中国株 業界レポート

空運関連業界

~厳しい経営環境下で各社の戦略が問われる~
2013年7月24日

市場動向 ~世界有数の航空大国、国内の景気低迷から航空各社の苦境は続く~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

航空旅客輸送量:3億5400万人(前年比11.0%増)、貨物輸送量:558万トン(同2.3%増)、空港旅客利用者数:7億5431万人(同11.0%増)、空運関連業界の税引き前利益:273億元(同7.7%減)

中国の航空市場は世界有数の規模を誇る。世界最大の人口と広大な国土を持つ中国の航空需要は引き続き増加し、昨年の航空会社の旅客輸送量は前年比で約1割増加。貨物輸送量も増加に転じた。しかし、国内の景気低迷の影響は大きく、業界の収益環境は悪化。航空会社の輸送能力が拡大する一方で、公費抑制策の影響からビジネス需要が低迷し、航空各社は個人旅行客を獲得するため、厳しい価格競争を強いられた。燃油価格の高止まり、為替利益の減少なども重しとなり、減益に繋がった。今年に入っても状況は厳しく、原油高や人民元安が航空会社の収益を圧迫。また、中国の周辺国との関係悪化や、タイの政変、ウクライナ・中東情勢など地政学的リスクに事欠かず、これも国際線需要に影を差している。こうした中、航空各社は生き残りに向けて新規事業への進出、リストラなどを展開。特に新興の格安航空市場は注目を集めており、大手の参入が続く可能性もあろう。

業界の特徴 ~一種の官業、外部環境に左右されやすい~

主力事業面:

業界は実際の輸送を担う航空会社、空港運営を担う空港会社、さらに設備・燃料や関連サービスを提供する関連会社の3つに大きく分けられる。いずれも国有系が中心であり、業界の寡占度は高い。旅客需要は高速鉄道と競合するほか、繁閑の差が大きく、「春運」(旧正月の交通ダイヤ)など大型連休前後にピークを迎える。また、運賃価格に敏感なレジャー利用の割合が上昇し、昨年は7~8割に達した。それだけに天候状況、社会・治安情勢などの影響を受けやすい。航空機、燃料を海外から調達していることから外貨建て負債の比率が大きく、人民元高に傾くと有利。巨額の設備投資を必要とするため、強い財務基盤が求められる。航空会社のコストはかなりの部分を燃料が占めるため、原油相場の影響を非常に受けやすい。全体的に外部要因に左右されやすいセクターだ。中国には13年末時点で計193の空港があり、利用者数が年間1000万人を超える空港は24を数える。主要ハブ空港は北京、上海、広州の3空港で、国内全体の旅客需要の約3割を占める。

国際面:

中国には世界の主要航空会社の大半が乗り入れている。国際線(香港・マカオ路線を含む)の旅客取扱量は全体の約1割にとどまるが、海外旅行者数や新興国との路線数の増加トレンドを踏まえると、成長余地は比較的大きい。ただし海外情勢の影響を受けやすく、一昨年に日中関係が悪化した際は両国間の利用者数が大きく落ち込んだ。

政策面:

一種の官業であり、政府による規制も厳しく、参入障壁は高い。航空料金の一部に含まれる燃油サーチャージは、徴収価格、徴収するかどうかを含め国が一元的に決定。燃料油も統制価格に属するため、収益・費用の両面で国が価格決定に大きな役割を果たす。ただ、昨年から航空料金の下限が撤廃されており、価格の市場化が段階的に進んでいる。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手航空3社の業績は軒並み悪化~

航空会社は中国国際航空(00753)、中国南方航空(01055)、中国東方航空(00670)という中央政府系の大手3社が中心。昨年の旅客輸送量全体に占める割合はそれぞれ22%、26%、22%、合計で約7割を占める。3社ともに航空運賃の価格競争、燃料コストの負担、不安定な為替動向などの影響を受けて13.12期で利益が減少するなど、業績不振が続いている。地方政府系では大手3社の系列化にある山東航空(200152)が昨年も低迷。一方で大手3社を追随する海南航空(900945)は輸送効率の改善や投資収益により、13.12期で増益を確保したほか、香港のフラッグキャリアである国泰航空(00293)も原油高対策やビジネス客の需要に支えられて業績が改善。航空会社の不振とは対照的に、数少ない政府系の上場空港会社は堅調な業績を確保。首都北京の玄関口である北京首都国際機場(00694)、海南省の海南美蘭国際機場(00357)はいずれも業務量が増加。関連分野をみると、航空機大手の中国航空科技工業(02357)、航空関連の情報技術ソリューションサービス(AIT)で大きなシェアを持つ中国民航信息網路(00696)が有名。両社はいずれも業績を伸ばした。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
国泰航空
00293
香港ドル 100,4841.12,620203.957,434
ハンセン 香港を代表する航空会社。太古A(00019)の傘下にあり、航空会社コードは「CX」で、航空連合「ワンワールド」に加盟している。これまでに幾度も国際的な賞を獲得するなど、海外からの評価が高い。中国国際航空と相互に株式を持ち合い、幅広い提携関係を構築。香港・中国のフラッグ・キャリア同士の提携によるシナジー効果が期待される。
海南美蘭国際機場
00357
人民元 76011.134214.83,265
H株 海口美蘭国際空港を運営する地元政府系企業。13年の旅客取扱量は国内21番目の1194万人。海南省は国内屈指のリゾート地であり、観光需要の拡大による恩恵が見込める。また、海南省以外への進出計画も進めており、湖北省武漢市での物流パーク開発の動向が注目される。
中国東方航空
00670
人民元 88,2453.52,373▲22.835,132
H株 上海の浦東国際空港を拠点とする大手航空会社。航空会社コードは「MU」で、13年末時点の運行機体数は478機を数える。3大航空会社の一角を担い、航空需要の大きい華東地区を地盤とする。国際線での日本路線の比率が高く、日中関係の影響を受けやすい。豪カンタス航空と合弁で格安航空会社(LCC)を経営している。
北京首都国際機場
00694
人民元 7,2255.31,32915.723,647
H株 北京の国際空港である北京首都国際空港を運営する国有系企業。昨年も旅客取扱量が順調に伸び、国内1位、世界でも3年連続で2位だった。貨物取扱量でも国内2位の規模。第2ターミナルの改修工事も完了し、3つの国際ターミナルを持つ。北京市で新たな空港建設の話が持ち上がっており、今後の不確定要因といえよう。
中国民航信息網絡
00696
人民元 4,50911.11,2066.420,162
H株 航空関連の情報技術ソリューションサービス(AIT)で国内最大手。3大航空会社の親会社が大株主で、航空会社との結びつきが強い。中国航空市場の拡大と共に右肩上がりの成長が持続。国家重点ソフトウエア企業として優遇税制も適用されており、健全な財務状況を維持している。
中国国際航空
00753
人民元 98,181▲1.33,264▲32.257,733
H株 中国のフラッグ・キャリア。航空会社コードは「CA」で、北京首都国際空港を拠点とする。13年末の運行機体数は497機。大手3社のなかで国際線の比率が比較的高い。香港の国泰航空と資本・業務提携を結ぶ。アウトバウンド、ビジネス・ファーストクラス輸送の増加に期待。業績の不振が続いており、14.6期(中間)も減益となる見通し。
中国南方航空
01055
人民元 98,547▲1.01,986▲24.227,738
H株 広州市の白雲国際空港を拠点とする大手航空会社。華南、西南エリアで高いシェアを誇る。航空会社コードは「CZ」で、航空連合「スカイチーム」に加盟。13年末時点の機体数は561機に上り、航路数、旅客取扱量などの指標で国内最大手。スケールメリットが働きやすい。マカオ、珠海、重慶などの地元航空会社を傘下に置く。
中国航空科技工業
02357
人民元 22,19320.87137.324,087
H株 国内有数の航空機メーカー。国務院直属の中国航空工業集団を親会社とし、世界的大手航空機メーカーEADS(エアバス・グループ)も5%の株式を保有する。主にヘリコプターや訓練機などを生産。欧州の航空機メーカーと合弁事業を手掛けるほか、ブラジルのエンブラエル社と小型ジェット機を共同で生産する。
山東航空
200152
人民元 11,4273.9389▲34.04,096
深センB株 山東省の済南遥墻国際空港を拠点とする地方航空会社。航空会社コードは「SC」で、中国国際航空の傘下にある。青島市では航空貨物物流センターを運営。ホテル経営も手がける。四川航空、済南国際機場、中国民航信息網絡など複数の企業に出資している。
海南航空
900945
人民元 30,2314.72,1059.226,298
上海B株 海南省の航空会社。航空会社コードは「HU」。地方航空会社でありながら、全国規模で国内・国際線を運航し、3大航空会社に次ぐ規模まで成長してきた。海南省は中国有数のリゾート地。今後もレジャー需要の拡大を背景に利用者数の増加が見込める。同省は島であるため、高速鉄道との競合もない。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年7月23日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~競争が激しくなるなか、航空各社の戦略が問われる~

高速鉄道や格安航空会社との競争激化:

かつてのような旅客・貨物輸送需要の大幅な伸びが期待しにくいなか、中国国内では高速鉄道網の整備が急ピッチに進んでいる。また、格安航空会社も成長しており、同分野で最大手の春秋航空の業績は好調だ。競争が年々激しくなるなか、中国東方航空が格安航空に参入するなど、各社が様々な対策を講じていこう。将来的には四大航空会社による寡占体制が変化する可能性も。

ゼネラルアビエーションという新たな市場:

中国はプライベートジェット、ヘリコプターの保有比率が低い一方で、国土面積は広大。このため、ゼネラルアビエーション(GA、軍事用と定期路線を除いた航空分野)という新たな市場への関心が高まっており、既存の航空会社や異業種からの参入が加速する可能性も。大型ジェット機の供給過剰が続くなか、GAの成長は航空機メーカーにとっても新規需要の拡大に繋がろう。

原油価格、人民元相場の影響を受けやすい:

航空会社にとって最大のリスク要因は原油価格の動向だ。原油価格が急騰した08年は航空会社が軒並み巨額の赤字を計上。デリバティブでヘッジしているものの、相場が読みと逆方向に向かった場合は多額の評価損を計上するリスクもあり、原油相場には常に注意が必要。また、外貨建て負債が多いために人民元高で為替評価益を計上できるが、元安に傾けば逆となる。長く続いてきた人民元高のトレンドは昨年から変化の兆しが出ており、為替リスクも考慮に入れる必要があろう。

(中国部 畦田)

空運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

中国の上位10空港(旅客利用者数ベース、13年)
国内航空会社の旅客輸送推移
国内航空会社の貨物輸送推移
中国大手航空4社の旅客取扱数推移
中国大手航空4社の旅客オードファクター推移
中国大手航空4社の国際線旅客取扱数推移
中国大手航空4社の貨物取扱量推移

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