上海街角だより

現在の子供を取り巻く事情

一人っ子政策の解禁で、今年誕生した中国の新生児は、第二子が第一子を上回りました。
一方では日本でも見られる、結婚自体を諦め、人生設計に入れていない若者も、中国でも割と珍しくない存在となっています。
こうした結婚をしない層の出現も、新生児出生の割合に影響を与えているのかもしれません。


日本ではあまり知られていませんが、中国では日本以上のペースで社会の高齢化が進んでいます。定年が日本よりずっと早いこともあって、時間を持て余している高齢者も多いことから、子供の両親は共働きでフルに働いて、子供の面倒はその親である祖父母たちが見る、ということも多いのが現状です。

両親だけでなく祖父母の期待も集まり、6ポケット(両親・両祖父母の合計6人)から金銭的な支援を受け、寛容な大人に囲まれた「小皇帝」と呼ばれるわがままな子どもが成長している、などと一昔前のニュースでは伝えられたりしていました。


しかしながら、皇帝と呼ばれるほど自由に振る舞えているかとよくよく話を聞いてみれば、週に何回もの習い事や、自宅での宿題や通信・ネット教育などの課題に追われ、自由な時間といえば寝る前のわずかな時間しかない子供も多いようです。

今回は、そうした中国の今の子供事情について紹介していきます。


上海など中国の都市部での子育てに関する経済的負担で最も重いものは、住宅に関する負担です。

もともと中国では、結婚後に住む家を持っていない男性は結婚できない、という風潮がありますが、今はただ持っていればいいというわけにはいきません。より高度な教育を受けるためには、通学できる地域に住居がないとそもそも申し込むことすらできないことから、実績や人気のある学校周辺の不動産価格は、ただでさえ割高になっている上海の不動産価格をさらに上回る勢いで上昇しています。


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市内の不動産屋のホワイトボード(※)。物件情報の一番右端に書かれているのが、近くの学校名です。

同程度の間取り、交通機関からの距離でも、授業内容や進学実績などで人気の高い学校の近くの物件は価格が大きく異なります。

(※上海の不動産の場合、いわゆる物件フォーマットの紙に書かれたものは、客寄せや参考例だったりと実際の物件とは関係ないことも珍しくありません。そのため、ホワイトボードの情報が、その不動産屋の実質取り扱い物件ともいえます。)


入学直前になって物件だけを入手してもダメで、一定の居住実績が必要と、なかなか厳しい条件なため、休日や空いた時間に「学区房(学校周辺物件)」を探して不動産屋巡りをしたり、スマホで不動産検索サイトを見たりしている人も多く見られます。

それでも需要に対して供給のパイが非常に限られているため、希望通りの進学が叶わない子供も毎年一定数いるようです。


また、子供一人当たりにかかる費用は加速度的に上昇しています。子供を送迎するための自動車購入(小学校周辺で毎朝のように発生する渋滞の原因になっています。)や各種教材費、習い事など、さすがの6ポケットでも厳しくなってきていることから、リユースやシェアリングなどで費用を抑えたりする人や、その仲介をする企業なども誕生しています。


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市内(浦西)の小学校。上海の場合、日本の小学校とは異なって大きな校庭はないため、「こんな所に?」というような繁華街のそばや細い道路沿いなどにも学校があったりします。

毎朝、車や電動自転車などで両親や祖父母が送りに来るため、上海で朝にタクシーを利用する際は、目的地近辺に小学校がないかの確認をしないと、思わぬ渋滞で時間のロスが発生します。


子供の習い事の中で、現在、最も人気が高いのが英語学習です。
上海の場合は、英語圏から上海に来ている外国人や海外経験の長い中国人などが多いため、対面学習も一定の供給がありますが、そうした人材が中国のどこにでもいるとういうわけではないため、ネットでの遠隔授業や学習教材、あるいは低年齢の子供向けの英語学習要素を持つ玩具やゲームなども需要を高めています。


また、中国の一般的な学校教育のカリキュラムには、スポーツに力を入れている一部の学校を除けば、競技的なものにしろレクリエーション的なものにしろ体育要素がないこともあって、水泳・サッカーなどのスポーツを学ばせる親も多いようです。

上海では、大学より下の教育機関にはグラウンドどころか校庭と呼べるほどのスペースすらないところもあります。公園以外には広いスペースもないことから、子供が伸び伸びと体を動かせる時間をとなると、そのような習い事が必要という面もあります。


クラシック関係での中国出身者の実績や、エンターテインメント・ビジネスの発展などを背景に、音楽関係への関心も高くなっています。ピアノ・バイオリンなどのお稽古事の基本的な楽器だけでなく、中国の伝統楽器やドラムス・エレキギターなどの演奏を、年齢が一桁の頃から習い始める子供もいます。

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市内の学外英語教育。幼児期からの英語教育は、ほぼ一般的な習い事となっていて、こうした学外教育機関は市内のあちこちで見られます。

子供や学生のほか、仕事で必要となった社会人や、定年後の海外旅行や海外移住を目的とした高齢者も学んでいます。


さらには数学五輪などをターゲットとした数学の学習・コンピュータプログラミング・絵やCGなど、実にさまざまな習い事が質・量ともに充実してきており、「習い事は一つだけ」とか「全く習い事に行っていない」という子供の方がむしろ少数派になっています。


かつては小皇帝であった中国の子供たちは、今は売れっ子アイドルも真っ青なスケージュールが詰め込まれた「小明星(スター)」や「小老板(社長)」になっているのです。


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