるには力不足。依然としてGDPに占める内需の割合も小さい。今年に入ると再びインフレ圧力が強まってきたほか、中央政府による公費抑制運動の影響も加わり、個人消費は伸び悩んでいる。このため、早晩新たな内需拡大策が導入される可能性もある。競争が厳しい分、生き残りをかけた企業間の合従連衡も進もう。

一方、香港・マカオは人口が少なく、消費市場も成熟していることから、成長エンジンは中国からの観光客増加にかかっている。昨年は中国の景気低迷の影響を受け、香港の消費の伸び率は大幅に落ち込んだ。

業界の特徴 ~競争が厳しいなか大手はスケールメリットを追求、政策面での追い風も見込める~

主力事業面:

購買層の中心は都市部で、旧正月、国慶節など長期休暇が消費シーズンとなる。ブランド衣類・宝飾品など高級品に強みを持つ百貨店、家電量販店は景気変動や季節的要因の影響を受けやすいが、スーパーマーケットが得意とする生活必需品の需要は総じて安定的。販売競争が激しく、大手は買収・合併などを通じてスケールメリットの拡大に努めている。

国際面:

中国需要を取り込もうと、数多くの外資企業が進出。外資規制の緩和・撤廃を追い風に事業を拡大させており、一部の欧米企業は業界のトップ10に名を連ねている。

政策面:

内需主導の経済成長に転換するために、政府は最低賃金の引き上げを実施している。このほか、昨年秋の共産党大会で、政府は1人あたりの所得額を20年までに10年比で2倍とする目標を決定。この実現に向けた政策措置として今年2月に所得再分配制度の改革ガイドラインを公表。中長期的な購買力の拡大が期待できる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~業界の寡占度は低い、民営、政府系、外資を含む多くの企業が乱立~

民営、地方政府系、外資など多くの企業があるが、業界の寡占度はかなり低い。12年の「チェーンストア企業100強」の販売高は合計で1兆8700億元に達したが、それでも引き続き全体の1割に届かず、伸び率も10.8%と小売総額の伸びを下回った。電子商取引(Eコマース)の台頭から業界内の競争が益々激化。一方で賃料・人件費の増加、在庫整理などの圧力が重しとなった。大手は販売製品の調整を通じて差別化を進め、不採算店舗を整理する一方、成長余地の大きい内陸市場を開拓。家電量販の両雄である蘇寧電器(002024)と国美電器控股(00493)の両民営企業が販売高で1位、3位にランクインしたが、最終損益はそれぞれ減益、赤字に後退した。上海市政府系の総合小売企業「百聯集団」は2位に順位を落とした。中核子会社の上海友誼集団(900923)、同子会社の傘下でスーパーマーケット部門を担当する聯華超市(00980)がいずれも競争激化から利益が減少。4位は中央政府系の消費コングロマリット、華潤創業(00291)傘下の華潤万家がランクインした。これら最大手クラスは全国展開しているが、これに続く大手は主力エリア以外の比率は依然として低め。地域ごとに一定の住み分けができており、政府系の流通企業をみると、北京市では大手百貨店の王府井百貨(600859)、スーパー・コンビニの北京物美商業(01025)、北京京客隆(00814)が有名だ。

また、大手百貨店には民営企業も多く、広東省の茂業国際(00848)、江蘇省の金鷹商貿(03308)、浙江省の銀泰百貨(01833)はいずれも増益を確保することができた。一方、「世界の市場」を狙い外資も積極的に進出しており、100強中にも多くの企業がランクインした。台湾・フランス合弁の高キン零售(06808)は強みとするハイパーマーケットの地方出店を加速し、大幅な増益を記録した。香港の小売市場は財閥系企業が中心。この中で独立系の莎莎国際(00178)は中国人観光客への化粧品販売を伸ばし、増益を継続している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
莎莎国際00178 5,31830.757235.423,972
香港その他 有名ブランド化粧品の卸小売などを手がける民営企業。香港を拠点に、マカオ、中国本土などで「Sasaストア」などの店舗を展開している。「Sasa」ブランドは中華圏での知名度が高く、個人消費の拡大、健康・美容指向の高まりというトレンドを追い風にすることが可能。中国人観光客の増加による恩恵を受けやすい。
華潤創業00291 104,81314.63,27530.961,505
ハンセン 国有系のコングロマリット「華潤集団」に属し、消費関連事業を幅広く展開する企業。小売、飲料、食品などが中核事業で、小売ではスーパーマーケット「華潤万家」、ドラッグストア「采活」、漢方薬店「華潤堂」、伝統工芸品店「中芸」、コーヒーショップ「パシフィック・コーヒー」などを経営している。内需関連の中心銘柄といえよう。
国美電器控股00493 47,867 ▲20.0▲597赤転13,331
香港その他 家電量販大手。企業買収を通じて規模を拡大してきた。前主席の逮捕などの影響でライバルの蘇寧電器に遅れをとってきたが、ここ数年は積極的に出店し、巻き返しを図っている。オンラインショッピングサイトの開設、地方都市での店舗拡大などを進めているが、一方で蘇寧電器などとの激しい競争にさらされている。
北京物美商業01025 15,3635.56022.717,784
H株 民営の小売企業。京津地区(北京市、天津市、河北省)を中心に、ハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニエンスチェーンを展開している。本拠とする北京市で高いシェアを誇るほか、北京市と距離的に近い天津市と河北省および、東南部の浙江省で新規出店や吸収合併などにより店舗網を拡大している。
銀泰百貨01833 3,90725.397318.417,059
香港その他 浙江省を主な地盤とする民営の大手百貨店。シンガポールのソブリンファンドが大株主として資本参加している。主要顧客は都市部の富裕層で、中高級品のアパレル、化粧品、アクセサリーの品揃えに強みを持つ。湖北省で百貨店を経営する武漢武商集団(000501)を系列化に置いており、同社や新規出店を通じて内陸部の市場を開拓していく方針。
金鷹商貿03308 3,62312.61,2180.523,177
香港その他 民営の大手百貨店。比較的に所得水準が高い江蘇省を地盤とし、同省で高いブランド力を持つ。店舗の自社保有比率の高さが同社の特徴。各店舗は主な商業地の一等地にあり、国内・海外の一流ブランドをそろえ、中高所得者層を主な顧客としている点が強みだ。ただ、新規出店で費用が嵩み、12.12期は小幅増益にとどまった。
百盛03368 5,1404.1851▲24.210,174
香港その他 「百盛」(パークソン)のブランドで、百貨店事業を全国展開するマレーシア系企業。94年に中国に進出し、北京市、上海市、重慶市、陝西省西安市、四川省成都市など主要都市に店舗を構える。アッパーミドル層をターゲットとし、売上高の大半をテナント収入が占める。
高キン零售06808 77,85114.32,40950.6104,937
香港その他 仏台合弁のハイパーマーケット最大手。フランスの小売大手「オーシャン」と台湾の有力財閥「潤泰グループ」が90年代末にそれぞれ上海市に進出後、両社のシナジー効果を発揮するために合弁事業化した。「欧尚」と「大潤発」のダブルブランド体制を構築。低所得者をターゲットに地方都市に積極的に出店している。
上海友誼集団900923 49,2634.81,170▲15.918,625
上海B株 上海政府系の大型流通グループ「百聯集団」の中核企業。百貨店の「友誼百貨」、ホームセンターの「好美家」のほか、傘下に置く聯華超市(00980)を通じて、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、コンビニを経営する。上海市を主力とする所得水準の高い華東地区をメインに事業展開。今後は内陸部への進出を加速する方針。

売上高・純利益は莎莎国際(00178)が12年3月本決算。これ以外はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年6月3日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.7618HKドル。

小売業(業種別一覧) 卸売業・貿易(業種別一覧)

注目されるトピックス ~政府の所得倍増計画が中長期的な追い風に、Eコマースへの対応が勝負の分かれ目~

政府の所得倍増計画を受け、中長期的な政策見通しは明るい:

最低賃金を通じた所得水準の底上げ、税制など再分配機能の拡充による格差是正により、所属倍増を着実に実現していく構えであり、中長期的な政策見通しは明るい。一方で短期的には直接的な補助金支給策などが見込みにくく、足元では公費支出の抑制策が消費に暗い影を落とす。政策動向には随時、注意していく必要があろう。

急成長するEコマース市場への対応力に注目:

新しいビジネスモデルが台頭し、従来型の百貨店、スーパーの顧客層を切り崩している。特にEコマースは昨年の取引高が前年比67%増の1兆2594億元と急成長中。アリババグループ、京東商城などの新興民営企業が主役となっている。国美電器控股など既存の大手流通チェーンもネット販売を強化。同分野の成否が企業間の明暗を分ける結果となってこよう。

消費の二極化が進展する可能性も:

中国はすでに世界有数のぜいたく品消費国となった。特に富裕層の海外ブランドへの信仰は厚く、デパートなどは高級路線を鮮明にして利益率の確保に努めている。一方で人口の大半を占める中低所得者層にとっては、値段の安さが最重要。高級化と大衆化の二極化が今後も進む可能性が高く、流通各社は明確な戦略が求められる。(中国部 畦田)

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中国チェーンストア企業100強のうち弊社取扱銘柄と関連する企業などを一部抜粋

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12年の小売総額の品目別内訳(一定規模以上の企業による)
小売総額の推移(品目別、一定規模の企業によるもの)

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