中国株 業界レポート

陸運関連業界

~物流の中核を担う業界、サービスの質的向上が勝負の分かれ目~
2014年7月29日

市場動向 ~物流の中核を担う陸運、景気減速の影響から引き続き成長ペースが鈍化~

13年の業界規模:

物流総額:198兆元(前年比9.5%増)、物流総費用:10兆2000億元(同9.3%増)、高速道路営業距離:10.44万キロ(同8.5%増)

広大な国土と世界最大の人口を持つ中国は、陸上輸送の需要が大きい。13年の物流総額は前年比9.5%増の198兆元、物流会社の取り分である物流総収入は同9.2%増の7.2兆元、荷主からみた物流総費用は10.2兆元に達した。いずれも景気低迷の影響から伸び率が鈍化した一方で、インターネット販売の普及から宅配便市場は急成長した。依然として先進国に比べると物流コストが高く、物流総費用の対GDP比は約18%。しかし、物流会社の利益率は価格競争から低く、非効率な業界構造が目立つ。輸送の中心は陸運であり、道路は貨物・旅客ともに第一の手段。鉄道輸送も鉱物資源の輸送手段として重要だ。道路・鉄道インフラへの投資額は2兆元を超え、交通網は着実に整備。道路会社の業績はやや改善した。

物流業界は14年も苦しく、物流総額、総費用の4月までの伸び率はともに減速。運賃低下の傾向に歯止めがかからない。一方でこうした中でも物流業の高度化に向けた取り組みが行われており、今後は企業間の格差が開いていこう。

業界の特徴 ~輸送会社は市場原理下で厳しい競争、道路・鉄道運営は官が独占~

事業環境面:

運送会社は官民含めて数多く存在し、競争も激しい。一方、道路・鉄道のインフラ経営はほぼ官が独占し、収益の安定性は比較的高い。旅客輸送は旧正月の交通ダイヤ「春運」中に年間のピークを迎える。貨物需要は国内の景気動向に左右されやすい。道路・鉄道業者とも巨額の設備投資、投資回収の長期化が避けられず、財務体質、資金調達力が重要。

道路は運営・管理の多くを政府系企業が担当しており、政府から付与される徴収権を基に通行料収入を得る事業形態。

事業地域面:

道路網は「五縦七横」(南北に5本、東西に7本の幹線)、鉄道網は「四縦四横」(南北に4本、東西に4本の幹線)を中心に全国をカバーしており、これを中心に道路の高速道路・複線化、鉄道の高速化が進められる見込み。

政策面:

運送業界は市場原理に委ねられている一方、道路・鉄道インフラの運営は規制が厳しく、料金設定は当局の管轄事項。長く非効率な鉄道行政・運営が問題視されてきたが、昨年3月に鉄道部の解体を含む大規模な改革が実施された。

主要企業、主な取扱銘柄 ~政府系の上場企業が主役、大手の業績は概ね安定~

上場する中国の運送会社が限られており、その大半が大型の政府系企業。厳しい競争のなか、大手はその優位性を活かして13.12期も増益を確保した。リーディングカンパニーは貨物フォワーダーを主力とする国有系の中国外運(00598)で、宅配便事業の拡大によりDHLとの合弁会社が好業績をけん引。広東省政府系の広東粤運交通(03399)は物流、サービスエリア運営などの主力事業が改善し、業績が回復した。深セン市政府系の深セン国際(00152)は道路会社の深セン高速道路(00548)を傘下に置き、物流センターも経営するコングロマリット。13年は最終利益こそ減少したが、主力事業の営業収益は安定増だった。上海市の大衆交通集団(900903)はタクシー事業を中核とする総合輸送会社で、13.12期は業績に回復がみられた。香港では華僑系財閥に属する嘉里物流(00636)がフォワーダーで有名。同年は評価益・売却益の計上が利益を押し上げた。

インフラ運営企業をみると道路は地域独占型であり、上場企業の多くが地元政府との関係が深く、安定した通行料収入がある。深セン高速道路、越秀交通基建(01052)、広東高速道路(200429)の3社は国内最大の製造業の集積地である珠江デルタをカバー。長江デルタ地域は江蘇高速道路(00177)と浙江高速道路(00576)などが上場しており、内陸部は安徽高速道路(00995)や四川高速道路(00107)が有名だ。13.12期も一部区間・期間の料金引き下げ・無料化が重しとなったが、多くの会社が増収増益を確保できた。なお、鉄道は基本的に非上場の国策企業が経営。広深鉄路(00525)は上場する数少ない鉄道会社だが、13年は貨物取扱量が減少し、小幅減益に後退した。同社と共同で香港-広州間の直通列車を運行するのは香港の鉄道を独占する香港鉄路(00066)だが、こちらも業績が伸び悩んだ。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港鉄路
00066
香港ドル 38,7078.313,025▲2.6174,685
ハンセン 香港政府傘下の独占的な鉄道運営会社。傘下の鉄道・地下鉄網は香港全土を広くカバーし、安定した収益基盤などが強み。加えて鉄道事業者の利点を生かして沿線での不動産・商業開発から利益を上げている。また、世界各地の地下鉄事業で豊富な実績を持つ。近年は中国事業を強化しており、北京地下鉄14号線のプロジェクトに参画した。
四川高速道路
00107
人民元 8,57019.31,015▲1410,055
H株 四川省政府系の有料道路会社。成都市、重慶市という二大都市を結ぶ成渝高速公路を中心に、複数の高速道路を経営。ほかの道路会社と異なり、建設工事部門の売上比率が高い。「西部大開発」で注目される同省は高い経済成長率を達成してきた点が強み。他方、同エリアは中国でも地震の多発地帯といえ、災害リスクを抱えている。
深セン国際
00152
香港ドル 5,9633.91,641▲12.616,429
レッドチップ 地元政府系の物流コングロマリット。主力事業は物流パークの経営、物流サービスの提供など。深セン高速道路(00548)と深セン航空を傘下に置き、陸・空の両面から深セン市の輸送を担う。全国各地に物流センターを建設。今後は発展形の「都市総合物流ポート」の建設に意欲を示している。深セン市前海地区に広大な土地を保有している。
江蘇高速道路
00177
人民元 7,614▲2.32,70816.041,424
H株 江蘇省を本拠地とする国内最大級の道路会社。主力道路は上海南京高速道路の江蘇省区間(248.2km)など。江蘇省で運営・管理する道路の総延長は700キロを突破している。同省の高い自動車普及率、沿線の不動産開発事業がポジティブ材料。一方で高速無料化の対象である小型車の交通量が比較的多く、無料化措置の影響がリスク要因。
広深鉄路
00525
人民元 15,8014.71,274▲3.423,045
H株 中国の鉄道会社では唯一、海外に上場。経営する深セン市-広州市-楽昌市の鉄道は広東省を縦断し、ほかの地域に向かう主要鉄道と接続。このほか、香港鉄路(00066)と共同で中国と香港を結ぶ広九鉄道の旅客輸送を行う。直近は貨物輸送の低迷に苦しんでいる。
浙江高速道路
00576
人民元 7,85113.31,90715.635,353
H株 浙江省の高速道路会社。上海市という国内最大の経済都市と省都の杭州市を結ぶ「滬杭高速公路」、杭州市と貿易港で有名な寧波市を結ぶ「杭甬高速公路」が主力道路。経済が発展する杭州湾の周辺を囲むかたちで道路網を張り巡らせていることが特徴。証券業も展開しているが、本業とのシナジー効果は乏しい。
中国外運
00598
人民元 47,7690.684430.123,447
H株 国有系の大手物流会社。地場系で数少ない総合物流業者といえ、主力の貨物フォワーダーは陸・海・空運すべてを網羅。倉庫・ふ頭の運営なども展開している。外資と合弁で展開している宅急便事業は高成長を続けている。3PL(サードパーティーロジスティクス、物流機能の包括的な外注化)が同社の中長期的成長をけん引する見込み。
嘉里物流
00636
香港ドル 19,9693.51,83571.621,810
香港その他 マレーシア華僑系の財閥グループに属し、直接の親会社は嘉里建設(00683)。総合物流業者として、香港を拠点にフォワーダー、3PLなどの事業を展開している。世界各地に張り巡らせた物流ネットワークが強み。中国本土の事業を強化しており、13年の売上比率は4割半近くに達した。
安徽高速道路
00995
人民元 3,4049.083911.68,718
H株 安徽省政府の傘下にある有料道路会社。傘下の主な有料道路は、合寧高速公路(江蘇省との境-合肥市、全長134キロメートル)。安徽省は成長余地が見込める中部地区に属する一方、経済発展で先行する長江デルタ地帯に隣接している。この地理的メリットを活かせることができれば、安定成長が見込める。
越秀交通基建
01052
人民元 1,75318.055429.98,516
レッドチップ 広州市政府系の有料道路会社。広州市の環状高速道路の一部、広東省と湖南省を結ぶ清連高速公路、広西チワン族自治区を結ぶ蒼郁高速公路などを運営している。広東省以外での道路権益を拡充し、港湾事業にも進出している。
広東粤運交通
03399
人民元 6,166▲6.713687.31,516
H株 高速道路関連の事業を中核とする広東省の総合運輸事業者。省内の道路・サービスエリア、旅客・貨物輸送ターミナルなどを運営している。輸送事業の強化に向けて、一昨年に親会社と資産交換を実施。不採算事業を手放す一方、広東省のバス会社を完全買収した。香港・広東間の輸送業務を強みとしている。
広東高速道路
200429
人民元 1,32820.1128▲27.34,675
深センB株 広東省で高速道路・有料橋の開発・運営事業を展開する地元政府系企業。広東粤運交通(03399)と兄弟会社の関係にある。主力は広州~仏山~開平を結ぶ高速道路で、広東省の一大工業地帯を通っている。減価償却費、財務費用の増加圧力が懸念材料。国有企業改革が進めば、将来的に親会社の全体上場や、資産注入が実施される可能性も。
大衆交通集団
900903
人民元 3,1638.64084.911,408
上海B株 上海市のタクシー最大手。労働組合支配の企業が、上海A株企業を通じて支配している。物流事業にも進出しており、佐川急便と宅配事業の合弁会社を設立。過去には上海万博の物流に携わったほか、上海の空港貨物の輸出入を担当するなど、地元で一定の存在感を示している。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年7月29日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~物流サービスの質的向上がカギ~

物流サービスの質的向上がカギ:

中国の物流業界はインフラ・ソフトの両面で多くの課題を抱えているが、ネット販売の拡大などを考えれば物流需要の成長余地はまだまだ大きい。企業にとって物流サービスの質的向上がカギとなるだけに、低温物流、宅急便、3PL、「物聯網」(モノのインターネット、IoT)などの事業展開が競争力を左右しよう。新規参入も相次いでおり、特にネット販売大手のアリババグループが主導する高速物流網の構築プロジェクト「菜鳥」は今後も話題に上ろう。

物流業の中長期発展計画:

政府は14年6月に物流業の中長期発展計画を発表。20年までに現代的な物流サービス体系を構築するとした。地方の道路などで横行する無駄・余分な料金徴収を整理し、地域ごとの壁を撤廃。優遇税制や業界再編を通じて物流企業の集約化を図りつつ、交通インフラの整備も進めていくという。これにより輸送コストの軽減と、物流業界の発展を両立していく構えだ。基本的には運送会社には追い風となるが、インフラ運営会社には逆風となりかねない。

外資の進出が加速、国内勢との競争が強まる可能性も:

外資の参入規制は段階的に撤廃されてきた。これを受け、世界の総合物流大手による中国事業強化の動きが目立っている。日系でもヤマト運輸が中国の物流最大手である中国郵政集団(日本の郵政公社に相当)とEMSの分野で提携に合意。中国企業とは提携ばかりでなく、競争も激しくなるだろう。

(中国部 畦田)

道路・鉄道(業種別一覧) 運輸・物流サービス(業種別一覧)

国内旅客輸送量の推移(輸送手段別)
国内貨物輸送量の推移(輸送手段別)
物流総費用の推移
高速道路網計画(11~15年)
高速鉄道網計画(11~15年)

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