中国株 業界レポート

海運関連業界

~貿易で中心的な役割を担う業界、経営環境は苦しい~
2014年7月28日

市場動向 ~貿易の中心を担う業界、景気減速や過剰な輸送能力から厳しい経営が続く~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

輸出入総額:4兆1603億米ドル(前年比8%増)、一定規模以上の港湾のコンテナ取扱量:1億9021万TEU(同7%増)、貨物取扱量:106.5億トン(同9%増)、船舶建造量:4534万載貨重量トン(同25%減)

「世界の工場、市場」である中国の貿易量は世界有数の規模を誇り、船舶輸送がその大部分を占めることから、海運・港湾業界は貿易で中心的な役割を担う。昨年の貿易総額は4兆ドルの大台を超え、初めて米国を抜いて世界1位となった。それでも国内外の景気低迷の影響から、引き続き1桁台の伸び率。今年も5月までをみる限り低成長にとどまっている。貿易全体が減速するなか、海運・港湾会社の経営も苦しい状況。特に過剰な輸送能力に苦しむ海運業界は運賃低下と燃料高に見舞われ、多くの企業で赤字が続いた。海運会社による設備投資の減少も続き、造船業の建造量は大きく落ち込んだ。港湾機械・コンテナの製造などを含め、関連産業は全体的に厳しい状況が続いている。

ただ、こうした中でも中国政府は輸出企業の税負担軽減、上海自由貿易区の設立といった貿易振興策を展開。船舶市況も最悪期は脱したとの見方も出てきている。今後は市況・業績の緩やかな回復が見込めよう。

業界の特徴 ~外需、内需両方の影響を受けるセクター~

外需面:

海運関連の業界は外需の影響を強く受けるセクター。船舶輸送の方法は大きくバルク、タンカー、コンテナ輸送に分けられるが、需要は海外の資源価格・需給、輸出先である先進国などの景気動向に大きく左右される。特に鉄鉱石、原油、石炭市況との相関性が高い。中国では貨物取扱量が年間2億トンを超える港湾が16を数え、世界ランキングの上位に名を連ねる。その中でも上海、深センという両港湾の規模は飛びぬけて大きい。また、中国の造船業は一昨年時点で建造量、新規受注量、手持工事量のいずれに関しても4割以上の世界シェアを誇るが、その多くが海外向けで、外需型産業といえる。

内需面:

海運・港湾会社は石炭や鉄鉱石など資源の輸入、ならびに産地から消費地への国内輸送について、中心的な役割を担う。沿海部の港湾を利用した沿海輸送網、長江など複数の大河を利用した河川輸送網が発達。石炭などの取扱量は国内景気の影響を受けやすい。

投資面:

海運各社はこれまで投資を増やし、船隊規模の拡大に努めてきたが、それが過剰な輸送能力、運賃価格の下振れ圧力という業界の構造的問題に繋がった。船舶の建造は巨額の資金が必要で、設備投資のリスクは元々大きい。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系企業が中心、海運業界の赤字体質は変わらず~

本土の海運・港湾業界は政府系企業が中心。海運は国有系大手の寡占状態で、それぞれ傘下に複数の上場企業を持つ。サブセクターごとに、遠洋輸送は中国遠洋運輸、沿海輸送は中国海運、フォワーダー・河川輸送は中国外運長航が強い。13.12期も運賃低迷、燃料高が続き、業績悪化が続いた。遠洋輸送最大手の中国遠洋控股(01919)は資産売却益により3年連続の赤字を免れたが、厳しい状況に変わりはない。中国海運の傘下企業でも、バルク・原油を担当する中海発展(01138)、コンテナ輸送の中海コンテナ運輸(02866)がいずれも巨額の最終損失を計上。他方、フォワーダーが主力の中国外運(00598)は順調に貨物取扱量を伸ばし、好業績となった。

港湾会社も苦しい状況が続いたが、上場する大手企業は概ね増益を確保した。全国展開する企業は中遠太平洋(01199)、招商局国際(00144)などの国有系に限られる。招商局国際は海外業務の拡大により利益を増やした。なお、多くの港湾は各地方政府が経営し、天津港(03382)、大連港(02880)、廈門国際港務(03378)、秦皇島港(03369)、青島港国際(06198)などが代表的な上場企業。香港では長江実業(00001)などの財閥系企業が港湾を経営し、本土にも進出している。 海運・港湾企業を顧客とするのが、コンテナ製造の中国国際コンテナ(02039)、港湾機械の上海振華重工(900947)、造船の広州広船国際(00317)をはじめとした周辺の各メーカー。昨年も利益率の下振れ圧力に苦しめられたが、一方で業績改善の兆しもみられた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
招商局国際
00144
香港ドル 7,758▲29.64,21310.366,214
ハンセン 珠江デルタ地区を本拠とする国内大手の港湾会社。国務院系コングロマリットの招商局集団に属し、国内の主要貿易港でコンテナ・バルクふ頭を運営。コンテナ取扱量の国内シェアは3割に上る。世界各地の港湾に投資しており、今後は海外部門の貢献が本格化する見通し。中国国際コンテナ(02039)、深セン赤湾港航(200022)を傘下に置く。
広州広船国際
00317
人民元 4,166▲35.11431.7
H株 華南地区で最大規模の政府系造船会社。国内の造船市場を二分する中国船舶工業集団の支配下にある。主力事業の造船はハンディーサイズの石油タンカーやケミカルタンカーなどを建造しており、国内外で高いシェアを誇る。今年6月には親会社からの企業買収を完了させ、建造できる船舶の大型化が進んだ。
中国外運
00598
人民元 47,7690.684430.122,756
H株 華東地区を中心に国内各地で事業展開する大手物流会社。国内外を問わずワンストップで総合的な物流サービスを提供できる点が強み。陸海空運のすべてをカバーする貨物フォワーダーは国内最大手の規模。IT面で業界をリードする存在となっており、最近では船舶予約プラットフォームを立ち上げた。
中海発展
01138
人民元 11,3442.6▲2,234赤転18,514
H株 沿海輸送最大手の中国海運を親会社に持つ大型船会社。石炭、鉄鉱石などのバルク、原油・燃料油の沿海輸送で国内屈指の規模・競争力を持つ。LNG輸送を将来の成長分野として位置づけており、天然ガスの供給会社との提携を強化。日本の商船三井と合弁事業を展開するなど、成長への布石を着実に打っている。
中国遠洋控股
01919
人民元 66,138▲3.1235黒転39,206
H株 海運最大手「中国遠洋運輸」の中核を担う上場旗艦企業。コンテナ、ばら積み、原油など幅広い貨物の輸送を担う。中遠太平洋(01199)を通じて、ふ頭運営、コンテナリースなども展開。遠洋運輸の国内最大手であるだけに、海運不況の影響も深刻化。3年連続の赤字を避けるために、昨年は資産売却を重ねた。業績の立て直しが急務。
中海コンテナ運輸
02866
人民元 33,9172.8▲2,610赤転32,999
H株 中国海運の傘下で、コンテナ海上輸送の国内大手。中海発展(01138)とは兄弟会社の関係にある。国際・国内航路に定期便・チャーター便を就航。主な国際航路は太平洋航路、欧州・地中海航路、アジア太平洋航路。昨年の大幅な赤字転落を受け、経営の合理化を推進。また、同業他社との連携を強めており、その効果が注目される。
大連港
02880
人民元 6,98250.368313.714,674
H株 大連港を運営する地元政府系企業。大連は東北振興の中心となる都市であり、数少ない国際港として戦略的に重要。通常のコンテナターミナルに加え、自動車ターミナル、石油備蓄基地などの機能も備えている。日中韓のFTAを見据え、大連市の地理的優位性に注目。将来的に自由貿易区が設立される可能性も出ている。
秦皇島港
03369
人民元 7,02812.41,77826.420,118
H株 中国最大の石炭積出港として知られる河北省秦皇島市の政府系港湾会社。本拠である秦皇島港のほか、河北省唐山市の曹妃甸港など、渤海湾に面した複数の港を経営。秦皇島港は石炭物流の重要な中継ポイントとして機能している。曹妃甸港も重要な石炭積出港として知られる。石炭貿易の動向から影響を受けやすい。
天津港
03382
香港ドル 22,10923.381114.97,944
レッドチップ 天津港で最大規模のコンテナふ頭を運営する地元政府系の企業。天津発展(00882)などが大株主となっている。コンテナバースに加え、非コンテナふ頭も経営しており、食糧、鋼材、鉄鉱石などの積卸業務にも従事。天津港は中央政府が提唱する3大海運センターの一角に位置づけられており、政策的な恩恵が見込める。
青島港国際
06198
人民元 6,52613.71,50020.315,673
H株 山東省の青島港を運営する地方政府系企業。コンテナ、鉱石、石炭、石油、食糧、鋼材、自動車など幅広い貨物を処理する。本拠地の青島港のほか、山東半島の尖端に位置する威海港、南端にある日照港のコンテナバースも合弁経営。青島港は中国屈指の貿易港。環渤海地域と長江デルタ地域の中間に位置し、地理的優位性に恵まれる。
上海振華重工
900947
人民元 23,20227.1140黒転16,665
上海B株 世界シェアトップの港湾荷役機械メーカー。コンテナクレーン、バルク用機械設備を製造している。国務院直属の交通インフラ大手「中国交通建設(01800)」に属し、親会社とともに海外から大型契約を受注してきた。一方で海外リスクを軽減するため、ここ数年は海上大型設備の事業を重視。同事業の今後が注目される。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年7月25日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。広州広船国際(00317)は売買停止中。

海運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~貿易振興策に注目、上海に続く自由貿易区はどこに?~

中長期的な貿易振興策に注目、次の自由貿易区はどこに?:

政府は安定成長に向けて貿易振興策を強化。その目玉は自由貿易区で、昨年10月にまず上海市に設立された。大胆な規制緩和・優遇措置を通じて貿易・金融を一層活発にし、上海市の国際競争力を高める狙い。また、国内各地の主要貿易都市で、自由貿易区設立の動きが水面下で進んでいる模様だ。天津、重慶、広東省の広州・深センなどが候補に挙がっており、その動向が注目される。

過剰な輸送能力という構造的問題は続く:

過剰な船舶輸送能力は今年も業界が抱える構造的問題としてあり続けるだろう。しかし、船舶廃棄への補助金支給、業界再編による過当競争の防止などを通じて状況は改善されつつあり、少なくともすでに最悪期は脱した可能性が高い。こうしたなか、中海発展はLNG輸送、招商局国際は海外投資を強化するなど、各社で経営の立て直し策は様々。いかに業績回復に繋げられるかに市場の関心が集まっている

容易ではない安定的な貿易環境:

中国の貿易環境を見通すうえで、先進国の景気回復という追い風と、新興国経済の減速という逆風の両方が重要となってくる。また、欧米などとの貿易摩擦、日本、ベトナム、フィリピンなど隣国との関係悪化、輸出競争力の低下などの不確定要因も少なくない。原油相場の上昇圧力、海運運賃の指標であるバルチック海運指数(BDI)の低迷が続く可能性もあり、安定的な貿易環境を保つことは容易ではない。

(中国部 畦田)

海運業(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

中国の輸出額推移(地域別)
中国の輸入額推移(地域別)
バルチック海運指数と原油相場の推移
貿易額上位10税関(13年実績、空運、陸運を含む)
主要な自由貿易区の構想の一覧

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