中国株 業界レポート

医療関連業界

~高齢化社会を見据え医療制度改革が進展~
2013年6月5日

市場動向 ~医療制度改革を追い風に世界有数の市場規模まで成長するも、薬価引き下げが重しに~

12年の業界規模:

医療支出総額:2兆8914億元(前年比18.8%増)、医薬・医療機器業界の販売高:1兆7459億元(同21.1%増)、税引き前利益:1833億元(同20.4%増)

世界最大の人口を抱える中国は医療関連の市場規模が大きく、30年以上にわたり一貫してGDPを大幅に上回る成長率を維持。医薬品はすでに日独を抜き、米国に次ぐ世界2位のマーケットに成長したもようだ。医療制度改革の進展が更に進み、12年の医療支出総額は前年比で2割近く増加。医療保険の拡充、政府負担率の上昇を通じて市民の医療へのアクセスがより容易となり、医薬品・機器・設備など関連業界の業績も2割前後の増収増益を確保した。一方で、主力の原薬販売が伸び悩み、全体の輸出額は476億米ドル、伸び率は6.9%に鈍化。また、医療費抑制策の一環で政府の薬価引き下げが続き、厳しい競争がこれに拍車をかけると、業界内での勝ち組・負け組の差が一層広がった。

当局は民生分野を重視しており、積極的な財政支出を背景に医療需要は今年も比較的高い伸びを維持する見通し。他方、薬価引き下げのスタンスも変えておらず、業界にとっては強弱両方の材料がみられる。各企業は15年末までにGMP(製造管理及び品質管理基準)をクリアする必要があり、淘汰を迫られる企業も増えよう。業界再編が一層進む可能性も。

業界の特徴 ~規制が非常に厳しい、ディフェンシブな内需型セクター~

生産・販売面:

医薬関連は概ねディフェンシブの内需型セクター。原薬・製薬をはじめ、医薬品の卸・小売り、医療機器・設備の製造販売、関連サービスなど複数のサブセクターに分けられる。中心となる製薬は大きく西洋薬、漢方薬に分けられ、多くの企業が厳しい競争を繰り広げる。輸出品の大半は低付加価値品である原薬にとどまっているほか、製品は概ねジェネリック医薬品に限られる。医薬品は市販薬として卸・小売り業者を通じて消費者に届けられる。処方薬は日本と同様に病院を通じて販売されるが、利益追求の過剰な処方が問題となっており、医薬分業の一層の徹底が求められている。

国際面:

中国の医薬品貿易の主力は漢方薬であり、輸出額の規模も大きい。ただ製剤能力は足りず、漢方製剤では貿易赤字となっている。有力外資は高付加価値市場で圧倒益なシェアを握っており、積極投資で攻勢をかけている。

政策面:

人々の健康を担う産業だけに、政府の規制は非常に厳しい。09年から始まった国家基本薬品制度に採用された医薬品は保険の対象になり、製薬会社にとって自社製品が選ばれることが重要。3年ごとに見直され、今年3月の改定版では対象薬品の数が6割増の520種まで増えた。一方で薬価引き下げも続けており、製薬企業の収益下振れの要因となっている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~集約度は低く競争も激しいが、全体的には堅調な業績~

政府系、民営を含め、国内外の多くの企業が激しい競争を繰り広げており、集約度は低い。昨年の医療関連業界は医療支出拡大の追い風を受け、業界全体では引き続き増収増益となった。しかし、当局の薬価引き下げに厳しい競争が加わり、業績を落とす企業も見られた。上場企業をみると、大手は地元政府系企業が中心。売上高で業界トップの広州医薬集団を親会社に持つ広州薬業(00874)は買収を通じて事業規模を拡大し、好業績を収めた。一方、上海医薬(02607)は販管費などが嵩み、小幅増益にとどまった。北京同仁堂科技(01666)は漢方薬老舗としてのブランド力を活かし、市販薬市場の拡大を追い風に大幅増益。また、今年5月には海外販売を担当する北京同仁堂国薬(08138)をスピンオフした。国務院系の企業では流通最大手の国薬控股(01099)が積極的な買収効果から利益を拡大。傘下に置く国薬一致薬業(200028)も増収増益となった。

なお、同業界は民営企業の活躍も目立つ。復星国際(00656)傘下の復星医薬(02196)は医薬品大手に成長しており、国薬控股の大株主でもある。特定分野に強みを持つ民営企業も多く、四環医薬(00460)は心血管薬、中国生物製薬(01177)は肝炎治療薬、瑞年国際(02010)はアミノ酸サプリメント、神威薬業(02877)は漢方注射薬、山東羅欣薬業(08058)は抗生物質が、それぞれ主力製品。ただ、昨年は中国生物製薬を除く各社が薬価引き下げの影響から業績が伸び悩んだ。また、民営の医療機器大手である山東威高集団医用高分子製品(01066)も前年の売却益の反動もあり、大幅減益となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
四環医薬004603,04335.79049.825,927
香港その他民営の製薬会社で、心脳血管疾患薬の分野で国内トップクラスのシェアを誇る。全国規模の販売網を通じ、各地の病院などに販売。積極的な買収戦略で事業規模を拡大してきた。新規に参入した漢方薬事業の今後が注目される。また、同社は代表的な成人病の治療薬をカバーしており、需要拡大の余地は大きい。
広州薬業008748,22951.339537.552,963
H株華南地区で最大規模の総合医薬企業。地場系大手として製品開発力、ブランド力ともに高いランクにある。親会社からの資産買収や、同業A株企業への吸収合併が完了し、企業規模が大きく拡大した。漢方薬を利用した清涼飲料水「王老吉」は同社のベストセラー商品だが、商標権をめぐる裁判が続いていることが懸念材料。
山東威高集団 医用高分子製品010663,68916.0996▲71.245,749
H株山東省を本拠とする民営の大手医療機器メーカー。主力ブランド「潔瑞」は医療機器としては初めて「中国馳名商標」に認定された。使い捨ての点滴・輸血器具、整形器などを製造して病院などに販売するほか、海外にも輸出している。外資との結びつきが強く、成長分野と位置づける人工透析器で、テルモや日機装と提携している。
石薬集団010933,44272.21,795508.416,411
レッドチップ原薬・医薬中間体のサプライヤー。筆頭株主は聯想控股有限公司で、パソコン最大手の聯想集団(00992)などを傘下に置いている。元々は国有製薬会社の石家荘製薬集団の支配下にあり、現在も「石薬集団」の商標を使用。親会社から買収した製剤メーカーグループの今後が注目される。
国薬控股01099135,78732.81,97426.553,934
H株医薬品流通の国内最大手。国内の7割以上の病院を顧客としている。半官半民の企業で、国有企業の中国医薬集団が実質筆頭株主となっているほか、民営系コングロマリットの復星国際(00656)も大株主。国薬一致薬業(200028)を傘下に置き、製薬事業も展開している。業界大手として買収・再編を積極的に展開してきた。
中国生物製薬011776,91344.073992.525,350
香港その他肝炎治療薬のリーディングカンパニー。他にも心臓・脳血管薬、抗がん剤、鎮痛剤などもカバーする。研究開発には定評があり、合弁会社は厚生労働省の外国製造業者に対する医薬品GMP適合性調査をクリアするほど。中国当局に承認された新薬が今後順次、市場に投入される見込みで、中長期的な安定成長が期待される。
北京同仁堂科技016662,44726.433029.614,582
H株北京市政府系の漢方薬メーカー。親会社の「北京同仁堂」は漢方薬の老舗で、ブランド力の高さが強み。天然素材を用いる漢方薬をベースとした顆粒剤、丸薬、錠剤、カプセル剤、保健食品などの製品に特化。健康・自然志向を背景に天然素材を用いる漢方薬へのニーズが高まっており、同社にとっては追い風だ。
瑞年国際020101,755▲1.9466▲15.52,729
香港その他各種サプリメントの製造販売を主力とする江蘇省の民営企業。健康志向の高まりを背景に同市場の成長性に注目が集まるなか、同社はアミノ酸サプリメントの分野で国内トップクラスのシェアを保持している。このほか、広東省などで夏季に好んで飲まれる漢方薬を利用した清涼飲料水などを生産販売している。
復星医薬021967,27813.11,56434.135,209
H株民営コングロマリットの復星国際(00656)の下で、医薬事業を担当。製薬部門はジェネリック医薬品が中心で、国内上位の売上高を誇る。医薬品の流通事業も展開しており、同分野で国内最大手の国薬控股(01099)に出資しており、製薬・流通の両面で医療制度改革の恩恵を受ける可能性がある。
上海医薬0260768,07824.02,0530.541,396
H株上海政府系の総合医薬品企業。医薬品・ヘルスケア製品などの製造販売を全国展開する。再編を経て事業を垂直統合型化し、製造販売から卸小売までを手がけている。所得水準の高い華東地区を地盤としている点が強み。製造する医薬品は処方薬が大部分。流通事業は全国規模の販売ネットワークを構築している。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年6月5日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

医薬・医療機器(業種別一覧)

注目されるトピックス ~社会保険の整備、高齢化の進展で医療関連市場の成長余地は大きい~

GMPショックで外資を巻き込んだ“買収合戦”へ:

中国政府が新たに定めたGMPは先進国並みの厳しい基準となっており、15年末までにクリアできない製薬会社は廃業となる。一方で対応には巨額の設備投資が必要とされるため、これをきっかけに業界再編が益々進むものと考えられる。今後、技術力に勝る有力外資と、販売網や事業規模で優位に立つ地場系大手との間で、買収合戦が起こることが予想される。

社会保険の整備を通じて市場は益々拡大へ:

中国はこれまで社会保障が不十分で、“看病難、看病貴”(診療機会の難しさ、医療費の高さ)という構造的な問題を抱えてきた。この解決に向けて中央政府は医療、年金など各種社会保険の整備を進めており、その結果として医療支出が今後も着実に伸びていこう。同時に中国は世界最大の人口を抱え、長期的に見ると少子高齢化が進んでいく。こうした点から医療関連市場には大きな成長余地が見込める。

政策リスクが非常に大きいなか、ハイエンド市場への進出は不可欠:

医薬関連業界は医薬品の承認、価格などが日本と同じく当局の統制下にあり、政策の影響が非常に大きい。研究開発の支出が嵩むなか、政府は薬価引き下げのスタンスを継続。こうしたなか、地場系企業にとってハイエンドの医療・医薬市場に進出することが不可欠となってくる。同分野は外資の独壇場ともいえ、大手は買収などの手を打ってくる可能性もある。(中国部 畦田)

医薬・医療機器(業種別一覧)

医薬・医療機器業界の販売高
医薬・医療機器業界の販売高内訳
医療支出総額と1人あたり支出額の推移

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医療支出総額の負担比率の内訳
中国の医薬・医療機器メーカーの売上高順位

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