中国株 業界レポート

娯楽・観光業界

~世界の観光大国、旺盛な国内需要は変わらず~
2013年6月5日

市場動向 ~世界有数の観光大国、国内旅行は堅調を維持するもインバウンドは不振~

12年の業界規模:

観光業総収入:2兆5700億元(前年比14%増)、国内観光収入:2兆2200億元(同15%増)、外国人旅行者による観光収入:485億米ドル(前年と同水準)。

長い歴史と広大な土地を有する中国は、多数の世界遺産・遺跡などに恵まれた観光大国。昨年の観光業収入は前年比で14%増の2兆5700億元に上った。休暇制度の整備、所得水準の向上、レジャーの多様化などを背景に国内旅客数は30億人の大台に迫った。一方で3年前の上海万博のようなビックイベントに乏しく、国内経済の低迷を受け、収入・旅客の伸びはやや減速。また、世界的な景気減速、東アジア情勢の不安定化を背景に、入国者(香港・マカオ市民も含む)が僅かながらも減少に転じると、外国人旅行者からの観光収入も伸び悩んだ。一方で海外旅行ブームは続き、渡航者数は前年比15%増の8000万人まで増加。香港の観光・流通業界、マカオのカジノ業界などは本土からの観光客増に支えられた。同年のマカオのカジノ収入は初めて3000億パカタの大台に到達。しかし、当局の規制強化等の影響を受け、伸び率は低下した。

今年はPM2.5、鳥インフルエンザの影響を受けインバウンド観光は引き続き厳しい状況。一方、旧正月、メーデーの長期連休をみると国内の景勝地が観光客でごった返したほか、多くの人が海外旅行を満喫。国内・海外旅行は堅調といえよう。

業界の特徴 ~国内外の諸要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

国内の観光・外食産業は数多くの企業がひしめき、競争が激しく、景気などの外的要因に影響を受けやすいセクター。海外からの観光客も多いため、海外景気の影響を大きく受ける。災害・伝染病といった特殊要因によるリスクもあり、今年はすでに四川省の地震、鳥インフルエンザの影響などに見舞われた。5月、10月の長期連休などの行楽シーズンと閑散期との差が大きいことも特徴。鉄道、航空路線など交通アクセスの整備状況も需要を左右する。

国際面:

世界の主要なホテルが巨大市場の攻略を目指して中国に進出。さらに中国人の海外旅行というマーケットが年々成長しており、各国は旅行客の取り込みに向けて、積極的に手を打っている。

政策面:

政府は15年までに国内旅行者数を33億人(年平均10%増)に引き上げ、旅行総収入を年平均10%増やすなどの政策目標を掲げた。そして今年10月に施行する予定の新旅行法を通じて旅行業界の質向上に努める方針だ。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系・民営問わず多くの企業が参入、マカオのカジノ業界は引き続き好調~

観光・外食業界は政府系・民営を問わず、多くの企業が参入。零細企業も多く、価格競争から利益率は低めだ。それでも大手が大半の上場企業は観光業収入の伸びに比例して、各社ともに増収を確保した。上海市を本拠とする上海錦江国際酒店(02006)は、ホテル・外食部門の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行会社の上海錦江国際トラベル(900929)などを傘下に置く地元政府系の総合観光グループ。12.12期の主力事業は概ね堅調だったものの、販管費や財務費用が増加。外食部門の不振も加わり、大幅減益に後退した。同じく地元政府系の黄山旅行開発(900942)も財務費用が膨らみ、小幅な減益。それでも開発・管理する安徽省の景勝地「黄山」の観光客は順調に増えた。こうしたなか、観光事業を幅広く展開する中央政府系の香港中旅(00308)は2ケタ増益を達成した。

民間の大手企業は外資系の企業が多い。マレーシア系の高級ホテルグループ「香格里拉(亜洲)(00069)」は海外でのホテル稼働率の改善や評価益の計上などを受けて増益となった。それに対して日本食チェーンの味千(中国)(00538)は日中関係悪化の影響をまともに受け、大幅減益に後退した。中国から多くの観光客が押し寄せる“カジノ天国”のマカオをみると、カジノライセンスを持つ6社はいずれも増益を確保した。最大手はマカオの富豪であるスタンレー・ホー氏ファミリーが率いる澳門博彩控股(00880)。同ファミリーは新濠国際(00200)を通じてカジノ企業の新濠博亜娯楽(06883)も支配している。香港系の銀河娯楽(00027)も一昨年に開業したカジノ場が引き続き好調だった。残りは金沙中国(01928)、永利澳門(01128)、美高梅中国(02282)の3社で、米ラスベガスのカジノ大手が設立。VIP向けで強みを発揮し、カジノ収入を伸ばした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
銀河娯楽0002747,11637.86,125145.6172,828
香港その他香港の著名実業家である?志和ファミリーが支配するマカオのカジノ事業者。「スターワールド」は国内外で高い知名度を誇る。11年にコタイ地区の大型カジノリゾート「ギャラクシー・マカオ」をオープンし、市場シェアを一気に高めた。
香格里拉(亜洲)0006912,9797.62,26541.943,851
香港その他マレーシア華僑財閥系のホテル会社。アジア各地や欧米で、高級ホテル「シャングリラ」(香格里拉)を経営している。日本でも東京駅前に5つ星ホテルを開業。香港や中国本土の主要都市に進出している。アジアを代表する高級ホテルとして、ブランド力に定評がある。
新濠国際0020012213.6931300.625,316
香港その他スタンレー・ホー氏のファミリーが支配するマカオの大型コングロマリット。主力はカジノ事業で、豪クラウン社と合弁で設立した新濠博亜娯楽(06883)を通じて高級カジノ場、新都市型娯楽リゾート、ゲーム機カジノ場を経営。レジャー分野では有名レストラン「珍宝海鮮舫」や中国本土のスキー場を運営する。
香港中旅003083,8757.266715.68,358
レッドチップ中国政府系の大手観光サービス会社。香港に本拠を置き、本土では広東省を中心に国内各地で事業を展開。旅行代理店業務は本土・香港間を中心に取り扱うほか、総合旅行サイト「芒果網」を運営している。このほか、リゾート開発を積極的に推進。ホテル、テーマパーク・風景区、ゴルフ場などを経営している。旅行需要が旺盛な華南エリアで優位なプレゼンスを築いている点が強み。
味千(中国)005382,526▲1.0127▲55.96,724
香港その他中国・香港で「味千拉麺」(味千ラーメン)ブランドのラーメン店をフランチャイズ展開する民営企業。「味千ラーメン」は熊本県の重光産業が展開するラーメン店チェーンのブランドであり、フランチャイザーとして同社の設立に参加した。重光産業の重光克昭・代表取締役が大株主となっている。中国のほぼ全地域に進出する日本食チェーンの代表格。それだけに、日中関係の影響を受けやすい。
澳門博彩控股0088065,4974.55,60027.1112,114
香港その他マカオのカジノ最大手。長きにわたりマカオのカジノを独占支配した企業を前身とし、老舗の「カジノ・リスボア」や「グランド・リスボア」などを経営。創業者のスタンレー・ホー主席は“マカオのカジノ王”として業界内で大きな影響力を持っているが、同氏はすでに高齢であり後継者問題が不安要因となる可能性も。他社に遅れたものの、昨年コタイ地区への進出計画を明らかにした。
永利澳門0112823,623▲3.55,3478.8115,423
香港その他マカオでカジノホテルリゾート事業を展開する米国系企業。ナスダックに上場するウィン・リゾーツの傘下にあり、24時間営業のカジノ、高級小売店、レクリエーション施設などを備えた高級カジノホテル「ウィン・マカオ」を経営する。日本の大手パチンコ機メーカーを創業した岡田和生氏も親会社を通じて出資していたが、昨年の経営をめぐる対立から前年に取締役を解任された。
金沙中国0192841,08233.47,7989.1322,660
ハンセンラスベガスを本拠に世界進出するカジノ世界大手「ラスベガス・サンズ」の中国子会社。マカオで最初のラスベガス式カジノを開業後、次々と大型の総合カジノリゾートをオープンしてきた。新興埋立地のコタイ地区を重視し、カジノリゾート「サンズ・コタイ・セントラル」を昨年春にオープン。新たなカジノホテルの建設計画も発表するなど、同地区で高いプレゼンスを持つ。
上海錦江国際酒店0200613,8849.7317▲40.97,347
H株上海最大の観光グループ「錦江集団」の中核企業。地元政府系の企業で、ホテル経営の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行代理の上海錦江国際トラベル(900929)、タクシー・物流事業の上海錦江国際実業投資(900914)を傘下に置く。クラシック、豪華、ビジネス、エコノミーホテルなど、幅広いスタイルのホテルを経営している。
美高梅中国0228218,0787.33,76238.276,950
香港その他マカオのカジノ事業者。ニューヨーク上場のMGMリゾーツ・インターナショナルの傘下にある。スタンレー・ホー氏の娘も大株主。07年12月に開業したカジノリゾート「MGMマカオ」を経営。後発であり、市場シェアは低い。このため、コタイ地区に総額26億米ドルを投資し大型のカジノホテルを建設する計画を発表。16年半ばに完成する見込みで、シェア拡大の起爆剤として注目される。
黄山旅行開発9009421,84115.0240▲6.36,569
上海B株中国屈指の名山として知られ、世界自然遺産にも認定されている黄山の観光サービス会社。黄山風景区の入園チケット販売、ロープウエー運営、ホテル経営、旅行会社経営などを手がける。黄山は商都「上海」を中心とした長江デルタ地域と距離的に近い。交通アクセスは益々便利になってきており、観光客の一層の増加も見込める。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.3097元。

時価総額は13年6月5日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.762HKドル。

娯楽・観光(業種別一覧)

注目されるトピックス ~成長・多様化する観光需要、安定した収益源を確立できるかがカギ~

旺盛な国内の観光需要は益々多様化:

これまでにない8日間という大型休暇となった昨年の中秋節・国慶節連休は、過去最高となる3400万人以上の観光客数を記録。この期間だけで17.7億元の観光収入を稼いだ。国内の観光需要は益々伸びており、その中身もこれまでの団体旅行中心から、個人旅行、マイカー旅行、エコツーリズムなど多様化。ニーズに沿った旅行商品を如何に提供できるか、観光業界の手腕が試されている。

インフラ整備が香港・マカオの観光業者の追い風に:

観光地へのアクセス状況は観光客の数を左右する。こうしたなか、急ピッチに進む交通インフラ整備は業界に追い風。特に中国と香港・マカオを結ぶアクセスは、建設中の「広深港高速鉄道」と「港珠澳大橋」がそれぞれ15年、16年に完成すれば利便性が一層高まる。香港のホテル・流通業、マカオのカジノ会社の先行きは良好といえよう。

安定した収益源の確立が重要:

観光業者が如何に安定的な収益源を確立できるかが課題。多くの観光施設・景勝地は入場料収入に大きく依存しており、安易な値上げに走り、観光客の強い反発を招くなど、大きな社会問題となっている。当局は入場料の3年据置ルールを導入し対策に乗り出しているが、目立った効果が挙がっていないのが現実だ。

リスク要因:

観光需要は様々な影響を受けやすい。天災・疫病などは市民の旅行ニーズを直接冷やし、今年もこれまでに華北では大気汚染、華中では鳥インフルエンザ、そして四川省の地震などの実例が見られた。また、外交の影響も無視できず、領土問題で緊張関係の続く日中両国間の観光は冷え込んだまま。リスクを意識した投資戦略が必要となってくる。(中国部 畦田)

娯楽・観光(業種別一覧)

中国の観光収入と旅客数の伸び
マカオのカジノ収入の推移
マカオでカジノ経営ライセンスを保有する6社の比較

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