中国株 業界レポート

自動車業界

~世界最大の自動車大国、中国企業の競争力強化がカギ~
2014年6月23日

市場動向 ~世界最大の自動車市場、海外ブランドが買い替え需要を取り込み成長~

13年の業界規模:

販売台数:2198万台(前年比13.9%増)、乗用車:1793万台(同15.7%増)、輸出台数:87万台(同6.4%減)

中国は世界最大の自動車大国。昨年の国内市場は回復が進み、販売台数は初めて2000万台の大台を突破、5年連続で世界1位となった。買い替え需要が盛り上がり、なかでもSUV車は5割もの伸び率。全体として中外合弁会社が販売する海外ブランド車が好調を維持した。特に日系ブランドの回復は顕著。一方の地場系ブランド車も販売を伸ばしたものの、得意とする中低価格帯で外資の攻勢を受け、乗用車に占めるシェアは40.3%、14年1-4月では38.3%まで低下している。また、中外合弁会社は国内販売が中心であり、輸出の担い手は地場系の民営企業だが、同年は輸出が落ち込んだ。ただ、自動車市況の回復を受け、大手メーカーの業績は改善した。

モータリゼーションの進展を受け、今年の自動車市場も安定的に成長する見込み。もっとも、政府は大気汚染対策として一部都市で販売抑制策を実施。市場の成長率は昨年を下回る見通しだ。競争力を高めるため、業界再編が進む可能性も。

業界の特徴 ~世界の有力メーカーが進出、激しい競争を展開~

生産・販売面:

業界再編は着実に進み、上位10社の国内シェアは昨年、9割弱に達した。東北、長江デルタ、中部地区などが自動車産業の中心地。国有企業は有力外資との合弁会社が主力。一方の民営企業は独自ブランドを展開している。経済発展、所得水準の向上、道路インフラの整備などを背景に、ここ数年でモータリゼーションが進展。独立系の販売ディーラーや、自動車用品店など周辺市場も成長している。一方で渋滞の深刻化、自動車排気ガスなどの問題も顕在化。過剰な生産能力も課題となっている。

国際面:

世界の主要自動車・部品メーカーの大半が進出しており、トヨタ、日産、ホンダの日系大手3社も合弁会社を通じて現地生産を拡大。高級車などは海外工場から輸入している。外資は従来の富裕層に加え、近年は中間層にも浸透。一方の輸出は地場系ブランドが主役。ただ、規模やブランド力に劣り、近年は苦戦が続いている。

政策面:

外資は規制を受けており、上限50%の合弁形式、同車種については合弁パートナー2社までしか認められていない。近年の政策は渋滞緩和を目的とした大都市での走行規制、ナンバープレート供給制限措置などの引き締め策が目立つ。一方で電気自動車、プラグインハイブリッド車への購入補助金策を導入(15年末まで)。環境問題を考慮した政策となっている。

主要企業、主な取扱い銘柄 ~国有系は海外ブランド、民営は地場系ブランドが中心~

昨年の国内市場は回復が続き、大手メーカーの業績は概ね好調。特にMPV、SUVへの買い替え需要を取り込めた企業は好業績が続いた。上海汽車、東風汽車、第一汽車などの国有大手はそれぞれが有力外資と合弁事業を展開し、海外ブランド車が主力車種。上場企業をみると東風汽車集団(00489)、広州汽車(02238)の両大手が、日本車の販売回復などを追い風に13.12期、14.1-3月期ともに大幅増益を計上。独BMWと合弁を組む華晨中国汽車(01114)は高級車需要を取り込み、増益が続いた。長安汽車(200625)は他社と異なり自社ブランド車が好調で、大幅な増益となった。もっとも自社ブランドは民営企業が中心。こちらも昨年は比亜迪(01211)が大幅増益に転じるなど、業績が改善した。また、長城汽車(02333)と吉利汽車(00175)はSUVの販売が好調で、好業績を継続。ただ、今年に入り民営大手は販売低迷、業績悪化に見舞われている。商用車市場も大型トラックの需要を中心に回復。大手の中国重汽(03808)やイ柴動力(02338)の業績は大きく改善した。ディーラーをみると、大手にはメーカーの系列に属さない独立系の企業も多い。中升集団(00881)、宝信汽車(01293)、正通汽車(01728)、中国永達汽車(03669)などが代表例で、自動車市場の回復を追い風に堅調な業績となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
吉利汽車
00175
人民元 28,70816.62,66330.523,852
香港その他 華東地区を本拠とする大手の民営自動車メーカー。「吉利」(GEELY)ブランドで知られる。低価格帯、小型の乗用車が主力で、民営企業の中でも海外市場の開拓に熱心な点などが特徴。親会社の「ボルボ」買収による長期的なシナジー効果に期待。
東風汽車集団
00489
人民元 37,263511.910,52815.8115,628
H株 湖北省に本拠を置く大手自動車メーカー。中央政府系の大型企業で、親会社を含むグループ全体の自動車販売台数は昨年、国内2位の353.5万台を記録した。SUVや商用車のシェアが高い。日産、ホンダ、プジョーなどの有力外資と合弁事業を展開。プジョーとの資本提携による効果が期待される。
中升集団
00881
人民元 52,5275.01,01034.620,783
香港その他 上場企業ではトップクラスの売上高を誇る独立系ディーラー。国内各地で4S(新車販売、アフターサービス、部品提供、顧客情報の4つの機能を持つ販売代理店)を展開。メルセデス・ベンツ、アウディ、トヨタ、日産、ホンダなどの海外ブランド車を取り扱う。長く日本車を販売してきただけに、日中関係の影響を受けやすい。
華晨中国汽車
01114
人民元 6,1033.23,37446.667,747
レッドチップ 遼寧省政府系の大手乗用車メーカー。子会社の瀋陽華晨金杯汽車有限公司は、「海獅」ブランドのワンボックスバン、「閣瑞斯」(グランス)ブランドのMPVなどを製造・販売。BMWとの合弁会社は、BMW3シリーズ、5シリーズをセミノックダウン生産している。BMWは国内でも高級車としてブランド力が高く、同社の大きな収益源。
比亜迪
01211
人民元 49,76812.1553579.6130,651
H株 自動車、電池、IT部品の3事業を柱とする民営企業。広東省に本拠を置き、主力ブランドの「F3」は国内の新車販売市場で過去に第1位を記録した。世界有数のシェアを占める二次(充電式)電池のノウハウを生かし、ハイブリッド車、電気自動車の開発にも注力。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が大株主として出資している。
宝信汽車
01293
人民元 30,08266.31,00741.916,750
香港その他 経済成長で先行する東部沿海地区を中心に事業展開する自動車ディーラー。主に高級外車の販売を手がける。主力はBMWで、アウディ、キャデラックといった高級車のほか、トヨタ、ホンダ、日産、現代などの中・高級車を取り扱う。ここ数年の高級車の需要増加が追い風に。
広州汽車
02238
人民元 18,82445.22,653133.959,052
H株 広州市政府系の大手自動車メーカー。傘下に広州トヨタ 、広州ホンダ、広汽日野など、日本企業との合弁会社を複数抱える。乗用車が大半を占め、ブランド力が高く、中・高級車に強み。自動車産業の集積地である広東省に地盤を置く。日本車の比率が高いことから、日中関係の影響を受けやすい。
長城汽車
02333
人民元 56,78431.68,22444.596,485
H株 河北省に本拠を置く民営の大手自動車メーカー。ピックアップトラックの「風駿」、SUVの「哈弗」やセダンなど、自社ブランド車の製造販売を手掛ける。なかでも、ピックアップとSUVに関しては国内最大手。また、中国本土のみならず、ロシア、ブルガリアやベトナムなど、海外にも複数の工場を持つ。
イ柴動力
02338
人民元 58,31221.13,57119.447,541
H株 山東省に本拠を置く、大型トラック、建設機械、ディーゼルエンジンの有力メーカー。地元政府系の企業で、大型トラック向けのディーゼルエンジンでは国内最大手。07年にはM&A等を通じてトラック製造事業に参入した。将来の成長分野として天然ガスエンジンの開発に力を注いでいる。
中国重汽
03808
人民元 30,4109.0271120.710,519
レッドチップ 「中国重汽」(SINOTRUK)ブランドで知られる大型トラック業界のリーディングカンパニー。山東省政府系の中国重型汽車集団の傘下にある。大株主の独トラック大手「MAN」からの支援をてこに技術・ブランド力の向上を目指している。
長安汽車
200625
人民元 38,48230.63,506142.468,589
深センB株 重慶市を本拠とする中国政府系の大手自動車メーカー。販売台数で国内4位。「睿騁」シリーズや「逸動」シリーズのセダン、「CS」シリーズのSUV、「長安之星」シリーズのバンなどの自社ブランド車を生産。スズキ、フォード、マツダとの合弁会社を持つ。江鈴自動車(200550)に間接出資している。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年6月20日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

自動車・二輪車(業種別一覧)

注目されるトピックス ~買い替え需要の増加、規制緩和など、市場の構造変化に注目~

買い替え需要が徐々に増加、デザイン・機能性が一層重要に:

中国のモータリゼーションは長くエントリーユーザーがけん引しており、ここ数年は低価格化が進んでいた。しかし、徐々に買い替え需要の比率が高まっており、昨年は全体の約2割に達した模様。所得水準の向上もあり、エントリーユーザーも含めてデザイン・機能性や、アフターサービスをより重視する動きが広がっている。低価格だけでは競争に勝てない時代が到来するとみられ、品質・ブランド力が一層重要となろう。

外資規制に緩和の可能性も、自社ブランド車の競争力強化が不可欠:

世界的にみれば、中国企業は規模や技術・ブランド力などの面で有力外資に劣る。さらに今後は外資規制が緩和される可能性があり、将来的には海外勢が100%出資で参入するだろう。そうなれば中外合弁企業に依存する国有大手は抜本的な変革に迫られる。民営も含めて喫緊に自社ブランド車の競争力を高める必要があり、買収・提携が加速していこう。

メーカー各社による積極的な新車投入に注目:

各社は今後も積極的に新車を投入していく方針で、成長分野であるSUVに加え、低燃費・低排出の環境対応型車が主戦場となるだろう。大気汚染が深刻化するなか、環境対応型車の普及は不可欠。政策的支援は加速する見通しで、トヨタがハイブリッド車の現地生産に踏み切るなど外資の攻勢も強まろう。また、新車発表の舞台として、北京、上海、広州の3大モーターショーに注目。北京は偶数年のメーデー、上海は奇数年の4月最後の週、広州は毎年11月後半に開催される。

(中国部 畦田)

自動車・二輪車(業種別一覧)

中国の自動車販売台数
ブランド別販売台数
生産メーカー別販売台数
国内の自動車販売台数の推移と伸び率

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