中国株 業界レポート

医療関連業界

~政策リスクはあるが、成長余地も大きい~
2014年7月7日

市場動向 ~医療関連は世界有数の市場規模に、昨年も安定成長を継続~

13年の業界規模(前年値修正済み):

医療支出総額:3兆1662億元(前年比9.5%増)、医薬・医療機器業界の売上高:2兆1682億元(同17.9%増)、税引き前利益:2197億元(同17.6%増)

世界最大の人口を抱える中国は医療関連の市場規模が大きく、30年以上にわたり一貫してGDPを上回る成長率を維持。世界でも上位のマーケットに成長している。ただ、政府による医療費抑制策を背景に、昨年の医療支出総額はやや伸び悩んだ。こうした中、医薬品・機器・設備など関連業界の販売高、利益は引き続き増加し、売上高は初めて2兆元の大台を突破した。医療保険を含む社会保障制度の整備が進み、医療需要の増加が続いた。中国はまた、医薬品に関して世界有数の貿易大国。昨年の輸出入総額は前年比10.3%増の897億米ドルに達した。

中国は少子高齢化が着実に進んでいることから、今後も医療需要が増加していく可能性が高い。今年の業界全体の売上高・利益も昨年同様の伸び率が見込まれる。ただ、政府による薬価の引き下げやGMP(製造管理及び品質管理基準)の改定、民間資本の導入策などが業界再編を促しており、その動向が注目される。

業界の特徴 ~内需型のディフェンシブセクター、政策コストが大きい~

生産・販売面:

医薬関連は概ね内需型のディフェンシブセクター。原薬・製薬をはじめ、医薬品の卸・小売、医療機器・設備の製造販売、関連サービスなど複数のサブセクターに分けられる。中心となる製薬は大きく西洋薬、漢方薬に区分され、多くの企業が厳しい競争を繰り広げる。輸出品の大半は低付加価値の原薬にとどまっているほか、国内で販売する製品も概ねジェネリック医薬品に限られる。医薬品は市販薬として流通業者を通じて消費者に届けられる。処方薬をめぐっては医薬分業が遅れており、病院による利益追求の過剰な処方が問題となっている。

国際面:

中国の医薬品貿易の中心は漢方薬で、輸出額の規模は大きい。ただ製剤能力が足りず、漢方製剤では貿易赤字となっている。有力外資はハイエンド市場で高いシェアを握り、積極的な投資で攻勢をかけている。

政策面:

人々の健康を担う産業だけに、政府の規制は非常に厳しい。各企業は当局が定める多くの基準を満たす必要があり、政策コストは大きい。定期的に見直される国家基本薬品品目に収載されれば保険の対象になることから、製薬会社にとって品目に選ばれることが重要。政府は薬価の引き下げを進めるほか、製薬会社と病院の癒着にもメスを入れている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~集約度は低く競争も激しいが、全般的に業績は堅調~

政府系、民営を含め、国内外の多くの企業が激しく競争しており、集約度は低い。昨年の医療関連業界は医療支出拡大の追い風を受け、全体では引き続き増収増益となった。上場企業をみると、大手は地元政府系が中心。売上高で製薬トップの広州医薬集団を親会社に持つ広州白雲山医薬(00874)は漢方薬が強み。昨年は漢方薬技術を活かした清涼飲料水の販売が好調で、好業績を記録した。ライバルの上海医薬(02607)も増収増益となったが、流通部門は競争激化から利益率が低下した。北京市では北京同仁堂が漢方薬の老舗として有名。傘下に置く北京同仁堂科技(01666)は漢方薬市場の成長とともに業績が拡大した。国務院系の企業では国薬控股(01099)が医薬品流通のリーディングカンパニー。製薬子会社の国薬一致薬業(200028)とともに、堅調な業績となった。同業界は民営企業の活躍も目立つ。復星国際(00656)傘下の復星医薬(02196)は医薬品大手に成長しており、国薬控股の大株主でもある。特定分野に強みを持つ民営企業も多く、四環医薬(00460)は心血管薬、中国生物製薬(01177)は肝炎治療薬、麗珠医薬(01513)と神威薬業(02877)は漢方注射薬、山東羅欣薬業(08058)は抗生物質が、それぞれの主力製品。昨年も薬価引き下げ・競争激化の影響がみられたが、各社は基本的に増益を確保できた。

なお、医薬品関連を除くと上場企業は少ないが、医療機器メーカーの山東威高集団医用高分子製品(01066)、病院経営の鳳凰医療(01515)が新興企業として大手に成長。ただ、両社とも昨年は業績が不振だった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
四環医薬
00460
人民元 4,73355.61,30344.150,784
香港その他 心脳血管疾患の処方薬で国内トップクラスの製薬会社。研究開発から製造販売までの一貫体制を構築。専門業者を通じて全国各地の1万近い病院に販売している。心脳血管疾患は代表的な生活習慣病で、少子高齢化と生活水準の向上に伴い患者数は今後も増加する可能性が高い。これに伴い、同社製の処方薬も安定増が期待できる。
広州白雲山医薬
00874
人民元 17,60846.098034.439,065
H株 華南地区で最大規模の総合医薬企業。地場系大手として製品開発力、ブランド力ともに高いランクにある。親会社からの資産買収や、同業A株企業への吸収合併が完了し、企業規模が大きく拡大した。漢方薬を利用した清涼飲料水「王老吉」は同社のベストセラー商品だが、商標権をめぐる裁判が懸念材料。
山東威高集団医用高分子製品
01066
人民元 4,61325.1388▲61.134,737
H株 山東省を本拠とする民営の大手医療機器メーカー。主力ブランド「潔瑞」は医療機器としては初めて「中国馳名商標」に認定された。使い捨ての点滴・輸血器具、整形器などを製造して病院などに販売するほか、海外にも輸出している。外資との結びつきが強く、成長分野と位置づける人工透析器で、テルモや日機装と提携している。
石薬集団
01093
香港ドル 9,949139.9973▲5538,225
レッドチップ 大手総合医薬品メーカー。親会社は聯想控股有限公司で、聯想集団(00992)とは兄弟会社の関係にある。買収を通じて、利益率の低い原薬等から革新的医薬品やハイエンドの後発医薬品へと主力製品のシフトが加速。成人病の治療薬を重点とする研究開発に力を注いでおり、その動向が注目される。
国薬控股
01099
人民元 166,86622.22,25013.756,759
H株 医薬品流通の国内大手。国内の7割以上の病院を顧客としている。半官半民の企業で、国有企業の中国医薬集団が実質筆頭株主となっているほか、民営コングロマリットの復星国際(00656)も大株主。国薬一致薬業(200028)を傘下に置き、製薬事業も展開している。これまで買収・再編を積極的に進めてきた。
中国生物製薬
01177
香港ドル 9,90132.11,03716.432,811
香港その他 肝炎治療薬のリーディングカンパニー。他にも心臓・脳血管薬、抗がん剤、鎮痛剤などをカバーする。研究開発には定評があり、合弁会社は日本の厚生労働省の外国製造業者に対する医薬品GMP適合性調査をクリア。急成長が続く中国医薬品市場を背景に、新薬の研究開発に注力している。
麗珠医薬
01513
人民元 4,61917.148810.416,601
H株 上海上場の健康元薬業集団(600380)を親会社に持つ医薬品メーカー。広東省珠海市に本拠を置く民営企業で、製品は「麗珠」(LIVZON)のブランドで知られる。主力製品は漢方を原薬とする注射薬。ほかにも各種化学薬品、バイオ薬品などを幅広く取り扱う。B株をH株に転換し、香港上場を果たした。
鳳凰医療
01515
人民元 88717.190▲1110,189
香港その他 病院経営の民間最大手。病院民営化の先駆けとなった健宮医院をはじめ、北京市で10を超える総合病院を経営・管理している(13年6月末)。投資・運営・移管(IOT)契約に基づき病院や診療所の運営サービスを提供。中国で民間経営の医療機関はごく少数だが、将来的に増加する可能性があり、そのけん引役として期待される。
北京同仁堂科技
01666
人民元 2,91119.339018.114,857
H株 北京市政府系の漢方薬メーカー。親会社の「北京同仁堂」は漢方薬の老舗で、ブランド力が高い。天然素材を用いる漢方薬をベースとした顆粒剤、丸薬、錠剤、カプセル剤、保健食品などの製品に特化。健康・自然志向を背景に天然素材を用いる漢方薬へのニーズが高まっており、同社にとっては追い風だ。
復星医薬
02196
人民元 9,92136.32,02729.656,845
H株 民営コングロマリットの復星国際(00656)の下で、医薬事業を担当。製薬部門はジェネリック医薬品が中心で、国内上位の売上高を誇る。医薬品の流通事業も展開しており、同分野で国内最大手の国薬控股(01099)に出資。製薬・流通の両面で医療制度改革の恩恵を受ける可能性がある。
上海医薬
02607
人民元 78,22314.92,2439.342,504
H株 上海政府系の総合医薬品企業。医薬品・ヘルスケア製品などの製造販売を全国展開する。再編を経て事業を垂直統合型化し、製造販売から卸小売までを手がけている。所得水準の高い華東地区を地盤としている点が強み。製造する医薬品は処方薬が大部分。流通事業は全国規模の販売ネットワークを構築している。
神威薬業
02877
人民元 2,1872.66845.511,710
香港その他 河北省を本拠に、漢方薬の研究開発から生産販売までを手がける新興の民営企業。製品は「神威」、「五福」、「神苗」のブランド名で知られ、漢方の注射液、カプセル剤、顆粒剤などを処方薬として販売している。
山東羅欣薬業
08058
人民元 2,52913.5429▲2.66,876
H株 山東省を本拠とする民営の製薬会社。「フォーブス」中国版で「潜在力のある中国中小企業」に名を連ねるなど、その成長性は国内外から高く評価されている。製品は各種抗生物質、薬剤、抗腫瘍薬、解熱鎮痛剤など幅広い。

売上高・純利益はいずれも13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年7月4日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

医薬・医療機器(業種別一覧)

注目されるトピックス ~社会保険の整備、高齢化の進展で医療関連市場の成長余地は大きい~

業界再編が加速、今後の焦点はネット販売に:

医療関連会社による提携・買収・合併の動きはさらに加速するだろう。これまでの再編の動機は規模拡大、製品種類の拡充などが中心だったが、今後はネット販売も加わろう。当局は今年5月に制度設計のパブリックコメントを明らかにするなど、医薬品のネット販売解禁は最終段階に。これに合わせてEコマース最大手のアリババグループが医薬品の販売を目的に中信21世紀(00241)の買収に動くなど、ネット販売をめぐる再編の動きはすでに始まっている。

社会保険の整備を通じて市場は益々拡大へ:

中国はこれまで社会保障が不十分で、“看病難、看病貴”(診療機会の難しさ、医療費の高さ)という構造的な問題を抱えてきた。この解決に向けて中央政府は医療、年金など各種社会保険の整備を進めており、その結果として医療支出が今後も着実に伸びていこう。同時に中国は世界最大の人口を抱え、長期的にみると少子高齢化が進んでいく。市民の健康志向も高まっており、こうした点から医療関連市場は大きな成長余地が見込める。

“飴と鞭”の政策動向、各社の対応力が競争力を左右へ

中国の医療関連業界もほかの国と同様に医薬品の承認、価格などが当局の統制下にあり、政策の影響が大きい。医療・薬害事故を防ぐため、当局はGMPを厳しく製薬会社に要求し、業界の利権構造にもメスを入れる構え。政策リスクは引き続き高いといえるだろう。一方で、規制緩和を通じて公営中心の医療機関に民間資本の導入を図るほか、医療保険の給付水準の引き上げ、一人っ子政策の緩和など、追い風となり得る政策も。業界各社の政策への対応力が競争力を左右しよう。

(中国部 畦田)

医薬・医療機器(業種別一覧)

医薬・医療機器業界の売上高(13年度)
医薬・医療機器業界の売上高内訳(13年度)
医療支出総額と1人あたり支出額の推移
医療支出総額の負担比率の内訳
中国の医薬・医療機器メーカーの売上高順位

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