中国株 業界レポート

海運関連業界

~過剰な船舶輸送力が重しとなり厳しい環境が続く~
2013年6月18日

市場動向 ~貿易の中心を担う業界、輸出入の低迷や過剰な輸送能力から厳しい経営環境が続く~

12年の業界規模:

輸出入総額:3兆8668億米ドル(前年比6%増)、港湾貨物取扱量:108億トン(同7%増)、コンテナ取扱量:1億7747万TEU(同8%増)、船舶建造量:6021万載貨重量トン(同21%減)

「世界の工場、市場」である中国の貿易量は世界有数の規模を誇り、船舶輸送がその8割以上を占めることから、海運・港湾業界は貿易で中心的な役割を担う。12年は国内外の景気低迷の影響を受け、貿易総額の伸び率は政府目標の10%を下回る6%台に急減速した。欧州債務問題、日中関係の悪化が、欧州・日本との貿易減少に繋がった。貿易全体が減速するなか、港湾の貨物、コンテナ取扱量の伸び率も大きく鈍化。海運・港湾会社の経営も苦しい状況が続いた。特に過剰な輸送能力に苦しむ海運業界は、燃料高も加わり多くの企業が赤字を計上。これにより海運会社の船隊増強の意欲も一層低下し、造船業の建造量も大きく落ち込んだ。港湾の稼働率低下で港湾機械・コンテナの需要も低迷するなど、関連産業も含めて厳しい状況が現在も続いている。

打開策がなかなか見いだせないなか、政府の業界救済策への期待感が高まっている。ただ、仮に政策が発動されたとしても、その効果は一時的なもの。過剰な輸送能力という根本的な問題にメスを入れない限り、市況の本格的な回復は難しい。

業界の特徴 ~外需、内需両方の影響を受けるセクター~

外需面:

海運関連の業界は外需の影響を強く受けるセクター。船舶輸送の方法は大きくバルク、タンカー、コンテナ輸送に分けられるが、需要は海外の資源価格・需給、輸出先である先進国などの景気動向に大きく左右される。特に鉄鉱石、原油、石炭市況との相関性が高い。中国では貨物取扱量が年間1億トンを超える港湾が29を数え、世界ランキングの上位に名を連ねる。その中でも上海、深センという両港湾の規模は飛びぬけて大きい。また、中国の造船業は建造量、新規受注量、手持工事量のいずれに関しても約4割の世界シェアを誇るが、その多くが海外向けであり、外需型産業といえる。

内需面:

海運・港湾会社は石炭や鉄鉱石など資源の輸入、ならびに産地から消費地への国内輸送について、中心的な役割を担う。沿海部の港湾を利用した沿海輸送網、長江など複数の大河を利用した河川輸送網が発達。石炭などの取扱量は国内景気の影響を受けやすい。

投資面:

海運各社はこれまで投資を増やし、船隊規模の拡大に努めてきたが、それが過剰な輸送能力、運賃価格の下振れ圧力という業界の構造的問題に繋がった。船舶の建造は巨額の資金が必要で、設備投資のリスクは元々大きい。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国有系大手が中心、業績悪化が止まらず海運会社は多くが赤字に~

本土の海運・港湾業界は政府系企業が中心。海運は国有系大手の寡占状態で、それぞれ傘下に複数の上場企業を持つ。サブセクターごとに、遠洋輸送は中国遠洋運輸(コスコ)、沿海輸送は中国海運(チャイナシッピング)、フォワーダー・河川輸送は中国外運長航が強い。昨年も運賃低迷、燃料高が続き、業績悪化が止まらなかった。遠洋輸送最大手の中国遠洋控股(01919)は2年連続の赤字に陥り、同社A株が「*ST」特別処理銘柄(上場廃止リスクが高い)に指定されるなど、厳しい経営状況。中国海運の傘下企業でも、バルク・原油を担当する中海発展(01138)が2年連続の大幅減益となったほか、コンテナ輸送の中海コンテナ運輸(02866)も営業損益は赤字が続いた。他方、フォワーダーが主力の中国外運(00598)は影響が比較的小さく、小幅ながらも増収増益を確保。これら大手海運会社の業績は13.1-3期も改善の兆しがなかなか見られない。一方で香港地場系の東方海外(00316)は高付加価値のサービスが原動力となり、大幅増益を達成した。

港湾企業も減益が目立ったが、昨年に続いて海運ほどひどくはない。全国展開する大手は中遠太平洋(01199)、招商局国際(00144)などの国有系企業に限られ、両社とも増収を確保。多くの港湾は各地方政府が経営し、天津港(03382)、大連港(02880)、廈門国際港務(03378)などが代表的な銘柄として挙げることができる。なお、香港では長江実業(00001)などのコングロマリットが港湾を経営し、本土にも進出している。

海運・港湾企業を顧客とするのが、コンテナ製造の中国国際コンテナ(02039)、港湾機械の上海振華重工(900947)、造船の広州広船国際(00317)をはじめとした各メーカ-。多くの企業が販売価格の下落に苦しみ、業績を落とした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
招商局国際00144 9,15116.43,170▲31.759,807
ハンセン 政府系コングロマリット「招商局集団」の傘下にある大手港湾企業。香港、珠江、長江デルタ、環渤海地区などでコンテナ・バルクふ頭の運営、関連運輸などを手がける。新たな成長源を求め、珠江船務(00560)との提携を通じて河川ふ頭事業へ進出。海外での港湾建設も進めており、ベトナム、ナイジェリア、スリランカに進出している。
東方海外00316 40,7547.41,86763.232,604
香港その他 中華圏を代表する香港の海運グループ。初代行政長官を務めた董建華氏の父親が創業した。香港を拠点に世界各国に航路を張り巡らせ、各種貨物を輸送。運送にとどまらない全面的な物流ソリューションを提供している。12.12期は業界全体が苦しいなか、持ち前の収益率の高さから大幅増益に転じた。
広州広船国際00317 6,424▲22.610▲98.07,672
H株 華南地区で最大規模の政府系造船会社。国内二大造船グループの一つ「中国船舶工業集団」の支配下にある。主力事業の造船はハンディーサイズの石油タンカーやケミカルタンカーなどを建造しており、国内外で高いシェアを誇る。欧州の海運会社を中心顧客とするため、欧州債務問題の影響が懸念される。
中遠国際控股00517 8,307▲6.1301▲74,571
レッドチップ 海運最大手の中国遠洋運輸の傘下で、船舶関連の各種サービスを担当する会社。主力は船舶の建造・売買・リースの代理業務、海上保険、船舶・コンテナ用塗料など。塗料事業では関西ペイントと提携している。以前は不動産担当会社の遠洋地産(03377)を傘下に置いていた。
中国外運00598 47,4828.56491.06,713
H株 フォワーダー最大手の中国外運長航の傘下にある上場旗艦企業。主力のフォワーダーに加え、エクスプレスサービスなども手がける。華東地区を中心に、本土の主要都市で事業を展開。海運に加え、陸運、空運も手がけており、総合的な物流サービス力に強みを持つ。12.12期も黒字を確保。13.1-3期は2桁増益となった。
熔盛重工01101 7,956▲50.0▲573赤転8,680
香港その他 新興の大手造船メーカー。華東地区を地盤とし、受注残ベースで国内屈指の規模を誇る。海洋工事、動力機関、工事用機械などにも業容を広げた。しかし、昨年は創業者の張志熔氏の汚職が伝えられ、同氏は経営トップを辞任。業績も急激に悪化しており、社内外での混乱が続いている。
中海発展01138 11,054▲9.174▲93.114,951
H株 沿海輸送最大手の中国海運を親会社に持つ大型船会社。主に石炭、乾貨物などのバルク、原油・燃料油の沿海輸送に関して、国内屈指の規模・競争力を持つ。LNG輸送を将来の成長分野に位置づけており、中国石油天然気(00857)、中国石油化工(00386)というエネルギー大手2社と提携を結ぶなど、将来への布石を打っている。
中国遠洋控股01919 88,3294.4▲9,559赤縮40,898
H株 海運最大手「中国遠洋運輸」の中核を担う上場旗艦企業。コンテナ、ばら積み、原油など幅広い貨物の輸送を担う。中遠太平洋(01199)を通じて、ふ頭運営、コンテナリースなども展開。遠洋運輸の最大手として、影響力も大きい。ただ、2年連続の赤字でA株の上場廃止リスクが高まっており、業績改善が急務となっている。
中国国際コンテナ02039 54,334▲15.31,939▲47.534,450
H株 世界最大級のコンテナメーカー。B株をH株に転換して香港に上場した最初の企業。買収を通じて事業の多角化を推進。傘下の中集安瑞科(03899)は天然ガス・化学製品などの輸送・備蓄設備、買収したオスロ上場企業はリグ(海洋掘削装置)を担当している。同社は政府主導の深セン市前海特区の開発プロジェクトに参加しており、新たな成長源になり得るか注目される。
中海コンテナ運輸02866 32,55115.2525黒転28,789
H株 中国海運の傘下で、コンテナ海上輸送の国内大手。中海発展(01138)とは兄弟会社の関係にある。国際・国内航路に定期便・チャーター便を就航。主な国際航路は太平洋航路、欧州・地中海航路、アジア太平洋航路。海外経済の影響を受けやすい。12.12期は資産売却により最終黒字を確保したものの、営業損益は赤字。13.1-3期は最終赤字に転落した。
大連港02880 4,64517.4600▲9.912,547
H株 大連港を運営する地元政府系企業。大連は東北振興の中心となる都市であり、数少ない国際港として戦略的に重要。通常のコンテナターミナルに加え、自動車ターミナル、石油備蓄基地などの機能も備えていることが特徴。日中韓のFTAを見越して、大連の地理的優位性が注目されよう。
廈門国際港務03378 3,64218.62850.22,617
H株 福建省アモイ市の港湾を運営する地元政府系の企業。アモイ港にある複数のコンテナ・バルクふ頭を経営する。主な業務はコンテナ・バルクの積卸・保管、港湾関連サービスなど。アモイ港は経済関係の緊密化に伴い増加が見込まれる台湾貿易の窓口。同港湾の優位性を固めるため、NWSホールディングス(00659)などと合弁事業を展開する計画で、その動向が注目される。
天津港03382 14,8918.4586▲1.06,466
レッドチップ 天津港で最大規模のコンテナふ頭を運営する地元政府系の企業。天津発展(00882)などが大株主となっている。コンテナバースに加え、非コンテナふ頭も経営しており、食糧、鋼材、鉄鉱石などの積卸業務にも従事。天津港は中央政府が提唱する3大海運センターの一角に位置づけられており、政策的な恩恵が見込める。
上海振華重工900947 18,255▲4.6▲1,044赤転15,934
上海B株 世界シェアトップの港湾荷役機械メーカー。コンテナクレーン、バルク用機械設備を製造している。国務院直属の交通インフラ大手「中国交通建設(01800)」に属し、親会社とともに海外から大型契約を受注してきた。一方で、海外景気の影響を受けやすい港湾設備への依存度を下げるため、近年は海上大型設備を重視。同事業の今後が注目される。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.830元。換算レートは1米ドル=6.310元。

時価総額は13年6月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.762HKドル

海運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧) その他輸送機械等(業種別一覧)

注目されるトピックス ~過剰な輸送能力という構造的問題は当面続く~

河川輸送の中長期的な成長に期待:

業界全体で暗い話題が多いなか、内陸部の河川輸送は中長期的な成長が見込める分野。中国政府は昨年後半に船舶輸送に関する政策方針を示し、積極的に河川輸送網の拡充を進めていく考えだ。また、既存の重点港湾の能力拡張も重視。河川輸送に強みを持つ水運会社や、主要河川に位置する港湾企業などが、競争上で優位に立つ可能性が高い。

過剰な輸送能力という構造的問題は続く:

過剰な船舶の輸送能力が、業界が抱える最大の問題。今年も世界の輸送能力は1割近くも増強する一方、例えばコンテナ輸送需要の伸び率は1桁台にとどまる見込みで、状況改善の道筋は立っていない。また、中国の海運会社は数が多く、また大量に保有する船舶も多数が小型であるため、大口の輸送契約は海外勢に持って行かれやすい。船舶、造船業は特に厳しい状況が続く可能性が高く、生き残りをかけた業界再編と船舶の大型化が進むだろう。

貿易摩擦など先進国向けの貿易は不確定要因が多い:

中国の貿易環境は昨年に比べると改善が見込め、特に東南アジアなど新興国向けの貿易量は堅調な増加が期待できる。ただ、欧州、米国などとの貿易摩擦、日中関係の悪化、輸出競争力の低下など、先進国向けに関して不確定要因も多い。また、原油相場の上昇圧力、海運運賃の指標であるバルチック海運指数(BDI)の低迷が今後も続く可能性がある。(中国部 畦田)

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中国の輸出額推移(地域別)

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中国の輸入額推移(地域別)

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バルチック海運指数と原油相場の推移
貿易額上位10税関(12年実績、空運、陸運を含む)
中国の貿易取扱額上位10税関
中国の貿易取扱額上位10税関

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