中国株 業界レポート

娯楽・観光業界

~世界の観光大国、構造転換のタイミングに~
2014年6月18日

市場動向 ~世界有数の観光大国、国内・海外旅行は堅調も入国者数は低迷が続く~

13年の業界規模:

観光収入:2兆9475億元(前年比14%増)、国内観光収入:2兆6276億元(同16%増)、国内旅行者数:延べ33億人(同10%増)

長い歴史と広大な土地を有する中国は、多数の世界遺産・遺跡などに恵まれた観光大国。世界最大の国内旅行市場を持ち、外国人旅行者数でも世界4位。また、アジア最大規模の海外渡航者数を誇る。観光業の総収入は昨年も安定的に増加し、3兆元の大台に迫る規模。外食など他のサービス業への波及効果も大きい。休暇制度の整備、所得水準の向上、レジャーの多様化などを受け、国内旅客数は30億人を突破した。海外旅行の敷居も低くなり、海外渡航者数は前年比18.0%増の9819万人と引き続き高い伸びとなった。旅行先は特別行政区である香港・マカオから、近場の東南アジアなど様々。香港の観光・流通業界、マカオのカジノ業界などは本土観光客が主要な客層となっており、同年のマカオのカジノ収入は順調に拡大した。一方で、隣国との関係悪化や深刻な大気汚染の影響などから、中国本土への入国者数は2年連続で減少。インバウンド観光は今後も厳しい状況が続こう。対照的に海外旅行は堅調な伸びを見込めるが、政府の綱紀粛正策や人民元安による反動が懸念材料。国内旅行は都市化の進展や交通インフラの整備などが支援材料となり、安定成長を維持しよう。

業界の特徴 ~国内外の諸要因に左右されやすいセクター~

主力事業面:

国内の観光業界は数多くの企業がひしめき、競争が激しく、景気などの外的要因に影響を受けやすいセクター。外国からの観光客も多いため、海外景気の影響を大きく受ける。災害・伝染病・公害など特殊要因によるリスクもあり、四川省の地震、鳥インフルエンザ、大気汚染の影響などに見舞われた。1-2月、5月、10月の長期連休などの行楽シーズンと閑散期との差が大きいことも特徴。鉄道、航空路線など交通アクセスの整備状況も需要を左右する。

国際面:

中国人の海外旅行というマーケットは年々成長しており、多くの国・地域が旅行客の獲得を競っている。特に本土と隣接する香港・マカオにとっては、地場経済を大きく左右するほどの存在。香港・マカオと中国本土との関係は非常に深い。

政策面:

政府は15年までに旅行総収入を年平均で10%増やす計画。昨年10月に新旅行法を施行し、旅行業界の質向上に努める。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国内の観光業は苦戦となるも、マカオのカジノ会社は好調を維持~

中国の観光業は全体の収入こそ増えているが、厳しい価格競争、公費出張の減少、景気低迷などの影響から、経営環境は比較的厳しい。上海錦江国際酒店(02006)はホテル・外食部門の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行会社の上海錦江国際トラベル(900929)などを傘下に置く、上海市政府系の総合観光グループ。昨年は主力事業が伸び悩んだが、資産売却益により大幅増益となった。地元政府系の黄山旅行開発(900942)は黄山への観光客が減少し、業績も悪化。中央政府系の香港中旅(00308)は主力の観光事業が不振。マレーシア系のホテル会社「香格里拉(亜洲)(00069)」も低迷した。

一方、中国から多くの観光客が押し寄せるマカオのカジノ業界は成長が続いた。カジノライセンスを持つ6社は昨年、いずれも増益を確保。最大手は“カジノ王”のスタンレー・ホー氏ファミリーが率いる澳門博彩控股(00880)。同ファミリーは新濠博亜娯楽(06883)も支配している。ただ、ここ数年は香港系の銀河娯楽(00027)と米ラスベガス系の金沙中国(01928)が、澳門博彩控股を猛追。それぞれコタイ地区にオープンしたカジノリゾートがシェア向上・好業績に繋がっている。残りの2社は永利澳門(01128)と美高梅中国(02282)で、やや遅れをとっている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
銀河娯楽
00027
香港ドル 66,03316.410,05236.2237,989
ハンセン 香港有数の富豪である呂志和ファミリーが支配するマカオのカジノ事業者。「スターワールド」は国内外で高い知名度を誇る。11年にコタイ地区の大型カジノリゾート「ギャラクシー・マカオ」第1期をオープンし、市場シェアを一気に高めた。第2期のオープンは15年半ばとなる見込み。
香格里拉(亜洲)
00069
米ドル 2,0811.23929.337,840
香港その他 マレーシア華僑財閥系のホテル会社。アジア各地や欧米で、高級ホテル「シャングリラ」(香格里拉)を経営している。日本でも東京駅前に5つ星ホテルを開業。香港や中国本土の主要都市に進出している。アジアを代表する高級ホテルとして、ブランド力に定評がある。
香港中旅
00308
香港ドル 4,360 ▲6.61,15243.38,699
レッドチップ 中国政府系の大手観光サービス会社。香港に本拠を置き、本土では広東省を中心に各地で事業を展開。本土・香港間を中心とした旅行代理店業務や、総合旅行サイト「芒果網」を運営。このほか、リゾート開発を積極的に進めている。旅行需要が旺盛な華南エリアで優位なプレゼンスを築いている点が強み。
澳門博彩控股
00880
香港ドル 86,95610.27,70614.2105,647
香港その他 マカオのカジノ最大手。長きにわたりマカオのカジノを独占支配した企業を前身としている。創業者のスタンレー・ホー主席は“マカオのカジノ王”として業界内で大きな影響力を誇るが、同氏はすでに高齢で健康リスクがある。他社に遅れたものの、コタイ地区に新たなカジノ施設を建設する計画。17年の開業を予定。
永利澳門
01128
香港ドル 31,34110.27,70119.6140,593
香港その他 マカオでカジノホテルリゾート事業を展開する米国系企業。ナスダックに上場するウィン・リゾーツの傘下にあり、24時間営業のカジノ、高級小売店、レクリエーション施設などを備えた高級カジノホテル「ウィン・マカオ」を経営する。コタイ地区のカジノ施設は16年初旬に完工予定。
金沙中国
01928
米ドル 8,90836.82,21579.2425,026
ハンセン ラスベガスを本拠とするカジノ世界大手「ラスベガス・サンズ」の中国子会社。マカオで最初のラスベガス式カジノを開業後、次々と大型の総合カジノリゾートをオープンしてきた。新興埋立地のコタイ地区を重視し、カジノリゾート「サンズ・コタイ・セントラル」をオープン。同地区で高いプレゼンスを持つ。
上海錦江国際酒店
02006
人民元 9,2883.244440.011,577
H株 上海最大の観光グループ「錦江集団」の中核企業。地元政府系の企業で、ホテル経営の上海錦江国際酒店発展(900934)、旅行代理の上海錦江国際トラベル(900929)、タクシー・物流事業の上海錦江国際実業投資(900914)を傘下に置く。クラシック、豪華、ビジネス、エコノミーなど、幅広いスタイルのホテルを経営している。
美高梅中国
02282
香港ドル 25,72818.25,33417.790,630
香港その他 マカオのカジノ事業者。ニューヨーク上場のMGMリゾーツ・インターナショナルの傘下にある。スタンレー・ホー氏の娘も大株主。07年12月に開業したカジノリゾート「MGMマカオ」を経営。後発企業で、市場シェアは低い。このため、コタイ地区に総額26億米ドルを投資し大型のカジノホテルを建設する計画。
新濠博亜娯楽
06883
米ドル 5,08724.763752.8140,497
香港その他 スタンレー・ホー氏ファミリーが支配している新濠国際(00200)と、豪州企業との合弁会社。一般客向けのカジノ事業に強みを持つ。主力は09年にコタイ地区に開業した大型カジノ「シティ・オブ・ドリームズ」。タイパ地区の中型カジノ「アルティラ・マカオ」やスロットマシン専用の遊技場も運営する。
黄山旅行開発
900942
人民元 1,294▲12.4144▲40.16,014
上海B株 中国屈指の名山として知られ、世界自然遺産に認定される黄山の観光サービス会社。黄山風景区の入園チケット販売、ロープウエー運営、ホテル経営、旅行会社経営などを手がける。黄山は商都「上海」を中心とした長江デルタ地域と距離的に近い。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年6月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

娯楽・観光(業種別一覧)

注目されるトピックス ~業界の構造転換が進む可能性も、長期的には都市化が支援材料~

観光需要の多様化を背景に、業界の構造転換が進む:

長らく旅行需要をけん引してきたツアー旅行だが、マイカーの普及、交通インフラの整備、公務員への綱紀粛正などの外的要因に加えて、観光ニーズの多様化という潮流を考えると、この先大きな成長は見込めない。新旅行法の施行により商品サービスの質向上が強く求められるなか、観光業全体が構造転換の時期に差し掛かっている。個人旅行、マイカー旅行、エコツーリズムに対応した多彩な商品設計、オンラインでの販売・宣伝などの動きがますます広がっていこう。

香港・マカオへの観光客が減少する可能性も:

今年に入り本土からの渡航者と香港市民との軋轢が益々強まっており、香港政府も本土からの渡航者数を制限する可能性を示唆した。マカオでも違法マネーの流入阻止に向けて、地元当局は規制を強化。腐敗根絶を掲げる中国政府も歩調を合わせている。こうした流れは香港・マカオへの旅行客の減少と観光業の低迷というリスクを抱える。香港・マカオ当局の政策がさらに引き締めの方向に向かうのか、注目する必要があろう。

長期的には高速鉄道の整備、都市化の進展、上海ディズニーランド開幕が支援材料:

政府は国策として都市化の推進を掲げており、その前提となる交通インフラの整備に積極的。高速鉄道の開通が加速し、中国各都市と香港・マカオを結ぶ交通アクセスはさらに便利となる見通しだ。また、都市化は中間層を増やし、新たな旅行需要に繋がる可能性も。上海ディズニーランドへの関心も開業予定の15年末が近づくにつれ高まっていこう。(中国部 畦田)

娯楽・観光(業種別一覧)

中国の観光収入と旅客数の伸び
中国の観光収入と旅客数の伸び
マカオのカジノ収入の推移
マカオでカジノ経営ライセンスを保有する6社の比較

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