中国株 業界レポート

流通業界

~内需主導の安定成長までは道半ば~
2014年6月26日

市場動向 ~消費は10年連続の2ケタ成長となるも、成長のけん引役としては力不足~

13年の業界規模:

小売総額(中国):23兆4380億元(前年比13.1%増)、消費者物価指数(CPI):同2.6%上昇、Eコマース取引総額:10兆2000億元(同29.9%増)、小売総額(香港)4945億HKドル(同11.0%増)

所得水準の向上、減税、最低賃金引き上げなどの内需拡大策などを背景に、中国は「世界の市場」としての地位を益々固めている。小売総額は昨年も10年連続で2ケタ成長を確保。実質成長率は11.5%だった。ただ、名目・実質ともに前年を下回り、安定成長のけん引役としては力不足。景気減速に加え、政府主導の綱紀粛正策の影響などが表れた。こうしたなか、消費レベルの高度化に伴い宝飾品やスマートフォン、自動車など高価格帯商品の売れ行きが堅調。また、Eコマースの普及が一層進み、市場規模は10兆元を突破、流通各社はネットへの対応に追われた。

一方、香港・マカオは人口が少なく、消費市場も成熟しており、成長エンジンは中国人観光客の増加にかかっている。昨年は香港の消費市場も改善に向かい、2ケタ台の伸び率を回復した。

業界の特徴 ~“世界の市場”での販売競争は激しいが、政策的な追い風は見込める~

主力事業面:

購買層の中心は都市部で、旧正月、国慶節などの長期休暇が消費シーズンとなる。ブランド衣類・宝飾品など高級品に強みを持つ百貨店、家電量販店は景気変動や季節的要因の影響を受けやすいが、スーパーマーケットが得意とする生活必需品の需要は総じて安定的。販売競争が激しく、大手は買収・合併などを通じてスケールメリットの拡大に努めている。

国際面:

中国の需要を取り込もうと、数多くの外資企業が進出。外資規制の緩和・撤廃を追い風に事業を拡大させており、一部の欧米企業は業界のトップ10に名を連ねている。

政策面:

内需主導の経済成長に転換するために、政府は最低賃金の引き上げを実施。1人あたりの所得額を20年までに10年比で2倍とすることが政策目標だ。これに向けて、所得再分配制度の拡充を進めている。中長期的な購買力の拡大に期待。

主要企業、主な取扱銘柄 ~多くの企業が乱立し業界の寡占度は低い、経営環境はやや苦しい~

民営、地方政府系、外資など多くの企業があるが、業界の寡占度はかなり低い。13年の「チェーンストア企業100強」の販売高は合計で2兆元を超えたが、それでも引き続き全体の1割に届かず、伸び率も9.9%と前年に比べ若干低下した。Eコマースの台頭から業界内の競争が益々激化。一方で賃料・人件費の増加、在庫整理の圧力、公費支出の抑制策などが重しとなり、経営環境は苦しい。大手は製品の差別化や、経営の合理化などを推進。家電量販の大手で民営企業の国美電器控股(00493)は、不採算店舗の統廃合により収益力が強まり、業績が改善。2位に順位を上げた。3位には国内有数のスーパー・コンビニチェーンを展開する華潤万家がランクイン。同社の親会社は中央政府系列の華潤創業(00291)で、一大コングロマリットを形成しているが、業績不振が続く。他にも上海市を本拠とする上海友誼集団(900923)とその傘下にある聯華超市(00980)、北京市に地盤を置く北京物美商業(01025)、北京京客隆(00814)などが、スーパー・コンビニチェーンとして有名。いずれも昨年は販売が伸び悩み、コスト増に苦しんで減益となった。大手百貨店には民営企業も多く、広東省の茂業国際(00848)、江蘇省の金鷹商貿(03308)、浙江省の銀泰百貨(01833)は小幅ながらも増益を確保できた。

一方、「世界の市場」を狙い外資も積極的に進出しており、100強中にも多くの企業がランクイン。台湾・フランス合弁の高キン零售(06808)は強みとするハイパーマーケットの地方出店を加速し、スケールメリットを発揮して同業他社を尻目に好業績が続いている。香港企業は新世界発展(00017)などの財閥系が中心であり、積極的に中国へ進出するほか、香港でも中国人観光客の需要を狙っている。この中で独立系の莎莎国際(00178)は中国人観光客への化粧品販売で売り上げを伸ばし、増益を続けている。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
莎莎国際
00178
香港ドル 8,75614.293513.314,614
香港その他 有名ブランド化粧品の卸小売などを手がける民営企業。香港を拠点に、マカオ、本土などに販売拠点を設置。中華圏でのブランド力は高く、個人消費の拡大、健康・美容指向の高まりというトレンドを追い風にできる。本土観光客の増加による恩恵を受けやすい。
華潤創業
00291
香港ドル 146,41316.01,908▲51.651,566
ハンセン 中央政府系のコングロマリット「華潤集団」の中核企業。小売、飲料、食品などの消費関連事業を幅広く展開している。スーパーマーケット「華潤万家」、ドラッグストア「采活」などを経営。消費関連の中心銘柄の一つ。英流通大手のテスコと設立した合弁会社の動向が注目される。
国美電器控股
00493
人民元 56,40110.4892黒転21,538
香港その他 家電量販大手。企業買収を通じて規模を拡大してきた。前主席の逮捕などの影響でライバルの蘇寧電器に遅れをとってきたが、ここ数年は合理化などで収益力が回復。低コスト・高効率のサプライチェーンを背景に、巻き返しを図る。採算路線に乗ったネット通販事業との相乗効果にも期待。
茂業国際
00848
人民元 3,8057.48020.06,477
香港その他 広東省、江蘇省、四川省など南部・南西部で百貨店事業を展開する民営企業。傘下の成商集団(600828)は四川省での百貨店事業に加え、不動産開発も展開。河北省の茂業物流(000889)、遼寧省の瀋陽商業城(600306)への支配権を強化。北部での事業拡大を狙う。
北京物美商業
01025
人民元 16,98810.6459▲23.77,867
H株 民営の小売企業。京津冀地区(北京市、天津市、河北省)を中心に、ハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニエンスチェーンを展開している。本拠の北京市で高いシェアを誇るほか、北京市と距離的に近い天津市と河北省および、東南部の浙江省で新規出店や吸収合併などにより店舗網を拡大している。
利福国際
01212
香港ドル 5,9557.82,44819.024,516
香港その他 香港や中国本土で高級百貨店を経営する企業。香港では「崇光百貨」(そごう百貨)を経営。銅鑼湾の旗艦店は香港を代表する百貨店の一つ。中国本土でも百貨店を建設し、香港と同様の経営方式を採用。上海市を皮切りに、江蘇省、遼寧省などで事業を展開。また、不動産部門は傘下の利福地産(02183)が担当している。
大昌行
01828
香港ドル 42,261▲12901▲13.88,482
レッドチップ 自動車の販売を主力とする多角経営企業。香港とマカオで「大昌行」ブランドの自動車販売・メンテナンス事業を手がけている。さらに食品・日用消費財(FMCG)の販売なども展開。食品販売では米タイソン・フーズの冷凍牛肉、ブラジルのセアラ社の冷凍豚肉などを取り扱う。中信泰富(00267)の傘下にある。
銀泰商業
01833
人民元 4,51015.41,0659.513,708
香港その他 民営の大手百貨店チェーン。本拠とする浙江省で最大級の店舗網を構築している。主要顧客は都市部の富裕層で、中高級品のアパレル、化粧品、アクセサリーなどの品揃えに強み。主要株主であるアリババグループの支援を受け、今後は店舗販売とネット販売の連携を図るオンライン・ツー・オフライン(O2O)事業を強化していく。
金鷹商貿
03308
人民元 3,6601.01,2351.416,584
香港その他 民営の大手百貨店グループ。所得水準が比較的高い江蘇省で高い知名度を持つ。店舗の多くが一等地に立地し、国内外の一流ブランドをそろえて、中高所得者層を主な顧客としてきた。しかし、今年に入り戦略を調整。米国のハンドバックメーカーの買収を通じて、中級ブランド分野への進出を図る。
百盛
03368
人民元 5,1101.5354▲58.46,087
香港その他 「百盛」(パークソン)のブランドで、百貨店事業を全国展開するマレーシア系企業。94年に中国に進出し、北京市、上海市、重慶市、陝西省西安市、四川省成都市など主要都市に店舗を構える。アッパーミドル層をターゲットとし、売上高の大半を専門店からの売上手数料が占める。
高キン零售
06808
人民元 86,19510.72,77515.286,907
香港その他 仏台合弁のハイパーマーケット最大手。フランスの小売大手「オーシャン」と台湾の有力財閥「潤泰グループ」が90年代末にそれぞれ上海市に進出後、両社のシナジー効果を発揮するために合弁事業化した。「欧尚」と「大潤発」のダブルブランド体制を構築。低所得者をターゲットとし、積極的に地方都市で出店している。
上海友誼集団
900923
人民元 51,9265.41,036▲11.521,920
上海B株 上海政府系の大型流通グループ「百聯集団」の中核企業。百貨店の「友誼百貨」、ホームセンターの「好美家」のほか、聯華超市(00980)を通じて、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、コンビニを経営する。上海市を主力とする所得水準の高い華東地区をメインに事業展開。今後は内陸部への進出を加速する方針。

売上高・純利益は莎莎国際(00178)が14年3月本決算、それ以外は13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年6月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル、換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

小売業(業種別一覧) 卸売業・貿易(業種別一覧) コングロマリット(業種別一覧)

注目されるトピックス ~内需主導の経済成長に向け、所得倍増計画が中長期的な追い風に~

政府の所得倍増計画を受け、中長期的な政策見通しは明るい:

最低賃金を通じた所得水準の底上げ、税制など再分配機能の拡充による格差是正により、所得倍増を着実に実現していく構えであり、中長期的な政策見通しは明るい。一方で短期的には直接的な補助金支給策などが見込みにくく、足元では公費支出の抑制策が消費の逆風になっている。政策動向には随時、注意していく必要があろう。

急成長するEコマース市場、ネット販売力の優劣が成長を左右:

新しいビジネスモデルが台頭し、従来型の百貨店、スーパーの顧客層を切り崩している。アリババグループ、京東商城など新興の民営企業が主役となっている。国美電器控股など既存の大手流通チェーンもネット販売を強化。ネット販売力の優劣が、流通企業の今後の成長を左右するだろう。

消費の二極化が進展する可能性も:

中国はすでに世界有数の奢侈品消費国となった。特に富裕層の海外ブランドへの信仰は厚く、デパートなどは高級路線を鮮明にして利益率の確保に努めている。一方で人口の大半を占める中低所得者層にとっては、値段の安さが最重要。高級化と大衆化の二極化が今後も進む可能性が高く、流通各社は明確な戦略が求められる。

(中国部 畦田)

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中国チェーンストア企業100強のうち弊社取扱銘柄と関連する企業などを一部抜粋

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小売総額の商品別内訳と前年比伸び率
小売総額の推移と伸び率

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