中国株 業界レポート

ガス業界

~価格制度に課題も成長性は十分~
2013年7月5日

市場動向 ~中長期的な成長セクター、川上と川下で明暗が分かれる~

12年の業界規模:

天然ガス見掛消費量:1475億立方メートル(前年比13%増)、生産量:1067億立方メートル(同7%増)、輸入量:428億立方メートル(同36%増)

天然ガスは中国にとって石炭、石油に次ぐエネルギー源。経済成長、都市ガス網の整備などを背景に需要は一貫して増え続けている。12年の見掛消費量は景気減速から伸び率が低下。それでも1475億立方メートルに達した。安定供給に向けて、国内では過去最高の1067億立方メートル(同7%増)の天然ガスを生産。だが、需要を満たすことはできず、液化天然ガス(LNG)輸入量は3年連続で大幅増となった。川上の資源開発・生産企業は生産・販売量を拡大。しかし輸入天然ガスの採算割れから、収益は大きく悪化した。対照的に川下の都市ガス供給業者は一定の利ザヤを確保。ガス料金の引き上げも追い風となり、堅調な業績が続いた。今後もエネルギーの効率・環境性、ガスインフラ整備の拡大などを背景に、ガスの普及率、消費量が伸びる可能性は高い。ガス価格の市場化が徐々に進み、安定調達に向けてガス資源の積極開発、海外からの輸入拡大という流れも続くだろう。エネルギー全体に占める天然ガスの比率は現時点でも5%台にとどまっており、世界平均の20%台を大きく下回る。中国のガス業界は中長期的な成長セクターといえるだろう。

業界の特徴 ~規制色の強いディフェンシブセクターだが、成長余地も大きい~

生産・販売面:

公益セクターであるガス業界はディフェンシブ色の強い業界。川上のガス田開発・生産は国有3大石油会社の寡占状態となっており、国内外で資源開発を強化している。川下のガス供給は集約度が低く、主に各地域のガス会社が担当。ガス導管網を通じて都市ガスを提供するほか、液化石油ガス(LPG)の販売、自動車向けガススタンドの経営などを手がける。需要は分散しており、全体の6割が工業用向け。残り4割のうち家庭用、発電用がそれぞれ2割程度を占める。家庭向けでは特に暖房用需要が多く、冬季の気候状況などがガス販売量に影響する。

収益面:

ガス業界の収益源はガス、ガス関連器具の販売収入、輸送収入、ガス管敷設料収入など。ガスの販売価格はいずれの段階でも政府の統制下にあり、公共性を考慮して海外に比べて低く抑えられている。一定の利幅は保たれる傾向にあるが、ガス供給会社にとっての主要な収益源は引き続きガス管敷設。川上のガス生産会社にとっても、輸入天然ガスを国内で販売すれば、内外価格差から採算割れが起きやすい。

国際面:

川上のガス資源開発では、国有大手を中心に海外での権益確保の動きを強化。中央アジア・中国間の天然ガスパイプライン、国内での「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に輸送)ルートなどの整備、及び沿海地域のLNGプロジェクト(LNG受入基地、ガス備蓄など)の稼働により、中国は本格的な天然ガス輸入の時代に入っている。12年の海外依存度は約3割に達し、輸入増加は長年続く供給面でのボトルネックを緩和すると考えられる。

政策面:

販売価格の統制など当局の関与度は大きい。ただエネルギー源の多様化を目指し、政府は天然ガスの利用促進に積極的。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国有独占の川上はやや苦戦、民営・外資の進出が目立つ川下は好調~

堅調な需要を背景にサプライチェーン全体の多くの企業が増収を確保している。川上のガス生産は中国石油天然気(00857)、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00386)という国有系3社による寡占。特に中国石油天然気の生産量は約7割という圧倒的なシェアを誇るガリバーだ。しかし、3社とも内外価格差から輸入天然ガスで原価割れが発生し、天然ガス部門の収益性は悪い。一方、川下のガス供給は基本的に各地域の地元政府系企業が強いものの、買収を通じて全国展開を図る大手企業が躍進している。中央政府系列の華潤燃気(01193)は親会社からの資産注入などで事業規模をさらに拡大し、昨年も大幅な増収増益を継続。中国石油天然気の子会社である崑崙能源(00135)はガススタンドを積極的に設置して売上を伸ばした。地方政府系では天津津燃公用(01265)や北京控股(00392)の都市ガス部門も好調。また、新奥燃気(02688)は民営大手の代表格。外資系では複数の海外ガス大手が出資する中国燃気(00384)、香港中華煤気(00003)傘下の港華燃気(01083)が有名であり、いずれも業績を伸ばしている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港中華煤気0000320,69211.16,41625.7180,295
ハンセン香港屈指の富豪である李兆基・主席が恒基地産(00012)などを通じて支配する都市ガス会社。香港市場をほぼ独占しており、安定した経営・財務基盤に強み。子会社の港華燃気を通じて本土でのガス事業を加速させており、2期連続で売上高が香港を上回った。
崑崙能源0013527,36027.25,41116.099,845
ハンセン国内最大の天然ガス生産業者である中国石油天然気を親会社に持つ。グループ内における天然ガス事業の中核子会社としての位置づけ。特に川中・川下部門を強化しており、親会社からの資産注入を受けて、事業規模を急速に拡大させた。近年はガススタンドの設置を積極的に進めており、LNG販売量は業界首位の新奥能源に迫っている。
中国燃気0038417,64312.21,46485.035,880
香港その他大手都市ガス会社。LNGに加え、LPG、CNG(圧縮天然ガス)車向けのガススタンド経営なども手がける。劉明輝・主席が大株主。英国、韓国を含む国内外の有力ガス企業が資本参加している。主要株主の中国石油化工は同社にとって大口のガス調達先だが、敵対的買収を仕掛けられたことで関係が悪化していた。しかし、買収が失敗に終わり、両社は友好的な提携関係に転換している。
北京控股0039229,53316.72,71517.862,466
レッドチップ北京市政府系のコングロマリット。手がける事業は幅広いが、最大の収益源は天然ガス部門。パイプラインと都市ガスの両方をカバーし、北京市やその周辺地域で事業展開している。地元政府との関係が深く、経営の安定性などが強み。北京市は大気汚染の解決に向け、石炭から天然ガスへのエネルギーシフトを加速。発電向け需要の伸びが期待できる。
中国石油化工003862,733,61811.063,879▲12.8 620,317
ハンセン大手石油・天然ガス会社。石油精製が主力事業だが、川上のガス田探査・開発、天然ガスの生産・販売なども展開している。天然ガス事業の強化に向け、出資先の中国燃気に買収を提案していたが失敗に終わった。このほか、シェールガスを戦略分野に定めており、一大生産地とみられる四川省でプロジェクトを展開。15年までに商業生産を目指す。
中国石油天然気008572,195,2969.6115,326▲13.31,836,938
ハンセン天然ガスの生産・資源保有量などで国内最大手の国有系企業。国内主要ガス田の大半を押さえ、沿海部の消費地まで輸送するパイプラインの約8割を保有。探査・生産・輸送の各分野で2位以下を大きく引き離している。そのため安定したガス供給の“使命”を担っており、輸入ガスの増加が天然ガス部門の採算悪化に繋がっている。国内価格の上昇から恩恵を受けやすい。
中国海洋石油00883247,6272.863,691▲9.3571,473
ハンセン国有系の大手ガス開発企業。海底ガス田の開発・生産では国内トップの規模・競争力を持ち、陸上を中心とする中国石油天然気とは一定の棲み分けができている。事業エリアは世界各地に広がり、その中には日中間で争点となっているガス田も含まれる。買収したカナダ企業はシェールガスを生産。また、南シナ海の大型ガス田も年末までに操業が始まる見込みで、生産拡大が期待される。
港華燃気010834,30320.069818.618,891
香港その他香港中華煤気傘下の都市ガス会社。湖南、江蘇、四川など各省でガス供給のライセンスを保有し、本土で最大規模の都市ガス会社まで成長してきた。利益の見込める工業ユーザーの比率が高いことが特徴。親会社の良好な経営・財務基盤が同社の強みにもなっている。17年まで毎年8~10件のペースでガスプロジェクトを獲得する方針を掲げており、さらなる事業拡大が期待される。
華潤燃気0119316,26637.91,37040.441,811
レッドチップ国有系の大手コングロマリット「華潤集団」で都市ガス事業を担当する企業。国内の主要都市で、都市ガス事業や、LPGの販売などを手がける。親会社からの資産注入、香港上場企業への買収など、事業拡大に積極的。大規模な再編が進行中であり、実現すれば同社は華潤電力控股(00836)に吸収合併されて上場廃止となる。
天津津燃公用012651,53945.512031.54,065
H株天津市政府系のガス会社「天津市燃気集団」を親会社に持つ。天津市の河西区小海地や津南区の一部で、親会社から仕入れた天然ガスをガス管網を通じて販売。このほか内モンゴル自治区集寧市などで事業展開する。親会社からの資産注入が進めば、事業規模の拡大に繋がる。
新奥能源0268818,02719.61,48218.346,455
香港その他民営の大手都市ガス会社。ガス関連の事業を幅広く展開している。特にガススタンド経営に強みを有し、ガス販売量は2年連続で国内1位。総合的なエネルギー企業を目指しており、海外事業も重視。米国ではガススタンド建設、メガソーラープロジェクトなどを展開している。事業の効率性に定評があり、利益率は業界内でも比較的高い。

売上高・純利益は中国燃気(00384)が13年3月本決算。それ以外はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年7月4日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

石油・ガス(業種別一覧) ガス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~シェールガスプロジェクトが進行中、天然ガス価格の市場化にも注目~

中国で“シェールガス革命”は起こるか:

米国を超えるシェールガス埋蔵量を誇るといわれる中国でも “シェールガス革命”が起きるのか、投資家の期待が高まっている。中国は官民挙げてシェールガスプロジェクトを推進。開発の主役は国有系3社だが、大手石炭・電力会社や民間企業なども政府が実施するプロジェクト入札を通して参入している。将来的に商業ベースに乗れば供給不足の問題を一気に解決できる可能性もある。

川下ではスケールメリットを目指した激しい競争が続く:

川下の都市ガス供給は規制により1都市1企業だけしか許されず、ライセンス期間も長いため、一旦取得したら長期に安定した収益を稼げる。このため、事業エリアの広さが企業の優勝劣敗に直結、先行者である大手が有利といえよう。中国燃気、新奥燃気、華潤燃気、港華燃気、北京控股の5社が大手グループを形成しており、今後もこの5社を中心に、買収などを通じた熾烈なシェア拡大競争が繰り広げられる可能性が高い。

天然ガス価格の市場化:

業界内の共通した見方は今後も天然ガスの需要は大きく伸びるというもので、天然ガス価格の上振れ圧力は強い。しかし、政府により低く抑えられた現在の価格制度はガス生産会社の採算性、需給バランスの悪化という弊害も生みだしてきた。中央政府は事態を重視し、一部地域で先行して導入された部分的なガス価格の市場化(≒値上げ)をほかの地域にも拡大していく構えだ。すでに6月末に工業用ガスの価格引き上げを発表。緩やかながらも価格上昇に向かえば、川上から川下まで幅広い企業の収益性が改善に向かおう。(中国部 畦田)

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ガス業界の売上と利益率の推移 天然ガスの精算・消費量の推移 天然ガスパイプライン、受け入れ基地などの計画図

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