中国株 業界レポート

保険・証券業界

~国際化の進展に期待~
2014年10月16日

市場動向 ~国内の保険・証券市場は世界有数の規模、収益環境の改善が進む

13年の業界規模:(前年度の主要証券会社は114社)

保険料収入:1兆7222億元(前年比11.2%増)、資産総額:8兆2887億元(同12.7%増)、主要証券115社の営業収益:1592億元(同約23%増)、純利益:440億元(同約34%増)

中国の保険・証券業界は世界でも有数の規模を持つ。ここ数年は世界的な金融不安、国内外の景気減速から厳しい経営環境が続いてきたが、13年は状況がやや改善。世界的な金融緩和や国内での規制緩和などを背景に資本市場が落ち着きを取り戻すと、保険・証券会社の収益環境は好転した。商品構成の改善などが背景に同年の保険料収入は再び2桁増を回復し、世界4位の規模にまで成長。保険会社の運用収益も増加に転じた。市場の安定化は証券会社の業績回復にも貢献。主要証券会社の営業収益、純利益はいずれも増加に転じた。収益環境の改善は14年も続いており、上期の保険料収入は前年同期に比べて約2割も増加、1兆元の大台を突破した。また、主要証券会社の純利益も上期だけで約329億元を確保。景気底入れに加え、金融市場の市場化・国際化が好材料視されており、当面はこの勢いが続くだろう。

業界の特徴 ~金融政策・資本市場の影響を大きく受ける規制セクター~

主力事業面:

保険業界は政府系企業が中心的存在。保険商品は大きく生命、損害、医療、年金保険などに分けられる。代理店・銀行窓口での販売が主流で、最近ではネット販売も普及。全国的な社会保障制度がまだ確立されていない中国においては、潜在的な需要は大きい。生保では年金、資産運用の要素を強めた保険商品が多い。損保は自動車保険が主力であり、自動車販売の動向に左右されやすい。保険金の支払いは自然災害などで一気に膨らむリスクもあり、支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)が健全性の指標。一方、証券業界は政府系企業が大手に名を連ねるものの、集約度は比較的低く、銀行など他業種からの参入組も多い。13年は営業収益の5割弱が委託売買手数料、2割がディーリング、1割強が信用取引業務から得ている。保険・証券業界ともに金融政策、資本市場などの影響を大きく受ける。

国際面:

外資は保険・証券業界ともに出資比率の制限がネックとなり、シェアは小さい。日系では日本生命が合弁で参入するほか、大手損保が営業拠点を設置。証券大手も進出している。政府は海外との資本取引を規制しているが、投資マネーは香港を経由して国内外を行き来しているとみられ、両業界ともに海外の金融動向から影響を受けやすい。

政策面:

両業界とも規制が厳しく、特に契約者保護に向けた説明責任は重視される方向にある。一方で、運用・投資の規制は徐々に緩和。特に資本取引は国際化の方向にあり、保険・証券各社は対応に追われている。また、販売面でも規制緩和が進展。13年8月には個人向けの生命保険に適用される予定利率の上限が原則的に撤廃された。

主要企業、主な取扱銘柄 ~大手は国有系企業が中心、業績は総じて好調~

保険業界は国内勢を中心に寡占度が高い。13年の保険料収入ベースで見ると、生損保ともそれぞれ上位10社の合計シェアは約85%に達し、国有系企業が目立つ。特に上位3社は5~6割を占め、他を大きく引き離している。13年の保険料収入は生保・損保ともに伸び率が上昇。加えて運用収益も拡大し、保険大手の業績は総じて改善が進んだ。大手の保険料収入は14年上期も概ね増加傾向を維持している。生保では中国人寿保険(02628)、損保では中国人民保険集団(01339)傘下の中国人民財産保険(02328)が最大手に位置し、いずれも中央政府系の企業。国内屈指の機関投資家としての一面も持つ。この両社を生保・損保の両方で追いかけるのが、広東省に本拠を置く平安保険(02318)と上海市の太平洋保険(02601)。また、生保専業の新華人寿保険(01336)や再保険で強みを持つ中国太平(00966)などの企業も大手に含まれる。証券業も大手は国有系企業が多い。13年は全般的な商い回復や信用取引など新規事業の成長を追い風に、大手の業績改善が目立った。営業収益で首位を走る中信証券(06030)、2位の海通証券(06837)、5位の中国銀河証券(06881)はいずれも13.12期、14.6期(中間)で業績が回復した。また、香港は引き続き中国と世界を繋ぐ金融センターとしてあり続け、その中で中核的な役割を担う香港交易所(00388)の決算内容も改善傾向。香港の資本市場では耀才証券(01428)などの地場系証券会社や、申銀万国香港(00218)、国泰君安国際(01788)といった本土大手の香港子会社などが活躍している。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
中国光大控股
00165
香港ドル8,157101.41,34718.025,110
レッドチップ国務院系コングロマリット「中国光大集団」に属する金融持ち株会社。投資銀行、委託売買、資産運用、実業投資などの各業務を手掛ける。傘下に置く光大証券(601788)は営業収益で国内13位の証券会社。しかし、13年8月に大規模な誤発注を引き起こしており、その後遺症が懸念される。
香港交易所
00388
香港ドル8,72321.04,55211.5202,535
ハンセン香港の証券・先物取引所、関連清算機関などを運営する企業。業績は香港市場での売買金額、資金調達量などに左右されやすい。グローバルでの取引所間競争に勝ち抜くため、買収を通じてロンドン金属取引所(LME)を傘下に置いた。14年10月には上海証取との間で株式クロスボーダー投資が始まる見込みであり、その効果が注目される。
中国太平
00966
香港ドル92,84244.81,53016.344,129
レッドチップ中国政府系の保険大手「中国太平保険集団」の中核企業。「太平」ブランドで各種保険サービスを提供し、13年の保険料収入は生保が7位、損保が9位。商品構成の改善や代理店へのてこ入れ策などが奏功し、13年通期や14.6期(中間)の保険料収入は業界平均と比べて高い伸びとなり、14.6期(中間)も大幅増益となった。
AIA
01299
米ドル21,9267.52,822 ▲6.5 497,462
ハンセン香港を拠点にアジア太平洋地域で保険事業を展開している企業。事業エリアは日本を除く東アジア、東南アジア、オセアニアに広がる。中間層の成長により保険需要の増加が期待できる東南アジアで高いシェア・知名度を築いている点が強み。元々は米保険大手「AIG」のアジア子会社だったが、AIGはすでに全保有株を放出している。
新華人寿保険
01336
人民元128,21714.84,42250.892,809
H株北京市に本拠を置く国内3位の生命保険会社。中央政府系の企業だが、海外の有力保険会社など外国人株主の比率も大きい。銀行窓口販売による個人生命保険が最大の収益源。最近では健康保険、年金保険の販売に力を注いでいる。運用収益の増加や保険契約の累積増加などを追い風に、14.6期(中間)も大幅増益となった。
中国人民保険集団
01339
人民元304,73818.48,12118.9137,454
H株「中国人保」(PICC)ブランドで知られる国有系の総合保険会社。子会社の中国人民財産保険(02328)は損保最大手としての地位をさらに固めており、安定した利益貢献が期待できる。一方、生保の国内シェアは引き続き5位にとどまっており、生保・健保事業の競争力強化が今後の課題といえよう。
中国信達資産管理
01359
人民元42,41331.29,02723.6134,512
H株不良債権処理を中核事業とする中国政府系の金融アセットマネジメント会社。金融機関や企業から買収した不良債権を株式化し、その価値を向上させて売却益・評価益・配当などを得るデット・エクイティ・スワップ(DES)を手がける。このほか、関連する金融サービスや投資・アセットマネジメント事業も展開している。
平安保険
02318
人民元421,22124.228,15440.4435,582
ハンセン国内屈指の総合金融グループ。主力の保険事業は生保、損保の両方で国内2位のシェアを誇る。広東省に本拠を置く民営企業で、これまでの筆頭株主は欧州金融大手のHSBC(00005)だったが、13年にタイの有力財閥「CPグループ」に変わった。傘下に信託投資会社、証券会社、銀行などを持ち、総合的な金融サービスを提供できる点が強み。
太平洋保険
02601
人民元192,21715.09,26182.4230,957
H株上海市を本拠に全国展開する総合保険会社。生保は国内4位、損保は3位のシェアを占める。ライフサイクルに合わせて中間・富裕層に多様な保険商品をワンストップで提供できる体制が強み。地場系で唯一の総合保険グループとして、上海市の発展から中長期的な恩恵が期待できる。
中国人寿保険
02628
人民元417,88312.524,765123.9572,198
ハンセン国務院直属の保険会社。中国最大の保険会社であり、主力とする生命保険は長年にわたり国内トップのシェアを誇る。農村部を含めて全国規模の販売ネットワークを有している点が強み。主力商品は個人向け・団体向けの生命保険や事故傷害保険、健康保険、年金保険などで、特に個人向け保険の競争力が強い。国内有数の機関投資家でもある。
中信証券
06030
人民元20,27955.15,24423.8187,928
H株国務院系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する証券最大手。総資産、営業収益、投資銀行業務の手数料などで国内トップにある。委託売買、引受、アドバイザリー、アセット・マネジメントなど幅広い業務を展開。世界屈指の投資銀行という目標を掲げており、海外事業を強化。仏証券大手で香港地盤の「CLSA」を完全買収した。
海通証券
06837
人民元12,80319.24,03532.8124,028
H株上海市を本拠とする地元政府系の老舗証券会社。総資産、営業収益で国内2位、純利益で国内1位にランクインされる。傘下に置く海通国際(00665)は過去に買収した香港地場系証券会社を前身としており、海外業務の拠点。上海自由貿易区を代表する地場系証券会社として、一層の競争力の向上が期待できる。
中国銀河証券
06881
人民元8,42641.32,13550.442,887
H株中国政府系の総合証券会社。13年の営業収益は国内5位にランクインされるが、主力とする委託売買業務の純営業収益は業界トップ。個人投資家の顧客基盤に強みを持つ。証券・先物仲介業務の収益比率が比較的高いことから、株式市場での商い増減による影響を受けやすい。手数料引き下げの競争が強まれば、収益悪化のリスクも。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年10月15日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

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注目されるトピックス ~金融国際化が中長期的な支援材料に~

保険・証券ともに新たな収益源の確保が重要:

当局は保険商品の販売チャネルに対して監督・管理を強化。生保・損保ともに新たな収益源の獲得が将来の競争力を左右しよう。農村でのマイクロ保険、貯蓄型保険商品、自動車以外の損保などが注目分野だ。証券も委託手数料に依存する構造から脱却し、新たな収益源の確立することが競争を勝ち抜くカギとなろう。特にA株IPO(新規公開)が再開したこともあり、投資銀行部門の強化が求められている。

金融国際化の動きが市場活性化に繋がる期待も:

中国政府が進める資本市場改革が大きな支援材料となる可能性がある。上海市に設立された自由貿易区では資本取引規制の緩和が先行して進んでおり、地場系の保険・証券会社を中心にビジネスチャンスの創出に繋がっている。また、14年10月にも始まる見込みの「滬港通」(上海・香港ストック・コネクト)は、香港と上海の株式クロスボーダー投資を認めるものであり、香港・上海の証券市場の活性化に期待。改革の方向性は更なる国際化であり、保険・証券各社にとっては中長期的な支援材料となる可能性も。

運用環境は流動的:

保険・証券会社の運用収益に直結する資本市場の動向は流動的な部分が多い。利上げ局面で預金金利の収入増加が見込める一方、利上げにより株安に転じれば含み損が膨らむリスクも。特に13年6月には短期金利が乱高下し、株式市場が急落。保険会社の運用損、証券会社の利益減少をもたらした。安定した市場環境が期待される。

(中国部 畦田)

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