中国株 業界レポート

食品業界

~内需拡大の恩恵が続くも、国産品への信頼感は低下~
2013年6月6日

市場動向 ~世界有数の食品大国、内需拡大の恩恵を受け売上を伸ばすも国産品に対する信頼が低下~

12年の業界規模:

販売額:8兆8022億元(前年比21.1%増)、税引き後利益:6571億元(同25.2%増)、輸入額:874億米ドル(同20.5%増)

中国は世界有数の農業国であると同時に、生産規模も多くの食品で世界トップレベルにある。しかし、世界最大の人口を抱える中国では食料消費量も急激に伸びており、この20年間に肉・卵類の消費量は約4倍に増加。一方で食料自給率は90%に低下した。昨年の食品業界は販売額が前年比で約2割増加。所得水準の上昇、食品嗜好の多様化などが追い風となった。また、インフレの一服感により原材料コストの上昇圧力が緩和。景気低迷のなか価格競争は激しかったが、全体では2桁増益を維持できた。一方で、昨年も食の安全に関する問題は続き、消費者の国産品に対する信頼が低下。富裕層を中心に海外製品へのニーズが高まり、食品は大幅な輸入超が続いている。

今年に入り再び出てきた農作物のインフレ傾向が懸念材料になってきたほか、鳥インフルエンザの流行が畜産・食肉業に大きな打撃を与えた。足元の景気も伸び悩んでおり、経営環境は厳しくなってきている。このため、外資を含めた大手はM&Aをさらに推進し、シェア拡大に努める構え。業界再編は益々進んでいこう。

業界の特徴 ~総じてディフェンシブなセクターだが、物価動向の影響は受けやすい~

生産・販売面:

全体的に景気の影響が比較的小さいディフェンシブなセクター。国有系、民営、外資を含む多くの企業が激しい競争を繰り広げている。中国企業の多くは中小企業で、採算性、産業集積度は概ね低く、食品加工の初期段階に従事。その分、農作物・食肉の価格動向の影響を受けやすい。市場全体としてビールは夏場、白酒(パイチュウ)、ワインなどは旧正月前後に消費シーズンを迎えるなど、季節的要因が生産・販売に与える影響は大きい。

国際面:

世界の大手食品メーカーが参入し、大きなシェアを握る。特に即席めん、清涼飲料の分野では台湾系企業の存在感が際立つ。日系企業をみるとアサヒビールが青島ビール(00168)と、キリンホールディングスが華潤創業(00291)とそれぞれ提携関係を構築するなど、酒造・飲料分野の結び付きが強い。

政策面:

政府は内需拡大の一環として農村部の振興、水利整備を重視。これらの政策は農作物の安定供給、ひいてはインフレ鈍化に繋がる可能性も。農民の購買力の拡大は、都市部での消費レベルの高度化も加わり、業界には追い風だろう。一方、食の安全に関わる問題は人々の関心も高く、当局も対策を強化。しかし、目立った効果を挙げているとはいえない。

主要企業、主な取扱銘柄 ~外資系や政府系企業が業界をリード、利益段階では明暗が分かれる~

食料品業界はブランド力などを背景に業界大手が有利な状況。農作物・食肉など原材料価格の高騰は一昨年の夏をピークに鈍化に転じたが、それでも引き続き高い水準にあるケースも多く、大手の業績は明暗が分かれた。即席めん、米菓、清涼飲料などの分野では台湾系3社が大手で、増収増益を確保。統一企業中国(00220)は新製品の投入効果で即席めんの販売を伸ばし、大幅増益。中国旺旺(00151)は乳飲料のヒット商品に恵まれ、利益を増やした。一方、これらの分野で最大手クラスの康師傅(00322)はペプシコの中国事業買収に伴う負担が重しとなり、小幅な増益にとどまった。

一方で地場系企業をみると、国務院直轄の中糧集団が一大コングロマリットを形成し、業界をリード。食用油、飲料、ワインの大手メーカーである中国食品(00506)、農作物加工最大手の中国糧油控股(00606)、乳業大手の蒙牛乳業(02319)という上場3社を傘下に収めている。しかし、昨年は競争激化のなか、3社とも利益を減らした。

アルコール飲料でも大手は政府系企業が多い。ビールは華潤創業(00291)の「雪花」、青島ビール(00168)の「青島」、北京控股(00392)の「燕京」が有力ブランドだが、業績は概ね伸び悩んだ。ワインは張裕葡萄酒(200869)の「張裕」、中国食品の「長城」、王朝酒業(00828)の「王朝」が3大ブランドだが、輸入ワインの攻勢に曝された。白酒大手の安徽古井貢酒(200596)も増益を確保したが、政府の公費抑制政策の影響で年後半から贈答用需要が落ち込み、その影響を受けた。このほか、食肉大手の雨潤食品(01068)は数少ない有力な民営企業だが、品質問題などスキャンダルが続き、赤字に転落した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国旺旺0015121,19414.03,49532.0146,563
ハンセン本土に進出した台湾系食料品メーカーの草分け。主力分野は米菓、飲料、スナック菓子などで、「旺旺」ブランドは国内で高い認知度を誇る。価格決定力が強く、利益率は業界内でも比較的に高い。岩塚製菓と資本・業務提携を構築。森永乳業から技術供与を受けている。
青島ビール0016825,78211.31,7591.2 69,809
H株長い歴史を持つ山東省青島市のビールメーカー。日本のアサヒビールと資本・業務提携を結んでいる。業界のリーディング企業であり、海外でも通用する高いブランド力は同社の強みとなっている。タイ工場建設は中国ビールメーカーとしては初の海外進出。海外市場の開拓動向が注目される。
統一企業中国0022021,40626.4856174.429,084
香港その他「統一」ブランドで知られる台湾系の大手食品・飲料メーカー。「来一桶」、「統一100」ブランドの即席めん、「統一緑茶」シリーズの茶飲料、「多」シリーズの果汁飲料などが主力製品。製品は国内の販売ランキングで上位に名を連ねている。果汁飲料の強化に向けて、大手の煙台北方安徳利果汁(02218)に資本参加している。
華潤創業00291104,81314.63,27530.960,905
ハンセン中央政府系のコングロマリット「華潤集団」の中核企業。小売り、飲料、食品などの事業を展開する。飲料事業では国内最大のシェアを占める「雪花」ブランドのビールを製造販売。清涼飲料ではキリンホールディングスと合弁会社を設立している。食品事業では食肉の「五豊行」ブランドが香港で有名。
康師傅0032258,12417.12,8708.5112,717
ハンセン台湾系の大手食品会社で、日本のサンヨー食品も大株主となっている。天津市を本拠に、即席めん、飲料、焼き菓子などの製造・販売事業を全国で展開。製品は「康師傅」の商標で知られ、多くの分野でトップクラスのシェアを占める。飲料事業の更なる拡大を目指し、12年に米ペプシコ中国部門の巨額買収に踏み切った。その買収効果が注目される。
中国食品0050625,63810.2317▲40.89,818
レッドチップ各製品で高いシェアを誇る総合食品メーカー。国務院直轄の大型食品コングロマリット「中糧集団」の傘下にある。主力製品は「福臨門」ブランドの食用油、「長城」ブランドの赤ワインなど。合弁会社を通じてコカ・コーラの中国での生産・販売事業も展開している。
中国糧油控股0060675,82210.91,019▲48.218,952
レッドチップ農産物加工のリーディング企業。食用種子油、種粕、ビール用麦芽、米・小麦、小麦粉、燃料エタノールなどの製造・販売・貿易などを展開し、食品・流通業者を主要顧客とする。中国食品と同じく中糧集団に属しており、グループ内のリソースを活用できる点が強み。取扱製品の多くで国内有数の規模を誇る。
雨潤食品0106822,237▲17.1▲502赤転9,150
香港その他南京市に本拠を置く民営の大手食肉メーカー。主力製品は豚肉で、豚の仕入、屠畜・解体、各種加工までを一貫して手がけており、インフレに比較的強い。食肉は市場規模が大きい一方、企業化されていない。成長余地は大きいが、一方で度重なる製品の品質問題に揺れている。
蒙牛乳業0231936,080▲3.51,257▲20.949,174
香港その他「中糧集団」の傘下にある乳業大手。内モンゴル自治区に本拠を置く同社は「蒙牛」ブランドで知られ、人気番組とタイアップした積極的な広告宣伝を通じてブランド力を高めてきた。今年5月に仏ダノン社が資本参加する計画を発表。実現すれば中国と世界で著名な二つの食品コングロマリットと資本提携を結ぶことになり、競争力の強化に繋がる。
安徽古井貢酒2005964,19726.972628.114,886
深センB株中国八大名酒の一つ、約1800年の歴史を有するという「古井貢酒」(白酒)を生産販売する企業。白酒は贈答用としての需要も多く、高級白酒が引き続き売り上げを伸ばして12.12期も2桁の増収増益を確保した。
張裕葡萄酒2008695,644▲6.41,701▲10.834,990
深センB株山東省煙台市を本拠とする老舗ワインメーカー。フランスのワイン大手「カステル社」と合弁事業を展開。販売量ベースで12年も国内トップの座を維持した。主力の「張裕」ブランドは国内で有名。食の西洋化にともないワインの消費量は拡大しているものの、ここ数年は急成長を続ける輸入ワインとの競争に晒されている。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年6月6日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

食料品(業種別一覧)

注目されるトピックス ~食の安全性をめぐる問題が深刻化、消費者の信頼を如何に獲得できるか~

市場構造、趣向の変化に注目:

中国の食料品業界を見ると、食肉を典型例に個人事業者を主役とした分散型の市場が特徴となってきた。ただ、全体的な流れは日本のような企業や協同組合を中核とした集中的な構造に向かっている。上場企業にとって、市場拡大の余地は依然として大きい。規模に加え、消費者の食料品に対する嗜好も多様化している。特に健康・安全志向、洋風化は都市部などで顕著にみられ、健康飲料、ワインなどの需要を押し上げている。

買収・提携案件が続くなか、如何にシナジー効果を生み出せるか:

華潤創業傘下の雪花ビールによる金威ビール(00124)の買収、仏ダノンの蒙牛乳業への出資など、スケールメリットの追求に向けて、大型の買収・提携案件が相次いでいる。国内外の大手・中小を巻き込んだ「合従連衡」の動きは今後、ますます拡大していこう。一方で単なる規模拡大だけでは効率性低下や品質問題のリスクも。如何に買収・提携によるシナジー効果を生み出せるかが重要となってくる。

根絶できない食の安全問題、海外ブランド・輸入品の攻勢が続く可能性も:

食の安全をめぐる問題は依然としてなくならず、消費者の不信感は益々高まっている。富裕層の購入スタンスは大手、その中でも海外ブランド、可能であれば輸入品という流れが強まっている。その典型例がワイン市場で、国産品は輸入物に押され気味の状況。地場系ブランドは正念場に立っており、製品の品質管理はこれまで以上に重要となってくる。(中国部 畦田)

食料品(業種別一覧)

食品のCPI(前年同月比)推移

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食品企業の売上高・営業利益とCPIの推移

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主要食品の市場シェア(12年)

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