中国株 業界レポート

鉄鋼業界

~鉄鋼大国から鉄鋼強国への転換は前途多難~
2014年9月1日

市場動向 ~世界最大の鉄鋼大国、業績改善もみられ最悪期は脱した模様~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

粗鋼生産量:7億7900万トン(前年比7.5%増)、鉄鉱石輸入量:8億1900万トン(同10.2%増)、鉄鋼業界の総売上高(川上の鉄鉱石採掘も含む):8兆8608億元(同7.5%増)、税引き前利益:2588億元(同28.9%増)。

中国は世界最大の鉄鋼大国。13年の国内粗鋼生産量は伸び率が再び加速し、消費量とともに引き続き世界全体の約半分を占める規模だ。ただ、国内経済の低迷、不動産投資の減速などを背景に国内消費の伸びは限られた。元々、生産能力は需要を大きく上回るため、一方で輸出志向も強く、同年の鋼材輸出高は前年比12%増の6234万トンに上った。中国は世界上位の鉄鉱石資源量を有するが、鉱石が低品位であるために鉄鉱石の輸入量が年々増加。輸入鉱石の価格はやや高めで、13年も鉄鋼メーカーにとって主要なコスト圧力となった。また、過剰生産から価格競争も激しく、業界全体の利益率は引き続き低迷。それでも石炭価格の下落による採算性の改善、製品のハイエンド化などが奏功し、全体の利益額は増加。最悪期は脱した可能性もあるが、本格的な回復には業界再編の進展が不可欠だ。

業界の特徴 ~多くの企業が競争を繰り広げる業界、構造的な課題が続く~

生産・販売面:

中小を含め多くメーカーが競争する鉄鋼業界は産業集約度が小さい。業界再編は中々進まず、昨年は粗鋼生産量に占める大手10社のシェアが低下し、40%を切ってしまった。主な生産地は河北、江蘇、山東、遼寧など。生産設備の「過剰、小規模、老朽化」という構造的な問題を抱え、稼働率は7割程度に過ぎない。過剰生産が価格競争、環境汚染の一因になっている。中国は遼寧省を中心に鉄鉱石資源に恵まれるが、低品質な鉱石が多く、資源メジャーを通じて海外の高品質の鉱石を輸入。経済発展にともない輸入鉱石の需要は高まっている。鉄鉱石の価格交渉は電力、石炭などの価格動向とあわせ、製造原価に直結する。販売面では用途の5割強を建設用が占め、これに機械、自動車、エネルギーなどが続く。このため、固定資産投資、自動車販売などの動向から大きな影響を受ける。

国際面:

中国による鉄鉱石輸入、鋼材輸出の規模は巨大で、国際市場に与える影響度も大きい。鉄鉱石の輸入依存度は7割弱に上るほか、輸入鉱石の価格は低品位の国内産を大きく上回る。鋼材の輸出はアジア向けの低価格品が中心である一方、日本、韓国、欧州から高付加価値品を輸入するなど、貿易面の課題は多い。

政策面:

政府は構造問題の解決、環境汚染の抑制と、国際的な鉄鋼メーカーの育成などをめざし、マクロコントロールを強化。新規プロジェクトの着工・推進、資金調達などを厳しく審査。さらに当局主導で業界再編を推し進めようとしている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は政府系企業が中心、鋼材価格の低迷は続くが業績改善の兆しも~

大手は政府系企業が中心で、生産量は世界でも屈指の規模。しかし、13年は国内の粗鋼生産量に占める大手のシェアが低下。業界再編、生産設備の削減は掛け声倒れに終わり、競争激化から鋼材価格は低迷した。もっとも、大手の中には製品の高付加価値化、石炭価格の下落などが奏功し、業績が改善した企業もみられた。河北鋼鉄、宝山鋼鉄、武漢鋼鉄、鞍山鋼鉄、首鋼総公司などが業界のリーダー的存在で、複数の上場企業を抱える。この中で香港上場企業をみると、13年は鞍鋼(00347)、馬鞍山鋼鉄(00323)の両大手が最終黒字を計上。前年の巨額赤字を受けて、リストラ策に取り組んだ結果が出た。対照的に首鋼総公司の傘下にある首長宝佳(00103)、首長国際(00697)は引き続き赤字を計上。重慶鋼鉄(01053)は製品価格が下落し、再び赤字に転落した。中国中信(00267)は特殊鋼の生産と海外での鉄鉱石開発の両方を展開するコングロマリット。しかし、同社も鋼材価格の下落と鉄鉱石プロジェクトの赤字が重しとなった。民営の鉄鋼メーカーも厳しい状況。それでも復星国際(00656)の鉄鋼部門や中国東方集団(00581)は黒字を確保できた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国中信
00267
香港ドル 88,041▲5.67,5889.1375,542
ハンセン 中央政府系のコングロマリットで、鋼材生産、鉄鉱石採掘、流通などの事業を展開する。大冶特殊鋼(000708)を傘下に置き、自動車向けなどの特殊鋼を生産。また、オーストラリアで鉄鉱石資源を開発している。ただ、オーストラリア事業は苦戦が続き、昨年は巨額の赤字を計上。早期の黒字化が求められる。
馬鞍山鋼鉄
00323
人民元 73,849▲0.7157黒転15,988
H株 安徽省を本拠とする国有系の大手鉄鋼メーカー。主力製品は銑鉄、粗鋼、鋼材などで、製品の高付加価値化に努めている。鉄鉱石の大部分を輸入しており、国際相場の影響を受けやすい。高速鉄道用の車輪生産は国内トップクラス。海外事業の拡大に向けて、フランスの車輪・車軸メーカーを買収する計画を明らかにしている。
鞍鋼
00347
人民元 75,329▲3.7770黒転31,821
H株 国有鉄鋼グループ「鞍鋼集団」の中核企業。香港上場の鉄鋼メーカーで最大級の事業規模を誇る。主要製品は熱延鋼板、冷延鋼板、めっき鋼板など幅広い。近年は自動車、家電向けを中心に製品の高付加価値化を推進。また、神戸製鋼所と合弁会社を立ち上げ、16年初めまでに共同で自動車用鋼板の生産を始めるとしている。
復星国際
00656
人民元 51,017▲1.45,51948.965,902
香港その他 上海市に本拠を置く民営の大型コングロマリット。鉄鋼関連の事業は南京鋼鉄(600282)と建龍集団による鋼材生産、海南鉱業の鉄鉱石採掘、山焦五麟のコークス生産が柱。中鋼板の生産を得意としており、特に石油タンク向けに強みを持つ。海南鉱業のA株スピンオフ上場を目指しており、その動向が注目される。
首長国際
00697
香港ドル 15,266▲5.9▲1,396赤縮3,225
レッドチップ 国有大手「首鋼総公司」を親会社とする鉄鋼メーカー。鋼材製品はスラブ、厚板が中心。首長宝佳(00103)を通じてラジアルタイヤ用スチールコードなどを生産している。コークス生産の首鋼資源(00639)、鉱山経営のオーストラリア上場企業などにも出資。原材料の安定調達を目指している。
安徽天大石油管材
00839
人民元 3,310▲16.44940.51,663
H株 安徽省を拠点とする民営のシームレス鋼管メーカー。主力製品はケーシングパイプなどの油井管、船舶用やボイラー用のシームレス鋼管など。中国の三大石油会社が主な顧客であるため、原油・天然ガス市場の影響を受けやすい。同社は輸出も行っているが、シームレス鋼管は貿易摩擦の対象になりやすい。
重慶鋼鉄
01053
人民元 17,563▲4.9▲2,499赤転14,110
H株 地元政府系の鉄鋼メーカー。「西部大開発」の中心都市として注目される重慶市で大きなシェアを持つ。主力の中厚板は国内有数の生産規模。親会社と共に生産拠点を重慶市郊外に移した悪影響が、生産・財務面で出ている。地元政府が支援に乗り出しているが、製品価格の下落から苦境が続いており、14.6期(中間)も赤字を計上する見通し。
恒実砿業
01370
人民元 1,286121.1398720.53,905
香港その他 民営の鉄鉱石採掘会社。鋼材生産量、鉄鉱石消費量で国内最大の河北省を本拠としており、省内で4つの鉱山を経営している。主要顧客は同じ河北省内の鉄鋼メーカーで、物流コストを最小限に抑えられる点が強み。15年末までに鉄鉱石の生産量を2倍まで引き上げる目標を掲げている。
中国冶金科工
01618
人民元 202,241▲6.52,981黒転43,969
H株 国務院系の大型建設会社。鉄鋼・非鉄金属プラントのEPC(設計、調達、施工)事業を主力としている。事業の多角化を進めており、金属資源の開発、非鉄金属の精錬、金属生産設備や鋼構造などの生産、不動産開発なども手がけている。金属プラント建設の需要が低迷していることから、近年は金属以外のマーケットの開拓に努めている。
本鋼板材
200761
人民元 40,329▲0.6276247.324,752
深センB株 遼寧省本渓市に本拠を置く、地元政府系の鉄鋼メーカー。大手鉄鋼グループである本渓鋼鉄集団の傘下にある。粗鋼、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、特殊鋼、連続鋳造ビレットなどを生産販売。昨年12月に親会社との資産交換を実施し、韓国ポスコ社との合弁会社の株式75%を取得。これによるハイエンド分野の競争力強化に期待がかかる。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年8月29日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

鉄鋼(業種別一覧)

注目されるトピックス ~構造改革の前途は多難、改革の実効性が問われる~

政府主導の構造改革の行方:

産業集約度の低さ、過剰な生産能力、環境負荷の拡大は業界が抱える最重要の問題。これを解決するために官民挙げた業界再編を通じて、余剰生産力の淘汰、過当競争の抑制、国際競争力がある大企業の育成を目指してきたが、前途は多難だ。15年までに上位10社のシェアを60%にまで高めるという目標は達成がほぼ不可能な状況。それでも、構造改革の路線は今後も続くとみられる。鉄鋼大国から鉄鋼強国に向けて、改革の実効性が問われている。

都市化推進策で見込まれる新規需要:

主力の建設用鋼材は住宅市場の影響を受けやすい。不動産引き締めの状況下では、当面、鋼材需要の本格回復は難しい。一方、すでに明らかにされた都市化推進策は、中長期的に新規需要が発生する可能性を示唆。鉄道をはじめとした基礎インフラの建設が加速し、これに必要な鋼材の需要は増加に転じるだろう。鉄鋼各社の都市化シフトが求められる。

鉄鉱石の調達能力が鉄鋼メーカーの競争力に直結:

鉄鉱石の国際相場は、海外資源メジャーの生産動向に左右されやすい。価格急騰は鉄鋼業界にとって最大の利益圧迫要因。さらに原油・石炭などの原燃料価格、海運賃価格の上昇も、コスト増加に繋がる。鉄鉱石の輸入依存度が高まるなか、鉄鋼メーカーによる海外資源の開発案件が一段と増えよう。鉄鉱石の調達能力はメーカーの競争力に直結する。

(中国部 畦田)

鉄鋼(業種別一覧)

粗鋼生産量の国別シェア(13年) 国内鉄鋼需要の内訳(13年)
国内粗鋼生産量の推移 世界の粗鋼生産量上位20社(13年度)

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