中国株 業界レポート

食品業界

~世界有数の食品大国、倹約令の影響が顕在化~
2014年7月9日

市場動向 ~世界有数の食品大国、引き続き売上を伸ばすも倹約令の影響が重しに~

13年の業界規模:

売上高:10兆1140億元(前年比13.9%増)、税引き後利益:7531億元(同13.6%増)、輸入額:952億米ドル(同8.9%増)

中国は世界有数の農業国であると同時に、生産規模も多くの食品で世界トップレベルにある。しかし、世界最大の人口を抱える中国では食料消費量も急激に伸びており、この20年間に肉・卵類の消費量は約4倍に増加。食料増産が追い付かず、自給率は90%を割り込んでいる。昨年の食品企業(一定規模以上)は10%台前半の増収増益を確保。所得水準の向上と食品嗜好の多様化が引き続き追い風となった。しかし、高級品市場を中心に景気減速や政府の公費抑制策の影響が表れたほか、食の安全をめぐる問題が続いて国内ブランドへの信頼感が低下。輸入品との競争が激しくなり、苦戦する国内の有力ブランドもみられた。このほか、農作物のインフレ傾向、鳥インフルエンザの流行なども打撃となった。こうしたなか、大手を中心とする業界再編が進んでおり、今後はさらに加速しそうだ。政府は食の安全性を確保するため規制を強化しており、中小零細企業の淘汰が進もう。

業界の特徴 ~総じてディフェンシブなセクター、規制は強まる方向~

生産・販売面:

景気の影響が比較的小さいディフェンシブなセクター。国有系、民営、外資を含む多くの企業が激しい競争を展開。中国企業の多くが小規模で、採算性、産業集積度は概ね低く、農作物・食肉の価格動向の影響を受けやすい。卸経由の伝統的な販売ルートに加え、近年は小売への直販やネット販売が伸びている。全体としてビールは夏場、白酒(パイチュウ)、ワインなどは旧正月前後に消費シーズンを迎えるなど、季節的要因が生産・販売に与える影響は大きい。

国際面:

世界の大手食品メーカーが参入し、大きなシェアを握る。特に即席めん、清涼飲料の分野では台湾系企業の存在感が際立つ。日系企業をみるとアサヒビールが青島ビール(00168)と、キリンホールディングスが華潤創業(00291)とそれぞれ提携関係を構築するなど、酒造・飲料分野の結び付きが強い。

政策面:

政府は内需拡大の一環として農村部の振興、水利整備を重視。コメや小麦には最低買付価格の制度を導入している。農作物の安定供給や農民の購買力拡大に繋がれば、業界には追い風だろう。一方で食の安全に関わる問題は人々の関心が高く、政府も新設した国家食品薬品監督総局に権限を集約するなど、対策を強化。規制は強まる方向にある。

主要企業、主な取扱銘柄 ~外資系や政府系企業が業界をリード、各社で明暗が分かれる~

食品業界はブランド力などを背景に大手が有利な状況。農作物・食肉など原材料価格の上昇圧力は続き、各社の業績は明暗が分かれた。即席めん、米菓、清涼飲料の分野では台湾系3社が大手。各社の13.12期をみると、最大手クラスの康師傅(00322)は特殊要因を除けば最終増益を確保。中国旺旺(00151)は新製品の販売効果から好業績が続いた。一方で統一企業中国(00220)は競争激化により利益率が低下した。地場系企業では国務院直轄の中糧集団が一大コングロマリットを形成し、業界をリード。食用油、飲料、ワインの大手メーカーである中国食品(00506)、農作物加工最大手の中国糧油控股(00606)、乳業最大手の蒙牛乳業(02319)など、複数の上場企業を傘下に収める。昨年は公務員に対する倹約令の影響でワイン需要が低迷し、中国食品が赤字に転落。一方で中国糧油控股と蒙牛乳業の両社は倹約令の影響をあまり受けず、増益を確保した。特に蒙牛乳業は生乳大手の現代牧業(01117)、粉ミルク大手の雅士利国際(01230)を傘下に置くなど、積極的に規模を拡大している。アルコール飲料でも大手は政府系企業が多い。昨年のビール生産量は猛暑の影響もあり、5000万キロリットルを突破。青島ビール(00168)、華潤創業(00291)、北京控股(00392)の大手3社は、ハイエンド製品がけん引役となりビール部門の業績が改善した。一方、倹約令の影響が国内の白酒・ワイン企業を直撃。白酒大手の安徽古井貢酒(200596)は贈答用需要が急激に落ち込んだ。張裕葡萄酒(200869)の「張裕」、中国食品の「長城」、王朝酒業(00828)の「王朝」というワインの国内3大ブランドは、輸入ワインの攻勢も不振の一因。民営の食肉大手である雨潤食品(01068)は、ブランド建設や販売ルートの拡充策が奏功し、黒字に転換した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国旺旺
00151
米ドル 3,81813.768724.1144,101
ハンセン 中国に進出した台湾系食品メーカーの草分け。主力製品は米菓、飲料、スナック菓子などで、「旺旺」ブランドは国内で高い認知度を誇る。価格決定力が強く、利益率は業界内でも比較的に高い。岩塚製菓と資本・業務提携を構築。森永乳業から技術供与を受けている。昨年は新製品の販売効果が大きかった。
青島ビール
00168
人民元 28,2919.71,97312.274,738
H株 長い歴史を持つ山東省青島市のビールメーカー。アサヒビールと資本・業務提携を結ぶ。業界のリーディング企業であり、海外でも通用する高いブランド力が強み。経営陣は企業買収によるシェア拡大に意欲を示しており、その動向が注目される。
統一企業中国
00220
人民元 23,3299.09167.125,398
香港その他 「統一」ブランドで知られる台湾系の大手食品・飲料メーカー。「来一桶」、「統一100」ブランドの即席めん、「統一緑茶」シリーズの茶飲料、「多」シリーズの果汁飲料などが主力製品。製品は国内の販売ランキングで上位に名を連ねている。果汁飲料の強化に向けて、大手の煙台北方安徳利果汁(02218)に資本参加している。
華潤創業
00291
香港ドル 146,41316.01,908▲51.652,048
ハンセン 国務院系コングロマリット「華潤集団」の中核企業で、主に消費関連の事業を展開。食品の大手メーカーであり、特に飲料事業のシェアは大きい。ビール子会社は「雪花」ブランドを展開しており、昨年は粤海置地(00124、旧社名:金威ビール)のビール事業を買収。今後は如何に買収効果を発揮できるかが勝負となる。
康師傅
00322
米ドル 10,94118.8409▲10.9122,914
ハンセン 台湾系の大手食品会社で、日本のサンヨー食品も大株主。天津市を本拠に、即席めん、飲料、焼き菓子などの製造・販売を全国で展開。多くの製品分野でトップクラスのシェアを占める。飲料事業の更なる拡大を目指し、一昨年に米ペプシコ中国部門の巨額買収に踏み切った。
中国食品
00506
香港ドル 26,218▲15.1▲890赤転8,056
レッドチップ 各製品で高いシェアを誇る総合食品メーカー。国務院直轄の食品コングロマリット「中糧集団」の支配下にある。主力製品は「福臨門」ブランドの食用油、「長城」ブランドの赤ワインなど。合弁会社を通じてコカ・コーラの中国での生産・販売事業も展開している。
中国糧油控股
00606
香港ドル 94,5433.51,52123.916,222
レッドチップ 農産物加工のリーディング企業。食用種子油、種粕、ビール用麦芽、米・小麦、小麦粉、燃料エタノールなどの製造・販売・貿易などを展開し、食品・流通業者を主要顧客とする。中国食品と同じく中糧集団に属しており、グループ内の経営資源を活用できる点が強み。取扱製品の多くで国内有数の規模を誇る。
雨潤食品
01068
香港ドル 21,440▲19.944黒転6,507
香港その他 南京市に本拠を置く民営の大手食肉メーカー。主力製品は豚肉で、豚の仕入、屠畜・解体、各種加工までを一貫して手がけており、インフレに比較的強い。食肉は市場規模が大きい一方で企業化は進まず、成長余地は大きい。ブランド建設や販売ルートの改善を通じて経営立て直しを図っている。
蒙牛乳業
02319
人民元 43,35720.41,63125.270,394
ハンセン 中糧集団傘下の乳業最大手。元々は内モンゴル自治区創業の民営企業だった。戦略投資家として迎えた仏ダノン社との提携効果が進めば、競争力が一層強化される可能性も。原料の安定調達に向けて生乳大手の現代牧業(01117)を系列化に置いたほか、粉ミルク大手の雅士利国際(01230)を買収し、製品構成を強化した。
安徽古井貢酒
200596
人民元 4,5819.1622▲14.310,845
深センB株 中国八大名酒の一つ、約1800年の歴史を有するという「古井貢酒」(白酒)を生産販売する企業。一昨年までは贈答用白酒の需要が伸び、業績が大きく拡大。しかし、昨年は一転して減益に転じた。習近平政権が進める公費抑制策のマイナス影響を大きく受ける企業。
張裕葡萄酒
200869
人民元 4,321▲23.41,048▲38.417,941
深センB株 山東省煙台市を本拠とする老舗ワインメーカー。フランスのワイン大手「カステル社」と合弁事業を展開。主力の「張裕」ブランドは国内で広く知られており、販売量は業界トップクラス。食の西洋化に伴うワイン需要の拡大が見込まれるが、一方で輸入ワインとの競争に晒されている。

売上高・純利益はいずれも13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年7月8日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

食料品(業種別一覧)

注目されるトピックス ~食の安全問題、綱紀粛正などの逆風下で、再編が加速する可能性も~

市場構造、趣向の変化に注目:

中国の食品業界は長らく、食肉を典型例に個人事業者を主役とした分散型の市場が特徴となってきた。ただ、全体的な流れは日本のような企業や協同組合を中核とした集中的な構造に向かっている。上場企業にとって、市場拡大の余地は依然として大きい。さらに消費者の嗜好も多様化。健康・安全志向、食の洋風化は都市部などで顕著にみられ、これらの需要を如何に獲得できるか、各社の製品戦略が注目される。

食をめぐる貿易摩擦が強まる可能性も:

自給率の低下は構造的なものであり、食品輸入の増加傾向は続こう。こうしたなか、ここ数年で食品の輸出入をめぐって諸外国との軋轢が増えてきた。昨年は欧州産ワインをめぐり中国・欧州間の貿易摩擦に発展。この問題は最終的に今年に入って和解で合意したが、今後も同様の摩擦が繰り返される可能性があろう。食品の輸入動向が国内企業に与える影響は大きい。

食の安全問題、綱紀粛正という逆風は続く:

昨年も食の安全をめぐる問題は続き、消費者の不信感が続いている。この中で国内ブランドへの信頼感が低下し、海外ブランドへの需要が高まっている。香港では海外ブランドの粉ミルクの買占めに動く業者が摘発されるほど。また、公務員への倹約令は今後も続く見通し。こうした逆風下、国内企業にとっては製品の安全性向上とブランド力の回復が死活問題であり、中小零細の生き残りは益々難しくなるだろう。業界再編の加速が予想される。

(中国部 畦田)

食料品(業種別一覧)

食品企業の売上高・粗利益率とCPIの推移
主要製品の販売シェア(14年1-4月)ビール・粉ミルク
主要製品の販売シェア(14年1-4月)インスタント麺・茶飲料 主要製品の販売シェア(14年1-4月)ボトル水・果汁飲料

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。