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【中国株レポート】人民元高が中国株の上昇要因に

中国人民銀行(中央銀行)は6月19日夜、人民元相場の柔軟性を一段と推進するとの声明を発表した。その声明文の一部を紹介すると以下の通りになる。

  1. 国内外の経済状況や金融情勢、更には中国の国際収支を踏まえ、中国人民銀行は人民元の為替制度改革を一段と進め、人民元レートの柔軟性を強化する。
  2. 05年7月21日以降、中国は市場の需給関係に基づき、複数の通貨で構成する通貨バスケットを参考とした管理変動相場制度を実行してきた。それ以来、人民元の為替制度改革は着実に前進を遂げており、当初想定された通りの充分な効果を発揮した。
  3. 現在、世界経済は徐々に回復しており、中国経済の回復基盤はより強固なものとなると同時に安定している。このような状況下において人民元の為替制度改革を一段と推し進め、人民元レートの柔軟性を強化する必要性が高まった。
  4. 人民元の為替制度改革を進めるに当り、市場の需給関係を反映した通貨バスケットを参考にする。為替レートの変動幅は以前に公表した為替レートの変動率を維持し、人民元レートの管理と調整を行う。
  5. 中国の対外貿易は徐々に均衡が取れた状況へと向っている。経常黒字が対名目GDP比で09年に大幅な低下となったのに続き、10年も国際収支は均衡状態へと近づきつつある。そのため、現在の人民元レートに関して大幅な変動は必要ない。中国人民銀行は市場での資源配分機能を更に発揮させ、国際収支の基本的な均衡を促進するとともに人民元レートを合理的な水準に保つことによって、マクロ経済と金融市場の安定を維持する。

今回の声明では具体的な数値に触れておらず、人民元レートの柔軟性を強化することの必要性を説く一方で、対外貿易において均衡が取れてきていることから大幅な人民元の変動は必要ないとするものであった。ただ、市場では中央政府が人民元高誘導を再開したものと受け止め、週明け21日の人民元レート(スポット)は元高の動きを示した。現行の為替変動幅は、対米ドルで当日の基準値±0.5%、対ユーロ、日本円、香港ドル、英ポンドで同±3%に設定されており、この範囲内で今後動くこととなろう。

この時期に今回の声明を発表したのは、第1に6月26‐27日に掛けてG20首脳会談が控えているためであろう。最近、米国議会を中心に人民元政策への批判が高まっていただけに、人民元問題がG20の議題となることを避けるとともに首脳会議での主導権を握りたいとする中国政府の意図が読み取れる。他方、国内でのインフレ圧力を抑える目的もあったと考えられる。5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+3.1%になるなど、1年物の預金基準金利は実質的にマイナスの状況にある。そのため、国民の不満に繋がり易い物価上昇を抑える必要もあったと言えよう。しかし一方で、欧州経済の減速が懸念され、足元で頻発しているストライキ問題を受けて輸出産業に逆風が吹く中での為替政策変更は市場の予想とは異なるものだった。これは、直近での人民元レートからも分かる。NDF(1年物)は5月3日に現物比で3%以上人民元高の水準にあったが、6月上旬には人民元高誘導への期待感後退とともに同1%以下まで縮小していた。声明発表後の6月21日にハンセン指数が前日比3.1%、H株指数で同4.4%の大幅高となったのも、このためであろう。

では今後、どの水準まで人民元は上昇するのだろうか。声明の中でも明確に否定しているように、大幅な人民元高はないだろう。あくまでも緩やかなペースでの上昇にとどまる可能性が高い。前回の動きを参考にすれば、切り上げ直前から年末までの上昇率(05年7月21日の8.277元/USD→05年末の8.070元/USD、約2.6%元高)が目安となろう。今回も、年末までに人民元は同程度上昇する公算が大きいと見ている。

05年の人民元利上げ時に大きく上昇した銘柄
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05年の人民元利上げ時に大きく上昇した銘柄
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そこで株式市場へは、どのような影響をもたらすだろうか。まず、声明発表後の翌営業日には株式市場でポジティブサプライズとして大幅高に繋がった。ただ、マイナス影響の懸念される輸出企業の株価まで大きく上昇するなど、過剰反応も見られた。人民元の大幅な切り上げが発表されなかったことを好感した結果とも言えるが、今後、輸出企業の株価は市場平均を下回る可能性が高い。一般的に、人民元の上昇をプラスとする業種としては本土の不動産、銀行、空運、素材等の輸入企業が考えられる。前回の人民元切り上げ時も、不動産、銀行や空運の銘柄が大幅に株価を上昇させた。銀行、不動産に関しては多額の人民元資産を保有していることでドルベースでの資産増加が背景にある。空運は外貨での負債が多いため、人民元ベースでの負債圧縮へと繋がる。素材等の輸入企業にとっては原材料費の低下が企業業績にプラスとして作用しよう。また、輸入物価を押し下げることで個人消費の拡大をもたらし、内需関連全般にも恩恵を与えよう。さらに、中国本土では海外旅行ブームが起きる可能性もある。その場合、香港の小売業界やマカオ関連の企業にもプラスとなろう。その上、本土系企業全般にとって香港ドルベースの利益を押し上げる要因にもなる。香港ドルは米ドルに連動しているため、人民元の対米ドルでの上昇は対香港ドルでも増価として現れる。それによって、香港ドルベースでのEPSやBPS等が上昇することでPER、PBRなどの低下に繋がり、株価の上昇要因となることも考えられる。

前回の人民元切り上げ以後、中国株が世界を凌駕する勢いで上昇しただけに、今回も中国株に大きな期待がかかる。中国人民銀行による為替政策の声明を受け、中国株は昨年夏以降から続いていた調整局面に終止符を打ち、大きな転換期を迎えていると言えるかもしれない。

05年の人民元切り上げ時に大きく上昇した銘柄
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