日本株マンスリーレポート

マーケットレポート

マーケットの視点

外患の波濤に曝された日本株市場は絶好の「仕切り直し相場」、アグレッシブな決算内容、中期計画の発表多い

・ 先々週の世界株市場は堅調だったが、先週は再び歴史的にも厳しい1週間を過ごした。26日の週は好決算発表が相次いだこともあり比較的堅調な株価推移が続き、30日の日経平均株価は前週末比“142.94円高”と4週間ぶりの上昇に転じた。既に、ギリシャ国債に関して、長期債務格付けを9日にフィッチが、16日にS&Pが「シングルAマイナス」から「トリプルBプラス」に、22日にムーディーズが「シングルA」から「シングルAマイナス」に引き下げるなどギリシャ債務問題は燻り続けていたが、ユーロ圏各国の支援、IMF融資の方向性など楽観的な見方が主流を占め、米国企業決算の8割近くが予想を上回る好決算となったことに支えられ、世界株市場も堅調な推移を辿った。しかし、翌3日の週は、NYダウが4~7日と4日続落し“771.40ドル安、6.9%下落”となるなど株式市場は世界同時崩落、大型連休明けの日本株市場は6、7日に再び外患の波濤に押し流された。日経平均株価は、2日間で“692.81円安、6.3%下落”となり7日の終値は「1万364円59銭」で引けた。各国の直近高値(香港ハンセン、上海総合以外は年初来高値に相当)からの下落率は、日経平均株価8.2%、NYダウ7.4%、NASDAQ10.5%、S&P8.7%、英FTSE100・12.1%、独DAX9.2%、仏CAC40・16.6%、香港ハンセン10.1%、上海総合15.1%、韓国総合5.7%、印SENSEX6.7%などとなっている。6日のNYダウは誤発注の可能性も指摘され一時“998.50ドル下落”と過去最大の下げ幅となりザラ場で1万ドル割れを記録した。世界株市場の同時崩落のきっかけはギリシャ債務問題を発端とする“国の破綻懸念”、“回復途上にある世界景気に対する先行き不安”の台頭、日本株に関しては一時87.95円/米ドルと09 年12 月以来、ユーロも110.49円/ユーロと8年5カ月ぶり、の円高となったこと、3日に中国が今年に入って3度目の預金準備率引き下げを実施したことで中国に金融引き締めが本格化することも株安を加速させたことも影響している。27日にS&Pがギリシャの長期債務格付けを「トリプルBプラス」から「ダブルBプラス」に3段階の再引き下げ、ポルトガルの長期債務格付けを「シングルAプラス」から「シングルAマイナス」に2段階引き下げを実施、5日にムーディーズがポルトガル国債の格下げを検討していることも伝わり、ギリシャの緊縮財政に対する抗議デモが勃発するなどで不安心理一層と強まり、各国の為替市場、国際商品市場をも含め全般的にリスクマネーが収縮することでマーケットは急落した。これらの一連の流れの中に「リーマン・ショック」のトラウマ的な“破綻懸念”を映して見ているようだ。

・ ギリシャ債務問題に関しては、ユーロ圏16カ国の臨時首脳会議が7日にブリュッセルで開催され、1100億ユーロの協調融資実施を承認するとともに、金融不安の拡大に歯止めをかける措置として、新たな「安定化基金」の創設で一致した。ギリシャへの協調融資は、ギリシャを除くユーロ圏15か国が10~12年の3年間で800億ユーロ、IMFが残りの300億ユーロを受け持つことで合意、G7財務相も電話協議で各国協調を改めて確認している。米日の予想を上回る企業決算、7日の「4月の米国雇用統計」に代表されるように足下の好調な経済指標が発表されても、マーケットの不安心理が払拭されないのは、債務問題がポルトガル、スペインにも波及し欧州の主要銀行の財務問題が再燃、米日主要銀行にもその影響が伝播することで世界的に銀行貸出が抑制され企業活動を制限し、個人消費にも影を落とすことで世界景気の回復傾向に足止めがかかると先読みしていることが背景となっている。

・ しかし、恐らくは杞憂に過ぎないことになるだろう。例えば、米国株市場はそれほど大幅な調整をすることなく上昇トレンドを重ねてきただけにテクニカル的には大幅調整を必要としていたと言える。アジア通貨危機で97、98年にIMF融資を受けた韓国は電機、自動車産業を中心に見事な復活を遂げたが、ギリシャなど南欧諸国には国家財政を蘇生する強力な産業基盤がないことから、今回の問題が長引くことは必至だろうが、日本にとってはユーロ安以外、直接的な問題はほとんどない。これは米国にしても同様なことであり、欧州の事業ウエイトの高い企業の株価下落幅が大きいが、基本的には新興国拡大、米国回復に支えられた業績急回復基調が続こう。為替も瞬間90円/ドルを切ったが対ユーロ以外は極端な円高進展は考え難い。従って、今期決算の急回復の方向性は不変であり、多くの企業が発表しているアグレッシブな中期計画も魅力的な内容が多い。好決算の発表に対して乗り遅れ気味になっていた場合は、結果的に絶好の『仕切り直し相場』が提供されたものと考える。資源価格急落で株価急落している総合商社、円高と欧州ショックでの株価急落の電機・精密、自動車、グローバル金融の波に揉まれ過ぎのメガバンクなどが狙い目だ。

・ これまで発表した決算は注目度の高い内容が非常に多い。例えば、日本電産の決算内容は極めてアグレッシブだ。同社はM&Amp;Aでの事業拡大を続け、現在、HDD用モーターでは世界シェア80%に達し、更にヴァレオの買収などで次は自動車用モーターでの世界席巻を狙う勢いだが、09年度は減収ながら営業利益は2期ぶりに過去最高を更新、今期は12%増収、営業利益は28%増益の1000億円の大台を突破すると公表した。既に再び成長軌道に乗って走っており、中期計画では12年度には売上高1兆円、M&Amp;A再開で自動車関連を増強し15年度には売上高2兆円を目指すと永守社長の鼻息は荒い。何より、凄まじいのは、数量大活況を感じさせる世界のHDD需要台数だ。HDDの一般的な10年度見通しは6~6億5000万台だが、永守社長は7億2000万台まで需要は跳ね上がると確信しているようだ。しかし、世界的な部品供給能力不足で、そこまでは生産が追い付かず7億台がせいぜいであり、もしも部品供給が間に合えば実需は7億5000万台規模まで拡大すると強調した。HDDは、パソコンのみならず、DVDレコーダー、そしてクラウド時代のストレージとして爆発的に需要が発生しつつあることを背景としているようだ。HDDに関しては、同じくスピンドルモーターを手掛けるミネベアも強気で、既に過去最高の生産実績となっており日本電産と同様に生産能力の拡大を急いでおり、HDD用磁気ヘッドのトップを誇るTDKも磁気ヘッドの好調を背景に業績が急回復に転じ今期も大幅増益見通しだ。

・ また、地味な内容ではあるが日野自動車の決算にも驚かされた。前期の営業利益は期初見通しの150億円の赤字が第3・四半期に90億円の赤字の見通しに増額修正され、最終的には11億円の黒字を達成する好転、更に、今期は250億円への大幅増益の見通しを発表した。しかし、この業績の変化以上に驚いたことは中期計画の内容だ。日米欧のトラック市場は既に成熟化が進み、同社の世界販売実績はこれまでせいぜい10万台強のレベルで頭打ちを繰り返して来たが、今回、15年度には海外販売を倍増の15万台とし総販売台数を20万台、今期比倍増の計画を発表したことだ。トラックは乗用車と違って設備機器のような位置づけで、一定のボリュームゾーン内での需要変動を繰り返してきたが、日野自動車の今回の中期計画は、これを突き抜ける成長ステージに突入することを示したことであり、驚くべきことだ。新興国需要が過去の常識を超える企業成長を実現する実例でもある。

・ また、今期予想がアナリスト・コンセンサスに届かないとして失望されたホンダの今期の四輪車販売計画は362万台と前期比22万台の増販を見込み、アジア市場で好調な販売を続ける二輪車販売台数は、「ホンダ」ブランドベースで前期の1549万台から今期1744万台と2期連続で過去最高の販売台数を記録する計画だ。今期営業利益の会社側公表は4000億円、同10%増の小幅増益と失望を与えたが、これは下期を不透明としての明らかに慎重過ぎる数字であり、現実には今期営業利益は5000億円程度が同社の実力と判断される含みを感じさせる決算説明会での内容であった。前期は四半期決算ごとに増額修正を重ねたが、今期も再び増額修正が期待されるところだ。

・ 世界経済は順調に回復傾向を辿るだろう。昨年夏以降、上方修正が続いたIMFの世界経済見通しは、今回も前回予想の3.9%成長を4.2%成長に上方修正、早くもバブル的な成長を遂げた07年当時に近づいて来ている。中国とインドを合わせただけでも25億人もの人口である。新興国経済の高成長が予想以上の数量活況に結び付くことはそれほど難しいことではない。09年度業績は予想を大幅に上回る増額修正となったが、10年度以降も予想以上の数量景気を享受し増収率が一層高まり、大幅な収益拡大となる可能性は充分に高い。各社とも構造改革が一段落し、世界不況脱出が見え、なおかつ新興国需要が急増していることから、意欲的な新中期計画の発表が相次いでいる。“12年度”前後に過去最高業績を更新することを目標に掲げている企業が多く、過去最高更新へと導く牽引役は、売上高の拡大という“成長戦略”をベースとしていることに注目したい。


先々週、先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 指標の結果は多少の鈍化傾向が見られるものの、景気回復基調は不変の印象が強い

 先々週、先週発表された経済指標は、国内では4月30日に「3月の鉱工業生産」、「3月の完全失業率」、「3月の有効求人倍率」、「3月の消費者物価指数」と重要指標が目白押し、海外では米国で4月30日に「1~3月のGDP成長率」、「4月のシカゴ購買部協会景気指数」、5月3日に「4月のISM製造業指数」、5月5日に「4月のISM非製造業指数」、5月7日に「4月の雇用統計」、経済指標以外でも国内では4月30日に日銀の「経済・物価情勢の展望」、米国では4月27~28日にFOMC。結果を伺うに、全体の印象としては、多少鈍化傾向は見られるが、実体経済は着実に回復基調を続けていると感じられた。

 まず4月30日に発表された「3月の鉱工業生産」だが、結果は、前月比0.3%増と2カ月ぶりの増加となった。業種別では国内の景気回復を牽引する電気機械工業、輸送機械工業がそれぞれ同6.1%、同1.8%の増加となった。各国の景気対策の息切れが懸念されるが、電機機械工業は11カ月連続増加、輸送機械工業も船舶・鉄道車両を除く数字では13カ月連続増加と、リーマン・ショック直後の落ち込みが激しかったとはいえ長い回復を続けている。鉄鋼業も09年9月に前月比0.1%の微減となったものの、それを除くと09年4月に増加に転じてからは安定的な回復を続けている。鉱工業生産の四半期ベースでは1~3月は前期比6.7%増と4四半期連続の増加、なおかつ伸び率も09年4~6月の同6.5%増、7~9月の5.3%増、10~12月の5.9%増の過去3四半期を上回る上昇率となったことからもわかるように、単月の結果では現状の良し悪しを判断できず、少なくとも四半期ベースで判断する必要があると思われる。また、4月、5月の製造工業生産予測調査はそれぞれ3.7%増、0.3%減としており、回復基調は続くと考えられる。


鉱工業生産指数の推移
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 さらに同日には総務省、厚生労働省から「3月の完全失業率」、「3月の有効求人倍率」が発表されたが、完全失業率は5.0%、前月比0.1ポイントの悪化、有効求人倍率は0.49、同0.02ポイントの改善となり、判断がつきにくい結果となった。しかし、3月の完全失業者数では定年や勤め先の都合を理由にした“非自発的の離職による者”は145万人、前月比4万人増となっており、完全失業率の悪化の原因は年度末の人員整理などの特殊要因と考えられる。企業の生産回復傾向を勘案すると労働市場も緩やかながら回復していこう。


完全失業率と有効求人倍率の推移
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 一方、米国では30日に「1~3月のGDP成長率」が発表されたが、結果は前期比年率3.2%増と10~12月の成長率5.6%増と比較すると伸び率は鈍化したが、3四半期連続の増加となったことから回復傾向は続いていると判断できる。さらにGDPの7割を占める個人消費の回復が本格化しつつあることが今回のGDP成長率に対する寄与度でわかる。10~12月成長率5.6%増の寄与度をみると、3.79%分が民間企業の在庫投資であるが、今回の1~3月成長率3.2%増では2.55%分が個人消費である。

 5月7日には米国労働省から「4月の雇用統計」が発表された。失業率は9.9%、前月比0.2ポイント悪化したが、非農業部門雇用者数は前月に対し29万人の増加となった。事前の市場予想では失業率が9.6%であったために、結果としてはマイナス材料と捉えられがちだが、4月の雇用統計は、就職をあきらめていた人が労働市場に戻ってきたことが背景にあるからネガティブな材料にはならなかった。また、3月の非農業部門雇用者数増加幅も前月比16万2000人増から同23万人増、2月は同1万4000人減であったが、同3万9000人増と上方修正されたことから、これで4カ月連続の増加となった。この先も、失業率では一進一退が続くであろうが、非農業部門の雇用者数は徐々に増加していくと予想される。


失業率と非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 経済指標は堅調な予想だが、ギリシャなど債務問題の影響は注意する必要がある

 今週は、国内では12日に「3月の景気動向指数」、13日に「4月の景気ウォッチャー調査」と「4月の工作機械受注」、海外では中国において10日に「4月の貿易収支」、11日に「4月の小売売上高」、「4月の消費者物価指数」、「4月の固定資産投資」、「4月の鉱工業生産」、週末の14日には米国で「4月の小売売上高」、「4月の鉱工業生産・設備稼働率」、「5月のミシガン大学消費者信頼感指数」と週の序盤では中国、中盤には国内、終盤には米国、と1週間を通して重要な経済指標の発表が続く。

 まず、「3月の景気動向指数」のコンセンサスであるが、一致CIは前月比1.1の増加、先行きCIは前月比4.3であり、先行きCIは統計開始以来の最大の伸びと市場では予想している。だが、注目すべきは「4月の景気ウォッチャー調査」であろう。調査期間が4月25~30日までであり、ギリシャの財政赤字が深刻化してきた時期であるから、これまでの回復基調が大きく揺らぐ可能性が考えられる。

 米国では「4月の小売売上高」のコンセンサスは前月比0.3%増、「4月の鉱工業生産」は0.6%増、「4月の設備稼働率」は73.7%で前月比0.5ポイント増、「5月のミシガン大学消費者信頼感指数」は73.5で前月比1.3ポイント増であり堅調な予想となっているが、米国の指標に関してもギリシャ債務問題など国家財政問題の影響に関して注意する必要があろう。



今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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