中国株 業界レポート

鉄鋼業界

~世界の鉄鋼大国、構造問題を解決できるか~
2013年6月27日

市場動向 ~世界最大の鉄鋼大国、過剰な生産能力で収益悪化が止まらず~

12年の業界規模:

粗鋼生産量:7億1654万トン(前年比3.1%増)、鉄鉱石輸入量:7億4360万トン(同8.4%増)、売上高:3兆5441億元(同4.3%減)、税引き前利益:15.8億元(同98.2%減)。

中国は世界最大の鉄鋼大国。昨年の国内粗鋼生産量は初めて7億トンを超え、消費量とともに世界全体の5割弱を占めた。しかし、国内の生産能力は需要を大きく上回るため、一方で輸出志向も強く、同年の鋼材輸出高は前年比14%増の5573万トンに上った。中国は世界上位の鉄鉱石資源量を有するが、需要は世界全体の約半分を占めるため、鉄鉱石の輸入量は年々増加している。昨年の鉄鋼企業の業績をみると、国内外の景気減速を背景に売上高が減少。さらに過剰な生産能力、在庫増加、厳しい競争から収益率が一層悪化し、利益は2年連続で急減した。

今年も景気減速や不動産引き締めが続いており、主力の建設・土木向け需要が伸び悩む可能性は高い。厳しい状況が続き、業界では生き残りをかけた合従連衡が益々活発になるだろう。

業界の特徴 ~多くの企業が競争を繰り広げる業界、構造的な課題が深刻化~

生産・販売面:

中小を含め多くメーカーが競争する鉄鋼業界は産業集約度が小さい。大手10社といえでも、合計の粗鋼生産量は約46%を占めるに過ぎず、比率も前年に比べやや低下。業界再編は道半ばの状況だ。主な生産地は河北、江蘇、山東、遼寧など。生産設備の「過剰、小規模、老朽化」という構造的な問題を抱え、12年末時点の生産能力は約9.7億トン。同年の生産量が約7.2億トンであることを考えると設備の過剰さは深刻で、これが価格競争、環境汚染の一因になっている。中国は遼寧省を中心に鉄鉱石資源に恵まれるが、低品質な鉱石が多く、コスト高に繋がることから、資源メジャーを通じて海外の高品質の鉱石を輸入。経済発展にともない輸入鉄鉱石の需要は高まっている。鉄鉱石の価格交渉は電力、石炭などの価格動向とあわせ、製造原価に直結する。販売面では用途の約6割を建設用が占め、これに機械、自動車、家電などが続く。このため、固定資産投資、自動車販売などの動向から大きな影響を受ける。

国際面:

中国による鉄鉱石輸入、鋼材輸出の規模は巨大で、国際市場に与える影響度も大きい。鉄鉱石の輸入依存度は約6割で、さらに輸入先の約8割を豪州、ブラジル、インド、南アフリカの4カ国が占める。輸出では特にアジア向けに強みを持つ。一方、世界の主要鉄鋼メーカーは高付加価値品を中心に中国に輸出している。

政策面:

政府は構造的な問題の解決、国際的な鉄鋼メーカーの育成などをめざし、マクロコントロールを強化。新規プロジェクトの着工・推進、資金調達などを厳しく審査。さらに当局主導で業界再編を推し進めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手の政府系企業も含め、各社が軒並み苦戦~

大手は政府系企業が中心で、生産量は世界でも屈指の規模。年産1000万トン級の企業は17社を数える。しかし、17社合計のシェアは6割に届かず、全体の約半分は無数の民営企業が生産したもの。昨年の国内首位は7000万トン近い生産量を誇る河北鋼鉄で、世界でも2位。これを鞍山鋼鉄、宝山鋼鉄、武漢鋼鉄、首鋼総公司などが追う。これら大手は年産3000万トンを超え、業界のリーダー的存在だ。しかし、そうした大手といえでも昨年は多くの企業が減産に迫られ、景気低迷で固定資産投資が鈍化した影響が鮮明に表れた。さらに販売価格の低迷と製造コスト高で収益環境が一層悪化。香港上場企業をみると、昨年は鞍鋼(00347)、馬鞍山鋼鉄(00323)の両大手がそろって巨額の最終損失を計上。首鋼総公司の傘下にある首長宝佳(00103)、首長国際(00697)も赤字に転落した。重慶鋼鉄(01053)は黒字に転換したが、それも資産売却益や補助金受領によるもの。中信泰富(00267)は特殊鋼の生産と海外での鉄鉱石開発の両方を展開するコングロマリット。しかし、同社も鋼材価格の下落と鉄鉱石プロジェクトの遅延から、減益となった。

また、民間セクターは政府系企業よりもさらに厳しい状況。復星国際(00656)の鉄鋼部門や中国東方集団(00581)といった民営大手も利益を大きく減らした。国有・民間セクター問わず、厳しい業績は足元でも続いており、業績底入れの兆しはなかなか見えない。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
首長宝佳001031,401▲4.9▲249赤転510
レッドチップラジアルタイヤ用スチールコードの大手メーカー。北京市を本拠とする国有大手「首鋼総公司」が首長国際(00697)を通じて支配している。銅線で世界大手のベカルト社(ベルギー)と資本・業務提携を結んでいる。顧客であるタイヤメーカーの業績に左右されやすく、在庫・売掛金の引当処理が膨らんでいる。
中信泰富0026777,443▲3.75,773▲24.730,181
ハンセン中央政府系のコングロマリットで、鋼材生産、鉄鉱石採掘、流通などの事業を展開する。鋼材部門は自動車向けの特殊鋼を専門とし、比較的ハイエンドな分野に強いものの、12.12期は価格競争に巻き込まれた。オーストラリアで進めている鉄鉱石プロジェクトにトラブルが相次いでいることも気がかり。
馬鞍山鋼鉄0032374,404▲14.3▲3,863赤転15,153
H株安徽省を本拠とする国有系の大手鉄鋼メーカー。主力製品は銑鉄、粗鋼、鋼材などで、鋼板コイル製品やH型鋼ではJIS(日本工業規格)を獲得するなど、高付加価値化に努めている。鉄鉱石の大部分を輸入しており、国際相場の影響を受けやすい。製品は主に国内で販売しており、高速鉄道用の車輪生産はトップクラスのシェアを誇る。
鞍鋼0034777,748▲14.0▲4,157赤拡24,945
H株国内2位の国有鉄鋼グループ「鞍鋼集団」の中核企業。香港上場の鉄鋼メーカーで最大級の事業規模を誇る。主要製品は熱延鋼板、冷延鋼板、めっき鋼板など幅広い。近年は自動車、家電向けを中心に製品の高付加価値化を進め、一部では外資のシェアを奪いつつある。このほか、親会社との資産交換、コスト削減など、一連の黒字化策を推進。その効果が注目される。
中国東方集団0058136,122▲6.4126▲89.83,957
香港その他民営の鋼材メーカー。主力製品のビレット、帯鋼では大手の一角を占める。鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルの系列下にあり、製品開発を含む多方面の支援が期待できる。一方、昨年はリスク管理の不備から子会社が巨額の損失を計上するなど、課題も多い。
復星国際0065651,765▲8.93,7078.935,704
香港その他上海市に本拠を置く民営の大型コングロマリット。鉄鋼関連の事業は南京鋼鉄(600282)の鋼材生産、海南鉱業の鉄鉱石採掘が柱。中鋼板の生産、その中でも石油タンク用向けに強みをもつ。海南鉱業を上海A株市場にスピンオフ上場させる計画を進めており、その動向が注目される。
首長国際0069713,464▲23.7▲1,616赤転3,135
レッドチップ国有大手「首鋼総公司」を親会社とする鉄鋼メーカー。鋼材製品はスラブ、厚板が中心。首長宝佳(00103)を通じてラジアルタイヤ用スチールコードなども製造している。コークス生産の首鋼資源(00639)、鉱山経営のオーストラリア上場企業などに出資。原材料の安定調達を強力に推し進めている点が特徴だ。
安徽天大石油管材008393,961▲12.635▲45.01,229
H株安徽省を拠点とする民営のシームレス鋼管メーカー。主力製品はケーシングパイプなどの油井管、船舶用やボイラー用のシームレス鋼管など。中国の三大石油会社が主な顧客であるため、原油・天然ガス市場の影響を受けやすい。製品の輸出比率は約3割に達するが、シームレス鋼管は貿易摩擦の対象になりやすい。
重慶鋼鉄0105318,459▲21.699黒転4,479
H株重慶市政府系の鉄鋼メーカー。内陸部の経済中心として注目される同市で大きなシェアを持つ点が強み。主力の中厚板は国内有数の生産規模。昨年に親会社とともに生産拠点を重慶市の郊外に移したことから、生産調整を強いられた。親会社を割当先とする増資を行ったが、負債比率は依然として高水準。経営陣は13.6期(中間)が赤字となる見通しを示している。
中国冶金科工01618216,242▲2.6▲6,952赤転36,708
H株中央政府系の大手プラントメーカー。国内外で事業展開しており、主力とする製鉄所のEPC(設計、調達、施工)部門は世界有数の規模。このほか、鉄鉱石資源の開発、金属生産設備や鋼構造の製造などを手がけ、鋼材市況の影響を受けやすい。会社側は13.6期(中間)の黒字転換を予想しているが、難航するオーストラリアでのプラント建設、鉱山開発がリスク要因と考えられる。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年6月27日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

鉄鋼(業種別一覧)

注目されるトピックス ~構造問題の解決に向け、改革は待ったなしの状況~

政府主導の構造改革の行方:

産業集約度の低さ、過剰な生産能力は業界が抱える最重要の問題となっている。当局は5カ年計画において鉄鋼上位10社の国内生産量のシェアを15年までに60%に高める目標を掲げているが、12年末時点で50%を割り込んでおり、目標達成は厳しい状況。約2億トンに上る余剰生産能力も抱える。政府はM&Aの奨励、小規模・老朽化した生産設備の淘汰といった構造改革を強い決意で進めていこう。上位10社に入るような大手企業は、再編を通じた競争力向上が見込まれる。

都市化推進策が鋼材需要回復のきっかけになる可能性も:

需要の6割を占める建設用鋼材は住宅市場の影響を受けやすい。不動産引き締めの状況下では、当面、鋼材需要の本格回復は難しいだろう。一方で中長期的にみた場合、都市化推進策が需要回復のきっかけになる可能性も。年内には出されると見られる都市化推進策の中身が注目される。

鉄鋼価格の動向:

鉄鉱石価格は、海外資源メジャーとの鉄鋼石などの資源価格交渉に左右される。価格急騰は、鉄鋼セクターにとって最大の利益圧迫要因となる。さらに原油・石炭などの原燃料価格、海運賃価格の上昇も、鉄鋼製品のコスト増加に繋がる。現時点でこれら原燃料の価格は調整色を強めているが、常に上振れ懸念は燻っている。(中国部 畦田)

鉄鋼(業種別一覧)

粗鋼生産量の国別シェア(12年) 国内鉄鋼需要の内訳 粗鋼生産量の推移

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年産1000万トン級の企業17社の生産量一覧

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