中国株 業界レポート

不動産業界

~国内景気を支える重要セクター~
2013年7月5日

市場動向 ~昨年後半から住宅価格が上昇し、住宅市場は活況~

12年の業界規模:

商品不動産販売額:6兆4456億元(前年比10.0%増)、販売面積:11億1304万㎡(同1.8%増)、在庫面積:3億6460万㎡(同27.0%増、伸び率は修正済み)、不動産投資額:7兆1804億元(同16.2%増)

世界最大の人口を抱え、都市化が進む中国の不動産業界は世界有数の規模。マーケットのかなりの部分を住宅が占める。高止まりする住宅価格を抑えるため、政府は一昨年から投機抑制策を強化。景気減速による需要低迷もあり、昨年春頃まで市場はやや冷え込んだ。しかし、景気刺激策や金融緩和の効果が次第に表れ始めると、住宅価格は緩やかに上昇。通年の販売面積は2%増にとどまったが、販売額は10%の伸び率を確保した。そして秋口頃から景気が回復軌道に入り始めると、国内外の投資マネーが再び流れ込み、住宅価格の上昇が加速。買い急ぐ市民も増え始め、大手デベロッパーは販売・開発体制を強化。13.1-5月の不動産市場は活況を呈し、販売額は前年同期比で52.8%増、販売面積も35.6%増加した。一方でバブル抑制を目的に政府は春頃から引き締めを強化し続けているが、その効果はなかなか上がっていない。

業界の特徴 ~政策と景気サイクルなどに大きく連動する産業~

主力事業面:

政策や景気サイクルに大きく左右されるセクター。不動産投資そのものはGDPの約1割に相当するが、鉄鋼などの素材産業や消費への波及効果を考慮すると、経済全体への影響力はかなり大きい。中長期的には人口の増加と、都市化の進展が市場拡大をもたらす要因。参入障壁は低く、多くの企業が競争を繰り広げる。開発から販売、資金回収までの期間が長いため、資金調達力、財務基盤の良し悪しが企業の競争力に直結する。

国際面:

基本的にドメスティックな産業。不動産は投資・投機の対象となりやすく、人民元の切り上げ期待などを背景に、値上り益を狙った海外マネーが流入しやすい分野だ。香港系をはじめとしたアジア企業が積極的に進出してきている。

政策面:

土地はすべて国有・集団所有であり、使用権が売買される制度。政府にとってマクロ経済コントロールの重要分野であり、使用権の払い下げ、開発認可、税金、住宅の購入規制など、様々な手段を通じて安定的な成長を目指す。目下のところ、不動産バブルの抑制に向けて当局は全力を傾けている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~全国展開が可能な大手は販売が拡大、二極化の傾向が進む~

全国展開できる開発業者は大手に限られる。しかし、上位100社の販売額も全体の3割に過ぎず、業界の集約度は格段に低い。市場は昨年後半から上向いたものの、競争激化、厳しい引き締めから、業績の二極化が進んだ。大手は概ね増収増益を確保し、販売を伸ばしている。住宅開発は民営大手、政府系企業が優位。最大手は万科企業(200002)で、最新の販売額ランキングでも首位を譲らず、強力なブランド力を確立。これを複数の政府系、民営企業が追う。中央政府系では全国展開している保利地産(600048)、中国海外発展(00688)、華潤置地(01109)の3社が有名。各社ともスケールメリットを発揮し、12.12期は増収増益となった。地元政府系をみると、上海市の緑地集団が販売額で業界3位。同社は今年、盛高置地(00337)の買収を通じて裏口上場を果たした。北京市の北京首創置業(02868)、広東省の越秀地産(00123)も地元での販売を伸ばした。また、不動産業界の大手にはオーナー企業が目立つ。広東省に本拠を置く恒大地産集団(03333)、碧桂園控股(02007)、広州富力地産(02777)の3社はその代表格であり、中小都市での販売拡大や商業不動産の発展を受けて売上高が増加。ただ、恒大地産集団は利益率が悪化し、減益に後退した。

また、商業用不動産では長江実業(00001)、恒隆地産(00101)、新鴻基地産(00016)、新世界発展(00017)など、香港財閥系のデベロッパーが大きな競争力を持つ。ただ、各社の主力市場は引き続き香港。海外マネーの流入にともない、香港の不動産価格は高騰を続け、各デベロッパーも恩恵を受けた。一方で香港政府は厳しい引き締めを実施しており、それによる悪影響も出てきている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
長江実業0000125,827▲26.626,695▲30.2239,723
ハンセン中華圏一の富豪と知られる李嘉誠・主席が率いる長江グループの中核企業。香港や海外で不動産開発・賃貸、ホテル・サービスアパートメント経営などを事業展開している。主力市場は香港だが、中国の主要各都市でも高級住宅物件や複合商業施設などの開発を進めている。
新鴻基地産0001656,7929.335,769▲10.4263,489
ハンセン不動産事業を中核とする香港財閥系の多角経営企業。不動産の開発・賃貸・管理、ホテル経営を主力事業としている。香港西九龍の「環球貿易広場」(ICC)や上海市浦東地区の上海国金中心(上海IFC)をはじめとした優良資産を香港や中国各地で保有しており、安定した賃貸収入が見込まれる。ただ、不祥事で辞任した創業者兄弟の裁判が大きなリスク要因。
新世界発展0001729,5758.38,41810.865,514
ハンセン香港財閥系の大型コングロマリット。香港屈指の富豪として知られる鄭裕トウ・前主席ファミリーが支配している。香港有数のデベロッパーで、多くの企業と共同で開発プロジェクトを展開している。また、傘下に置く新世界中国地産(00917)を通じて本土事業を積極的に拡大している。
SOHO中国0041015,305169.210,585171.930,189
香港その他北京市を中心にオフィス・商業・住宅開発のプロジェクトを展開する大手デベロッパー。経営トップの創業者夫婦は業界での知名度が高く、影響力も大きい。同社は買収をテコに、引き続き大都市でのオフィス・商業開発に注力する方針。この分野は当局による引き締めの対象外であり、政策リスクが低い。
中国海外発展0068853,62125.815,54421.1159,529
ハンセン業界のリーディングカンパニー。国内最大の建設会社である中国建築(601668)の傘下にある。全国主要都市の中心部や都市近郊の好立地物件を中心に住宅開発を手がけている点が強み。傘下に置く中国海外宏洋(00081)は主に地方都市での開発を担う。同社は先ごろ、香港の啓徳空港跡地の2区画を落札。本格的に香港へ進出する見込みで、その動向が注目される。
世茂房地産0081328,65210.15,7650.750,491
香港その他許栄茂・主席が創業した新興の大手不動産会社。昨年の大手100社ランキングでは成長性でトップの評価を受けた。上海市の西側(浦西)のランドマークである超高層ビル「上海世茂国際広場」を保有・賃貸するなど、同市デベロッパーの代表格。大都市での大規模分譲マンション、商業ビルの開発に強みを有する。
龍湖地産0096027,89315.86,301▲0.460,364
香港その他西部地方での事業展開に強みを有する大手不動産会社。高級住宅や商業不動産の開発を手がける。国内最大の人口を有する重慶市を本拠地とし、同市での販売額はトップ。「西部大開発」の恩恵を受ける可能性が高い銘柄といえる。創業者の呉亜軍・董事長は中国有数の女性富豪として有名。
華潤置地0110936,83523.98,77530.1118,326
ハンセン国有系の大型コングロマリット「華潤集団」に属する大手デベロッパー。北京市や上海市、四川省成都市など国内各地で住宅・商業物件を開発。特に複合型開発のノウハウが豊富で、商業不動産の賃貸料収入は地場系でトップクラス。安定的な収益基盤が強みとなっている。加えて、不動産販売も大きく伸びており、今年5月末時点の累計販売額は前年同期に比べ75%も増加した。
碧桂園控股0200741,89120.66,85317.971,984
香港その他民営の大手住宅デベロッパー。広東省に本拠を置き、大都市近郊などを中心に「碧桂園」シリーズの住宅などを開発している。同社は引き締め政策の影響が比較的小さい地方都市近郊での開発が得意。全国展開のペースを速めており、広東省以外での契約販売の比率は4割まで高まってきた。足元の販売も好調で、13.1-5月の販売額(成約ベース)は前年同期を120%以上上回った。
広州富力地産0277730,36510.95,50213.633,577
H株広東省を本拠とする民営の大手デベロッパー。北京市、天津市、陝西省西安市、重慶市などでも事業を展開。各地に「富力城」や「富力桃園」ブランドの物件などを開発し、住宅は中間層をターゲットとしている。開発用地の多くが将来性が見込める大都市近郊にある。ホテル事業からの収入が安定化してきたこともポジティブだ。
恒大地産集団0333365,2615.49,171▲1946,803
香港その他中小都市での住宅販売で急成長を続けてきた新興の大手不動産会社。開発用地の規模等で同業他社を凌駕しており、昨年も販売面積では国内1位だった。同社は実需に基づく住宅の供給、中小都市での販売拡大を重視しており、中低価格帯の物件が中心。このため販売面積は国内1位だが、販売額は6位にとどまった。
万科企業200002103,11643.712,55130.4137,812
深センB株国内最大手の住宅デベロッパー。長く業界トップの座に君臨する企業表彰や企業ランキングの常連。同社の王石・董事長は業界を代表する人物として有名だ。深セン市を本拠に全国各地事業を展開。年間販売額を初めて1000億元の大台に乗せた。公開買付を通じて支配下に置いた香港上場の万科置業海外(01036)を先兵として、海外事業を強化していく。

売上高・純利益は新鴻基地産(00016)と新世界発展(00017)が12年6月本決算。それ以外はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年7月4日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

不動産(業種別一覧) コングロマリット(業種別一覧)

注目されるトピックス ~実需支援・投機抑制の政策スタンス、その効果が問われる~

不動産の“実需”注目、目玉は低所得者向け住宅:

都市部での住宅問題の解決に向け、当局は低所得者向け住宅の建設を加速しており、15年までに3600万戸の建設を目指す。さらに1件目の住宅購入については銀行に対して優遇金利の適用を奨励。都市化の進展で長期的に実需が増加すると見込まれるなか、政府は積極的に支援しており、中低価格帯の住宅物件を主力とするデベロッパーは引き続き恩恵が見込める。

政策は当面、引き締め一辺倒か:

今年春に中央政府は住宅売却益への課税徹底を柱とする不動産引き締め策を発表。これまでにない厳しい内容から発表直後に駆け込み需要が急増するなど、一部で混乱も見られた。この政策に従い、今後は各地方で具体的な詳細が定まり、実施に移される。また、物業税(固定資産税)の適用都市も順次拡大していく見込みだ。政策は当面、引き締め一辺倒となる可能性が高い。投機抑制にどこまで繋がるか、政策の真価が問われる。

資金調達力の向上に努める大手デベロッパー:

引き締め策の一環で、開発業者向け融資の抑制、A株上場審査の厳格化などが継続。本土系デベロッパーにとって厳しい資金調達環境が続いている。こうしたなか、デベロッパーの中には香港市場を通じて資金を調達しようという動きが目立ってきた。その代表的な手段が「裏口上場」。新たに盛高置地、深セン科技(00106)、恒力商業地産(00169)、万科置業海外(01036)が大手デベロッパー傘下の香港上場企業となり、今後の資産注入、資金調達などが見込まれる。また、万科企業の本体もB株からH株への転換を通じて香港に上場する計画を発表。この動向も注目される。(中国部 畦田)

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不動産販売額と各エリアの平均販売価格

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不動産販売額の推移

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デベロッパー販売額ランキング(12年実績)とデベロッパー百強のランキング状況

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