中国株 業界レポート

通信業界

~“4G元年”で環境が大きく変化する可能性も~
2014年6月23日

市場動向 ~移動通信市場はすでに成熟段階に、4G元年は業界にとって節目の年に~

13年の業界規模:

営業収益:1兆1689億元(前年比8.7%増)、固定資産投資:3755億元(同3.9%増)、携帯加入件数:12億2911万件(同10.5%増)

世界最大の人口を有する中国は、携帯電話の加入件数も世界1位。通信キャリアの主要収益源は移動通信事業で、昨年の営業収益全体の8割弱を占めた。ただ、携帯電話の普及率は昨年末時点で93%に達しており、市場はすでに成熟段階。各社は2Gから3Gへの切り替え需要の獲得にしのぎを削っている。また、スマートフォンの普及により「微信」などのチャットアプリが台頭すると、データ通信量が急速に増加。非通話収入の比率が初めて5割を超えた。一方で通話やショートメッセージの需要が低迷。こうしたことから営業収益全体の伸びが鈍化しており、今年も1-4月の伸び率が6%台にとどまるなど、減速が続く。固定通信部門も引き続き低迷。一方で、4Gライセンスの交付が近いとの観測から通信キャリアの設備投資額は抑制気味となり、伸び率はさらに鈍化した。

そして昨年12月に政府は「TD-LTE」規格の4Gライセンスを通信3社に交付。各社はすでに4Gの商用サービスを始めている。また、仮想移動体通信事業者(MVNO)を通じた異業種からの参入、チャットアプリの攻勢、税制改正など、通信業界を取り巻く環境は大きく変化。“4G元年”となる今年は、通信業界にとって節目の年となる可能性が高い。

業界の特徴 ~大手3社が寡占する、規制色の強い業界~

主力事業面:

国有系の通信キャリア3社が市場を寡占しており、携帯電話とブロードバンドが主要な収益源。携帯電話の普及率はすでに高いが、依然として約6割のユーザーが旧来型の2Gであり、3G、そして4Gへの切り替えに向けた潜在需要は大きい。スマートフォンの普及が進み、各社は独自のサービスを展開。販売補助金を投入し、激しい競争を繰り広げている。一方で通話料収入は伸び悩み、サービス拡大にあわせ通信網を整備するため設備投資の負担が重い。携帯電話は双方向の課金制、プリペイドカード方式などが中心であり、システムが日本とは大きく異なる。

国際面:

本土では外資による通信サービス事業への参入は原則的に禁止されており、端末、通信設備などの周辺市場に限られているが、そこでの存在感は大きい。3Gの通信規格は国際規格であるW-CDMA、CDMA2000に加え、中国独自開発の「TD-SCDMA」がある。4Gでは中国主導の「TD-LTE」が国内で唯一認可を受けている規格となっている。

政策面:

競争と保護の両面がある。競争では MVNOによる異業種からの参入など、寡占市場の打破を段階的に進めていく方針。他方、規制色が強く、国産規格のTD-SCDMA、TD-LTEを奨励。4Gのもう一つの主要規格、「FDD-LTE」の認証は遅れている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~本土は国有3社、香港は財閥系企業が中心~

中国では成長分野の3Gが競争の主戦場。最大手であり中国独自の3G規格「TD-SCDMA」を担う中国移動(00941)は、引き続き加入件数、営業収益・利益の規模で他社を圧倒している。昨年は念願の「iPhone」の取扱いを始めたほか、販売補助金の投入でローエンド層の顧客を囲い込み、新規加入件数を大きく伸ばした。一方で、販管費や投資負担が重く、13.12期、14.1-3期ともに減益に沈んだ。移動・固定通信ともに業界2位の中国聯合網絡通信(香港)(00762)、移動通信で3位だが、固定通信では最大手の中国電信(00728)は、13.12期、14.1-3月期で増収増益を確保。中国聯合網絡通信(香港)はコンテンツ力などを強みに、1契約あたり平均月間収入(ARPU)が伸びた。中国電信はインターネットや付加価値サービス収入が増加。なお、通信会社の慎重な投資姿勢を受け、通信会社を顧客とする中国通信服務(00552)は低迷した。

一方、香港の通信業界は地場系企業が主役。数碼通電訊(00315)、和記電訊香港(00215)と電訊盈科(00008)、香港移動通訊(CSL)の大手4社はいずれも香港の有力財閥に属する。これと中国移動の香港子会社を加えた5社体制で、激しい競争を展開。全般的に苦しい経営となり、数碼通電訊は設備投資、和記電訊香港は携帯端末の販売不振が響いた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
電訊盈科
00008
香港ドル 27,3177.91,88513.532,101
香港その他 香港大手の通信事業者。傘下に置く香港通訊SS(06823)を通じて、固定・移動・国際電話、ブロードバンド・テレビ事業などのサービスを一括して提供できる点が強み。直近では新世界発展(00017)傘下の通信会社を買収、香港でのシェアをさらに高めた。同社の李沢楷主席は、香港一の富豪として知られる李嘉誠氏の次男。
和記電訊香港
00215
香港ドル 12,777▲17.8916▲24.613,782
香港その他 香港の大手通信キャリア。「3」ブランドの携帯電話サービスを提供するほか、「HGC」ブランドでブロードバンド、音声通話、国際通話など固定電話事業も手がける。携帯電話事業はGSM、3G、4Gサービスを展開。携帯電話端末の販売も重要な収益源。香港有数の財閥である長江実業(00001)の傘下にある。
数碼通電訊
00315
香港ドル 12,06721.2843▲17.68,996
香港その他 香港・マカオで移動通信事業や、携帯電話端末の販売事業を展開する企業。香港の有力財閥の一つである新鴻基地産(00016)の支配下にある。長年にわたるボーダフォングループとの提携を解消し、現在は「SmarTone」ブランドでサービスを展開。LTEに対応した「iPhone5」を取り扱っている。
中国通信服務
00552
人民元 68,45911.32,238▲725,834
H株 中国電信集団(チャイナテレコム)の傘下にある通信事業のサポートサービス会社。通信事業者向けのBPO、アプリケーション・コンテンツなどの事業を展開する。「三網融合」、ブロードバンド拡張計画を契機に通信事業者の設備投資意欲が強まるとみられるなか、同社がその恩恵を享受する可能性も。
中国電信
00728
人民元 321,58413.617,54517.4306,734
H株 3大通信会社において、固定通信・ブロードバンドで国内最大手。数年前に念願の携帯電話事業に参入すると、その後は業績改善の傾向にある。通信キャリアの総合力が問われるなか、固定・ブロードバンドでトップシェアを誇る同社は、移動通信とのシナジー効果を如何に発揮できるかがカギとなる。
中国聯合網絡通信(香港)
00762
人民元 295,03818.510,40846.7284,556
ハンセン 中国聯合網絡通信の傘下にある大手通信会社。移動、固定通信ともに国内2位のシェアを持つ。2GはGSM、3GはW-CDMA、4GはTD-LTEの規格を採用。収益源の3Gは競争力が高く、昨年のARPUは増加した。また、競合関係にあるチャットアプリの代表格「微信」と提携関係を構築。その効果が注目される。
中国移動
00941
人民元 630,1778.3121,692▲5.91,540,231
ハンセン ユーザー数で世界最大の移動通信会社。2位以下を大きく引き離している。3Gでは国産規格「TD-SCDMA」による通信サービスを提供。さらにその後継である4G規格「TD-LTE」の商用サービスをいち早く展開し、4Gでは競合他社を大きく引き離している。一方で、国産規格の普及という政策的任務を担っており、投資負担が懸念材料。
中信国際電訊
01883
香港ドル 6,01966.71,068131.410,039
レッドチップ 政府系コングロマリット「中信集団」(CITIC)に属する通信事業者。本土と香港・マカオの国際電話などで、通信キャリア向けに、音声通話、ローミング、ショートメールの中継サービス、モバイル向け付加価値サービスなどを提供する。

売上高・純利益は数碼通電訊(00315)が13年6月本決算、それ以外が13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年6月20日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

情報通信サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~“4G元年”は異業種参入、微信の台頭で更なる競争へ~

“4G元年”は中国移動がリード、今後はFDD-LTEの交付時期が焦点に:

現時点で4Gの市場規模は小さいが、スマートフォンの浸透で高速通信の需要は増えており、4Gも着実に普及していく可能性が高い。すでに先行する中国移動が4Gサービスの料金体系を6月から大幅に見直すなど、大手3社の競争は激しくなっている。現状では中国移動が競争を優位に運ぶだろう。追う展開の2社はFDD-LTEのライセンスの交付時期が焦点となる。

設備投資、税負担の拡大が懸念要因:

4Gの商用化により、通信各社には設備投資の負担がのしかかる。また、6月からの増値税適用により、通信3社の利益はいずれも押し下げられる見通し。安定した財務・収益基盤が一層重要となってこよう。こうしたなか、投資負担を抑えるため、政府主導で3社共同出資による基地局建設会社を設立する構想が浮上。同構想の行方が注目される。

異業種からの参入、チャットアプリの台頭:

異業種からの参入を進めるため、政府は今年から複数の企業に他社回線を通じた通話サービスのライセンス(MVNO)を付与。また、IT大手は微信に代表される無料チャットアプリで攻勢をかけており、通信会社はARPUの水準を如何に保ち、伸ばしていけるかがカギとなろう。コンテンツ力が通信会社の競争力を左右する可能性が高い。(中国部 畦田)

情報通信サービス(業種別一覧)

大手3キャリアの比較

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携帯電話加入件数の推移
3G純増数の推移

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