中国株 業界レポート

繊維・アパレル・宝飾品業界

~曲がり角を迎えつつある繊維大国~
2013年6月6日

市場動向 ~圧倒的な繊維・アパレル大国、輸出の伸び悩み、人件費の増加に悩まされる~

12年の業界規模:

輸出額:2626億米ドル(前年比3.3%増)、売上高:5兆6852億元(同8.6%増)、税引き前利益:3015億元(同2.0%増)

中国の繊維・アパレル業界は世界で圧倒的な規模を誇り、化学繊維の生産量は約7割を占める。12年は世界的な景気減速に加え、人件費の上昇で価格競争力にもやや陰りが生じ、輸出額の伸び率は1桁台に減速した。一方、主力の国内市場では消費レベルの上昇にともない高級品の需要が増加。奢侈品全体の市場規模は126億米ドルに上り、世界全体の約3割を占めるまでに成長した。もっとも同分野の国内勢は海外の有名ブランドに押され気味。コアマーケットの中低価格帯では需要の伸び悩み、在庫・製造コストの増加圧力に悩まされ、国内の繊維・アパレル企業は小幅な増収増益にとどまった。13年に入っても現時点で国内市場の回復は鈍く、各メーカーの在庫整理も完了していない。一方で外需は持ち直してきており、4月末までの輸出額は前年同期を16.5%上回った。

業界の特徴 ~沿海部を中心とした典型的な労働集約・輸出型の重要産業~

生産・販売面:

繊維・アパレル業界は繊維から糸、生地などを生産する川上の紡績・紡織から、衣類を製作する川中のアパレル、さらに川下の小売、関連産業である紡績機械など多岐に渡り、数多くの企業がひしめくため、収益性は概ね低い。業界全体の就業人数は約1000万人に上り、紡織・アパレルでその大半を占める。生産地は沿海部に集中しており、特に浙江、江蘇の2省は国内化学繊維の約8割を生産する。売れ筋製品の変化が速く、臨機応変に対応できなければ在庫を抱えやすい。香港のアパレル産業は歴史が古く、アジア有数の貿易拠点としての地位を有する。

国際面:

典型的な加工貿易・輸出型産業。地場系、外資など多くの企業が沿海各省を拠点に世界各国へ輸出している。中国製は価格競争力、スケールメリットなどで優位に立つ一方、貿易問題に発展しやすい。また、人件費の高騰、人民元高は徐々に輸出競争力を弱めており、生産拠点の一部をベトナム、バングラディシュなどに移す動きも見られる。

政策面:

同業界は雇用吸収力が大きいことから、政府は経済全体への影響を考慮して重要産業と位置づけている。昨年1月には『紡績産業の第12次五カ年計画』を発表。業界全体の高度化を模索し、15年までに輸出額を年間3000億米ドルまで伸ばす目標だ。また、税還付率をツールに輸出環境のコントロールに努めるほか、過剰気味の生産能力の淘汰・整備、業界再編、製品の高付加価値、地場系ブランドの発展などを支援している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手も含めて苦しい経営、スポーツアパレルは特に同質化競争が深刻~

昨年の国内外の景気低迷、製造コストの増加圧力に晒され、大手も含めて繊維・アパレル企業の多くが苦しい経営を強いされた。川上の紡績・紡織を見ると天然繊維では民営の魏橋紡織(02698)、化学繊維では政府系の中国石化儀征化繊(01033)が有名。魏橋紡織は製品構成の改善効果から12.12期の業績が回復したものの、中国石化儀征化繊は輸出低迷の影響を受けて赤字に転落するなど、明暗が分かれた。川中のアパレル製造は大手になると、川下の販売店まで展開しており、こちらも民営企業が目立つ。思捷環球控股(00330)は主力とする欧州市場の需要不足や、中国事業の苦戦から業績が一層悪化。スポーツアパレルの分野は“同質化”競争がさらに激化。業界のパイオニアである李寧(02331)や中国動向(03818)などの大手も含めて、各社が在庫や不採算店舗の整理に追われた。ダウンジャケットの波司登(03998)、婦人靴の百麗国際(01880)という両民営企業も十分なスケールメリットを発揮できず、業績が伸び悩んだ。

一方、香港系企業は大手になると、中華圏も含めて広く世界各地で事業を展開。ファストファッション大手の佐丹奴国際(00709)は新興国市場に支えられて増益を確保。宝飾品最大手の周大福珠宝(01929)も積極的な新規出店から利益を増やした。もっとも高級品の需要も伸び悩みが見られ、同業の周生生(00116)は減益に後退。また、アパレル商社として有名な利豊(00494)は海外の景気減速から利益を減らした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
周生生0011615,1616.4817▲10.312,198
香港その他香港地場系の大手宝飾品業者。香港のほか、マカオ、本土や台湾にも進出しており、「周生生」のブランド名で市場に広く認知されている。香港・マカオでの観光客増加や、本土の奢侈品市場の拡大が中核のジュエリー部門の追い風となる可能性が高い。本土での積極的な出店を計画しており、本土事業の早期の黒字化が求められる。
思捷環球控股0033025,045▲10.77241005.122,610
ハンセン「ESPRIT」ブランドを展開する大手アパレルメーカー。女性物、男性物など幅広くカバーする国際的なブランドに成長している。製造から販売までを一貫して手がけている点が特徴。欧州の売上比率が高いことから、欧州債務問題、ユーロ相場の影響を強く受けており、13年6月本決算で大幅赤字に転落する見通し。昨年秋から「ZARA」の元幹部をCEOとして招聘し、改革に取り組んでいる。
利豊00494127,4181.03,887▲9.492,299
ハンセン香港を代表する大手商社。衣料産業の歴史が古い香港にあって、アジア有数のアパレル貿易商社として抜群の知名度を誇る。高品質とコスト競争力を有したサプライチェーンを掌握し、設計・開発から、原材料の仕入、委託生産、品質管理、出荷までを一貫して展開できる点が強み。欧米景気の影響を受けやすい。
佐丹奴国際007094,7101.168513.511,471
香港その他香港で創業後、30年余りでアジア屈指のファストファッション・チェーンまで成長した。20~35歳向けを中心とした主力ブランド「Giordano」を中華圏で広く展開。中国も含めたアジアの消費拡大が追い風に働く可能性が高い。香港の有力財閥、新世界発展(00017)を率いてきた鄭裕トウ・前主席が実質支配している。
百麗国際0188032,85913.54,3522.397,668
ハンセン婦人靴で国内最大級のシェアを誇る民営企業。婦人用革靴では国内トップのシェアを誇り、同社ブランドが販売ランキングの上位を独占。紳士用革靴でも上位に入る。スポーツ衣料も手がけており、ナイキ、アディダス製品の代理販売では国内最大手。製品設計から最終販売までの一貫体制を築いている。
周大福珠宝0192946,97061.45,26479.290,200
香港その他香港・マカオに本拠を置く老舗の宝飾品業者。「周大福」ブランドは中華圏で高い知名度を誇り、旺盛な高級品需要を取り込むかたちでアジア最大級の宝飾品業者に成長してきた。創業者の鄭裕トウ・名誉主席は香港屈指の富豪として知られる。香港地場系としては同業に比べて本土事業の売上比率が高い。
安踏体育用品020207,623▲14.41,359▲21.518,956
香港その他福建省の大手スポーツ用品メーカー。李寧(02331)と国内ブランドのトップを争う。主力は「ANTA」ブランドのスポーツシューズ・ウエアで、国際ブランド「FILA」の中国事業も買収している。広告宣伝活動を重視しており、中国オリンピック委員会に協賛。しかしロンドン五輪の効果も限定的だった。
李寧023316,739▲24.5▲1,979赤転6,330
香港その他国内スポーツ用品メーカーのマーケットリーダー的存在。「LI-NING」ブランドで知られ、ロサンゼルス五輪の金メダリストである李寧・主席が創業した。主力商品はシューズ、ウエアなどで、特にバスケットボール分野に注力している。国内外のブランドとの競争激化から大量の在庫や不採算の店舗を抱えるようになり、業績が悪化。一部経営陣の交代にもかかわらず苦境は続いている。
魏橋紡織0269815,2480.148296.25,781
H株山東省の大型民営企業。綿紡績、生機(=きばた。染色加工前の織物)、デニムなどの製造・販売を主力とし、綿紡績では国内最大のシェアを誇る。国内外の大手アパレル企業を含め顧客層は厚い。主要取引先である伊藤忠商事とは複数の合弁会社を展開している。
中国動向038181,772▲35.417772.97,806
香港その他民営の大手スポーツアパレル企業。自前ブランドを中心に置く競合他社と異なり、イタリアの「Kappa」ブランド製品の本土・マカオでの代理販売を独占し事業展開している。日本では「Kappa」のほか、スキー&アウトドア用品メーカーの(株)フェニックスを支配下に置いている。
波司登039988,37619.01,43712.615,534
香港その他ダウンジャケットなど羽毛服の国内最大手。研究開発、デザイン、原材料の仕入れ、販売までを一貫して手がける点が特徴。オールシーズン衣料を強化し、冬物衣料への依存度を減らすことが大きな課題となっている。また、鳥インフルエンザが原材料となる羽毛の調達環境に与える影響が懸念される。
老鳳祥90090525,55321.061116.91,424
上海B株上海市政府系の大手の宝飾品・文具メーカー。「老鳳祥」ブランドの宝飾品、「中華」ブランドの鉛筆で知られる。宝飾品部門は1848年創業の老鳳祥銀楼を前身としており、業界の老舗。取扱製品に関しては、従来の金・銀・ダイヤ製品だけでなく、翡翠など、中国の伝統的な宝飾品にも注力する。ほかの宝飾品企業と同様、金相場の影響を受けやすい。
オルドス リソーシズ90093613,508▲0.9627▲28.59,202
上海B株内モンゴル自治区オルドス市の大型民営企業。世界最大級のカシミアメーカーとして知られ、「鄂爾多斯」(オルドス)や「1436」ブランドのアパレル製品を販売。欧米、日本などにも輸出している。経営の多角化を進め、金属・石炭生産、発電事業、上下水道事業などを手がけるコングロマリットに成長している。

売上高・純利益は周大福珠宝(01929)、波司登(03998)が12年3月本決算、思捷環球控股(00330)が12年6月本決算。それ以外はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.301元。

時価総額は13年6月6日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.762HKドル。

アパレル等(業種別一覧)

注目されるトピックス ~官民挙げて業界構造の転換を成し遂げられるか~

成長を続ける奢侈品市場、先行する海外勢に国内ブランドが太刀打ちできるか:

アパレル・宝飾品の業界は国内外の景気低迷を背景に厳しい経営環境が続くも、高級品の分野は概ね中低価格帯に比べて成長スピードが速く、利益率も高め。ただし、この奢侈品市場は国際的に有名な海外ブランドが先行。香港に本拠を置き、広大な中国の富裕層に向けて積極的なマーケティングを行っている。一方の地場系ブランドは特にアパレルが苦戦。事態打開に向け、今後はM&A(合併・買収)が増える可能性もある。

価格競争からの脱却は可能か:

繊維・アパレル製品の輸出競争力を支えてきた安く大量な労働力にも、近年陰りが出てきた。内需拡大を目的に政府は最低賃金を今後も引き上げる方針であるほか、原材料価格も上昇傾向。業界は曲がり角を迎えており、各メーカーは価格競争からの脱却を迫られている。このため、官民挙げて製品のハイエンド化を重視しており、直近では炭素繊維の国産化に注目が集まっている。もっとも現時点では国産品の多くが低品質にとどまっており、道のりは険しい。

業界構造の転換を目指す五カ年計画:

政府も繊維・アパレル業界に関して改革の必要性を認識しており、昨年1月に発表した15年末までの五カ年計画で、5つの構造転換を掲げている。具体的には、①量の拡大から質の向上、②サプライチェーンにおける生産重視から研究開発と営業販売体制の拡充を優先、③東部主導から、東部、中部、西部の調和を保ったかたちでの発展、④市場開拓の重点を海外から国内に移す、⑤伝統的な産業分野の底上げと、炭素繊維など新たな成長分野の育成の両立―――を挙げている。(中国部 畦田)

アパレル等(業種別一覧)

化学繊維の世界シェア(12年)、繊維・アパレル業界の売上高比率(12年)

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繊維・アパレル業界の業績推移

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上場する主要アパレル企業の自主ブランドを一部抜粋

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中国の奢侈品市場(12年)、国際的な高級ブランド上位10位(12年)

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