中国株 業界レポート

陸運関連業界

~輸送の中心を担う業界、コスト高・非効率性に課題~
2013年6月18日

市場動向 ~景気低迷から輸送需要は2年連続で減速、一方で物流のコスト高は変わらず~

12年の業界規模:

物流総額:177兆元(前年比9.8%増)、物流総費用:9兆4000億元(同11.4%増)、貨物輸送量:407億トン(同12.2%増)、高速道路営業距離:9.6万キロ(同13.3%増)

広大な国土と世界最大の人口を持つ中国は、陸上輸送の需要が大きい。12年の物流総額は前年比9.8%増の177兆元、物流業界の付加価値総額は同9.1%増の3兆5000億元に上った。インターネット販売の普及から近距離・高速の配達需要が伸びた。もっとも物流総額全体では景気低迷の影響から2年連続で伸び率が鈍化。物流総費用の伸び率も18.5%→11.4%と大きく減速した。しかし、物流総費用の対GDP比は前年比0.2ポイント増の18%とむしろ悪化し、引き続き先進国の8~10%を大きく上回る水準。燃料代、高速道路料金をはじめとした物流コストの高さや、輸送網の非効率性が目立つ。

輸送の中心は陸運であり、道路は貨物・旅客ともに第一の手段。鉄道輸送も鉱物資源の輸送手段として重要だ。昨年から道路・鉄道の建設が加速するなど、輸送インフラは着実に整備されている。しかし、価格競争が激しく、運送会社の収益環境は引き続き厳しい。高速道路の期限付き無料化や値下げなどの影響から、道路会社も業績がやや後退した。政府は公共事業を通じて今後も交通インフラの整備を推進。また、減税措置を含む運送会社への政策的支援を拡充する構えだ。一方でインフラ運営者にとっては料金値下げの圧力が働こう。

業界の特徴 ~輸送会社は市場原理下で厳しい競争、道路・鉄道運営は官が独占~

事業環境面:

運送会社は官民含めて数多く存在し、競争も激しい。一方、道路・鉄道のインフラ経営はほぼ官が独占し、収益の安定性は比較的高い。旅客輸送は旧正月の交通ダイヤ「春運」中に例年のピークを迎える。貨物需要は国内の景気動向に左右されやすい。道路・鉄道業者とも巨額の設備投資、投資回収の長期化が避けられず、財務体質、資金調達力が重要。 道路は運営・管理の多くを政府系企業が担当しており、政府から付与される徴収権を基に通行料収入を得る事業形態。鉄道運営は国策企業の国家鉄路公司が担当している。

事業地域面:

道路網は「五縦七横」(南北に5本、東西に7本の幹線)、鉄道網は「四縦四横」(南北に4本、東西に4本の幹線)を中心に全国をカバーしており、これを中心に道路の高速道路・複線化、鉄道の高速化が進められる見込み。

政策面:

運送業界は市場原理に委ねられている一方、道路・鉄道インフラの運営は規制が厳しく、料金設定は当局の管轄事項。また、景気対策の面からも当局はインフラ整備に積極的だ。長く非効率な鉄道行政・運営が問題視されてきたが、今年3月に鉄道部の解体を含む大規模な改革を実施した。

主要企業、主な取扱銘柄 ~上場企業の多くが政府系、道路会社は料金引き下げが打撃に~

上場する運送会社が限られており、その大半が大型の政府系企業。輸送需要が伸び悩むなか、大手はその優位性を活かし、昨年は増収を確保した。リーディングカンパニーは貨物フォワーダーを主力とする国有系の中国外運(00598)。同年はエクスプレスサービス事業の拡大や、共同支配会社からの利益計上を受け、増収増益に踏みとどまった。一方、広東省政府系の広東南粤物流(03399)は主力の物流、サービスエリア運営が不振で大幅減益。上海市の大衆交通集団(900903)と上海錦江国際実業投資(900914)はタクシー事業を中核とする総合輸送会社。いずれも競争激化、燃料高から減益となった。

インフラ運営企業をみると道路は地域独占型であり、上場企業の多くが地元政府との関係が深く、安定した通行料収入を得ている。12年も各社はほぼ増収を確保した。もっとも料金体制には批判の声も多く、当局も基本的には料金引き下げの方針。また、期限を区切って実施された高速道路無料化の影響も加わり、多くの道路会社が減益となった。事業エリアの経済状況は企業業績を左右。深セン高速道路(00548)、越秀交通(01052)、広東高速道路(200429)の3社は国内最大の製造業の集積地である珠江デルタをカバーしている分、製造業不振の影響を受けた。長江デルタ地域では江蘇高速道路(00177)と浙江高速道路(00576)の事業規模が大きい。いずれも最大の収益源である通行料収入が伸び悩み、業績が悪化した。一昨年まで好業績だった内陸部の道路会社も勢いが落ちており、安徽高速道路(00995)、四川高速道路(00107)の両社は減益に後退した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港鉄路00066 29,6746.911,235▲13169,279
ハンセン 香港政府傘下の独占的な鉄道運営会社。傘下の鉄道・地下鉄網は香港全土を広くカバーし、安定した収益基盤などが強み。加えて鉄道事業者の利点を生かして沿線での不動産・商業開発から利益を上げている。また、世界各地の地下鉄事業で豊富な実績を持つ。近年は中国事業を特に強化しており、今年春には北京地下鉄14号線が開通した。
四川高速道路00107 7,18415.21,181▲9.410,064
H株 四川省政府系の有料道路会社。成都市と重慶市の2大都市を結ぶ成渝高速公路を中心に、複数の高速道路を経営。ほかの道路会社と異なり、建設工事部門の売上比率が高い点が特徴。「西部大開発」で注目される同省は高い経済成長率を達成しており、これが交通量の増加、業績拡大に繋がってきた。反面、国内有数の地震地帯にあるという点がリスク要因。
江蘇高速道路00177 7,7965.32,333▲436,997
H株 江蘇省を本拠地とする国内最大手の有料道路会社。主力道路は上海南京高速道路の江蘇省区間(248.2km)など。江蘇省で運営・管理する道路の総延長は700キロを突破している。同省の高い自動車普及率、黒字化した沿線の不動産開発事業がポジティブ材料。一方で高速無料化の対象である小型車の交通量が比較的多く、無料化措置の影響が懸念される。
広深鉄路00525 15,0922.71,319▲26.923,585
H株 唯一海外上場している国有系の鉄道会社。深セン市-広州市-楽昌市の鉄道(全長481.2キロメートル)を経営する。同鉄道は広東省を縦断し、他地域へ向かう主要鉄道などに接続。香港鉄路(00066)と共同で本土と香港を結ぶ広九鉄道の旅客輸送を行う。また、同地域の貨物輸送でも重要な役割を担っている。
深セン高速道路00548 3,1356.2685▲21.88,001
H株 深セン市を中心に有料道路を運営する地元政府系企業。深セン国際(00152)の傘下にある。主要道路は東莞市と香港を結び、深セン市を横断する梅観高速公路。深センと内陸部を繋ぐ物流網の重要性が強まるなか、同道路の役割は大きい。一方で通行料金の引き下げ、大型連休中の高速無料化措置の影響が着実に出ている。
浙江高速道路00576 6,700▲1.21,686▲6.627,579
H株 浙江省の高速道路会社。上海市という国内最大の経済都市と省都の杭州市を結ぶ「滬杭高速公路」、杭州市と貿易港で有名な寧波市を結ぶ「杭甬高速公路」が主力道路。経済が発展する杭州湾の周辺を囲むかたちで道路網を巡らせていることが特徴。証券業も展開しているが、本業とのシナジー効果は難しい。
中国外運00598 47,4828.56491.06,713
H株 国有系の物流サービス大手。地場系では珍しい総合物流業者で、主力の貨物フォワーダーは陸・海・空運すべてを網羅する。倉庫・ふ頭の運営なども展開。外資と合弁で展開するエクスプレスサービスは一層の成長が見込める。経済発展で先行する華東地区を拠点としている点も強みだ。物流サービス“高度化”の担い手として期待される。
越秀交通基建01052 1,48512.3427▲23.56,224
レッドチップ 広州市政府系の有料道路会社。広州市の環状高速道路の一部、広東省と湖南省を結ぶ清連高速公路、広西チワン族自治区を結ぶ蒼郁高速公路などを運営している。広東省以外での道路権益を拡充し、港湾事業に進出することで営業収益が増加。一方でコストは嵩み、12.12期は大幅減益に後退した。
広東南粤物流03399 5,488▲4.560▲42.2727
H株 高速道路関連の事業を中核とする広東省の総合運輸事業者。省内の道路・サービスエリア、旅客・貨物輸送ターミナルなどを運営している。輸送事業の強化に向けて、昨年親会社との資産交換を実施。不採算事業を手放す一方、広東省のバス会社を完全買収した。香港・広東間の輸送業務を強みとしている。
広東高速道路200429 1,1062.6176▲18.94,357
深センB株 広東省で高速道路・有料橋の開発・運営事業を展開する地元政府系企業。広東南粤物流(03399)と兄弟会社の関係にある。主力は広州~仏山~開平を結ぶ高速道路で、広東省の一大工業地帯を通っている。減価償却費、財務費用が増える一方、通行料収入は価格改定、高速無料化の影響から振るわず、12.12期、13.1-3期と減益が続いている。
大衆交通集団900903 2,9897.5389▲7.910,822
上海B株 上海市のタクシー最大手。労働組合支配の企業が、上海A株企業を通じて支配している。物流事業にも進出しており、佐川急便と宅配事業の合弁会社を設立。過去には上海万博の物流に携わったほか、上海の空港貨物の輸出入を担当するなど、地元で一定の存在感を示している。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.830元。

時価総額は13年6月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.762HKドル

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~物流サービスの質的向上に繋がるか、官民挙げた取り組みに注目~

アリババグループの「菜鳥」プロジェクトが始動:

物流コストの高さを含め、中国の物流業界はインフラ・ソフト両面で多くの課題を抱えている。一方でインターネット販売の拡大などを背景に物流需要の成長余地はまだまだ大きい。各企業にとってサービスの質的向上がカギとなろう。低温物流、エクスプレスサービス、「物聯網」(モノのインターネット、IoT)などが注目分野に挙げられる。新規参入も相次いでおり、特にネット販売大手のアリババグループが主導する高速物流網の構築プロジェクト「菜鳥」が業界の大きな話題に。復星国際(00656)を含む複数の企業集団が参加の意思を表明しており、業界地図を大きく塗り替える可能性もある。

物流業の発展とコスト抑制の両立を目指す政策:

政府はサービス産業の中核として運送業を重視しており、税制面から支援を強化。営業税を増値税(付加価値税)に一本化する改革の対象都市を今年8月から全国に拡大する方針だ。これは運輸・物流業者の税負担軽減に繋がる。一方で物流コストの抑制も目指す考え。特に高速道路は「料金所、罰金、通行料」に関してコスト高の“元凶”になっていると批判が多く、政府は引き続き料金引き下げ、大型連休中の一部無料化を進めていこう。道路会社にとっては逆風が続く。

鉄道改革が期待通りの効果を挙げられるか:

鉄道部という巨大官庁が、鉄道の政策立案、監督管理、運営という3つの役割を独占していた弊害は無視できないレベルに達していた。そのため、中央政府は今年の全国人民代表大会で鉄道部の解体を決定。政策立案・監督管理と鉄道運営を切り離し、新たに設立した国家鉄路公司が鉄道運営を担う体制に改めた。改革が鉄道の安全・効率化、秩序ある鉄道インフラ整備に直接結びつくか、市場の関心が集まっている。(中国部 畦田)

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

国内旅客輸送量の推移(輸送手段別)

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国内貨物輸送量の推移(輸送手段別)

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中国の物流総費用の推移

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中国の鉄道行政改革

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高速道路網計画(11~15年)
高速鉄道網計画(11~15年)

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