中国株 業界レポート

繊維・アパレル・宝飾品業界

~世界の繊維・アパレル大国、コスト高が懸念材料~
2014年7月14日

市場動向 ~圧倒的な繊維・アパレル大国、昨年は新興国向けの輸出が好調~

13年の業界規模:

輸出額:2921億米ドル(前年比11.2%増)、売上高:6兆3849億元(同11.5%増)、税引き前利益:3506億元(同15.8%増)

中国の繊維・アパレル業界は圧倒的な規模を誇り、例えば化学繊維、靴の生産量は世界全体の約7割を占める。昨年はASEANなど新興国向けが好調で、輸出額は再び2桁台の伸び率を回復した。主力の国内市場も持続的な消費レベルの上昇、ファッション意識の高まり、Eコマースの普及などを受け、安定的に成長。景気減速の影響から生産量の伸びは鈍化したが、企業業績は集約化や合理化が進み、2桁の増収増益まで改善した。また、引き続き高級品の需要が好調で、奢侈品全体の国内市場規模は280億米ドルまで成長。富裕層を中心とする購買層は香港など海外で奢侈品を消費し、その額は世界全体の半分近くを占めるまでになった。もっとも同分野の国内勢は海外ブランドに押され気味。また、中国の公務員への綱紀粛正策、不安定な為替動向などの影響を受け、今年に入り繊維・アパレル製品の販売額は国内外で伸び悩んでいる。

業界の特徴 ~典型的な労働集約・輸出型の産業~

生産・販売面:

繊維・アパレル業界は繊維から糸、生地などを生産する川上の紡績・紡織から、衣類を製作する川中のアパレル、さらに川下の小売、関連産業である紡績機械など多岐に渡り、数多くの企業がひしめき、収益性は低い。人件費や綿花など原材料価格の上振れ圧力も続く。生産地は沿海部に集中し、特に広東、江蘇、浙江の3省でアパレル生産の約半分を担う。ただ、売れ筋製品の変化が速く、臨機応変に対応できなければ在庫を抱えやすい。一方、香港のアパレル産業は歴史が古く、アジア有数の貿易拠点として有名。また、中国人観光客によるブランド品・高級品購入も盛んだ。

国際面:

典型的な加工貿易・輸出型産業。地場系、外資など多くの企業が沿海各省を拠点に世界各国へ輸出している。中国製は価格競争力、スケールメリットなどで優位に立つ一方、貿易問題に発展しやすい。また、人件費の高騰、人民元高は徐々に輸出競争力を弱めており、生産拠点をベトナム、バングラデシュなどに移す動きも見られる。

政策面:

同業界は雇用吸収力が大きく、政府は経済全体への影響を考慮して重要産業と位置づけ。五カ年計画では業界全体の高度化を模索し、15年までに年間3000億米ドルの輸出額を目指す。また、税還付率をツールに輸出環境のコントロールに努めるほか、過剰気味の生産能力の淘汰・整備、業界再編、製品の高付加価値、地場系ブランドの発展などを支援している。

主要企業、主な取扱銘柄 ~経営環境が苦しいなか、香港の宝飾品会社は好業績を維持~

景気低迷と競争激化、製造コストの増加圧力などに晒され、繊維・アパレル企業は苦しい経営環境が続いている。一方で競争力を強化し、業績改善に繋げた企業もあった。川上の紡績・紡織をみると天然繊維では民営の魏橋紡織(02698)、化学繊維では政府系の中国石化儀征化繊(01033)が有名。魏橋紡織は粗利益率の向上に努め、昨年通期の純利益は大幅に拡大。ただ、14.6期(中間)は綿花価格が不安定で、減益となる見込みだ。中国石化儀征化繊は需給関係の悪化で販売価格が大幅に下落し、最終赤字が続く。川中のアパレル製造は大手になると、川下の販売店まで展開しており、民営企業が目立つ。スポーツアパレルの分野は“同質化”競争が続き、大手の李寧(02331)は在庫整理に追われて2年連続の赤字となった。波司登(03998)と百麗国際(01880)はそれぞれダウンジャケット、婦人靴の分野でトップを走るが、最大手クラスといえどもコスト増に苦しむ結果となった。

対照的に香港系企業は大手になると、中華圏を含む世界各地で事業を展開しており、代表格はカジュアル衣料の思捷環球控股(00330)と佐丹奴国際(00709)。ただ、思捷環球控股は前年の減損計上の反動により、13.12期(中間)で最終利益を計上できたばかり。佐丹奴国際も為替変動や販売落ち込みから減益が続くなど、低迷している。これに対して香港の宝飾品大手は中国富裕層の需要を取り込み、販売を拡大。周大福珠宝(01929)、周生生(00116)、六福集団(00590)などが有名で、概ね好業績となった。このほか、アパレル商社の利豊(00494)も米国の景気回復に伴い業績が改善した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
周生生
00116
香港ドル 25,14237.71,21823.713,484
香港その他 香港地場系の宝飾品業者。香港のほか、マカオ、本土や台湾にも進出しており、「周生生」ブランドは市場で広く認知されている。近年はインターネット販売にも注力している。
思捷環球控股
00330
香港ドル 25,902▲14.1▲4,388赤転22,261
香港その他 「ESPRIT」ブランドをグローバルに展開するアパレルメーカー。製造から販売までを一貫して手がけている。欧州の売上比率が高く、欧州の債務問題やユーロ相場の影響を受けやすい。業績不振が続いてきたが、13.12期(中間)はリストラ効果も表れ始め、最終利益を確保できた。今後は如何に収益力を強化できるかがカギ。
利豊
00494
米ドル 20,7452.672517.585,109
ハンセン 香港を代表する大手商社。衣料産業の歴史が古い香港にあって、アジア有数のアパレル貿易商社として抜群の知名度を誇る。高品質とコスト競争力を有したサプライチェーンを掌握し、設計・開発から、原材料の仕入、委託生産、品質管理、出荷までを一貫して展開できる点が強み。欧米景気の影響を受けやすい。
六福集団
00590
香港ドル 19,21543.31,86550.013,815
香港その他 「六福珠宝」で知られる香港の宝飾品大手。中華圏や北米で事業展開している。香港の宝飾品大手の中では香港・マカオの売上比率が比較的高い。広東省に宝飾品の加工センターを設置している。販売ルートの拡大を目的に、香港資源(02882)の宝飾品販売会社に50%出資。この巨額投資の効果が注目される。
佐丹奴国際
00709
香港ドル 5,8483.1663▲19.77,033
香港その他 香港で創業後、30年余りでアジア屈指のファストファッション・チェーンまで成長した。20~35歳向けを中心とした主力ブランド「Giordano」を中華圏で広く展開。中国も含めたアジア地域の消費拡大が追い風に働く可能性も。新世界発展(00017)を率いる鄭裕トウ氏が実質支配している。
中国石化儀征化繊
01033
人民元 17,6774.1▲1,450赤拡17,261
H株 石油製品・石油化学最大手の中国石油化工(00386)で、化学繊維などを担当する企業。主力製品はポリエステルで、国内屈指の生産能力を持つ。しかし、生産設備は過剰気味といえ、国内外の需要低迷から2年連続で赤字を計上した。経営立て直しに向けて製品構成の改善に努めており、その動向が注目される。
百麗国際
01880
人民元 32,85913.54,3522.374,306
ハンセン 婦人靴で国内最大級のシェアを誇る民営企業。婦人用革靴では国内トップクラスのシェアを持ち、同社ブランドは販売ランキングの常連。紳士用革靴でも上位に入る。スポーツ衣料も手がけ、ナイキ、アディダス製品の代理販売では国内最大手。製品設計から最終販売までの一貫体制を築いている。
周大福珠宝
01929
香港ドル 77,40734.87,27232.1112,200
香港その他 香港に本拠を置く老舗の宝飾品業者。「周大福」ブランドは中華圏で高い知名度を誇り、アジア最大級の宝飾品業者に成長してきた。創業者の鄭裕トウ・名誉主席は香港屈指の富豪。本土事業の売上比率や金製品のヘッジ比率が比較的高く、垂直統合型のビジネスモデルを築いている。
安踏体育用品
02020
人民元 7,281▲4.51,315▲3.231,745
香港その他 福建省の大手スポーツ用品メーカー。李寧(02331)と国内ブランドのトップを争う。主力は「ANTA」ブランドのスポーツシューズ・ウエアで、国際ブランド「FILA」の中国事業も買収している。広告宣伝活動を重視し、中国オリンピック委員会に協賛している点が特徴。
李寧
02331
人民元 5,824▲12.8▲392赤縮7,498
香港その他 中国地場系のスポーツ用品メーカーでは草分け的存在。「LI-NING」ブランドで知られ、ロサンゼルス五輪の金メダリストである李寧・主席が創業した。主力製品はシューズ、ウエア。近年は競争激化から大量の在庫を抱えるようになり、業績が悪化。経営立て直しの途上にある。
魏橋紡織
02698
人民元 13,881 ▲9.0 62930.54,801
H株 山東省の大型民営企業。綿紡績、生機(=きばた。染色加工前の織物)、デニムなどの製造・販売を主力とし、綿紡績では国内最大のシェアを誇る。国内外の大手アパレル企業を含め顧客層は厚い。主要取引先である伊藤忠商事とは複数の合弁会社を展開している。
波司登
03998
人民元 8,238▲11.7695▲35.69,689
香港その他 ダウンジャケットなど羽毛服の国内最大手。研究開発、デザイン、原材料の仕入れ、販売までを一貫して手がける。オールシーズン衣料を強化し、冬物衣料への依存度を減らすことが大きな課題となっている。また、原材料が羽毛であることから、鳥インフルエンザによる影響もリスク要因だ。
老鳳祥
900905
人民元 32,98529.189045.614,860
上海B株 上海市政府系の宝飾品大手。宝飾品部門は1848年創業の老鳳祥銀楼を前身としており、業界の老舗といえる。取扱製品は金・銀・ダイヤだけでなく、翡翠など中国の伝統的な宝飾品もカバー。ほかの宝飾品企業と同様、金相場の影響を受けやすい。

売上高・純利益は思捷環球控股(00330)が13年6月本決算、六福集団(00590)、周大福珠宝(01929)、波司登(03998)が14年3月本決算。それ以外は13年12月本決算となっている。なお、百麗国際(01880)は決算期変更に伴い13年12月までの12カ月間の業績を第二次中間決算として発表。 単位は百万。

時価総額は14年7月11日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

アパレル等(業種別一覧)

注目されるトピックス ~活発化するM&A、構造転換を目指す五カ年計画に注目~

中国企業によるM&A(合併・買収)が活発化:

中国では依然としてOEM生産が主流であり、地場系ブランドの知名度は海外で低い。国内でも中低価格帯では一定のシェアを占めるが、高級品はまだまだ欧米、日本、香港を含む海外ブランドに及ばない。ブランド力や製品構成の強化が不可欠だが、ここ数年はM&Aを通じて高級品や海外市場を強化する動きが加速。昨年は波司登が英国のメンズファッションブランド「Greenwoods」を傘下に収めた。今後も中国企業による積極的な投資が予想されよう。

業界構造の転換を目指す五カ年計画:

政府は業界の構造転換を目指しており、15年末までの五カ年計画で5つの目標を掲げている。具体的には、①量の拡大から質の向上、②サプライチェーンにおける生産重視から研究開発と営業販売体制の拡充を優先、③東部主導から、東部、中部、西部の調和を保った形での発展、④市場開拓の重点を海外から国内に移す、⑤伝統的な産業分野の底上げと、炭素繊維など新たな成長分野の育成の両立―――。政策的な追い風が期待できる上場企業の発掘が重要となる。

コスト要因の動きには注意が必要:

労働集約・輸出型の業界であるだけに、リスク要因も少なくない。特に価格競争力を左右する製造コストは重要で、綿花など原材料の内外価格差、人件費などの動きには留意する必要がある。安定的な輸出拡大には人民元レートの安定や、貿易摩擦の軽減が不可欠。アパレル企業の出店戦略にはテナント価格の動向が絡んでこよう。また、宝飾品業界の売れ行きに影響する金相場の動きも把握した方が良いだろう。

(中国部 畦田)

アパレル等(業種別一覧)

繊維・アパレル業界の業績推移
化学繊維の世界シェア(13年) 上場する主要アパレル企業の自主ブランドを一部抜粋

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