中国株 業界レポート

銀行業界

~銀行改革、シャドーバンキングの動向に注目~
2013年7月23日

市場動向 ~世界有数の事業規模、巨額の利益を稼ぐ一方、システムリスクへの警戒感も~

12年の業界規模:

総資産:133.6兆元(前年比17.9%増)、貸出残高:67.3兆元(同15.7%増)、預金残高:94.3兆元(同14.1%増)、純利益:1.5兆元(同20.7%増)

中国のマネーサプライM2は昨年末に前年末比13.8%増の97.4兆元を記録。今年は100兆元の大台に乗せ、世界最大の規模を誇る。この金融市場の中核をなす銀行の規模も世界有数。高い貯蓄率を背景に昨年末の預金残高は94.3兆元に上った。各銀行はこれまで貸出増加や「理財産品」(資産運用商品)など手数料ビジネスを強化し、収益を拡大。昨年は景気減速や金利引き下げの影響などから減速したが、それでも純利益は前年比20.7%増の1.5兆元と巨額だった。規制金利下で安定した純利息収入を稼ぎ、金融緩和下の潤沢な流動性の恩恵を受けた。

しかし、今年に入り民間の資金需要が伸び悩んできた。一方で地方政府向け貸出やシャドーバンキング(影の銀行)業務への懸念が日増しに強まり、当局も監視を強化。こうしたなか、6月に銀行の資金繰りが悪化すると、市場も動揺し短期金利が急騰。下期を迎えだいぶ収まったが、金融システムへの警戒感も根強く、銀行の収益力も低下しつつある。

業界の特徴 ~“護送船団方式”の特徴を持つ重要セクター~

主力事業面:

銀行は経済の中核を占める重要セクター。メインプレイヤーは四大国有銀行。資金調達面では貯蓄率の高さから大量の預金を集めることができるほか、インターバンク市場からも調達している。運用面では同じ国有企業向けの貸出比率が高い。ただ、リスク管理に課題が残り、地方政府向け融資などで焦げ付きリスクが指摘されている。個人向けはマンションブームを追い風に住宅ローンが拡大傾向。規制金利下にあり、基準金利は一定の金利差(3.00%)が維持されている。また各銀行は個人向けに「理財商品」を積極的に販売し、手数料を稼ぐ。しかし、この取引による調達・運用の多くはバランスシート上に反映されず、通常の銀行の金融仲介機能の枠外にあることから、“シャドーバンキング”と呼ばれている。

国際面:

世界の大手銀行はほとんどが進出済み。人民元業務の開放にともない、外資の進出は拡大しているものの、多くは沿海部に限られており、中国全体での市場シェアは小さい。一方、地場系の大手銀行も有力外資を戦略投資家として受け入れ、先進的な金融ノウハウの吸収に努めているほか、積極的に海外支店の設立、買収なども仕掛けている。

政策面:

規制が非常に厳しい。預金、貸出ともに基準金利が設定されており、日本と同様に準備預金制度がある。中央銀行にとって、基準金利の上げ下げ(利上げ・利下げ)、比率(預金準備率)の調整は金融政策の主要ツールで銀行の業績、株価に大きな影響を与える。当局の監視の目は厳しく、預貸比率(貸出/預金)の上限、自己資本比率の下限などを設定している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~四大国有銀行が中心、増益を確保するも減速基調が続く~

国内の銀行業界は規制金利下にあるため、貸出増が直接増益に繋がる。12.12期、13.1-3月期は安定した金利収入と理財商品の販売による手数料収入の増加から、多くの銀行が2桁増益を確保。景気減速下で巨額の利益を上げ、“儲け過ぎ”との批判は続いた。もっとも純金利マージンの低下、競争激化、引当処理の増加などから増益率は大きく減速している。資産規模でみると、四大国有銀行が上位を占める。最大手は中国工商銀行(01398)。これに中国建設銀行(00939)、中国銀行(03988)、中国農業銀行(01288)が続き、交通銀行(03328)を加えた5行は全資産の45%を占める圧倒的な存在だ。二番手グループには全国展開する株式制商業銀行が続き、多くの銀行には政府系の資本が入っている。中信銀行(00998)、招商銀行(03968)、中国民生銀行(01988)などが代表的。各地には地方銀行も地盤を築いており、重慶農村商業銀行(03618)はその中でも数少ない香港上場の銀行といえる。一方、香港の銀行業界は自由金利を採用。多くの銀行が人民元業務を拡大したものの、貸出競争や資本市場の悪化から小幅増益や減益が目立った。香港ドル発行の資格を持つ匯豊控股(00005)、中銀香港(02388)、渣打集団(02888)の3行が有名。このうち、中銀香港だけが中国銀行の傘下にある中国資本で、残りはロンドンを本拠とする外資だ。このほかでは、東亜銀行(00023)などの香港地場系が一定のシェアを持つ。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
匯豊控股00005520,858▲1.188,510▲16.51,624,637
ハンセン世界屈指の総合金融グループ。ロンドンに本部を置き、事業エリアは世界中に及ぶ。設立母体である傘下の香港上海匯豊銀行有限公司は香港ドルの発券銀行であり、地場系大手の恒生銀行(00011)を傘下に置く。中国事業にも積極的。交通銀行、興業銀行などの大手金融機関に大株主として名を連ねている。事業再編の効果が13.1-3月期には大幅増益というかたちで表れている。
東亜銀行0002312,54518.85,02839.062,877
ハンセン香港最大の地場銀行。香港、中華圏、米国、カナダ、英国などに拠点を設け、リテール・コーポレートバンキング、資産運用、投資銀行業務などを展開している。中国本土事業に積極的である点に注目。外銀としては初めて香港と中国本土の両方で人民元建債券を発行した実績を持つ。マレーシア系財閥の国浩集団(00053)や、三井住友銀行などが大株主。
中国建設銀行00939462,53315.8193,17914.11,360,588
ハンセン国内第2位の商業銀行。四大国有銀行の中では最初に香港に上場した。住宅ローンやインフラ建設向け融資などでの競争力、高めの自己資本比率などが強み。国内に広大な支店網を持つほか、香港、ニューヨーク、東京など海外の主要都市に拠点を置く。米銀大手のバンクオブアメリカを戦略投資家として迎えている。
中信銀行0099889,71116.431,0320.7193,300
H株全国展開している株式制商業銀行。国有系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する。大株主のスペイン大手銀行との提携関係を強化。強みとする法人向け業務に加えて、アッパーミドルのリテール顧客の開拓にも注力している。経済発展が著しい東部沿海地区が主なマーケットとなっている。資金調達力の面で課題が残る。
中国農業銀行01288424,96411.9145,09419.01,030,154
H株四大国有銀行の一角を占め、農業関連の金融事業では高い競争力を持つ。成長市場の農村部(県・県級市)を中心に広大な拠点網を設けている点が強み。四大銀のなかでは最後の香港上場となったが、調達額は約200億米ドルと当時では世界最大のIPOとなった。預金獲得能力が強く、低い預貸比率で貸出余力は大きい。一方で手数料ビジネスがやや見劣りしている点が課題だ。
中国工商銀行01398529,72012.6238,53214.51,726,773
ハンセン国内最大の国有商業銀行。金融機関で世界トップクラスの時価総額を誇り、国内に広大な支店網・顧客基盤を持つ。海外でも欧米やアジア各地などに進出。幅広い金融サービスを提供するほか、クレジットカードの発行数でも高いシェアを持つ。ゴールドマン・サックスなどが戦略投資家として出資。資産の質、財務体質の面で競合他社と比べて優位に立っている。
中国民生銀行0198877,15319.037,56334.5285,206
H株民営企業が中心となって設立した株式制商業銀行。北京市に本店を置き、全国規模で事業を展開。主力は国内企業向けのコーポレートバンキング。リテールバンキングではアッパーミドル層からの預金受入などに積極的。中小企業向け融資、マイクロファイナンスに強みを持つ。理財商品のパイオニアとして手数料ビジネスも得意だが、それだけにシャドーバンキング問題には注意が必要。
中銀香港0238836,76517.517,3782.4254,275
ハンセン香港の大手商業銀行。中国銀行(03988)の傘下にあり、香港ドル発券銀行のなかでは唯一の中国資本。人民元のオフショアセンターとして中長期的な成長が見込める香港において、強固な地盤を有している。人民元の国際化、中国本土と香港の経済緊密化というトレンドから恩恵を享受できる銘柄といえよう。
交通銀行03328120,12616.158,37315.1360,529
ハンセン上海市を本拠に全国規模で事業展開する株式制商業銀行。国内第5位の資産規模を持つ。財政部が筆頭株主となっているほか、世界的金融グループの匯豊控股(00005)を戦略投資家として迎え入れており、両社は提携関係にある。金融の中心地である上海など華東地域で高い競争力を持つ。一方で高い預貸比率が課題で、融資拡大には一層の預金獲得が前提となる。
重慶農村商業銀行0361813,65322.85,36126.329,202
H株重慶市政府系の地方銀行。主に重慶市の県・自治県などで銀行業務を手がけており、資産・預金額は同市内で最大級の規模を誇る。重慶市全体の成長から恩恵を受けられる銘柄。重慶市の農村信用合作社を前身とし、農業関連の金融サービスに強みを持つ。一方で収益構造の高度化が遅れているほか、地方政府設立の目的会社(LGFV)向け融資の比率の高さも気になる。
招商銀行03968113,75417.845,27325.3292,815
H株広東省を本拠に全国規模で事業展開する大手の株式制商業銀行。珠江デルタ、長江デルタ、環渤海地区など、経済水準の高い地域を中心に事業展開している。富裕層向けのプライベートバンキング業務をはじめとした手数料ビジネスで先頭を走る。その分、理財商品の割合も高く、如何にリスクを管理できるかがカギ。国有系コングロマリットの招商局集団が大株主となっている。
中国銀行03988366,17611.5139,43212.2917,949
ハンセン四大国有銀行の一角を占める。国際・外為業務は四大銀のなかでも最も競争力がある。香港では香港ドル発券銀行でもある中銀香港(02388)を傘下に置き、人民元業務を積極的に展開。国際業務の進出都市数、事業規模などは国内トップクラス。金融市場、人民元の国際化という流れから、恩恵を受ける可能性が高い。ただ、預貸比率の高さが課題だ。

売上高・純利益は12年12月本決算。単位は百万元。換算レートは1HKドル=0.8303元、1米ドル=6.310元。

時価総額は13年7月22日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

銀行(業種別一覧)

注目されるトピックス ~金融政策、シャドーバンキング、銀行改革の動向に注目~

中央銀行は緩和と引き締めの狭間で難しい舵取り:

中国人民銀行(中央銀行)が司る金融政策は銀行経営を大きく左右する。一昨年末から方針を転換した中央銀行は、景気下支えを目的に金融緩和を積極的に推進。昨年6月と7月は2カ月連続で利下げに踏み切った。また、利下げ後も買いオペによる資金放出を推進。その結果、マネーサプライは膨らみ、不動産バブルやシャドーバンキングの問題が一層深刻化。ただ、引き締めに転じれば景気腰折れのリスクがあり、中央銀行は難しい舵取りを迫られている。

シャドーバンキングの懸念を払しょくできるか:

中国では「理財商品」がシャドーバンキング業務の中心。この取引を通じて地方政府が設立した特別目的会社(LGFV)などに多くの資金が流れているが、不良債権化、投資バブルの助長、個人投資家の損失拡大などの懸念が出ている。また、満期が集中する四半期末までに銀行は償還資金を確保する必要があり、資金繰り悪化のリスクも付きまとう。当局はこれに対して引き締め強化で問題を解決していく構え。安易な銀行救済には否定的であり、同問題は今後も大きな波乱要因となるだろう。

金融国際化に向けた銀行改革の行方:

“護送船団方式”に守られた銀行への批判は強い。待ったなしの銀行改革が各行の競争力を大きく左右していこう。最大の焦点が金利の市場化。すでに今年7月には個人向け住宅ローン以外の貸出金利の下限が撤廃され、貸出金利は大きく自由化された。この動きは徐々にほかの金利にも適用される見込みで、銀行に一定の金利差を保証してきた規制金利の枠組みが、段階的に解体されていくだろう。これにより競争が一層激しくなる可能性も。その際、預貸比率規制が各行の融資余力に直接関係してくる。預貸比率が上限に近ければ融資減少か預金拡大のいずれかを迫られるからだ。預金獲得能力も益々重要となってこよう(中国部 畦田)

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香港上場9行の経営指標一覧

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