中国株 業界レポート

石炭業界

~エネルギーの中核産業は苦境が続く~
2014年9月29日

市場動向 ~世界最大の生産・消費国、需給悪化が続き業績も低迷~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

原炭生産量:36.8億トン(前年比0.8%増)、輸入量:3.3億トン(同13.4%増)、一定規模以上の企業売上高:3兆2405億元(同2.6%減)、税引き前利益:2370億元(同33.7%減)

中国は世界最大の石炭生産・消費量を誇り、資源保有量も有数の規模。石炭は生産・消費両面からみて一次エネルギー全体の7割弱を占め、エネルギーバランス上で極めて重要な位置づけにある。今世紀に入り石炭の国内生産量は拡大を続けたが、13年の伸び率は記録的な低水準となった。企業業績も2年連続で振るわず、利益は大幅に減少。政府主導で石炭依存度の低下策がとられるなか、景気減速による需要低迷と供給過剰が重なり、国産石炭は価格が低迷し在庫が増加した。対照的に海外産への需要は堅調で、輸入量は3億トンの大台を突破した。14年はさらに状況が悪化しており、上期の生産量は前年同期比で約2%減少。企業業績も一段と悪化している足元の景気回復は支援材料だが、全体的には引き続き厳しい経営環境。政府による業界支援策への待望論が内外から強まっている。

業界の特徴 ~電力・鉄鋼向け需要が中心、多くの構造問題を抱える~

生産・販売面:

石炭業界は基本的にドメスティックな産業といえる。世界有数の石炭資源量を持つが、産地は内陸部に集中。生産量は山西省、内モンゴル自治区、陝西省の上位3位で全体の7割に達する。このため、主要消費地の沿海部から遠く、鉄道、船舶を中心とする輸送インフラが重要となるが、課題が多い。炭鉱会社が乱立し、集約度は低い。また、年産能力は40億トン前後とみられ、生産設備の削減は喫緊の課題。エネルギー多消費・環境汚染などの問題を抱えており、業界・炭鉱の再編が必須。電力、鉄鋼、建材、化学向けの需要が全体の9割を占め、暖房用需要の増える冬季が繁忙期だ。電力、鉄鋼会社との価格交渉が特に重要。その動向は石炭、並びに顧客である電力、鉄鋼などの業界双方に影響を与える。

国際面:

沿海部で価格・輸送面でメリットの大きい海外産への需要が増加。09年以来、石炭は大幅な輸入超過。インドネシア、オーストラリア産が多く、12年には世界最大の純輸入国となった。中国の大手石炭会社による海外進出も活発。

政策面:

炭鉱は中央政府管轄の「国有重点炭鉱」、地方政府の「地方炭鉱」、政府以外が管理する「郷鎮炭鉱」の3種類に分けられるが、政府の目が届かない小規模炭鉱が多い。石炭は政府の規制色こそ強いものの、中央政府のコントロールが末端まで届きにくい。それでも政府はマクロコントロールを強化しており、炭鉱閉鎖などで具体的な目標を定めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~炭鉱会社が乱立、市況悪化で業績不振が続く~

石炭業界は多くの企業が乱立しているが、ここ数年である程度再編が進み、上位10社の生産シェアも13年は4割まで達した。大手の多くは政府系企業で、主要産地に炭鉱を保有。ただ、こうした大手を含めて業界全体で業績不振が続いている。上場企業をみると、各社が減益・赤字を計上。山西省を地盤とする業界2位の中煤能源(01898)は13.12期、14.6期(中間)で大幅減益に後退。海外展開に積極的なヤン州煤業(01171)も13.12期で利益を大きく減らした。数少ない民営大手の内モンゴル伊泰石炭(900948)も13.12期、14.6期(中間)で業績が悪化。この状況はコークス向け石炭の生産企業も同じで、鉄鋼の国有大手の傘下にある首鋼資源(00639)も12年、13年と減益になった。こうしたなか、業界最大手の神華能源(01088)は減益が続いているが、発電部門の利益貢献により業績は概ね安定。リーディングカンパニーとしての存在感を示した。市況悪化の影響は周辺企業にも及び、専門商社の中国秦発(00866)は13年赤字に転落。多額の減損も業績を悪化させた。また、供給過剰の影響で引き続き炭鉱開発が低迷。これを受け、採掘機械を製造する鄭州煤砿機械(00564)、三一重装(00631)なども業績悪化が続いている。なお、中国では13年も石炭輸入が拡大。国内最大の石炭積出港を運営する秦皇島港(03369)は貨物取扱量の増加を受けて、13年は増益を確保した。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
鄭州煤砿機械
00564
人民元 8,055▲21.1867▲45.513,600
H株 河南省政府系の炭鉱機械会社。主力製品の油圧式ルーフサポートは国内トップクラスのシェア。石炭搬送装置、岩盤切削機なども生産し、神華能源(01088)といった石炭大手が主要顧客。12年にH株上場を果たし、海外事業拡大の資金として約18億HKドルを調達した。国内売上が大半の同社にとって、海外展開は大きな挑戦といえる。
三一重装
00631
人民元 3,225▲11.4356▲28.75,474
香港その他 民営の建設機械大手「三一集団」で、石炭採掘設備を担当する企業。同グループの中核企業である三一重工(600031)とは創業者の梁穏根氏を介して兄弟会社の関係にある。岩盤を掘削するロードヘッダーの販売台数は国内トップクラスで、主要炭鉱で使用。ただ、石炭採掘設備に特化している分、石炭市況の影響を受けやすい。
首鋼資源
00639
香港ドル 4,268▲24.51,115▲38.19,437
レッドチップ 山西省のコークス用石炭の生産企業。北京の鉄鋼大手「首鋼集団」が原材料となるコークスの安定調達を目的に出資比率を引き上げていき、現在は首長国際(00697)を通じて支配している。製品の販売先である鉄鋼メーカーとの良好な関係が強み。その分、鉄鋼市況の影響を受けやすく、ここ数年は業績が低迷している。
中国油気控股
00702
香港ドル 22▲25.3▲61赤縮4,237
香港その他 エネルギー事業会社。石炭層から採取されるコールベッドメタン(CBM)部門を強化しており、山西省で中国石油天然気集団公司と共同開発している。初期投資の負担から赤字が続いていたが、14.6期(中間)はCBMの販売拡大に伴い、最終的に黒字に転換した。代表的なCBMの関連銘柄といえる。
中国秦発
00866
人民元 10,830▲2.3▲248赤転779
香港その他 国内有数の石炭商社。民営ではトップクラスの事業規模を誇る。国内各地の石炭会社に加え、オーストラリアやベトナムなどから石炭を調達。大秦鉄道などの陸運、自前のバルク船を通じた海運を通じて国内に輸送し、電力会社などに販売している。近年は川上の炭鉱開発を強化。石炭サプライチェーンの一体化による競争力の強化を目指す。
神華能源
01088
人民元 283,79711.545,079▲9.3396,070
ハンセン 国務院の直接管理下にある国内最大級の石炭会社。石炭の生産・販売、発電、鉄道や港の経営など、石炭関連の事業を総合的に展開し、内モンゴル自治区、陝西省などで複数の炭坑を経営している。自社で鉄道網、専用港などの輸送インフラを保有し、石炭販売以外の収益比率が比較的高い点が強み。業界再編の主役に位置づけられている。
ヤン州煤業
01171
人民元 56,402 ▲3.0 777▲87.244,900
H株 山東省を本拠とする地方政府系の大手石炭会社。採炭、選炭、販売などを一貫して手がけ、自社で鉄道施設を保有する。メタノール生産などの石炭化学事業にも従事。これまでに買収を通じて事業を拡大、国内は内モンゴル自治区、海外はオーストラリアを重視している。海外事業の比重が大きいだけに、為替変動の影響を受けやすい。
中煤能源
01898
人民元 82,316▲5.73,805▲5771,943
H株 生産量ベースで国内2位の石炭会社。中央政府直轄の企業で、山西省を拠点に華東、華北、西北地区などで炭坑を経営している。石炭輸出やコークス生産、採掘関連設備の製造などが強みで、特に石炭関連設備は国内有数のシェア。ただ、業績不振がつづており、14.6期(中間)も大幅な減益となった。
秦皇島港
03369
人民元 7,02812.41,77826.419,514
H株 河北省秦皇島市の政府系港湾会社。国内屈指の石炭積出港として知られる秦皇島港のほか、河北省唐山市の曹妃甸港など、渤海湾に面した複数の港を経営する。貨物積卸、ヤード、倉庫、輸送、物流などのサービスを提供。秦皇島港は石炭物流の重要な中継ポイントとして機能。曹妃甸港も重要な石炭積出港として知られる。
内モンゴル伊泰石炭'B'
900948
人民元 25,064▲22.83,445▲4840,895
上海B株 内モンゴル自治区を本拠とする民営の大手炭鉱会社。原炭の生産から輸送・販売までを手がける。自治区内に複数の炭鉱を保有しており、同社の石炭は「伊泰」ブランドで有名。このほか石炭輸送鉄道も経営。上海B株の中では圧倒的な時価総額を誇る。12年にH株IPOを成功させ(市場コード:03948)、2社目のB・H株重複上場企業となった。

売上高・純利益は13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年9月26日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。換算レートは1米ドル=7.75HKドル。

石炭(業種別一覧)

注目されるトピックス ~収益源の拡大・安定化が急務~

業界再編は不可欠、大手にはチャンスとなる可能性も:

年産で約40億トンとされる生産能力は過剰気味。また石炭会社が抱える在庫や発電会社の備蓄分が昨年末時点でいずれも8000万トンを超えている。一方で需要回復の見込みは立っておらず、業界全体での更なる生産調整、設備淘汰、集約化などは避けられない見通し。この手段として最も有効と見られるのが業界再編。今後も中小・零細企業の淘汰・再編が進もう。また、大手同士も合併・提携が進むとみられる。競争力のある有力企業はシェア拡大のチャンスとなる可能性も。

収益源の拡大・安定化が急務:

収益の多くを石炭販売、特に電力会社向けの燃料炭に依存している炭鉱会社にとって、収益源の多様化・安定化は喫緊の課題。大手などは主力事業との補完効果が見込める分野で投資を増やしており、その効果が試される。業界のリーディングカンパニーである神華能源は発電、これに続く中煤能源、ヤン州煤業などは石炭化学部門を強化。当面は石炭価格が大きく回復する可能性は低く、各企業にとって経営立て直しは困難を極めるだろう。

政策の方向性は基本的に引き締め:

大気汚染の深刻化を受け、今後も石炭使用の抑制という政策スタンスが続こう。中央政府はまずは大都市エリアでの総消費量を17年までに削減させる計画。足元では地方政府による業界支援の動きがみられるが、あくまでも石炭が基幹産業である地方に限った、ハードランディング回避に向けた内容にとどまるだろう。一方で、石炭産業の高度化に向けては、中央・地方ともに支援を強化。特に石炭液化・ガス化は注目されている。

(中国部 畦田)

石炭(業種別一覧)

中国の一時エネルギー構成比の推移 動力炭(発熱量4500-500キロカロリー)の価格推移 石炭業界の業績推移 中国の原炭年産量、上位20社(12年実績ベース)

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