中国株 業界レポート

空運関連業界

~世界有数の航空市場は引き続き厳しい状況~
2013年6月17日

市場動向 ~国内外の景気低迷、原油高の影響を受け、昨年に続いて厳しい状況~

12年の業界規模:

航空旅客輸送量:3億1936万人(前年比8.9%増)、貨物輸送量:545万トン(同2.2%減)、空港旅客利用者数:6億8000万人(同9.5%増)、空運関連業界の営業収益:5561億元(同10.5%増)、税引き前利益:296億元(同20.5%減)

中国の航空市場は世界有数の規模を誇るが、国内外の景気低迷の影響が昨年も続いた。12年の航空会社の旅客輸送量は初めて3億人の大台を超えたものの、ロードファクターは79.6%と2.2ポイント低下。景気減速の影響は貨物輸送により表れ、輸送量は2年連続の減少。航空会社全体の営業収益は3890億元と前年に比べて9.1%増加したものの、原油高や過剰気味の輸送能力が影響し、税引き前利益は約2割も減少、昨年に続いて2桁減益に沈んだ。空港会社も貨物取扱量の減少や減価償却費の負担を受け、同じく2割の減益となった。

今年に入っても冬には北京の大気汚染、春には上海での鳥インフルエンザなどの逆風が吹き、航空大手3社の営業収益も引き続き伸び悩む状況。それでも1-4月の貨物輸送量が前年同期で増加に転じるなど、明るい材料も出てきた。また、足元の人民元高や、原油相場の安定を受け、収益改善の兆しも出てきている。航空市況も徐々に回復に向かう可能性が高い。

業界の特徴 ~外部要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

業界は実際の輸送を担う航空会社、空港運営を担う空港会社、さらに設備・燃料や関連サービスを提供する関連会社の3つに大きく分けられる。いずれも国有系が中心であり、業界の寡占度は高い。旅客需要は高速鉄道と競合するほか、繁閑の差が大きく、「春運」(旧正月の交通ダイヤ)など大型連休前後にピークを迎える。天候状況、社会・治安情勢などの影響も受けやすい。航空機、燃料を海外から調達していることから外貨建て負債の比率が大きく、人民元高に傾くと有利。巨額の設備投資を必要とするため、強い財務基盤が求められる。航空会社のコストはかなりの部分を燃料が占めるため、原油相場の影響を非常に受けやすい。全体的に外部要因に左右されやすいセクターだ。中国には12年末時点で計183の空港があり、利用者数が年間1000万人を超える空港は21を数える。主要ハブ空港は北京、上海、広州の3空港。

国際面:

中国には世界の主要航空会社の大半が乗り入れている。国際線(香港・マカオ路線を含む)の旅客取扱量は12年で全体の1割弱にとどまるが、所得水準の向上、レジャーの高級化で海外旅行の増加が見込まれ、成長余地は依然として大きい。ただ、国際線は海外情勢の影響を受けやすく、実際に昨年の日中両国間の旅客数は関係悪化の影響から大きく落ち込んだ。

政策面:

一種の官業であり、政府による規制も厳しく、参入障壁は高い。航空料金は基本的に政府指導価格を基準とした一定の範囲内で定められる。料金の一部に含まれる燃油サーチャージは、徴収価格、徴収するかどうかを含め国が一元的に決定している。一方、燃料油も統制価格に属するため、収益・費用の両面で国が価格決定に大きな役割を果たしている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手3社をはじめとする航空各社は軒並み業績が悪化~

航空会社は中国国際航空(00753)、中国南方航空(01055)、中国東方航空(00670)という中央政府系の大手3社が中心。昨年の輸送総量全体に占める割合はそれぞれ28.9%、26.6%、23.6%、合計で約8割という圧倒的なシェアを占める。3社とも貨物輸送の赤字、燃料コストの負担、人民元の上昇ペース鈍化による為替収益の減少などが業績を圧迫。政府からの補助金などはあったが、12.12期も2桁の減益となった。13.1-3期も引き続き業績が厳しく、中国南方航空、中国東方航空は営業赤字を計上している。大半の航空会社が不振で、地方政府系で大手3社の系列化にある山東航空(200152)や、独立系で国内4位の海南航空(900945)なども利益を減らした。香港のフラッグキャリアである国泰航空(00293)も事情は同じで、昨年は大幅な減益となった。

このように航空会社が総崩れの様相となるなか、数少ない上場空港会社は堅調な業績を確保した。首都北京の玄関口である北京首都国際機場(00694)は今年も旅客取扱量で国内1位を記録。海南省の海南美蘭国際機場(00357)も海南省への観光客増加が追い風となり、両社とも増益となった。関連分野をみると、国有系の中国航空機材進出口公司、中国航空油料集団公司、中国民航信息網路(00696)の3社がそれぞれ航空設備、燃料油供給、空港システムを独占的に担当する体制。このなかで中国民航信息網路は引き続き増収増益を確保した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
国泰航空00293 82,5111.0760▲83.352,871
ハンセン 香港を代表する航空会社(フラッグ・キャリア)。太古A(00019)の傘下にあり、航空会社コードは「CX」で、航空連合「ワンワールド」に加盟している。これまでに幾度も国際的な賞を獲得するなど、海外からの評価が高い。中国国際航空(00753)と相互に株式を持ち合い、幅広く提携関係を構築。香港・中国のフラッグ・キャリア同士の提携による相乗効果が期待される。
海南美蘭国際機場00357 68421.12982.83,336
H株 海口美蘭国際空港を運営する地元政府系企業。12年の旅客取扱量は国内21番目の約1070万人。海南省は国内屈指のリゾート地であり、観光需要の拡大による恩恵が見込める。一方、空港の拡張計画、競合問題の解決に向けた三亜鳳凰国際空港に対する買収計画の遅れが懸念材料。
中国東方航空00670 85,2533.52,954▲35.439,651
H株 上海の浦東国際空港をハブ空港とする大手航空会社。航空会社コードは「MU」。3大航空会社の一角を担い、航空需要の大きい華東地区を地盤としている点が強み。ただ、単位あたりのコストは3社で最も多く、また国際線での日本路線の比率が高いことから日中関係悪化による影響が大きい。経営立て直しの打開策として格安航空輸送(LCC)への進出を計画している。
北京首都国際機場00694 6,8635.61,1735.322,044
H株 北京の国際空港である北京首都国際空港を運営する国有系企業。12年の旅客取扱量は8193万人を数え、2位以下を大きく引き離して国内1位、世界でも2位に入った。貨物取扱量でも国内2位。非航空事業(ターミナルビル内の免税店など)の成長性に期待。同空港のキャパ向上を目的に積極的な設備投資を続けており、近く改修工事が完了予定の第2ターミナルが大きな注目点。
中国民航信息網絡00696 4,06110.61,1338.215,626
H株 国有系の航空システム会社。3大航空会社の親会社がそれぞれ大株主となっており、結びつきが強い。主力事業は航空券の予約販売、搭乗手続きなどに関するITシステムの構築。同分野では独占的なシェアを握っており、収益の安定性が大きな強みとなっている。
中国国際航空00753 100,8382.54,637▲34.578,188
H株 中国のフラッグ・キャリア。航空会社コードは「CA」で、北京首都国際空港をハブ空港とする。大手3社のなかで国際線の比率が比較的高く、財務体質も概ね良好。香港のフラッグ・キャリアである国泰航空と資本・業務提携を結んでおり、華北地方以外でのシェア拡大に努めている。
中国南方航空01055 99,51410.12,619▲48.738,288
H株 広州市の白雲国際空港をハブ空港とする大手航空会社。華南、西南地方で高いシェアを誇る。航空会社コードは「CZ」で、航空連合「スカイチーム」に加盟している。3大航空会社のなかでも、保有航空機、航路、旅客取扱量などの指標で最大手に位置する。12年6月の資本注入を受け、財務体質の改善が見込まれる。
山東航空200152 10,99313.7590▲23.5-
深センB株 山東省済南市の済南遥墻国際空港を拠点とする地方航空会社。航空会社コードは「SC」で、中国国際航空の傘下にある。青島市では航空貨物物流センターを運営。ホテル経営も手がける。四川航空、済南国際機場、中国民航信息など複数の上場企業に出資している。
海南航空900945 28,8689.91,928▲26.733,042
上海B株 海南省の航空会社。航空会社コードは「HU」。地方航空会社でありながら、全国規模で国内・国際線を運航し、3大航空会社に次ぐ規模まで成長してきた。海南省は中国有数のリゾート地。今後もレジャー需要の拡大を背景に利用者数の増加が見込める。同省は島であるため、高速鉄道との競合もない。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.830元。

時価総額は13年6月17日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.762HKドル。山東航空は売買停止中。

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~競争激化のなか国際線を強化、原油価格の乱高下などがリスク要因~

高速鉄道や格安航空会社との競争は強まるなか、航空各社は国際線を強化:

かつてのような旅客・貨物輸送需要の大幅な伸びが期待しにくいなか、中国国内では高速鉄道網の整備が急ピッチに進んでいる。また、格安航空会社の進出もあり、国内市場の競争は日増しに強まろう。将来的には4大航空会社による寡占体制が変化する可能性も。こうしたなか、中長期的な海外渡航者数の増加を見越して、航空各社は国際線の強化に取り組んでいる。国際線の明暗が各社の業績の差に益々反映してこよう。

積極的な航空機導入は輸送能力過剰の懸念も、国産機開発にも注目:

航空各社は輸送能力の強化に取り組んでおり、昨年は海外から前年比24.2%増の523機の航空機を輸入。総額は同34.7%増の157億米ドルに上った。足元ではボーイング787型機がいつ中国で導入されるかに関心が集まっている。航空業界の設備投資はこれほど巨額に上るため、安価・高性能の国産機開発や、航空会社の強い財務基盤が求められる。しかし、政府からの支援に頼るものの課題も多く、また将来的に過剰な輸送能力に繋がる可能性もある。

原油価格、人民元相場の影響を受けやすい:

航空会社にとって最大のリスク要因は原油価格の動向だ。原油価格が急騰した08年は航空会社が軒並み巨額の赤字を計上。11年の上昇局面も同様だった。デリバティブでヘッジしているものの、相場が読みと逆方向に向かった場合は多額の評価損を計上するリスクもあり、原油相場の変動は常に注意を要する。一方で、負債の多くが外貨建てであるため、人民元高は為替評価益の増加に繋がる。原油、人民元の両相場は常に留意しておく必要がある。(中国部 畦田)

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

中国の上位10空港(旅客利用者数ベース、12年)
国内航空会社の旅客輸送推移

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国内航空会社の貨物輸送推移

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中国大手航空会社4社の旅客取扱数推移
中国大手航空会社4社の旅客ロードファクター推移
中国大手航空4社の国際線旅客取扱数推移

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