上海街角だより

上海の不動産賃貸事情

 上海で不動産物件が大きく動くのは賃貸では年に二回、2~3月にかけてと、8~9月にかけてで、これは半期ごと4月と10月(中国の場合、学校の年度は10月スタート)に合わせてその前に新居を探すことが多い為です。


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 上海の不動産仲介店舗。ズラズラと並んだホワイトボードはこちらの不動産屋での定番の光景です。売り手や貸し手が急ぎの場合など、店頭に写真を貼ったり、ホームページに公開する前にこの段階で買い手や借り手が決まってしまうことも(この店の場合、手前の赤い枠の看板が急募物件です)。


  一時期の過剰な不動産投資熱は過ぎたとは言え、まだまだ不動産への上海市民の関心は高く、市中心部での人気物件では毎日の様に売買を促す不動産屋のポスティングが行われ、売買もされず住人が住んでいる物件をインターネット上で相場よりも安めの価格で掲載して、詐欺紛いの客寄せを行う不動産仲介業者すら居ます。

 また、北京五輪、上海万博に伴って大幅に充実した地下鉄も、上海の不動産事情を大きく変える一因であり、それまで市のメインストリームから外れた位置に存在したエリアが、新路線、新駅の開発により急速に価値を高めている例も多く、これまで上海市の中心を担ってきた地下鉄1号線、2号線に代わって地下鉄9号線、10号線の沿線も人気を集めるようになってきています。

 こうした中、以前はオフィス、店舗等のビジネス物件のみで見られた、際限なく高騰する人気物件と、統計を下回る水準にとどまるそれ以外の物件という不動産市場の二極化が賃貸住宅市場でも見受けられる様になってきました。

 投資主体の売買市場とは異なり、上海の賃貸市場は上海人の意識、生活が色濃く反映されたものとなっています。

 一つは子供の教育への深い関心。上海の小・中学校教育はかなり早い段階から専門的なルートと一般的なルートに分かれる事や、一般的なルートでもレベルの高い授業内容の大学進学まで視点に入れた学校があるなど、どこに入れるかである意味その後の人生が決まるといった様な日本の「お受験」より更にシビアな親たちの競争があります。


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 旧・フランス租界中の改築中共同住宅。上海市内のあちこちで、こうした改築、新築工事の光景が見られます。万博前の市主導で通り沿いの住宅等のお色直しをしていた当時とはまた違った、より高く売る・貸す為のお色直しの改築工事も良く見られます。外からは良く分からない内装工事等の数は、こうした外観まで行う工事以上の頻度で行われています。

 流石に小学校高学年や中学校になれば自転車等で一人で通学する様になりますが、朝夕の送り迎えで局所的な渋滞が発生するほど、両親や祖父母の通学支援は熱心ですし、子供の進学に合わせてその通学に適した地域に引っ越す事も珍しくありません。

 こうした教育への熱心さが不動産賃貸市場にも大きな影響を与えています。

 専門的な教育を行う学校や、高度な授業を行う学校の近辺の賃貸物件はこうした教育事情の影響を受けて限られた物件に多くの需要が集まり、結果として賃料も上昇しています。



 もう一つはステイタスとしての居住エリアの選定。

 日本の東京でも昔から山の手と下町というエリア分けがあったり、現在でも23区にステイタス的な階層があったりするのと同じ様に、上海の中でも旧・フランス租界周辺は高いステイタスで見られるエリアであり、ある程度の成功や安定を獲得した上海の人々にとって、こうしたエリアに住むことは自尊心を満足させると共に、他者からの評価にもつながる為、このエリアは単純な物件価値以上の価値を持っており、売買市場、賃貸市場共に高い人気を誇ります。

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 元から人気の高い商業エリアであった旧・フランス租界エリアに含まれる准海中路に面して開店したユニクロの店舗。こうした大規模施設に限らず、個々の店舗でも上海の商業不動産の入れ替わりは激しく、3年もすれば周辺の光景がすっかりと変わってしまうことも珍しくありません。

 結果、この地域の賃料は上がり、これが住人層、店舗層をある程度制限することとなって、より地域の価値が高まるというスパイラルで、上海で普通に働く人々にとっては益々手の届きにくいエリアになっているのです。


 また、これらの地域はそうした住人層も相まって比較的治安がいいエリアで、外国人居住者も多く見られます。

 治安がいいから外国人が多い、この逆が起きているのが日本からの旅行者などにも知られる虹橋空港のある虹橋周辺です。

 元々、このエリアは日本人駐在員や、台湾華僑などが多いエリアでしたが、近年では上海人、新・上海人にも人気となっており、逆に日本人は新しく日本人学校が出来た浦東に出ていく等、住民層に近年変化が生じています。

 治安がいいから外国人が多い、のではなく、外国人が多いことが治安の良さにつながり、それがアメニティも重視する様になってきた上海の人の人気を集める結果となったのです。


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 建設中の上海中心(写真右)を含む、上海浦東のシンボルとも言える高層ビル。上海中心の完成で当初の予定通り3つの高層ビルが並ぶ光景となります。これに合わせて、周辺もペデストリアンデッキ化が進むなど、大規模な開発でも上海の不動産事情は大きく変わっています。今後も上海自由貿易区、上海ディズニーランドなど、不動産需要や価格に影響を大きく与える開発も控えています。



 最近の中国株市場でも有名になった上海自由貿易区周辺など、「未来」を映す不動産売買市場に対して、不動産賃貸市場は「現在」を映す鏡とも言えるでしょう。単に「日本より高いんじゃ?」にとどまらず、もう一歩踏み込むと一般的な統計などには出てこない、上海や中国の「今」が見えてくるのです。


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