中国株 業界レポート

電力・電力設備・新エネルギー業界

~石炭安が追い風となるも需要は伸び悩む~
2013年7月19日

市場動向 ~石炭火力の採算性改善が追い風となるも、設備投資は伸び悩む~

12年の業界規模:

発電容量:11.4億kW(前年比8.2%増)、消費電力量:4.96兆 kWh(同5.5%増)、設備投資額:7466億元(同1.9%減、前年度の金額は修正済み)、業界売上高:5.56兆元(同7%増)

中国の発電容量は10億kWを超え、世界有数の規模を誇る。昨年は国内外の景気減速から工業向けの電力需要が鈍化。発電量・消費電力量の伸び率は1桁台に後退した。しかし、全体の需給バランスは夏場を含めて良好。水力発電量の回復で火力発電への負荷が低下した。また燃料炭価格も下落し、石炭火力の採算性が大幅に改善。これにより、電力・供熱会社の売上高は前年比7%増、税引き前利益は同33%増と急回復した。一方の設備投資を見ると水力発電や環境装置、送電網の整備などが増加したものの、石炭火力向けが引き続き抑えられ、全体の投資額も微減。過剰設備の風力発電も減った。需要鈍化、製造コストの上昇、価格競争から設備・部品メーカーの業績は後退。特に新エネルギー分野が顕著だった。

今年に入ると水力発電の回復が一服。また国内景気が減速し、1-5月の発電・消費電力量の伸び率もやや鈍化。火力発電会社の収益改善は進んだが、設備・部品メーカーは引き続き厳しい競争に晒されている。

業界の特徴 ~発電源は石炭火力、需要は工業向けが中心~

生産・販売面:

電力業界は基本的にディフェンシブ、ドメスティックなセクター。日本とは異なり、発電会社、送電会社と明確に分けられている。12年の電源構成比(発電容量ベース)は火力71.6%、水力21.8%。風力、原子力、太陽光などの成長分野は全体での比率がごくわずかだ。石炭火力が主力であるため、石炭をいかに低価格、安定的に調達できるかが、発電会社の経営を大きく左右する。送電会社は、送電網の未整備、非効率さなどが課題。需要面は工業向けが最も大きく、全体の7割強を占める。家庭向けは1割強に過ぎない。このため、製造業の生産動向が電力需要に直結し、同時に電力会社を取引先とする設備メーカーの経営に大きな影響を与える。設備業界は発電機器、送変電設備、制御装置などのサブセクターに分けられるが、全体的に供給が過剰気味。主要部品・原材料の価格や人件費が重要なコスト要因となってくる。

政策面:

電力価格は政府の統制下にあり、価格水準は概ね低い。電力会社の業績を改善するため、電力と石炭の価格連動性を導入したほか、昨年7月からは家庭用向けに関して段階料金制度をスタートさせた。

主要企業、主な取扱銘柄 ~発電会社、設備・部品メーカーで明暗が分かれる~

発電会社の集約度は低い。そのなかでも発電容量の半分近くを占める国有系の5大発電集団が大手で、全国に事業展開し送電会社に電力を供給。華能集団、大唐集団、華電集団、中国国電、中国電力投資の5社は複数の上場企業を傘下に置いており、香港にはそれぞれ華能国際電力(00902)、大唐国際発電(00991)、華電国際電力(01071)、龍源電力(00916)、中国電力国際発展(02380)が上場している。上場5社の12年本決算をみると、小幅ながらも増収を確保。龍源電力は風力発電部門が足を引っ張ったが、残り4社は燃料炭価格の下落の恩恵を受け、大幅増益を達成した。同じ国有系コングロマリット「華潤集団」に属する華潤電力控股(00836)も好業績を記録した。大手5社は専門子会社を通じて風力などの再生可能エネルギーを強化。このうち上場しているのは華能新能源(00958)、大唐新能源(01798)、華電福新能源(00816)龍源電力、中国電力新能源(00735)の5社で、業績は各社まちまちだった。なお、原子力発電は国有2社の寡占下にあり、それぞれ中国核工業二三(00611)、中広核砿業(01164)という上場企業を抱えている。

設備メーカーは川上の部品から川下の完成品メーカーまで幅広いが、川下の主役は政府系企業。全般的に供給過剰のなか、電力会社からの受注低迷、価格競争、製造コスト高から、苦境に陥る企業も見られた。業界をリードする上海電気(02727)、東方電気(01072)、哈爾濱電気(01133)の大手3社の12.12期決算は業績が後退した。供給過剰が特に深刻な再生可能エネルギーの設備・部品については、関連サプライヤーの収益が軒並み悪化。国電科技環保(01296)、新疆金風科技(02208)という最大手クラスの両メーカーも減益となった。同分野は大手の民営企業も多く、太陽光電池の素材・部品サプライヤーである保利協キン能源(03800)、陽光能源(00757)、風力発電部品の中国高速伝動(00658)などが有名だが、いずれも価格競争に巻き込まれて業績が悪化した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中電控股0000287,06614.46,901▲10.5160,682
ハンセン香港に本拠を置き、長い歴史を持つアジア屈指の発電会社。香港の九龍・新界をカバーする電力最大手として安定性がある。本土でも広東省の原発などに出資。このほかオーストラリア、インド、台湾、タイでも事業展開する。ハンセン指数構成銘柄でも比較的ディフェンシブな銘柄として注目できる。
中国高速伝動006586,369▲10.6138▲75.14,592
香港その他工業用トランスミッションの大手メーカー。主力の風力発電用ギアは国内で圧倒的なシェアを誇る。高い技術力が評価され、国内の大手メーカーにとどまらず、先進各国の企業にも製品を供給してきた。ただ、業界が抱える過剰気味の生産能力が懸念材料。高速道路、建設機械、船舶用のギアなども製造している。
華潤電力控股0083651,8402.86,20968.080,633
ハンセン国有系コングロマリット「華潤集団」で発電事業を担当する中核企業。東部沿海部を中心に全国各地で事業展開している。石炭火力が中心だが、炭鉱事業の規模を急速に拡大。燃料炭高への耐性が強い。風力発電などの新エネルギー事業も積極的に展開。親会社の方針で、兄弟会社の華潤燃気(01193)との合併を計画。完了すればグループ内のエネルギー事業を統括する。
華能国際電力00902133,9670.45,512367.099,357
H株5大発電集団の最大手「華能集団」の中核企業。山東、江蘇、上海など東部を中心に事業エリアは広範囲に及ぶ。海外ではシンガポールの大手発電会社に出資している。主力電源は石炭火力で国内屈指の規模。そのため、燃料炭価格の下落によるメリットを受けやすい。一方で、これは石炭高となった場合に業績が下振れしやすいことも意味している。
龍源電力0091617,2884.22,5930.666,368
H株風力発電能力で国内トップの電力会社。5大発電集団の一つ「中国国電集団」の傘下にある。成長分野で高い競争力を持つものの、業界全体では低い稼働率など課題も多い。このため、同社は洋上風力への投資を増やし、安定的な発電量の確保に努めている。また、風力発電会社の中では比較的火力発電の割合が大きいことも特徴といえる。
大唐国際発電0099177,5987.24,062106.176,477
H株京津唐地区(北京、天津、河北)を本拠とする発電大手。大唐集団の中核を占め、北部で高いシェアを誇る。火力発電が主力だが、雲南省や四川省での水力発電、内モンゴル自治区での風力発電も強化。さらに主要燃料の石炭についても採掘、運搬、石炭化学などの事業を幅広く展開しているが、一方で収益性が懸念されている。
華電国際電力0107159,0809.01,4471860.128,050
H株山東省の発電大手。5大発電集団の一角を占める華電集団の傘下にある。石炭火力の比重が大きいほか、安定調達に向けて炭鉱買収を積極的に進めている。このため、燃料炭価格の影響をより受けやすい。山東省以外にも四川、安徽省、河南省などに発電所を保有。内陸部の各省に多くの発電所を保有している点が特徴だ。
東方電気0107238,079▲11.32,191▲28.324,387
H株大手発電設備メーカー。中央政府系の企業で、タービン、ボイラーなどの発電設備は火力、水力、風力、天然ガス、原子力など主要電源をすべて網羅している。特に風力、原子力向け設備は高い競争力を持つ。海外展開も積極的に進め、南米、アフリカなどの新興国市場を開拓してきた。本拠地の四川省は水力発電が盛んなエリアだが、地震も頻発しており、注意が必要。
哈爾濱電気0113325,995▲8.71,40814.66,622
H株黒竜江省に本拠を置く政府系の大手発電設備メーカー。主力は売上全体の6割を占める火力発電向けだが、水力、原子力、風力向けの設備もカバー。今後も石炭火力向け設備の低迷が続く可能性が高い。収益源の多様化が益々重要となるなか、同社の原子力部門は三菱重工と提携しており、実績・技術面で優位に立っていることから注目される。
国電科技環保0129621,77716.4693▲17.610,066
H株再生可能エネルギー関連設備を製造する国有系大手。5大発電会社の一角を占める中国国電集団の傘下にある。風力・太陽光発電向け設備の製造に加え、環境・省エネのソリューション事業も展開。排煙脱硫装置の設置、火力発電所の効率向上などを支援する。同社製品・サービスは深刻な大気汚染を引き起こしているPM2.5問題の改善に繋がる。
新疆金風科技0220811,225▲12.0153▲74.817,171
H株風力発電が盛んな新疆ウイグル自治区を中心に風力発電設備の製造事業を展開する半官半民企業。主力の風力発電タービンはシェアが国内トップクラス、世界でも上位に入る。国内外の発電会社に販売している。急成長の反動から、風力発電業界は設備過剰の問題に悩まされ、同社の業績も低迷。しかし、合理化の効果が表れ、13.1-3期、13.6期(中間)ともに増益となる見込み。
中国電力国際発展0238017,4978.81,181133.817,159
レッドチップ5大発電集団の一つである中国電力投資の中核企業。山西、安徽、江蘇、河南省などに複数の石炭火力発電所を保有。また、水力発電大手を傘下に置き、湖南、貴州省で電力を供給。水力発電の割合は同業他社よりも大きく、同発電が大きく伸びた12.12期は大幅増益となった。引き続き水力発電関連の銘柄として注目できる。
上海電気0272776,5917.22,715▲14.748,163
H株中国の総合機械メーカー。主力は電力設備で、火力に加え、水力、原子力、風力など幅広い分野を手がけている。他社と異なり発電だけでなく送電網の設備を製造していることも強み。さらに電力分野に加えて、交通設備、環境プラントなどでも強い競争力を持つ。上海市政府系の中核企業として、今後の業界再編でも中心的な役割を担う可能性が高い。
保利協キン能源0380018,555▲12.4▲2,919赤転30,339
香港その他多結晶シリコンのトップメーカー。国内最大手、世界でも有数の事業規模を誇る。ポリシリコンやシリコンウエハを製造し、太陽光電池向けの部品として出荷。同市場の過当競争から12.12期に赤字に転落したものの、最悪期は過ぎたようで、13.6期(中間)の業績はやや改善しそうだ。収益の安定化に向け、川下のメガソーラー事業にも投資。複数の大型プロジェクトを控える。

売上高・純利益はすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年7月19日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

電力(業種別一覧)  電気設備(業種別一覧)

注目されるトピックス ~電力価格、石炭相場の動向に注意が必要~

電力価格改革が大きな柱に:

発電会社の収益は政府の設定する卸電力価格に大きく左右される。主要燃料の石炭コストを如何に電力価格に反映できるかが焦点。一昨年の石炭高による深刻な電力不足を繰り返さないためにも、政府は電力価格の市場化を進める考えだ。道のりは非常に漸進的なものとなるだろうが、着実に発電会社の経営安定化に繋がるものと考える。

石炭相場の動向には引き続き要注意:

大手発電会社のコストの大部分は燃料炭が占める。現在は石炭価格が低迷し火力発電会社の好業績に繋がっているが、価格が一旦上昇トレンドとなった場合、各社は再び業績悪化に苦しむこととなる。石炭相場の動向には常に注意が必要だ。

風力・太陽光発電は発電効率の低さ、設備の供給過剰を克服できるか:

官民挙げた再生可能エネルギー(水力、バイオマス、風力、太陽光発電など)へのシフトは今後も続こう。ただ、この分野は補助金政策への依存度が高く、発電会社の非効率性、設備の供給過剰という構造的な問題が存在。このため、市場が拡大しても企業業績は苦しいという悪循環も。構造問題の解決は待ったなしだ。(中国部 畦田)

電力(業種別一覧)  電気設備(業種別一覧)

電力消費量の推移

拡大上表をクリックすると別枠で大きな表が開きます

発電量の推移

拡大上表をクリックすると別枠で大きな表が開きます

電力業界の設備投資額の推移

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。