中国株 業界レポート

銀行業界

~経済の中核を占める重要セクター、減速傾向が鮮明に~
2014年10月16日

市場動向 ~世界有数の事業規模、巨額の利益を稼ぐ一方で減速傾向も鮮明に~

13年の業界規模:(前年値修正済み)

総資産:151.4兆元(前年末比13.3%増)、貸出残高:76.6兆元(同13.9%増)、預金残高:107.1兆元(同13.5%増)、純利益:1.7兆元(同15.2%増)

中国のマネーサプライM2は世界最大の規模を誇り、13年末には前年末比13.6%増の110.7兆元と、初めて100兆元の大台を突破。14年6月末には更に120兆元を超え、伸び率も加速した。この金融市場の中核をなす銀行の規模も世界有数。高い貯蓄率を背景に13年末の預金残高も100兆元を超えた。穏健な金融政策の影響もあり同年の貸出額は堅調に拡大すると、銀行業界の利益額も1.7兆元と巨額に上った。もっとも、シャドーバンキング(影の銀行)を背景とする金融不安、貸出金利自由化による利ザヤ縮小、急成長するネット金融との競争激化などから、利益の伸びは鈍化。14年上期は更に減速した。ただ、下期は国内の景気回復が見込めるほか、緩やかな金融緩和の下で金利や預金準備率が引き下げられる可能性もあるなど、先行きはやや明るい。更に金利の市場化、民営銀行や預金保険制度の設立、リスク管理制度の改善といった金融改革が進めば、中長期的な安定成長に繋がろう。

業界の特徴 ~経済の中核を占める重要セクター~

主力事業面:

銀行は経済の中核を占める重要セクター。メインプレイヤーは四大国有銀行。資金調達面では貯蓄率の高さから大量の預金を集めることができるほか、インターバンク市場からも調達している。運用面では同じ国有企業向けの貸出比率が高い。ただ、リスク管理に課題が残り、地方政府向け融資などで焦げ付きリスクが指摘されている。個人向けの融資は住宅ローンが主力。規制金利下で銀行の利ザヤは概ね安定している。各銀行は手数料ビジネスにも注力しており、個人向けに「理財商品」を積極的に販売して手数料を稼ぐ。しかし、この取引による調達・運用の多くはバランスシート上に反映されず、通常の銀行の金融仲介機能の枠外にあることから、“シャドーバンキング”と呼ばれている。

国際面:

世界の大手銀行はほとんどが進出済み。人民元業務の開放にともない、外資の進出は拡大しているものの、多くは沿海部に限られており、中国全体での市場シェアは小さい。一方、地場系の大手銀行も有力外資を戦略投資家として受け入れ、先進的な金融ノウハウの吸収に努めているほか、積極的に海外支店の設立、買収なども仕掛けている。

政策面:

規制が非常に厳しい、“護送船団方式”の業界。金利は基準金利に基づき上限・下限を規制してきたが、13年に貸出金利が自由化された。中央銀行は基準金利の上げ下げ(利上げ・利下げ)、比率(預金準備率、預貸比率、自己資本比率など)の調整、公開市場操作などを通じて金融システムの安定化に努めている。

主要企業、主な取扱銘柄 ~四大国有銀行が中心、安定増益となるも増益率は低下~

中国は金利の市場化が道半ば。それだけに銀行の収益環境は概ね安定しており、貸出増が直接増益に繋がることから、13.12期、14.6期(中間)でも主要行は増益を確保した。もっとも純金利マージンの低下、競争激化、引当処理の増加などから増益率は大きく減速している。資産規模でみると、四大国有銀行が上位を占める。最大手は中国工商銀行(01398)。これに中国建設銀行(00939)、中国農業銀行(01288)、中国銀行(03988)が続き、交通銀行(03328)を加えた5行は全資産の4割強を占める圧倒的な存在だ。二番手グループには全国展開する株式制商業銀行が続き、そのうち招商銀行(03968)、中信銀行(00998)、中国光大銀行(06818)の3行はそれぞれ中央政府系コングロマリットの傘下にある。一方で中国民生銀行(01988)は民営大手として有名だ。各地には地方銀行も地盤を築いており、重慶農村商業銀行(03618)、重慶銀行(01963)、徽商銀行(03698)はその中でも数少ない香港上場の銀行。なお、香港の銀行業界は自由金利を採用。多くの銀行が人民元業務を拡大している。13年は世界的な金融緩和を背景に堅調な業績となった。香港ドル発行の資格を持つHSBC(00005)、中銀香港(02388)、スタンダードチャータード(02888)の3行が有名。このうち、中銀香港だけが中国銀行の傘下にある中国資本で、残りはロンドンを本拠とする外資だ。このほか、東亜銀行(00023)などの香港地場系が一定のシェアを持つ。

主な取扱い銘柄:
社名 コード
分類
売上高 増収率 純利益 増益率 時価総額
HSBC
00005
米ドル 78,337▲5.116,20415.51,508,161
ハンセン 世界屈指の総合金融グループ。ロンドンに本部を置き、事業エリアは世界中に及ぶ。設立母体である傘下の香港上海匯豊銀行有限公司は香港ドルの発券銀行であり、傘下には地場系大手の恒生銀行(00011)がある。中国事業にも積極的で、交通銀行、興業銀行などの大手金融機関に出資している。
東亜銀行
00023
香港ドル 17,25314.26,6139.273,926
ハンセン 香港最大の地場銀行。中華圏、米国、カナダ、英国などにも拠点を設け、リテール・コーポレートバンキング、資産運用、投資銀行業務などを展開している。中国事業にも積極的で、外銀としては初めて香港・本土の両方で人民元建債券を発行した実績を持つ。マレーシア系財閥の国浩集団(00053)や三井住友銀行などが大株主。
中国建設銀行
00939
人民元 511,14010.5214,65711.11,386,051
ハンセン 国内第2位の商業銀行。四大国有銀行の中で最初の香港上場企業となった。住宅ローンやインフラ建設向け融資などに強みを持ち、自己資本比率も競合他社を上回る。インフラ投資の拡大による恩恵を受けやすい一方、住宅ローンや不動産開発融資の最大手であることから住宅市況の悪化によるリスクも大きい。
中信銀行
00998
人民元 104,81316.839,17526.2257,525
H株 国有系コングロマリット「中国中信集団」(CITIC)に属する株式制商業銀行。法人向け業務を強みとするほか、リテール業務ではアッパーミドル層の顧客開拓を進めている。足元ではネット金融を強化しており、電子商取引トップのアリババグループやSNS最大手のテンセント(00700)等と提携。大手銀の中でもネット金融で先行している。
中国農業銀行
01288
人民元 465,7719.6166,31514.61,026,242
H株 四大国有銀行の一角を占め、農業関連の金融事業で高い競争力を持つ。農村部(県・県級市)で広大な拠点網を築いている点が強み。四大銀の中では最後の香港上場となったが、調達額は200億米ドルを超え、当時は世界最大のIPOとして話題になった。預金獲得能力が強い一方で預貸比率は低く、貸出余力は大きい。大都市部での競争力に課題が残る。
中国工商銀行
01398
人民元 578,9019.3262,64910.11,601,330
ハンセン 中国最大の国有商業銀行。金融機関で世界トップクラスの時価総額を誇り、国内に広大な支店網・顧客基盤を持つ。海外でも欧米やアジア各地などに進出。幅広い金融サービスを提供している。ゴールドマン・サックスなどが戦略投資家として出資。資産の質、金利決定能力、預金基盤等に関して業界内で優位に立つ。
中国民生銀行
01988
人民元 83,0337.642,27812.6265,591
H株 数少ない民営銀行の一つ。北京市に本店を置き、全国規模で事業を展開している。主力はコーポレートバンキングで、中小企業向け融資に強みを持つ。リテールバンキングではアッパーミドル層の開拓に注力し、手数料ビジネスの一環で理財商品の販売を拡大してきた。反面、資産の質や預金獲得能力などに課題が残る。
中銀香港
02388
香港ドル 49,58612.322,2526.3263,791
ハンセン 香港に本拠を置く中国銀行(03988)傘下の大手商業銀行。100%子会社の中国銀行(香港)有限公司は唯一の中国資本の香港ドル発券銀行として有名。人民元のオフショアセンターとして中長期的な成長が見込める香港において、強固な営業基盤を有している。人民元の国際化、中国・香港間の経済交流の拡大による恩恵が期待できる。
交通銀行
03328
人民元 130,6588.862,2956.7402,145
ハンセン 国内5位の資産規模を持つ株式制商業銀行。筆頭株主は財政部。HSBC(00005)も戦略投資家として資本参加しており、両社は提携関係にある。金融の中心地である上海市に本拠を置き、華東地域への貸出比率が高い。上海自由貿易区の設立による恩恵が見込める。一方で預金獲得に苦戦しており、これが高い預貸比率に繋がっている。
重慶農村商業銀行
03618
人民元 16,31619.55,99111.733,294
H株 重慶市政府系の地方銀行。主に重慶市の県・自治県などで銀行業務を手がけており、資産・預金額は同市内で最大級の規模を誇る。重慶市全体の成長から恩恵を受けられる銘柄。重慶市の農村信用合作社聯合社を前身とし、農業関連の金融サービスに強み。一方で収益構造の高度化に課題が残る。
招商銀行
03968
人民元 133,03016.951,74314.3333,850
H株 総資産で国内6位の商業銀行。国務院系コングロマリットの招商局集団に属している。広東省に本拠を置き、全国規模で事業展開。富裕層向けのプライベートバンキングをはじめとした手数料ビジネスを強みとしている。また、ここ数年はマイクロローン事業の強化に努め、13年には中国民生銀行(01988)を抜いて同分野で国内首位に立った。
中国銀行
03988
人民元 407,50911.3156,91112.4957,681
ハンセン 四大国有銀行の一角を占め、長年にわたり国際・外為業務で業界をリード。香港では中銀香港(02388)を通じて香港ドル発券銀行を支配下に置き、人民元業務を積極的に展開している。国際業務の進出都市数、事業規模などは国内トップクラス。金融市場の国際化から大きな恩恵が期待できるが、一方で海外リスクが高いことも意味している。
中国光大銀行
06818
人民元 65,5279.126,71513.2163,222
H株 全国規模で事業展開している株式制商業銀行。国務院系コングロマリットの中国光大集団に属し、13年12月に香港上場を果たした。クレジットカード、資産運用サービスなどの手数料ビジネスに強く、営業収益に占める手数料収入の比率はトップクラス。一方で預金基盤が見劣りし、資金調達の多くを銀行間市場に依存している。

売上高・純利益はすべて13年12月本決算。単位は百万。

時価総額は14年10月15日の終値に基づきブルームバーグから算出、単位は百万HKドル。

銀行(業種別一覧)

注目されるトピックス ~短期金利・構造改革の動向に注目、資金獲得能力の向上がカギに~

金融政策は引き続きバランス重視の内容に、短期金利の動向には注意:

中国人民銀行(中央銀行)が司る金融政策は銀行経営や株価動向に大きな影響を与える。現在は穏健な金融政策を採用し、公開市場操作に加えて短期流動性オペ(SLO)などの新たな手段も駆使して適時、流動性を市場に供給している。こうした政策は今後も続くだろう。一方で、過剰気味のマネーサプライ、非効率な資金配分機能の下では、資金供給が却ってバブルを助長しかねないという懸念も。実際、当局は13年6月に資金供給を絞り、その結果として金融市場が不安定化した。短期金利の動向を見極めつつ、バランスのとれた金融政策が求められている。

シャドーバンキングが主要なリスク要因、資金獲得能力が益々需要に:

シャドーバンキングの中心である銀行販売の「理財商品」を通じて、地方政府のプロジェクトや零細企業などに多額の資金が流れているが、投資バブルの助長、不良債権化、個人投資家の損失拡大などの懸念が出ている。銀行は償還資金を確保する必要があるが、期間のミスマッチなどの関係から、満期が集中する四半期末の資金繰りは不安定化しやすい。このため、資金調達能力が銀行経営にとって益々重要となろう。特に最大の調達源である預金業務はインターネット金融との競争に晒されており、基盤強化が不可欠といえよう。

構造改革の一環として銀行業務の市場化・国際化が進む:

中国政府は構造改革の一環として銀行業務の市場化・国際化を進めており、すでに貸出金利の自由化、優先株による資金調達の容認などが実施された。今後も預金金利の段階的自由化、預金保険制度の創設、預貸比率規制の緩和、金融破たん処理メカニズムの構築などの改革が、漸進的ながらも進もう。こうした動きは上海自由貿易区のほか、香港に隣接した深センで先行実施される可能性もあり、上海、深センの地場系銀行にとっては有利だ。

(中国部 畦田)

銀行(業種別一覧)

香港上場9行の経営指標一覧(13年度)

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中国の社会融資総量の推移

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ここ数年間の基準金利(1年物)の推移

★12年6月の利下げでは銀行による金利決定の自由度を拡大。初めて銀行の判断で預金金利を基準の1.1倍まで引き上げることができるようになった。貸出金利の下限の調整幅も拡大され、利ざやは最大で3.06%から1.47%にまで縮小することが可能となった。

◆引き下げ幅が異なる利下げは08年9月以来。貸出金利の下限の調整幅もさらに0.7倍まで拡大した。これにより銀行の判断次第では利ざやは1.47%からさらに0.90%まで低下。

そして13年7月、個人向け住宅ローンを除く貸出金利について、下限の調整幅を撤廃した。 これにより、銀行は自由に貸出金利を設定することができるようになった。

過去の預金準備率操作

※14年6月9日に「三農」並びに零細企業向けの融資比率が一定以上の商業銀行に 対して、預金準備率を0.5ポイント引き下げると発表した。従来までの全面的な操作で はなく、個別の銀行に対象を絞った準備率の調整となった。これはバランスを重視する 金融政策の賜物といえよう。

中国の金融政策の推移と市場金利の動向

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