マーケットレポート

マーケットの視点

為替を睨んだ神経質な展開が続くが、今回の大幅調整で割安感台頭が著しく短期の大幅リバウンドが期待される

・ 先週の株式市場は世界的に大波乱展開。理由は、①欧州の財政問題が世界景気に影響を及ぼすとの懸念が強まる、②現時点における世界景気回復の最大の機関車役である中国が金融引き締め懸念に加え最大の輸出先であるEU向け(20%を構成)が失速することで中国経済に変調が生じる懸念が強まる、③欧米における金融規制が一段と強化されることで銀行の貸し渋り傾向が強まり世界的な景気回復を腰折れさせかねないとの不安が台頭、④民主党小沢幹事長に依然纏わる「政治と金」問題、普天間問題で国内政治に対する失望感が募る、など。株式市場のみならず国際商品市況も急落しており、世界的にリスクマネーが金融マーケットから急速に引き上げられる厳しい展開となった。先週末の日経平均株価は前週末比“677.97円安、6.5%下落”の「9784円54銭」と2月10日以来の1万円割れ、2月9日の「9932円90銭」を下回り年初来安値を更新した。NYダウも20日に前日比“376.36ドル安” と今年に入って最大の下落幅を記録し、21日はザラ場安値「9918ドル82セント」と一時1万ドルの節目を割り込んだが、最終的には“125.38ドル高”の「1万193ドル39セント」と4日ぶりの上昇に転じて先週末を引けた。日本株を特に押し下げた要因はいつものことながら円高の進展で、20日には対ユーロで110円台にまで上昇、対米ドルでも88円95銭まで突っ込み21日にかけても89円台と90円割れが続いた。好調な決算発表が続いた企業業績に関して、グローバル企業の10年度見通しの為替前提はおよそ90円/米ドル、120円/ユーロとなっており、出鼻を挫かれるような円高進行が軒並みグローバル企業群の株価を大幅に押し下げる格好となっている。

・ 18日に唐突にドイツが発表した「空売り規制」が株式市場の暗雲を募らせることになったが、先週末には20日に米国上院議会で可決した「金融規制改革法案」の内容がそれまでの想定よりは厳しくはないことが判明、21日のドイツ議会が欧州の金融安定化に向けた融資制度を承認したことで、世界の金融安定化に対してドイツが調和を乱すのではという疑心暗鬼が払拭されたことで先週末の欧米株市場は上昇に転じて終えている。今回のギリシャ財政問題から発展したリーマン・ショックに続く金融危機による株式市場の急落で最大の悪役を演じたのは金融株だが、21日の米株式市場でのNYダウの反発は上昇率トップが6%近いJPモルガン・チェース、2位が4%台のバンク・オブ・アメリカなど金融株が牽引役となっており、予断は許されないものの株式市場の流れが変わる可能性は高い。先週末では、ほぼ全ての世界株市場が昨年末株価を下回っているが、下落率で見るとNYダウ2.3%、S&P500・2.5%、ナスダック1.8%と米国株市場は小幅に止まっており、ユーロ安が輸出拡大に結び付くと思惑が働く独DAXも2.2%と小幅、同じ欧州主要国でも景気が厳しいフランスはCAC40・12.8%、1974年以来のハング・パーラメント(宙ぶらりん議会)、1945年以来の連立政権となったイギリスの英FTSE100・6.5%、円高ダメージの日本の日経平均株価が7.2%、大幅な下落はやはりギリシャ、スペイン、ポルトガルが20%超、新興国でも資源国のブラジルが15.2%、景気過熱気味を懸念される中国の上海総合指数が21.2%と大幅な下落となっており、明暗が分かれている。

・ 日経平均株価の200日移動平均線が21日に「1万361円16銭」、前日比4銭安と09年8月以来の下向きに転じたことから下値模索が指摘されている。一方で、騰落レシオは20日76.11%、21日68.58%と売られ過ぎの目安である70%以下に下落、21日の「日経225ベース」ベースの予想PERは“17.0倍”、PBRは“1.1倍”と割安感は強い。企業業績に関して円高による下振れを指摘する声もあるが、88~89円/米ドル程度の円高はまったく問題ない。対ユーロに関しては、日本企業で収益の欧州ウエイトが突出している企業はほとんどなく、もとより欧州の回復力の鈍さがユーロ安のマイナスを薄めることになろう。中国リスクは気になるが、むしろ、新興国需要の拡大、米国回復による想定以上の数量拡大によるスケールメリットが円高を充分に相殺するものと予想する。従って、この3週間に及ぶ“1272.86円安、11.5%下落”という大幅調整によって、収益回復度と株価のギャップが大きく乖離した銘柄は非常に多い。7月に発表される第1四半期決算によって、短期的に大幅なリバウンドが期待されると同時に、長期上昇トレンドの出発点にあることが確認される銘柄が多くなったとも言えよう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
クリックして拡大


今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
クリックして拡大


◆内外経済指標より

先週発表 … 国内の機械受注、1~3月期GDPは好調な内容だったが、米国指標は不安要素が入り混じる

 先週発表の内外経済指標は、国内は比較的好調なものが多く、その反面、米国発表の経済指標は悲観的なものが続いたことで世界的な株価下落を更に強める結果となった。

 17日に発表された「3月の機械受注統計(船舶・電力を除く民需)」は前月比5.4%増と市場コンセンサスの同6.3%増を下回ったものの、1月3.1%減、2月3.8%減からは3カ月ぶりの前月比増加に転じた。製造業が同3.1%増と4カ月連続の前月比増加と電機、自動車を中心に外需に支えられて順調に回復傾向が続いていることに加えて、非製造業が同12.6%増と大幅なプラスに転じたためだ。前年同月比ベースでは1.2%増と、実に21カ月ぶりのプラスであり、1~3月期累計では前期比2.9%増と09年10~12月期の同1.1%増に続き2四半期連続の増加となり、しかもその伸び率を高めており、国内の設備投資は明確に底を打って回復に転じるトレンドが定着する可能性はいよいよ高まっている。同時に発表された4~6月期の見通しは前期比1.6%増となっており、新興国需要の拡大を受けた最近の鉱工業生産の増加傾向、あるいは今回の決算発表において10年度設備投資を前年度比増額する企業が目立ってきており、依然として慎重姿勢は変わらないものの、今後、四半期を追うごとに国内の設備投資の回復傾向が、一層、鮮明なものになって行こう。

 また、20日に発表された「10年1~3月期のGDP<速報値>」は、実質GDP成長率が前期比1.2%増、年率換算4.9%増と高い伸び率となった。市場コンセンサスの5.5%増を下回ったものの、別図を見ての通りに米欧の成長率を上回る高い伸びとなっている。これで4四半期連続のプラス成長となり、項目別では個人消費が同0.3%増と4四半期連続のプラス、民間設備投資が同1.0%増と2四半期連続のプラス、輸出が同6.9%増と4四半期連続のプラス、輸入が同2.3%増、そして住宅投資が0.3%増と5四半期ぶりのプラスに転じるなど、全般的に好転していることが成長率を大きく押し上げる格好となった。また、実質GDPの絶対額自体は過去ピークである08年1~3月期に比べて“95.3%の水準”に止まってはいるものの、前年同期比ベースでは4.6%増と8四半期ぶりにプラスに転じている。今後を展望すると、民間設備投資は回復傾向を強めることになり、住宅投資も住宅版エコポイント制度の導入効果もあり好転が続くが、家電製品のエコポイント制度や自動車のエコカー購入補助制度の効果が剥落することで個人消費の伸びの勢いが止まる可能性があり、輸出に関してはギリシャ問題を発端とする金融危機、中国の本格利上げが現実化することがどの程度、影響するかが不透明であり、先行き必ずしも楽観視出来ない状況にはある。引き続き世界経済の動静を窺うしかないが、各国の金融・財政政策に支えられることも充分に期待されることから、大局的には国内景気の回復傾向は続くものと予想する。ちなみに、09年度の実質GDP額は530兆8600億円であるのに対して、10年1~3月期のGDP額は年率換算で538兆6700億円と1.5%多い結果となっており、これを「成長のゲタ」と称し、既に10年度は1.5%の成長率が保証された格好となっている。仮に今後の四半期成長率のゼロ成長が続いても10年度は1.5%成長を達成できることになる。従って、海外景気が失速状態に陥らない限りは、10年度の成長率は2%を上回る成長率を実現する可能性が高いと言える。


実質GDP成長率の年(度)、四半期の前期比(年率)、前年同期比の推移
クリックして拡大

 一方、17日に発表された「5月のNY連銀景況指数」は“19.11”と4月の31.86からは大幅に低下、市場予測の30前後をも大きく下回り、それまでの米国の楽観的な景気見通しに水を浴びさせる格好となった。また、米調査会社のコンファレンス・ボード(CB)が20日に発表した「4月の景気先行指数」も109.3と前月比0.1ポイントの低下となった。更に、新規失業保険申請件数も2.5万人増加の47.1万人となり、米国経済の回復傾向が後退する可能性が指摘され、ドル安・円高を招き、世界的な株式下落を強める要因ともなっている。また、19日にFOMCは別表の通りに2010年の経済成長率を上方修正、失業率を良化の方向へと修正したものの、同時に発表された「4月のFOMCの議事要旨」によると、複数のFOMCメンバーはギリシャなどの財政面での不安が「ユーロ圏の 金融環境の重荷となっている」と指摘し、「米国の金融にも悪影響が及び経済 の回復も減速しかねない」としたことで、先行きの見方に対する不安感が高まることとなっている。


FRBの米経済見通し
クリックして拡大

今週発表 … 米国の重要指標の発表が相次ぎ、今週通じて一喜一憂の展開となりそう

 今週の内外経済指標の発表は、国内が28日に「4月の全国消費者物価指数(CPI)」、「4月の労働力調査」が発表される。4月のCPIはコンセンサス予想が前年同月比‐1.4%と14カ月連続のマイナスの予想であり、4月の有効求人倍率は0.50倍と3月の0.49倍からは若干向上し、4月の完全失業率は5.0%と前月と同じ水準の予想となっている。国内の指標でのサプライズはないものと予想する。

 一方、米国の経済指標では、重要指標の発表が多い1週間となる。特に、住宅関連の指標の発表が多く、24日に「4月の中古住宅販売件数」、25日に「3月のS&Pケース・シラー米住宅価格指数」、「4月の住宅着工許可件数改定値」、「3月と第1四半期の米住宅価格指数」、26日に「4月の新築一戸建て住宅販売件数」、「住宅ローン・借換え申請指数」と住宅関連の指標発表が続き、このところ順調に回復傾向を示している住宅関連の指標に変調があればダメージは大きい。また、25日に「5月の米消費者信頼感指数」、26日に「4月の耐久財受注」、27日に「10年1~3月期のGDP<第1次改定値>」、28日は「4月の個人所得・消費支出」、「5月のシカゴ地区購買部協会景気指数」、「5月のミシガン大学消費者信頼感指数」と先週同様にマーケットに大きな影響を与えそうな経済指標の発表が相次ぐことになり、気の抜けない1週間になりそうだ。更に、24~25日の予定で米国、中国の主要閣僚が出席して中国・北京にて「米中戦略・経済対話」が開催される予定であり、“元”の切り上げ問題、ソブリンリスク問題、北朝鮮問題など、注目の話題は多い。26日にはバーナンキFRB議長が日銀で講演する予定であり、世界的な金融情勢と経済見通しに関する見解に焦点が集まる。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
クリックして拡大

国内株取引のリスク
株価の変動、および為替の変動等(外国株式の場合)により損失が生じるおそれがあります。
国内株取引の手数料について
国内株の手数料は多岐に渡っているため、このスペースに表示するのが難しいため、詳細は国内株の「手数料とリスクについて」でご確認ください。
株式は、クーリング・オフの対象にはなりません
詳しくは手数料とリスクについてをご覧ください。