中国株 業界レポート

石炭業界

~エネルギーの中核産業は苦境に~
2013年7月9日

市場動向 ~世界最大の生産・消費国、供給過剰から業績が急降下~

12年の業界規模:

原炭生産量:38.6億トン(前年比9.6%増)、輸入量:2.9億トン(同59.0%増)、一定規模以上の企業売上高:3兆3486億元(同10.2%増)、税引き前利益:3555億元(同15.6%減)

中国は世界の石炭生産・消費量の約半分を占め、資源保有量も有数の規模を誇る。石炭は生産・消費両面からみて一次エネルギー全体の7割前後を占め、エネルギーバランス上で極めて重要な位置づけ。一昨年までは旺盛な需要が続き、炭鉱会社は生産能力を増強。昨年の生産量は10%近い伸びを記録した。しかし、景気減速から徐々に需要が低迷すると、供給過剰に陥り、在庫も増加。販売価格は下落に転じた。それでもまだ割高であり、海外産への旺盛な需要から輸入量は急速に増加している。厳しい経営環境を受け、昨年の業界売上高は大きく減速。税引き前利益は減少に転じた。今年の状況はさらに悪く、1-5月は前年同期比で3.3%減収、43.9%減益に後退。景気先行きの不透明感が強まるなか、業界内外から政府による救済策も叫ばれ始めている。

業界の特徴 ~電力・鉄鋼向け需要が中心、構造的問題の解決がカギ~

生産・販売面:

石炭業界は基本的にドメスティックな産業といえる。世界有数の石炭資源量を持つが、産地は内陸部に集中。生産量は内モンゴル自治区、山西省、陝西省の上位3位で全体の6割に達する。このため、主要消費地の沿海部から遠く、鉄道、船舶を中心とする輸送インフラが重要となるが、課題が多い。炭鉱会社が乱立し、集約度は低い。小規模炭鉱の乱立、過剰な生産能力、エネルギー多消費・環境汚染などの構造的問題を抱えており、業界・炭鉱の再編が必須。電力、鉄鋼、建材、化学向けの需要が全体の8割を占め、暖房用需要の増える冬季が繁忙期だ。電力、鉄鋼会社との価格交渉が特に重要。その動向は石炭、並びに顧客である電力、鉄鋼などの業界双方に影響を与える。

国際面:

沿海部で価格・輸送面でメリットの大きい海外産への需要が増加。09年以来、石炭は大幅な輸入超過となっている。主な輸入国はインドネシア、オーストラリア。中国の大手石炭会社による海外進出も活発だ。

政策面:

炭鉱は中央政府管轄の「国有重点炭鉱」、地方政府の「地方炭鉱」、政府以外が管理する「郷鎮炭鉱」の3種類に分けられるが、政府の目が届かない小規模炭鉱が多い。石炭は政府の規制色こそ強いものの、中央政府のコントロールが末端まで届きにくい。それでも政府はマクロコントロールを強化しており、炭鉱閉鎖などで具体的な目標を定めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~炭鉱会社が乱立、石炭安で軒並み業績が悪化~

石炭業界は企業が乱立し、年産1億トン級の大手は昨年末時点で7社を数えるが、そのシェアは3割に過ぎない。大手の多くは政府系企業で、主要産地に炭鉱を有する。こうした企業を含めて業界全体の利益は減少傾向。最大顧客の電力会社が豊富な在庫水準、発電量の低迷などから燃料炭の購入を抑制し、需給バランスが悪化したことが背景にある。最大手の神華能源(01088)は12.12期で増益を確保、13.1-3月期も小幅な減益にとどまった。生産・販売量はいずれも減速したものの、発電部門が業績を支えた。生産量ベースで業界2位の中煤能源(01898)、海外展開に積極的なヤン州煤業(01171)の両大手は少なくとも13.6期(中間)まで減益基調が続く見通し。数少ない民営大手の内モンゴル伊泰石炭(900948)も利益を減らした。この状況はコークス生産企業も同じで、海外企業のモンゴリアンマイニング(00975)、鉄鋼大手傘下の首鋼資源(00639)も昨年は業績が悪化した。このほか、流通を担う中国秦発(00866)、永暉焦煤(01733)、石炭採掘機械を製造する三一重装(00631)などの関連企業も軒並み業績を落とした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
鄭州煤砿機械0056410,21326.71,58933.111,791
H株河南省政府系の炭鉱機械会社。主力製品の油圧式ルーフサポートは国内トップクラスのシェア。石炭搬送装置、岩盤切削機なども生産している。神華能源(01088)といった大手炭鉱会社が主要顧客。08年に上海A株に上場。そして12年12月にH株上場を成功させ、調達した約18億HKドルは海外事業に充てられる。国内売上が大半の同社にとって、海外展開は大きな挑戦だ。
三一重装006313,641▲3.7500▲35.56,129
香港その他民営の建設機械大手「三一集団」で、石炭採掘設備を担当する企業。同集団の中核をなす三一重工(600031)とは創業者の梁穏根氏を介して兄弟会社の関係にある。岩盤を掘削するロードヘッダーの販売台数はトップクラスで、国内の主要炭鉱で使用されている。石炭採掘設備に特化している分、石炭市況に業績が左右されやすいことがリスク要因。
首鋼資源006394,692▲20.81,494▲20.214,739
レッドチップ山西省のコークス生産企業。北京の鉄鋼大手「首鋼集団」が原材料となるコークスの安定調達を目的に出資比率を引き上げていき、現在は首長国際(00697)を通じて支配している。コークスの販売先である鉄鋼メーカーとの良好な関係が強み。ただ、その鉄鋼業界がここ数年苦境に陥っており、同社産コークスの価格も低迷が続いている。
中国秦発0086611,08511.2258▲54.81,204
香港その他石炭の大手商社。民営ではトップクラスの事業規模を誇る。国内各地の石炭会社に加え、オーストラリアやベトナムなどから石炭を調達。大秦鉄道などの陸運、自前のバルク船を通じた海運を通じて国内に輸送し、電力会社などに販売している。一昨年に炭鉱会社を買収するなど、自社産の石炭比率の向上に努めている。
モンゴリアンマイニング009752,990▲12.5▲18赤転5,595
香港その他モンゴル国企業として初の香港上場企業。民営の石炭企業として、同国ではトップクラスの生産・販売量を誇る。中国とモンゴル国の貿易は資源分野を中心に拡大中。このなかで同社は鉄道輸送インフラを整備し、中国の鉄鋼メーカー向けにコークスの供給を増やしている。海外上場のモンゴル企業として注目度が高く、同国政府からの支援も見込める。
神華能源01088250,26019.648,8586.6395,940
ハンセン国務院の直接管理下にある国内最大の石炭会社。石炭の生産・販売、発電、鉄道や港の経営など、石炭関連の事業を総合的に手がけている。内モンゴル自治区、陝西省などで複数の炭坑を経営。自社で鉄道網、専用港などの輸送インフラを保有している点が強み。石炭生産以外の収益比率が比較的高い。最大手として業界再編の主役に位置づけられている。
ヤン州煤業0117158,14623.56,219▲30.343,802
H株山東省を本拠とする地方政府系の大手石炭会社。採炭、選炭、販売などを一貫して手がけ、自社で鉄道施設を保有する。メタノール生産などの石炭化学事業にも従事。これまでに買収を通じて事業を拡大、国内は内モンゴル自治区、海外はオーストラリアを重要視している。海外事業の比重が大きいだけに、為替変動の影響を受けやすい。
永暉焦煤0173310,2846.7▲1,345赤転1,566
香港その他中国大手のコークス輸入業者。民営の新興企業であり、原料炭の大部分をモンゴル国で買い付けた後に、国内の選炭工場で加工、鉄鋼メーカーなどに販売するというビジネスモデルを築いている。同国からのコークス輸入ではトップクラスのシェアを占めている。
中煤能源0189887,292▲3.98,842▲11.271,003
ハンセン生産量ベースで国内2位の大手石炭会社。中央政府直轄の企業で、山西省を拠点に華東、華北、西北地区などに坑内掘りと露天掘りの炭坑を保有する。石炭輸出やコークス生産、採掘関連設備の製造などでも強みを有し、特に石炭関連設備は国内有数のシェアを持つ。親会社が成長分野に位置づけるシェールガス事業が新たな収益源となる可能性がある。
内モンゴル伊泰石炭'B'90094832,46316.46,622▲14.257,239
上海B株内モンゴル自治区を本拠とする民営の大手炭鉱会社。原炭の生産から輸送・販売までを手がける。自治区内に複数の炭鉱を保有しており、同社の石炭は「伊泰」ブランドで有名。このほか石炭輸送鉄道も経営。上海B株の中では圧倒的な時価総額を誇る。昨年H株IPOを成功させ(市場コード:03948)、2社目のB・H株重複上場企業となった。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年7月9日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.754HKドル。

石炭(業種別一覧)

注目されるトピックス ~収益源の安定化が急務、政策支援は期待薄か~

業界再編は加速、大手はメリットが大きい:

当局は昨年3月に石炭業界の5カ年計画(11~15年)を発表。15年の生産量を39億トン以内に抑える一方、年産1億トン以上の企業を10社(昨年時点で7社)とする方針を明らかにした。さらに東部地区での炭鉱開発を抑制する一方、西部地区では奨励する考え。少ない増産余地をめぐる奪い合いが過熱し、業界再編がさらに加速していこう。基本的に上場する大手炭鉱会社は吸収合併を通じて再編のメリットを受けやすい。

収益源の拡大・安定化が急務:

大口顧客の電力会社が石炭在庫の備蓄、自社炭鉱の開発、海外産石炭の輸入などの動きを強めるなか、収益の多くを石炭販売、特に電力会社向けの燃料炭に依存している炭鉱会社にとって、収益源の多様化・安定化は喫緊の課題といえる。大手などは主力事業との補完効果が見込める分野で投資を増やしており、その動向に注目。神華能源は発電、中煤能源とヤン州煤業は石炭化学部門を強化している。

業界救済策は期待薄、異業種からの参入で体力勝負に:

石炭会社の苦境を受け、当局が石炭輸入の抑制を柱とする業界救済策を導入するという観測が出ている。しかし、これはかえって構造問題の深刻化というリスクがあり、基本的に政策支援は期待しにくい。一方で当局は業界の生産・経営ライセンス制度の撤廃を決定。これにより電力、鉄鋼など需要サイドからの参入が進むものと考えられ、業界は益々体力勝負となってこよう。(中国部 畦田)

石炭(業種別一覧)

石炭需要の内訳(12年1-11月) ちゅうごくの石炭大手企業(11年実績ベース) 石炭の生産量と価格動向

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石炭在庫高の推移

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