中国株 業界レポート

不動産業界

~バブル抑制と安定成長の狭間で~
2014年10月1日

市場動向 ~世界有数の市場規模、13年は空前の不動産ブームとなったが14年は不振、バブルの懸念も~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

商品不動産販売額:8兆1428億元(前年比26.3%増)、販売面積:13億551万㎡(同17.3%増)、不動産投資額:8兆6013億元(同19.8%増)

世界最大の人口を抱え、都市化が進む中国本土の不動産業界は世界有数の規模。13年は金融緩和を背景に国内外の投資マネーが流れ込んだほか、旺盛な住宅需要も重なり、空前の不動産ブームとなった。政府の投機抑制策にかかわらず、住宅価格は高騰を続け、大手デベロッパーがけん引する形で住宅販売額、面積はいずれも急激に回復。不動産投資も一段と拡大した。しかし、それに連れて住宅バブルの懸念が高まるようになり、政府は引き締めを強化。徐々にピークアウト感が出てきた。そして14年に入ると国内の景気減速も加わり、住宅市況は徐々に悪化。地方を中心に販売が落ち込むようになり、1-8月の住宅販売額、面積はいずれも前年同期を8~9%下回った。引き締め緩和に舵を切る地方政府が増え始めたが、大都市は基本的に引き締め継続のスタンス。安定成長とバブル抑制の板挟みで、政策の方向性は不透明となっている。

なお、香港も不動産が中核産業。投資マネーの流入により、13年も住宅価格は高止まりが続いた。バブル抑制に向け、香港当局は同様に厳しい引き締め策を実施。これによるマイナス影響が地場系デベロッパーに表れてきている。

業界の特徴 ~政策と景気サイクルなどに大きく連動する産業~

主力事業面:

政策や景気サイクルに大きく左右されるセクター。不動産市場は鉄鋼などの素材産業や消費への波及効果を考慮すると、経済全体への影響力はかなり大きい。中長期的には人口の増加と、都市化の進展が市場拡大をもたらす要因。参入障壁は低く、多くの企業が競争を繰り広げる。開発から販売、資金回収までの期間が長いため、資金調達力、財務基盤が重要。

国際面:

基本的にドメスティックな産業であり、外資規制もある。不動産は投資・投機の対象となりやすく、海外投機筋の標的になる場合も。香港の不動産市場は国際的に開かれていることから、香港を通じた投資マネー流入もみられる。

政策面:

土地はすべて国有・集団所有で、使用権が売買される制度。政府は使用権の払い下げ、開発認可、税金、住宅の購入規制など様々な手段を通じて安定的な成長を目指す。政府は不動産バブルの抑制と安定成長のバランスが難しい。

主要企業、主な取扱銘柄 ~全国展開が可能な大手は販売が拡大、二極化が進行~

中国本土では全国展開できる開発業者は大手に限られるが、上位50社の販売額を合計しても全体の25%に過ぎず、業界の集約度は依然として低い。13年は住宅ブームを追い風に、大手は業績を拡大。一方で競争激化と引き締め政策から中小が伸び悩むなど、二極化が進んだ。住宅開発は民営大手、政府系企業が優位。最大手は万科企業(02202)で、最新の販売額ランキングでも首位を維持。これを複数の政府系、民営企業が追う。中央政府系では全国展開している保利地産(600048)、中国海外発展(00688)、華潤置地(01109)、招商局地産控股(200024)などが有名。地元政府系をみると上海市の緑地集団が販売額で業界第2位に位置し、傘下に緑地香港(00337)を抱える。北京市の北京首創置業(02868)、広東省の越秀地産(00123)、深セン控股(00604)なども増収増益となった。不動産業界の大手にはオーナー企業が目立ち、遼寧省の大連万達集団、天津市の融創中国(01918)、上海市の世茂房地産(00813)、重慶市の龍湖地産(00960)などが代表格。また、広東省にも民営の有力デベロッパーが多く、恒大地産集団(03333)、碧桂園控股(02007)、広州富力地産(02777)、雅居楽地産(03383)などが事業を展開している。大手各社の業績は基本的に堅調だが、住宅ブームが一服した14年は減速感が鮮明となっている。また、長江実業(00001)、恒隆地産(00101)、新鴻基地産(00016)、新世界発展(00017)などの香港財閥系デベロッパーも進出。ただ、これら財閥系各社の主力市場は引き続き香港となっている。香港政府の厳しい引き締めから香港の不動産価格は昨年から頭打ちとなっており、投資不動産の評価損や販売物件の在庫が拡大している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
長江実業
00001
香港ドル 32,3143.935,26010.1296,237
ハンセン 香港一の富豪と知られる李嘉誠・主席が率いる長江グループの中核企業。一大コングロマリットを形成しており、主力子会社の和記黄埔(00013)とともに香港や中国本土、欧州などで不動産開発・投資を行っている。李主席の不動産市場への影響力は無視できず、13年に複数の香港・本土の不動産を売却した際は、市場の動揺を誘った。
九龍倉集団
00004
香港ドル 31,8873.329,380▲37.8167,263
ハンセン 香港財閥系のコングロマリット。なかでも香港や中国本土での不動産投資が主な収益源となっている。香港では「海港城」、「時代広場」などの大型商業施設を経営しており、安定した賃貸収入が強み。近年は他社との共同開発を通じて本土事業を強化。招商局地産控股(200024)、出資先の緑城中国(03900)などと提携している。
新鴻基地産
00016
香港ドル 53,793▲21.440,329▲6.4300,082
ハンセン 不動産事業を中核とする香港財閥系の多角経営企業。不動産の開発・賃貸・管理、ホテル経営を主力事業としている。香港西九龍の「環球貿易広場」(ICC)や上海市浦東地区の上海国金中心(上海IFC)をはじめとした優良資産を香港や中国各地で保有しており、安定した賃貸収入が期待できる。
新世界発展
00017
香港ドル 46,78031.314,14939.578,324
ハンセン 不動産事業を主力とする香港財閥系のコングロマリット。香港の中心地に多くの商業・オフィスビルを保有するほか、住宅・商業施設を開発。中国本土は傘下の新世界中国(00917)が担当しており、各地に低コストで調達した大量の土地を保有。中小都市を中心に住宅開発を手がけている。
保利置業
00119
香港ドル 28,62538.32,7163.310,861
レッドチップ 中国政府系の不動産会社。A株上場の保利地産(600048)とともに、中国保利集団の不動産投資・管理・開発を担当している。国内主要都市で事業を展開しており、不動産投資では上海証券取引所が入居する「上海証券大廈」などを保有。14年4月に兄弟会社の保利文化集団(03636)と提携し、文化・芸術施設の開発に参入している。
中国海外発展
00688
香港ドル 82,46927.723,04423.1163,316
ハンセン 不動産業界のリーディングカンパニー。国内最大の建設会社である中国建築(601668)の傘下にある。主要都市の中心部や都市近郊の好立地物件をメインに中価格帯の住宅開発を手がけている。傘下に置く中国海外宏洋(00081)は主に地方都市での開発を担う。親会社による資産注入が期待材料となっている。
世茂房地産
00813
人民元 41,50344.87,39028.254,589
香港その他 許栄茂・主席が創業した新興の大手不動産会社。上海市の西側(浦西)のランドマークである超高層ビル「上海世茂国際広場」を保有・賃貸するなど、同市デベロッパーの代表格。大都市での大規模分譲マンション、商業ビルの開発に強みを持つ。14年上期の販売額は伸び悩んだが、物件投入の加速により下期の回復を目指すという。
龍湖地産
00960
人民元 41,51048.88,03727.648,323
香港その他 西部地方での事業展開に強みを有する大手不動産会社。高級住宅や商業不動産の開発を手がける。国内最大の人口を有する重慶市を本拠地とし、同市での販売額はトップ。「西部大開発」の恩恵を受ける可能性が高い銘柄といえる。創業者の呉亜軍・董事長は中国有数の女性富豪として有名。
華潤置地
01109
香港ドル 71,38960.914,69639.193,300
ハンセン 国有系の大型コングロマリット「華潤集団」に属する大手デベロッパー。国内各地で住宅・商業物件を開発。複合型開発のノウハウが豊富で、商業不動産からの賃貸料収入は地場系でトップクラス。安定的な収益基盤が強みといえる。一方で不動産販売は14年に入って苦戦しており、上半期の販売額は通年目標の4割以下にとどまっている。
融創中国
01918
人民元 30,83748.03,17821.919,853
香港その他 天津市を本拠に国内各地で不動産開発を手がける民営企業。大都市での大型複合施設の開発を主力としており、販売する住宅物件は高価格帯が中心。13年は不動産ブームに乗り販売額を大きく伸ばしたほか、土地買収に積極的に動いた。浙江省の大手開発業者である緑城中国(03900)との経営統合が浮上しており、今後の動向が注目される。
碧桂園控股
02007
人民元 62,68249.68,51424.259,631
香港その他 民営の大手住宅デベロッパー。広東省を本拠に全国各地で事業展開している。引き締め政策の影響が比較的小さい地方都市近郊での住宅開発を得意としており、13年の販売額は一気に1000億元を突破。前年実績の2倍以上にまで拡大した。14年上期の販売額も7割以上の伸びを維持しており、大手の中でも販売の好調さが際立っている。
万科企業
02202
人民元 135,41931.315,11920.5130,683
H株 中国の住宅販売最大手。国内各都市で中低価格帯を中心に住宅を開発・販売している。企業表彰や企業ランキングの常連で、知名度が高い。14年上期は業界初となる半年間での販売額1000億元超えを達成した。同社の王石・董事長は不動産業界を代表する人物として有名。香港上場で資金調達力が一段と高まった。今後は本格的な海外進出に注目。
恒大地産集団
03333
人民元 93,67243.512,61237.542,597
香港その他 中小都市での住宅販売で急成長を続けてきた新興の大手不動産会社。開発用地の規模等で強みを持ち、14年上期は販売面積で再び国内トップに返り咲いた。実需に基づく住宅の供給、中小都市での販売拡大を重視しており、中低価格帯の物件が中心。また、中国有数のプロサッカークラブを経営している点でも有名。
招商局地産控股
200024
人民元 32,56828.74,20226.638,604
深センB株 中国政府系コングロマリット「招商局集団」で不動産事業を担当する企業。広東省深セン市に本拠を置き、国内各地で事業展開している。不動産の開発、賃貸、管理、仲介のほか、ホテル管理、深セン市の蛇口工業園区への給電事業も手がける。また、香港上場の招商局置地(00978)を支配下に置いている。

売上高・純利益は新鴻基地産(00016)、新世界発展(00017)が13年6月本決算。それ以外はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年9月30日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

不動産(業種別一覧) コングロマリット(業種別一覧)

注目されるトピックス ~バブル抑制と安定成長の両立は至難の業~

都市化の進展による住宅の“実需”に注目:

中国では都市化の進展により住宅需要が増加しており、今後もこの傾向は続こう。一方で実需に基づく住宅供給の不足も顕在化。当局は低所得者向け住宅の建設を加速し、15年までに3600万戸を建設することで問題解決を図ろうとしている。低所得者向け住宅の建設・販売は不動産会社も参画することから、大きなビジネスチャンスとなってこよう。

バブル抑制か景気安定か、政府は難しい舵取りに直面:

中国都市部や香港は住宅バブルの様相を呈しており、市民の政府への不満は大きい。このため、当局は住宅購入の制限、不動産投資向け融資の抑制、不動産税の試験的導入など様々な引き締め策を講じ、何とか価格を下げようとしてきた。しかし、今度は価格下落による財政収入の減少、開発業者の経営悪化による景気への悪影響を懸念する声も出てきた。バブル抑制と景気安定の両立は至難の業といえ、政府の舵取りは一段と難しくなっている。政策リスクは無視できない。

資金調達力・財務体質が益々重要に:

住宅市況が低迷し、政府の引き締め策が無くならない状況下では、開発業者の資金繰りは益々苦しくなる。資金力に乏しい中小の淘汰が今後は増えていこう。一方でこれは財務体質に優れた大手にとって、事業拡大の好機。買収資金の調達に向けて、デベロッパーの海外上場と海外でのファイナンスの動きが加速していく可能性がある。すでに住宅販売最大手の万科企業が香港上場を実現しており、他の大手企業の動向が注目される。

(中国部 畦田)

不動産(業種別一覧) コングロマリット(業種別一覧)

不動産の販売面積と勢子面積の推移
不動産販売額と各エリアの平均販売価格
CCL指数の推移
不動産販売額上位50社(中国本土)

広告審査済

中国株取引のリスク
株価や為替の変動等により損失が生じるおそれがあります。
中国株取引の手数料について
中国株の手数料は、国内手数料、現地手数料、為替手数料と3種類の手数料があり、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は中国株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
中国株は、クーリング・オフの対象にはなりません。
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。