中国株業界レポート

建材業界

~構造調整が進展、再編を通じて優勝劣敗が進む~
2014年8月19日

市場動向 ~生産・消費規模は世界有数、構造調整の成果から業績改善の動きも~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

セメント生産量:24.1億トン(前年比9.6%増)、建材企業の総売上高:6.3兆元(同16.3%増)、税引き前利益:4525億元(同18.2%増)

中国はセメント、ガラスなど主要建材の大半で世界最大の生産量、生産能力を有し、市場規模も大きい。13年の建材企業の業績は総じて堅調で、総売上高、税引き前利益はいずれも伸び率が加速した。依然として国内景気と固定資産投資の低迷から、主要建材の価格水準は伸び悩む状況。それでも旧式・過剰気味の生産設備の淘汰、製品の高付加価値化、大手による買収・合併を通じて、収益力が改善した。セメント企業の設備稼働率は7年ぶりに75%以上まで回復。ガラス業界も赤字体質から抜け出すことができた。また、所得水準の向上や都市化により、個人の建材需要も増加。ホームセンターの市場規模も拡大を続けている。中国政府は投資依存の経済構造からの脱却を目指しているほか、メーカーへの環境規制も強まる方向にある。建材業界への逆風は続こう。一方で構造調整が進み、これに対応できる大手の利益率は改善が続く見通し。業界内での優勝劣敗がさらに強まろう。

業界の特徴 ~国内の投資動向に敏感に反応する内需型セクター~

生産・販売面:

建材はセメント、ガラス、装飾用建材をはじめ多くの製品種類があり、いずれも多くの企業が激しい競争を繰り広げるなど、業界の集約度は低い。生産設備は多くが旧式、過剰であり、エネルギー消費量、環境負荷が大きいという構造的な問題を抱える。電力や石炭などの価格動向がコスト面を大きく左右。セメントは沿海部が主な生産地となっている。販売面をみると、セメント、装飾用建材などは不動産建設需要の影響を大きく受ける。中国の住宅は内装の余地・自由度が高いことから、個人による建材消費量も多い。需要動向は政府、企業などの固定資産投資に大きく影響される。ガラスは建設用のほか、自動車向けの需要も注目される。

国際面:

基本的に内需型の業界であり、13年の輸出額は2000億元程度に過ぎない。最大の輸出先はアジアであり、香港、日本、韓国、インドなどが主要市場。一方で外資企業も中国市場に積極的に進出している。

政策面:

過剰気味の生産能力という構造的な問題の解決に向け、当局は業界全体への締め付けを引き続き強化。中心となるセメントでは、業界再編を織り交ぜながら生産設備の整理・統合を推進していく。このほか、新規参入に厳しい条件を設定。過当競争や環境汚染の防止に努めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は政府系が中心、昨年は市況改善を受けて好業績の企業も~

建材業界の再編は道半ばで、例えばセメント業界の上位20社でもクリンカー生産能力の6割程度を占めているに過ぎない。大手の多くが政府系企業で、セメントは地域別にマーケットリーダーが異なる。生産能力で業界2位の安徽海螺水泥(00914)は経済が発展している東部地域に強いほか、南部は華潤セメント(01313)、北部は北京金隅(02009)が高いシェアを持つ。 また、外資企業が筆頭株主である華新セメント(900933)と台泥国際(01136)、民営の西部セメント(02233)が大手の一角を占める。13年は業界全体での生産調整に進展がみられたほか、石炭価格の下落で製造コストが軽減。安徽海螺水泥、華潤セメント、華新セメント、台泥国際など、業績改善の企業もみられた。ただ、セメント価格は依然として低迷。国内最大級の建材企業グループを形成している中国建材(03323)はグループ全体での生産能力で他社を大きく引き離す存在だが、13年は収益性の悪さから小幅増益にとどまった。一方で過剰生産という業界の構造的問題は変わらず、各社は新規の設備投資を抑制、これによりセメントプラント最大手の中国中材(01893)は業績が悪化した。ガラス業界もセメントと近い状況。同年は一部で市況が改善し、地元政府系の中国南玻集団(200012)や上海耀皮玻璃(900918)、民営の信義ガラス(00868)といったガラスメーカーの業績が回復した。セメント、ガラス以外の建材業界も市況の改善にともない、民営大手は増益を確保。プラスチック製配管の中国聯塑(02128)、アルミ形材の中国忠旺控股(01333)などが堅調な業績となった。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
安徽海螺水泥
00914
人民元 55,262 20.7 9389 48.3 129,144
H株 国内最大級のセメントメーカー。本拠地の安徽省を含む中部や、経済発展で先行する東部で大きなシェアを誇る。華東・華南地域の良質で豊富な石灰資源を使い、高品質のセメントとクリンカーを生産できることが強み。近年は西部地区や海外市場などの開拓に努めており、規模拡大を目的に買収・合併を推し進める可能性がある。
台泥国際
01136
香港ドル 12,971 14.7 1,675 174.5 11,864
香港その他 台湾の巨大企業グループ「台湾セメント」の中国子会社。中国本土を中心に製品を販売し、一部は海外にも輸出している。積極的な買収戦略が特徴。香港上場企業を含む複数の大型買収を成功させ、事業規模を急速に拡大してきた。ただ、13年半ばに親会社が同社株の非公開化を提案。最終的に否決されたが、今後も親会社の動向が注目されよう。
華潤セメント
01313
香港ドル 29,341 15.8 3,338 43.6 36,976
レッドチップ 国務院系コングロマリット「華潤集団」に属するセメントメーカー。原材料の石灰岩が豊富に産出されることで有名な華南地区を地盤としており、同地域では最大手に位置する。近年は山西省、雲南省をはじめとした内陸部にも進出。華南以外のエリアで今後いかにシェアを拡大できるかに業界の関心が集まる。
中国忠旺控股
01333
人民元 14,307 6.0 2,127 17.7 18,201
香港その他 遼寧省を本拠とする民営の大手アルミ形材メーカー。実質支配者は創業者の劉忠田・董事長。主力は鉄道車両、自動車、航空機などに使用される工業用アルミ形材。一方でアルミサッシやカーテン・ウォール(CW)など建築用アルミ形材も生産しており、北京国際空港、北京オリンピック会場、上海万国博覧会会場で使用された。
中国中材
01893
人民元 52,081 12.8 398 ▲12.1 6,893
H株 国務院系の大手プラントメーカー。主力のセメントプラント事業は世界屈指の規模を誇る。国内のプラント需要は減速しており、今後は海外市場の更なる開拓が求められる。川下のセメント生産事業では西北有数のメーカーにまで成長。グラスファイバー、風力発電ブレードを将来の成長分野に位置づけている。
北京金隅
02009
人民元 44,790 31.5 3,215 8.3 37,847
H株 北京市政府系の建材メーカー。事業は川上のセメント・建築資材の生産から、川下の不動産開発・投資まで多岐にわたり、事業間でのシナジー効果が見込める。北京市・環渤海地区で高いシェアを持つことから、京津冀地区(北京、天津、河北省)の振興策が出された場合、恩恵を受ける銘柄の一つといえる。
中国聯塑
02128
人民元 13,071 20.0 1,449 17.0 14,494
香港その他 プラスチック製配管の国内最大手。華南地区を本拠とする民営企業で、同地区の売上比率は約6割に達する。同社製の配管は上下水道網、都市ガス網、農業用水網などに使用されることから、政府が進める都市化推進策の恩恵を受ける可能性がある。このほか、家具などインテリア用品の製造・販売も手がけている。
中国建材
03323
人民元 117,688 34.9 5,762 3.3 41,195
H株 中央政府系の総合建材企業。製品種類が豊富、その多くで国内トップクラスのシェアを占めている。主力製品はセメント、石膏ボードなど軽量建材、グラスファイバーなど。「建材下郷」や「戦略的新興産業」などの政策的支援が見込める。他の大手と比べて財務体質や利益率で見劣りする点が懸念材料。
中国南玻集団
200012
人民元 7,734 10.6 1,536 459.0 17,100
深センB株 広東省を本拠とする地元政府系のガラスメーカー。建築用ガラスで国内大手の一角を占める。近年は太陽光関連の分野に注力しており、電池用ガラス、ポリシリコンなどを生産。タッチパネルの開発に取り組むなど、製品のハイエンド化に努めている。超薄板ガラスの生産ライン建設計画を通じて、一層のハイエンド化を目指す。
華新セメント
900933
人民元 15,984 27.7 1,181 112.5 13,432
上海B株 湖北省の大手セメントメーカー。同社の歴史は古く、セメント、クリンカーなどの製品は「華新」や「堡塁」のブランドで知られる。筆頭株主はセメント世界大手のスイス・ホルシム社。地元政府も大株主として名を連ねている。販売チャネルの変革などが奏功し、足元の業績は回復傾向。今後はカンボジア事業の動向が注目される。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年8月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

建設資材(業種別一覧)

注目されるトピックス ~マクロコントロールが強まるなか、都市化推進策が刺激材料に~

構造的問題の解決に向けてマクロコントロールは一段と強まる見込み:

過剰生産という構造問題の解決に向け、当局のマクロコントロールは一層強まる見込み。政府は14年に入り15年末までの生産能力の削減目標を上方修正。新たにセメントで1億トン、板ガラスで2000万換算箱(1換算箱は約50キログラム)の削減を進めることを決めた。各メーカーは生産増強による事業拡大が益々難しくなるだけに、今後は買収・合併を通じたシェア競争が一段と激しくなるだろう。大手メーカーが再編の主役となる可能性が高く、その動向が注目される。

国内投資の減速が続くなか、都市化推進策が株価の刺激材料に:

今後の建材需要は国内の投資動向に左右され、投資は政策の影響を大きく受ける。政府は投資主導の経済成長からの脱却を目指しており、国内投資は緩やかな減速が続こう。旺盛なセメント需要は期待しにくい。一方で、長期的な国家戦略として「都市化推進」が掲げられており、長期的にみれば建材需要の起爆剤となる可能性がある。都市化推進策の動向が建材セクターの値動きを左右しよう。

環境規制への対応力、製品のハイエンド化が不可欠:

中国にとって環境問題の解決は待ったなしの課題。エネルギー多消費型の典型である建材業界への環境規制は益々厳しくなっている。人件費も上昇傾向にあり、各メーカーはそれを上回る生産性の向上、製品のハイエンド化が求められている。これまで以上に環境規制への対応力、技術・開発力などが企業の競争力に影響してこよう。このため、環境対策装置、ハイエンド設備、コンサルティングなど関連産業のビジネスチャンスの拡大が期待できる。

(中国部 畦田)

建設資材(業種別一覧)

中国のクリンカー生産能力上位企業(13年)セメント業界の売上高・利益率・在庫高の推移セメントの生産量・販売価格の推移

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