中国株 業界レポート

石油・石油化学業界

~世界有数の石油消費国、構造改革が進展へ~
2014年9月8日

市場動向 ~世界有数の石油消費国、川中・川下部門の採算性は改善~

13年の業界規模:

原油生産量:2.08億トン(同1.7%増)、輸入量:2.82億トン(同4.1%増)、一定規模以上の企業の売上高:12.94兆元(同8.9%増)、税引き前利益:8403億元(同5.6%増)

世界最大のエネルギー消費国である中国で、石油は第二のエネルギー源。なお、化学製品の原材料としても重要な役割を持つ。国内の経済成長を受け、需要は増加基調を維持。13年の原油加工量は前年比で4.9%増加し、米国に次ぐ世界2位の規模だった。それでも景気減速の影響から伸び率はやや鈍化。ただ、国内での原油増産の余地は限られており、同年も原油輸入量は4.1%増加。輸入依存度は約6割に達した。企業業績をみると、石油需要の鈍化から川上の原油探査・生産企業の利益は減少。ただ、国内の石油製品価格の引き上げが進み、川中・川下の石油精製・石油化学企業は収益がやや改善した。14年に入ると景気がさらに低迷し、上期の原油加工量は前年同期比2.9%増にとどまった。こうしたなか、国有大手が支配する業界に構造改革のメスが本格的に入り始めた。今後、民間資本の導入、石油パイプライン部門の分離、石油製品価格の市場化などの動きが本格化すれば、株価の大きな刺激材料となる可能性も。

業界の特徴 ~国有大手の寡占市場、需要は製造業全体の景気動向に左右~

生産・販売面:

業界は大きく、①油田探査・採掘、原油生産などの川上、②原油からガソリンなど石油製品を生産する石油精製などの川中、③石油製品の小売やプラスチックなどの化学製品を製造する川下――に分けられる。いずれも概ね国有大手による寡占状態。原油の販売価格は国際相場に大きく影響され、価格上昇は原油を調達して石油製品を生産する川中の精製企業、さらに化学企業にとってコスト増となるため、川上と川中・川下という両方の利益を両立させることは容易ではない。13年の製油プラントの稼働率が6割にとどまるなど、石油・化学製品の生産能力は過剰。販売価格の低さなどの問題も抱えている。主力とする軽油・ガソリン需要は自動車普及にともない拡大傾向。石油化学製品は基礎材料として幅広い製造業で使用されており、製造業全体の景気動向に左右される。

国際面:

世界の原油需要増加量の3割近くを中国が占めており、国際マーケットへの影響力は大きい。中国は世界4位の原油生産国だが、原油需要を賄うために政府・国有石油会社が一体で海外油田の獲得・開発を強化している。

政策面:

基本的に規制産業で、石油製品(特にガソリン)の品質・販売価格などは政府の統制下にある。しかし、価格に関しては着実に市場・自由化の方向にある。川上分野では国産原油の販売価格が一定水準を上回った場合に、「特別収益金」を石油会社から徴収するほか、従価税方式の資源税が課税される。石油製品についても消費税が課されている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~三大石油会社が主役、業績改善の兆しも~

中国の石油・石油化学業界は国有系の三大石油会社が市場を寡占。このなかでも中国石油天然気(00857)と中国石油化工(00386)の両社は規模が飛びぬけており、幅広く事業を手がける。13年は石油精製部門に収益改善の兆しがみられ、最終損益はいずれも増益に転じ、14.6期(中間)で増益を確保。業績は徐々に回復している。両社を追う中国海洋石油(00883)は川上に特化し、海底油田で圧倒的なシェアを誇る企業。13.12期、14.6期(中間)いずれも買収によるコスト増などが響き、こちらは減益に後退した。

三大石油会社やその親会社は複数の上場企業を抱える。中国石油化工に属する上場企業をみると石油化工専業の中国石化上海石油化工(00338)と化学繊維大手の中国石化儀征化繊(01033)は業界全体の過剰生産に悩まされ、業績は不安定。対照的に原油貯蔵・物流事業を主力とする中石化冠徳(00934)は、業務量の増加に伴い13年は好業績を記録した。兄弟会社の中石化煉化工程(02386)は石油プラント建設を専門とし、こちらも増益を確保できた。中国海洋石油は油田採掘サービスの中海油田服務(02883)、化学肥料大手の中海石油化学(03983)という兄弟会社2社を持つ。中海油田服務はスケールメリットを発揮して好業績を継続した一方、中海石油化学は販売価格の下落圧力に悩まされ、13年も減益が続いた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国石化上海石油化工
00338
人民元 105,50321.02,055黒転42,750
H株 中国石油化工(00386)の傘下にある大手の石油精製・化学会社。上海市を本拠とし、主力製品は合成繊維、プラスチック、中間製品、燃料油など。特にエチレンに強みを持つ。原油高と製品販売価格の低迷を受け、収益環境は厳しい。製品構成の最適化などが奏功し、13.12期で黒字に転換できたが、14.6期(中間)は再び赤字転落の見通し。
中国石油化工
00386
人民元 2,833,2473.666,1323.5868,883
ハンセン 大型の国有石油会社。川中の石油精製・石油化学、川下の石油製品販売で国内トップのシェアを誇る。中国石化上海石油化工(00338)、中石化冠徳(00934)、中国石化儀征化繊(01033)などの上場企業を傘下に置く。精製部門の採算性改善が長年の課題。石油販売部門に民間資本を導入する動きが進んでおり、その行方が注目される。
中国石油天然気
00857
人民元 2,258,1242.9129,59912.41,902,060
ハンセン 中国最大級の石油会社。国内最大の「大慶油田」を保有するなど、油ガス田の探査・採掘などの川上部門は他社の追随を許さない。「西気東輸」を含む国内の主要な石油・ガスパイプラインを保有。燃料油や石油化学製品などの川中分野への進出も積極的。国際石油メジャーと共同で、海外での油田開発プロジェクトに参画している。
中国海洋石油
00883
人民元 285,85715.456,461▲11.4690,250
ハンセン 川上の油田開発・生産に特化する大型の石油・天然ガス会社。海底資源の開発では先頭を走っており、事業エリアは全世界に及ぶ。非在来型油田の開発を新たな成長分野に位置づけ、米国のオイルシェール事業に新規参入。中国勢による海外M&Aでは過去最大規模となるカナダ石油大手「ネクセン社」の買収に成功。買収効果の発揮が求められる。
光匯石油
00933
香港ドル 55,449▲20.7▲722赤転24,722
香港その他 石油製品の貿易、船舶燃料の供給、石油の貯蔵・輸送などを手がける民営企業。船舶燃料の供給では中国最大手クラス。川上への進出を進めており、09年に中国石油天然気(00857)の親会社と油田の共同開発で合意。14年2月には10億米ドル以上の巨費を投じて、渤海湾の油田権益の獲得に動いた。川上部門の投資を早期に回収できるかがカギ。
中石化冠徳
00934
香港ドル 23,3566.049168.416,011
レッドチップ 中国石油化工(00386)を親会社に持つ石油関連の物流・貿易会社。主要事業は原油ふ頭・関連設備の運営、原油・石油製品の貿易。親会社グループが最大の仕入・販売先。国内では親会社からの資産買収を通じて、事業エリアを広東省から全国に拡大する方針。海外でも欧州のバルク・液体ターミナル会社を買収した。
中国石化儀征化繊
01033
人民元 17,6774.1▲1,450赤拡10,620
H株 中国石油化工(00386)の傘下にある国内最大級の化学繊維メーカー。繊維産業が盛んな江蘇省を本拠とする。主力製品のポリエステルは国内最大、世界でも有数の生産量を誇る。しかし、繊維・アパレル製品の輸出不振から供給過剰が続き、同社も赤字を継続。早期の生産調整が必要となっている。
中石化煉化工程
02386
人民元 43,57213.13,65710.238,878
H株 石油・石化プラントのEPC(設計、調達、施工)サービスで国内最大手クラス。兄弟会社である中国石油化工(00386)を含む、中国の三大石油会社が主要顧客となっている。プラント建設に加えて、設計・コンサルティング・技術供与や関連設備の製造なども展開。海外事業は中東や中央アジアが中心となっている。
中海油田服務
02883
人民元 27,36423.86,71647.3117,819
H株 海底油田サービスの大手企業。海底油田の開発で最大手の中国海洋石油とは兄弟会社の関係。掘削リグ、各種作業船、石油タンカー、物理探査船などを保有し、掘削サービス、測定、掘削流体の供給などの各種サービスを展開。ノルウェーの同業大手に対する買収を手がかりに、製品開発能力の強化を目指す。
安東油田服務
03337
人民元 2,53426.438326.47,588
香港その他 油ガス田開発サービスの民営大手。資源開発の各段階で、関連機材や付加価値サービスの提供などをワンストップで手がける。中国の大手石油会社などが主要顧客。シェールガスの開発にも参画している。同業世界最大手である米シュルンベルジェ社との間で資本・業務提携を結んでおり、提携効果を如何に発揮できるかに注目。
中海石油化学
03983
人民元 10,724▲0.11,647▲917,979
H株 国内最大級の窒素肥料メーカー。代表的な窒素肥料である尿素のほか、リン酸肥料、カリ肥料を生産・販売しており、同社の「富島」ブランドは国内で有名。原料である天然ガスを兄弟会社の中国海洋石油から安定的に調達できる点が強み。もう一つの主要原料であるメタノールの生産も行う。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年9月5日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

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注目されるトピックス ~構造改革の行方、原油相場の動向などに注目~

資源確保に向けて海外投資が拡大、軋轢も:

国内の原油生産に限界がある以上、原油の海外依存度の上昇は今後も避けられず、海外での中国企業による資源開発は今後も拡大していこう。主役は政府の後押しを受けた三大石油会社と、3社を取引先とする開発サービス会社。一方で、海外事業の拡大に伴い、為替・政治リスクが高まる懸念も。実際に直近では南シナ海での海底油田の開発で中越関係が緊迫化しており、いかに海外リスクをコントロールできるかがカギとなる。

生産設備の削減・高度化が早急の課題:

川中・川下部門の設備能力は過剰である一方、設備の高度化は遅れ、これが例えばガソリンの低品質、そしてPM2.5のような大気汚染の一因になっている。このため、政府は段階的にガソリンの品質基準を引き上げる計画。生産設備の更新が早急に求められている。企業が設備削減と更新の資金を確保できるように、政府も石油製品の引き上げを実施。これにより、設備更新は各企業の至上命題になったといえ、当面は設備投資負担が重くのしかかるだろう。

石油業界の構造改革がスタート:

中国政府は混合所有制の導入、資源配分・価格の市場化を柱とする石油業界の構造改革に着手。混合所有制は国有寡占の業界に民間資本の導入を図ることを意味し、すでに中国石油化工と中国石油天然気の両社が具体的な動きを見せている。また、資源配分の市場化ではパイプライン事業の分離化や民間への開放などがテーマ。いずれも大手3社の企業再編に繋がるものであり、今後の動向が注目される。また、13年4月に石油製品の価格決定メカニズムが改革され、価格はより一層、原油相場を反映するようになった。価格の市場化は今後も進む見込みで、精製事業の採算性改善に繋がる。

原油相場の動向に注目:

国際原油相場は中国の石油製品価格に反映されることもあり、石油セクターの主要な変動要因。月に3回は訪れる価格見直しのタイミングが、同セクターの株価動向を左右していくだろう。また、国際的な原油相場はWTI、北海ブレンドという二つの先物価格が代表格だが、中国は年内にも上海先物取引所に原油先物を上場する計画。将来的には中国発の国際原油相場が生まれる可能性もある。

(中国部・畦田)

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中国の石油製品需要の内訳(13年)
07年11月以降の中国政府によるガソリン価格調整の推移(14年5月末時点)
国際原油相場(WTI)と国内ガソリン卸売価格の推移
原油の国内生産量・輸入量の推移と伸び率(前年同月比)

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