中国株 業界レポート

ガス業界

~中長期的な成長セクター、輸入拡大が続く~
2014年9月19日

市場動向 ~過去最高の生産量も需要には足りず、川上は内外価格差に苦しむも川下は堅調~

13年の業界規模(前年値修正済み):

天然ガス見掛消費量:1692億立方メートル(前年比13%増)、生産量:1210億立方メートル(同10%増)、輸入量:534億立方メートル(同26%増)

天然ガスは中国にとって石炭、石油に次ぐエネルギー源。経済成長、都市ガス網の整備などを背景に需要は一貫して増え続けている。昨年の見掛消費量も2桁の伸びとなった。安定供給に向けて、国内では最大の長慶ガス田を中心に増産が続き、生産量も過去最高を更新。しかし需要を満たせず、パイプライン、船舶輸送を通じた海外からの輸入が13年も大きく増えた。川上の資源開発・生産企業は生産・販売量の拡大に努めたものの、輸入天然ガスの採算割れから収益は引き続き低迷。対照的に川下の都市ガス供給業者は一定の利ザヤを確保。ガス料金の引き上げも追い風となり、堅調な業績が続いた。今後もエネルギーの効率・環境性、ガスインフラ整備の拡大などを背景に、ガスの普及率、消費量が伸びる可能性は高い。ガス価格の市場化が徐々に進み、安定調達に向けたガス資源の積極開発、海外からの輸入拡大という流れも続くだろう。エネルギー全体に占める天然ガスの比率は凡そ6%程度に過ぎず、世界平均の20%台を大きく下回る。中国のガス業界は中長期的な成長セクターといえるだろう。

業界の特徴 ~規制色の強いディフェンシブセクター、成長余地は大きい~

生産・販売面:

公益セクターであるガス業界はディフェンシブ色の強い業界。川上のガス田開発・生産は国有三大石油会社の寡占状態となっており、国内外で資源開発を強化している。川下のガス供給は集約度が低く、主に各地域のガス会社が担当。ガス導管網を通じて都市ガスを提供するほか、液化石油ガス(LPG)の販売、自動車・船舶向けガスステーションの経営などを手がける。需要は分散しており、12年の実績では全体の6割が工業用向け。残り4割のうち家庭用、発電用がそれぞれ2割程度を占める。家庭向けでは特に暖房用需要が多く、冬季の気候状況などがガス販売量に影響する。

収益面:

ガス業界の収益源はガス、ガス関連器具の販売収入、輸送収入、ガス管敷設料収入など。ガスの販売価格はいずれの段階でも政府の統制下にあり、公益性を考慮して海外に比べて低い。一定の利幅は保たれる傾向にあるが、ガス供給会社にとっての採算性が高い収益源は引き続きガス管敷設。川上のガス生産会社にとっても、輸入天然ガスを国内で販売すれば、内外価格差から採算割れが起きやすい。

国際面:

川上のガス資源開発では、国有大手を中心に海外での権益確保の動きを強化。中央アジア・中国間の天然ガスパイプライン、国内での「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に輸送)ルートなどの整備、及び沿海地域のLNGプロジェクト(LNG受入基地、ガス備蓄など)の稼働により、中国は本格的な天然ガス輸入の時代に入っている。13年の海外依存度は約3割。

政策面:

天然ガスの卸売価格は中央政府、小売価格は地方政府の管轄下にある。政府は天然ガスの利用促進に積極的。

主要企業、主な取扱銘柄 ~国有独占の川上はやや苦戦、民営・外資の進出が目立つ川下は堅調~

川上のガス生産は最大手の中国石油天然気(00857)を中心に、中国海洋石油(00883)、中国石油化工(00386)という国有系3社による寡占。しかし、3社ともにガス田開発や輸入天然ガスの増加などが引き続きコスト圧力として働き、天然ガス部門の収益性は悪い。一方、川下のガス供給は基本的に各地域の地元政府系企業が強いものの、買収を通じて全国展開を図る大手企業が躍進。中央政府系列の華潤燃気(01193)、地方政府系の北京控股(00392)とその系列化にある中国燃気(00384)はいずれも買収を通じて事業エリアを拡大し、好業績が続く。民営大手の代表格である新奥能源(02688)は債券の評価損を除けば、引き続き増収増益を計上。また、ガス生産最大手の中国石油天然気はガスステーション経営などを手がける崑崙能源(00135)を通じて川下に進出している。外資系では香港中華煤気(00003)傘下の港華燃気(01083)が有名で、売上高は拡大基調。華潤燃気、中国燃気、新奥能源、崑崙能源、港華燃気の5社で大手を形成している。このほか、産業ガスの分野では民営の盈徳気体(02168)が著名な企業。ガス需要の増加を受けて事業拡大が続いた。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
香港中華煤気
00003
香港ドル28,24613.36,854▲11.1184,234
ハンセン香港屈指の富豪である李兆基・主席が恒基地産(00012)などを通じて支配する都市ガス会社。香港市場をほぼ独占しており、安定した経営・財務基盤に強み。本土でも都市ガス大手として存在感を発揮してきた。近年は傘下の港華燃気(01083)を通じてさらに本土事業を拡大している。
崑崙能源
00135
香港ドル43,43031.86,8515.199,290
ハンセン国内最大の天然ガス生産業者である中国石油天然気(00857)を親会社に持つ。グループ内における天然ガス事業の中核子会社。特に川中・川下部門を強化しており、親会社からの資産注入を受けて規模を急速に拡大させた。近年はガスステーションの設置を積極的に進め、13年にはLNG販売量で一気に業界首位の新奥能源(02688)を抜き去った。
中国燃気
00384
香港ドル26,00844.82,57646.069,793
香港その他大手都市ガス会社。LNG、LPG事業に加え、CNG車向けのガスステーション経営なども手がける。国内外の有力ガス会社が資本参加。現在は北京控股(00392)が筆頭株主となっている。採算性が見込める非住宅向け天然ガスの販売比率が高い点などが強み。成長分野への投資として、CNG車、LNG船向けガスステーションの設置を進めている。
北京控股
00392
香港ドル42,36119.14,18429.387,593
レッドチップ北京市政府系のコングロマリット。最大の収益源は天然ガス部門でパイプラインと都市ガスの両方をカバー。北京市やその周辺で事業展開している。地元政府との関係が深く、経営の安定性などが強み。大気汚染が深刻な北京市は天然ガスの需要増加が期待できる。全国展開を加速するため、中国燃気(00384)に資本参加している。
中国石油化工
00386
人民元2,833,2473.666,1323.5804,595
ハンセン大手石油・天然ガス会社。石油精製が主力事業だが、川上のガス田探査・開発、天然ガスの生産・販売なども展開。近年はシェールガスを戦略分野に定めており、一大生産地とみられる四川省で開発プロジェクトに着手している。また、親会社も含めたグループ全体で海外展開を加速。カナダ、カザフスタンなどで資源取得に動いている。
中国石油天然気
00857
人民元2,258,1242.9129,59912.41,863,955
ハンセン天然ガスの生産・資源保有量などで国内最大手。13年のガス生産シェア(親会社を含む)は約7割に達する。国内の主要ガス田やパイプラインの大半を押さえ、パイプラインによるガス輸入を独占。探査・生産・輸送の各分野で2位以下を大きく引き離す。近年は川中・川下分野にも積極的に進出。崑崙能源(00135)を傘下に置く。
中国海洋石油
00883
人民元285,85715.456,461▲11.4636,673
ハンセン国有三大石油会社の一角。海底ガス田の開発・生産では国内トップの規模・競争力を持つほか、グループ全体で中国のLNG輸入の約7割を担う。陸上でのガス田開発とパイプライン輸送が中心の中国石油天然気とは一定の棲み分けができている。世界各地で事業展開しており、その中には日中間の争点であるガス田も含まれる。
港華燃気
01083
香港ドル6,71629.61,10631.622,536
香港その他香港中華煤気(00003)傘下の都市ガス会社。湖南、江蘇、四川など各省でガス供給のライセンスを有し、本土で最大規模の都市ガス会社まで成長してきた。利益の見込める工業ユーザーの比率が高いことが特徴。親会社の良好な経営・財務基盤が同社の強みになっている。
華潤燃気
01193
香港ドル22,28863.62,16131.349,039
レッドチップ国有系の大手コングロマリット「華潤集団」で都市ガス事業を担当する企業。国内の主要都市で、都市ガス事業やLPGの販売などを手がける。積極的な買収・提携を通じて、事業を拡大。過去には鄭州市の上場ガス会社を買収し非公開化したほか、直近では天津津燃公用(01265)の親会社と合弁事業を展開している。
盈徳気体
02168
人民元6,86638.590817.914,288
香港その他民営の産業ガス大手。オンサイト方式(顧客の構内や隣接地に空気分離装置を設置し、パイピングによりガスを供給する方式)では09年以来、5年連続で国内最大手。13年のシェアは46.8%まで上昇した。鉄鋼、化学、非鉄メーカーなどにガスを供給。長期契約に基づくガス販売が中心であり、収益の安定性が強み。
新奥能源
02688
人民元22,96627.41,252▲15.558,918
香港その他王玉鎖・主席が90年代初頭に創業し、一代で国内大手の都市ガス会社を築き上げた。ガス関連の事業を幅広く展開。特にガススタンド経営に強みを有し、12年のガス販売量は国内1位。総合的なエネルギー企業を目指しており、海外事業も重視。米国ではガススタンド建設、メガソーラープロジェクトなどを展開している。
中集安瑞科
03899
人民元9,98123.597328.015,485
レッドチップコンテナ製造世界大手である中国国際コンテナ(02039)の傘下で、ガス輸送・貯蔵設備を担当。天然ガスのトレーラーやタンク、シリンダー、圧縮機などを製造。LNG、CNGの設備市場で国内トップのシェアを誇る。主要顧客は中国石油天然気(00857)などのガス生産大手。数少ないガス設備メーカーの上場企業として注目される。

売上高・純利益は中国燃気(00384)が14年3月本決算、それ以外はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年9月18日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

石油・ガス(業種別一覧) ガス(業種別一覧)

注目されるトピックス ~ロシアとの大型ガス契約、ガス業界の規制緩和などに注目~

ロシアからの大型ガス供給契約:

中露両国は14年5月に大型のガス供給契約に合意。ロシアは18年から30年にわたり、中国に年間380億立方メートル(その後、段階的に増加)もの天然ガスを供給するという。輸送インフラとなるパイプラインの整備に向けて中国側にも巨額の投資負担が発生するが、供給価格は比較的低位に抑えられており、川上のガス生産・輸送会社にとっては有利。国内の需給ギャップを埋める上でも大きな意味を持ち、長期的には川上から川下まで幅広く恩恵を受けるとみられる。

中国で“シェールガス革命”は起きるか:

川上では米国で起きたシェールガス革命が中国でも起きるのかという点も注目される。中国は世界最大の埋蔵量を有するともいわれており、官民挙げてシェールガスプロジェクトを推進。国有系3社を中心に大手石炭・電力会社や各種民間企業などが参入しており、開発ノウハウの獲得という意味も加わって海外投資も加速している。現段階では国内開発が商業ベースに乗るまでにはかなりの年数が必要とされるが、その分、内外の期待も大きい。

政府は規制緩和のスタンス、価格市場化は3年以内:

政府は14年2月に国有独占の天然ガスパイプライン事業を民間に開放する試行規則を発表。また、13年に天然ガス価格も3年程度で市場価格化する方針を明らかにした。各段階での国内価格が低位に抑えられている中では市場化は値上げに繋がり、業界全体では好材料。ただ、川下のガス供給会社は仕入れの上昇分を小売価格に転嫁できない可能性があり、短期的には収益悪化のリスクも。こうした中、ここ数年で自動車、船舶用燃料などに使用されるCNG需要が大きく伸びており、川下の各社は成長分野として注目。投資を加速している。今後はCNG分野での競争力強化が重要となってこよう。

(中国部 畦田)

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国内ガス生産シェア(親会社グループも含む、13年) 中国の天然ガス輸入先(13年) 中国の天然ガスの生産・消費量 ガス業界の売上高と利益率の推移

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