中国株 業界レポート

保険・証券業界

~市況低迷が業績の重しに、国際化の進展に期待~
2013年7月23日

市場動向 ~景気減速、資本市場の低迷から苦しい経営環境が続く~

12年の業界規模:

保険料収入:1兆5488億元(前年比8.0%増)、資産総額:7兆3546億元(同22.3%増)、主要証券114社の営業収益:1295億元(同4.8%減)、純利益:329億元(同16.4%減)

中国の保険・証券業界は欧州など先進国の金融不安、国内外の景気減速が続き、昨年も苦しい経営環境となった。保険業界は販売規制の強化、他の金融商品との競争などに晒されたが、代理店販売網を拡充し影響を最小限に抑えた。主力の生命保険販売がやや持ち直し、健康保険が大幅に増加。また、自動車保険も引き続き堅調で、業界全体の保険料収入は前年比8%増まで回復した。しかし、資本市場の低迷が運用環境を悪化させ、運用収益率はここ4年で最低の3.39%まで低下。資本市場の仲介役を担う証券業界も業績が後退し、引き続き減収減益となった。ただ、中央銀行の金融緩和が市場の下支えとなったほか、資産管理・債券引受業務が伸び、証券会社の減益率は縮小した。

今年は年初から国内外の景気が回復軌道に乗り、株価も反発。1-3月期の保険・証券会社の業績は大きく改善した。しかし、4-6月期は国内経済の減速感が強まり、金融市場も株価や短期金利が不安定化。金融市場は規制緩和・国際化などの好材料が期待できる一方、シャドーバンキングといったリスク要因にも事欠かず、先行きは楽観できない。

業界の特徴 ~金融政策・資本市場の影響を大きく受ける規制セクター~

主力事業面:

保険業界は政府系を中心とした大手数社の市場シェアが高い。保険商品は大きく生命、損害、医療、年金保険などに分けられ、全国的な社会保障制度がまだ確立されていない中国においては、潜在的な需要は大きい。生保では年金、資産運用の要素を強めた保険の販売が多く、配当付きが全体の8割を占める。損保では自動車保険が主力であり、自動車販売の動向に左右されやすい。保険金の支払いは自然災害などで一気に膨らむリスクもあり、支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)は健全性の指標。一方、証券業界は政府系企業が大手に名を連ねるものの、集約度は比較的低く、銀行など他業種からの参入組も多い。営業収益の約4割が委託売買手数料、2割がディーリング、1割が投資銀行業務から得ており、機関投資家としての役割を持つ保険会社は大口顧客。保険・証券業界ともに金融政策、資本市場などの影響を大きく受ける。

国際面:

外資は保険・証券業界ともに出資比率の制限がネックとなり、シェアは小さい。日系では日本生命が合弁で参入するほか、大手損保が営業拠点を設置。証券大手も進出している。政府は海外との資本取引を規制しているが、投資マネーは香港を経由して国内外を行き来しているとみられ、両業界ともに海外の金融動向から影響を受けやすい。

政策面:

両業界とも規制が厳しく、特に契約者保護に向けた説明責任は重視される方向にある。一方で、運用・投資の規制は徐々に緩和。特に資本取引は香港を介在した国際化の方向にある。これを受け、保険会社の運用方針も見直しが進んでいる。なお、昨年末時点の運用資産の内訳は預金34.2%、債券44.7%、株式・投資信託11.8%となっている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は国有系企業が中心、株価低迷から収益環境は悪化~

保険業界は国内勢を中心に寡占度が高い。昨年の保険料収入ベースで見ると、生損保ともそれぞれ上位10社の合計シェアは8~9割に達し、国有系企業が目立つ。特に上位3社は6割前後を占め、他を大きく引き離している。昨年の保険料収入は生保がやや持ち直したものの、株式市場の低迷による運用難から利益を減らす企業が多かった。生保の保険料収入は代理店販売の拡充にともない、各社とも増加。しかし、有配当保険が利回り低下から解約もみられ、中国人寿保険(02628)、平安保険(02318)、新華人寿保険(01336)、太平洋保険(02601)の大手4社のうち平安保険を除いて収入が伸び悩んだ。そして運用難から4社とも利益が減少。対照的に損害保険料収入は引き続き堅調な伸びを示した。首位の中国人民財産保険(02328)は損保専業の保険会社で好業績を記録。親会社で生保事業も展開する中国人民保険集団(01339)の利益を押し上げた。これに次ぐ平安保険、太平洋保険の両大手も生保部門の業績不振を補った。

証券業も大手は国有系企業が多い。株式市場の低迷、IPO(新規公開)の停滞などの影響から、多くの企業で手数料収入が引き続き減少。自己売買部門も厳しかった。最大手の中信証券(06030)の営業収益は大幅に縮小。2位の海通証券(06837)、6位の中国銀河証券(06881)といったほかの大手も業績を落とした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国光大控股001653,36331.1948▲40.618,513
レッドチップ国務院系コングロマリット「中国光大集団」に属する金融持ち株会社。投資銀行、委託売買、資産運用、実業投資などの各業務を手掛ける。傘下に置く光大証券(601788)は営業収益で国内12位の大手証券会社。新規公開(IPO)の引受業務のほか、売出業務、企業買収、非公開化などの財務アドバイザーなどを手がけている。
香港交易所003885,987▲8.23,390▲19.8 138,363
ハンセン香港の証券・先物取引所、関連清算機関などを運営する企業。業績は香港市場での売買金額、資金調達量などに左右されやすい。グローバルでの取引所間競争に勝ち抜くため、ロンドン金属取引所(LME)の買収を完了。高額といわれる買収額に見合う効果を上げられるか、注目される。また、中国と海外の資本取引を結ぶ同社は、人民元国際化の恩恵を受けやすい。
中国太平0096652,33618.477771.019,379
レッドチップ本土の保険大手「中国太平保険集団」の中核企業。「太平」ブランドで生保、損保の各種保険サービスを提供している。12年の保険料収入は生保が7位、損保が10位ではあるが、伸び率はいずれも高い。同社は今年5月に親会社からの大規模な資産買収を発表。完了すれば、事業規模の拡大や安定した不動産賃貸収入が期待できる。
友邦保険01299128,64141.719,04988.7428,164
ハンセン香港を拠点にアジア太平洋地域で保険事業を展開している企業。事業エリアは日本を除く東アジア、東南アジア、オセアニアに広がる。中間層の成長により保険需要の増加が期待できる東南アジアで大きなシェアと高い知名度を誇る点が強み。米保険大手のAIGが昨年末に保有株をすべて放出し、親会社の座から降りた。これにより、将来にわたり株式需給の悪化懸念が大きく後退した。
新華人寿保険01336111,6992.82,9334.881,267
H株北京市に本拠を置く国内3位の生命保険会社。中央政府系の企業だが、海外の有力保険会社など外国人株主の比率も大きい。銀行窓口販売による個人生命保険が一番の収益源。最近では健康保険、年金保険の販売に力を注いでいる。同業大手と比較して支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)の低さが課題だったが、一昨年のA・H株同時上場で資金を調達し、大きく改善した。
中国人民保険集団01339257,3498.96,83231.8146,787
H株「中国人保」(PICC)ブランドで知られる国有系の総合保険会社。昨年末に香港に上場した。子会社の中国人民財産保険(02328)は損保最大手で、モータリゼーションの拡大により主力の自動車保険販売の増加が見込める。生保・健保事業も展開しており、生保は国内5位のシェア。しかし、生保・健保の販売は銀行窓口販売の規制強化により苦戦が続いている。
平安保険02318339,19324.620,0503.0357,906
ハンセン国内屈指の総合金融グループ。主力の保険事業は生保、損保の両方で国内2位のシェアを誇る。広東省に本拠を置く民営企業で、これまでの筆頭株主は欧州金融大手の匯豊控股(00005)だったが、今年タイの有力財閥「CPグループ」に変わった。傘下に信託投資会社、証券会社、銀行などを持ち、総合的な金融サービスを提供できる点が強み。積極的に国際展開している。
太平洋保険02601167,1577.55,077▲38.9200,456
H株上海市を本拠に全国展開する総合保険会社。生保は国内4位、損保は3位のシェアを占める。傘下の年金会社は国内で初めて年金管理運用に関する全面的な業務免許を取得。また、資産運用サービスも手がけており、トータルでの商品提供力を強みとする。昨年は新規契約高の伸び、資産運用実績で競合他社を上回った。
中国人寿保険02628371,4850.211,061▲39.7480,096
ハンセン国内最大の保険会社であり、生命保険の最大手。親会社は国務院直轄の中国人寿保険(集団)公司。農村部を含め、全国規模の販売ネットワークを持っていることが強み。主力商品は個人向け・団体向けの生命保険や事故傷害保険、健康保険、年金保険などで、特に個人向け保険の競争力が強い。国内有数の機関投資家でもある。
中信証券0603013,071▲50.44,237▲66.3144,405
H株国務院系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する証券最大手。総資産、営業収益・利益、主幹事件数などで国内トップ(12年)に君臨する。委託売買、引受、アドバイザリー、アセット・マネジメントなど幅広い業務を展開。同社は世界屈指の投資銀行という目標を掲げており、海外事業を強化。仏証券大手「CLSA」への完全買収が完了すれば、大きな弾みとなる。
海通証券0683710,743▲1.13,020▲2.7119,574
H株上海市を本拠とする地元政府系の老舗証券会社。資産額、営業収益・利益などで国内2位(12年)に位置している。傘下に置く海通国際(00665)は過去に買収した香港地場系証券会社を前身としており、海外業務の拠点となっている。国際金融センターを目指す上海で大きなプレゼンスを有している点が強み。
中国銀河証券068815,962▲7.31,420▲10.036,179
H株政府系の総合証券会社。今年5月にH株上場を果たした。中国最大規模を誇る委託売買業務を中心に、自己売買、引受、アセット・マネジメント業務、プライベート・エクイティ投資などを展開。昨年の営業収益は国内6位にランクインされる。個人顧客数が業界最大で、証券・先物仲介業務の収益比率も高い。このため売買高が増加すれば、その分収益への貢献も大きくなりやすい。

売上高・純利益は友邦保険(01299)が12年11月本決算。そのほかはすべて12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元。

時価総額は13年7月22日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

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注目されるトピックス ~金融国際化の動きに注目~

保険・証券ともに新たな収益源の確保が重要に:

当局は保険商品の販売チャネルに対して監督・管理を強化。生保・損保ともに新たな収益源の獲得が将来の競争力を左右しよう。農村でのマイクロ保険、貯蓄型保険商品、自動車以外の損保などが注目分野だ。証券も委託手数料に依存する構造から脱却し、新たな収益源の確立が求められている。

金融国際化の動きが市場活性化に繋がる期待も:

中国政府は直接金融と国際取引、人民元オフショア市場の拡大に努める方針。こうした動きは漸進的であっても、市場活性化に繋がる。本土・海外間の資本取引は現在QDII(適格国内機関投資家)、QFII(適格海外機関投資家)の枠内で行われているが、投資枠拡大が見込まれる。また、これがQDII2(適格国内個人投資家)、QFII2(適格海外個人投資家)制度の導入により、早晩個人投資家までカバーされる可能性が高い。

運用環境は流動的:

保険・証券会社の運用収益に直結する資本市場の動向は流動的な部分が多い。利上げ局面で預金金利の収入増加が見込める一方、利上げにより株安に転じれば含み損が膨らむリスクも。特に今年6月には短期金利が乱高下し、株式市場が急落。保険会社の運用損、証券会社の利益減少をもたらした。安定した市場環境が期待される。(中国部 畦田)

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