マーケットレポート

マーケットの視点

“欧州ショック”による最悪の状況は脱し、新たなビジネスパターン期待などで1万円を超えて再上昇トレンドへ

・ 先週前半は世界的に金融マーケットの混乱を引き摺る厳しい展開が続いたが、後半は金融収縮ムードに終止符が打たれて、落ち着きを取り戻すような兆しが見え始めた。日経平均株価19~25日まで5営業日連続の下落となり、この間、“782.75円安、7.6%下落”、年初来高値である4月7日の「1万1292円83銭」からは“1653.11円安、14.6%下落”、本格的な下落はGW明けからで4月30日「1万1057円40銭」からは“1534.74円安、13.9%下落”となっている。一方、海外株市場では、米国株市場は4月23日に年初来高値をつけているが、NYダウが終値ベースで2月9日以来の1万ドル割れとなっているなど先週26日がその後の安値となっており、年初来高値からの下落率はNYダウ11.0%、ナスダック13.2%、S&P500.・12.3%、欧州株主要3市場は4月15日に年初来高値、先週25日に英国、仏国が年初来高値、独国も以後の安値を記録したが、この間の下落率は英FTSE100・15.2%、仏CAC40・18.1%、独DAX9.9%、アジア市場では韓国総合が4月21日の年初来高値から先週25日の年初来安値まで10.7%、中国株市場ではそれぞれ年初来高値→年初来安値までの下落率は香港ハンセン指数が1月6日→5月25日で14.4%、上海総合が1月5日→5月20日で20.0%、インドSENSEXが4月7日の年初来高値からその後の安値5月25日まで10.8%の下落率となっている。今回の“欧州ショック”による世界株同時下落の中では、日本は直接影響がほとんどなく、1~3月期の実質GDP成長率「4.9%」に表れているように足下の景気回復力が先進国での中では最も高いのにも拘わらずに、日本株の下落幅が比較的大幅なのは為替の急速な円高進行が株価を余計に押し下げた結果だ。従って、26日以降に円高に歯止めがかかり、再び対米ドル88円台から週末かけて91円台、対ユーロは110円割れから113円超へと戻したこともあり、日経平均株価は26~28日に3日連騰となったが、“303.09円高、3.2%上昇”と重い足取りの反転上昇で、結局、先週は前週末に“21.56円安”の「1万9762円98銭」で引けた。

・ 最悪ムードは脱した模様だが、今週も“欧州ショック”が尾を引きそうだ。一方で、株価大幅調整の結果、加えて日本企業の業績の10年度増益率が先進国の中では最も高い伸び率になるとの見方が定着し、海外投資家の間で日本株の見直し機運が高まっていることにもなっていると伝えられている。予想PERやPBRなどのバリュエーション面での割安感は先週指摘したとおりだが、中国の繊維大手である山東如意科技集団が24日にレナウンを傘下に収めると発表したように、卓説した技術資産、ノウハウを有しているが財務、経営面で追い込まれた日本企業を中国が買収するケースが増えて行くことへの思惑も働きそうだ。先週、NYダウの1万ドル割れとなったのはFTで中国がユーロ圏債券の保有見直しを行うと報道されたことがきっかけであり、27日に中国国家外貨管理局が事実無根とし外貨準備の運用に関して分散投資の原則を維持するなどの方針を改めて表明したことによって株価上昇の大幅な戻りをもたらすなど、中国の金融マーケットでの存在感は急速に高まっている。また、先週26日には、OECDが「経済見通し」の修正を発表、中でも日本の10 年の実質GDP成長率を前回11月発表の1.8%から3.0%へと1.2ポイントも大幅に上方修正した。米国も2.5%→3.2%、ユーロ圏も0.9%→1.2%、OECD加盟31カ国全体を1.9→2.7%、11年見通しも2.5%→2.8%へと上方修正し、世界経済は10、11年と順調に自律的回復過程に入って行くとの見解を改めて示した。但し、日本について公的債務残高の対GDP比率の上昇を指摘するなど、先進国の財政が著しく悪化したことを指摘、中期的な経済成長を維持するためには堅実な財政再建策が必要で、そのためには国際協調が重要であることも付言している。今週以降の為替見通しは楽観出来ないものの先週前半までのようなユーロ安のフリーフォール的な危機状態は脱したものと予想され、ユーロ安で売り叩かれた一部の精密株、自動車株、中国リスクで売り込まれている中国関連株、資源関連株の見直し、反転上昇が期待される。また、このところのソニー‐グーグル、ノキア‐ヤフー、トヨタ‐ステラ・モーターズの戦略提携が浮上したこと、既に発表されたスズキ‐VW、日産‐ダイムラーの提携などの世界的な合従連衡、「iPad」フィーバーを契機に電子書籍市場が本格化するなど、新たなビジネスパターンが企業の新しい成長戦略を切り開く方向性も期待され、日経平均株価は当面、1万円を超えて再上昇トレンドを辿ると予想する。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 国内は雇用統計が下ブレ、米国は住宅関連を中心に堅調な内容の発表が続いた

 先週発表の内外経済指標に関しては、米国指標の堅調に対して国内指標は「4月の労働力調査」が予想未達となり、週末にかけての円高歯止めの一因ともなった。

 政府が24日発表した「5月の月例経済報告」では、景気の基調判断を「着実に持ち直してきている」と2カ月連続で据え置いた。このところ回復の動きが目立つ設備投資や個人消費の判断を維持する一方、ギリシャ債務問題を発端とする欧州ショックの影響が海外景気や金融マーケットに与える影響に対しする警戒感を示した格好となっている。白川日銀総裁が21日は景気の現状判断を「緩やかに回復しつつある」と前進させたのとは対象的であり、夏の参院選を控えて手を抜けない景気回復策を意識する政府と、世界的な出口戦略の流れを意識している日銀との間での景気認識に微妙な温度差が生じている。

 27日には財務省が「4月の貿易統計」を発表、輸出額は5兆8897億円、前年同月比40.4%増と5カ月連続の増加、輸入額も5兆1474億円、同24.2%増と4カ月連続の増加を記録、貿易収支額は7423億円と3月の9520億円からは縮小したものの、前年同月の490億円からは黒字幅が大幅に拡大した。地域別の輸出額はアジア向けが同45.3%増、中国向けが同41.4%増と5カ月連続二桁増、米国向けが同34.5%増と4カ月連続二桁増と好調を維持し、景気回復の足取りが鈍いEU向けに関しても同19.8%増と4カ月連続の二桁増と今のところ、大きな翳りはない。10年度の出足、4~6月期に関しては引き続き順調な推移が予想され、外需牽引による国内景気の回復傾向は続く見通しだ。但し、この先は世界各国の景気浮揚策効果が薄れてくること、南欧諸国の財務危機の影響が輸出にどの程度の影響が出てくるかを探る展開が続くことになろう。

 28日には「4月の全国消費者物価指数(CPI)」、「4月の労働力調査」が発表された。4月のコアCPI(生鮮食品を除く総合指数)は前年比「‐1.5%」と14カ月連続のマイナスとなり、市場予測の‐1.4%を下回った。4月から高校授業料の無償化がスタートしており、その影響による0.54ポイントの押し下げを除くと「‐0.9%」であり、3月の‐1.2%からは下落幅が縮小した格好にはなっている。目立った価格低下は薄型テレビが前年同月比28.3%低下、ノートパソコンが同36.2%低下となっている。デフレ傾向が依然として続いていることには変わりないが、着実な景気回復を受けてデフレ圧力は若干ながらも緩和気味になって来ている点は評価される。世界的な景気回復の流れが継続すれば、エネルギー価格が中期的な上昇トレンドを辿ることからも、国内のデフレ脱却への道筋が見えない訳ではない。

 「4月の労働力調査」に関しては、4月の完全失業率は「5.1%」と市場予測、3月の5.0%を上回る結果となった。2月の4.9%に対して3月5.0%、4月5.1%と緩やかながらも2カ月連続して上昇することとなった。有効求人倍率は3月の0.49倍、前月比0.01ポイントと7カ月連続して改善を続けていたが、4月は0.48倍と市場予測の0.50倍を下回り、8カ月ぶりに同0.01ポイント悪化している。失業率は「女性」の悪化が目立ち、家計を助けるために働きに出るものの厳しい現実が失業率を押し上げたと分析されている。就業者数は6299万人と前月比53万人の減少、製造業が31万人、建設業が14万人の減少となった。有効求人倍率の悪化は、有効求職者数が前月比0.5減だったのに対して有効求人数が1.0%減少したためと分析されている。但し、有効求人倍率の先行指数である新規求人数は3月の同5.6%増に続き、4月も0.9%増とプラスを維持しており、5月以降に悪化傾向を辿るということにはならないものと予想される。

 24日に全米不動産協会が発表した「4月の中古住宅販売件数」は、年率換算で577万戸となり、前月比7.6%増と、2カ月連続で市場予測の平均565万戸も上回った。政府の住宅購入減税が4月に打ち切りなるために、駆け込み需要が発生し販売が伸びている。前年同月比では22.8%増、地域別では北東部が21.1%増だったが、西部は6.2%減となった。販売価格の中央値は17万3100ドルと同4.0%上昇。但し、在庫件数は前月比0.3カ月分増え、販売の8.4カ月分となっっている。また、26日に発表された米国の「4月の新築住宅販売件数」は前月比14.8%増、年率換算50.4万戸と3月の同29.9%増に続き二桁増となった。コンセンサス予想の前月比2.2%増、年率換算42.0万戸を大幅に上回った。やはり駆け込み的な部分はあるものの、米国にとって最大に懸念事項であった住宅市場が底打ちに転じていることは評価される。

 27日に発表された米国の「1~3月期GDP改定値」は、4月30日に発表された速報値の実質GDP成長率(前期比年率換算)3.2%増から3.0%増に下方修正された。個人消費が同3.6%増から同3.5%増、設備投資が同4.1%増から同3.1%増に下方修正される反面、住宅投資は10.9%減から10.7%減へと若干、上方修正された。いずれにしても、景気回復の方向性は不変であり、今回の修正がマーケットに与える影響はフラットと判断される。28日に発表された「5月のミシガン大学消費者信頼感指数は73.6と、一旦下落した4月の72.2からは再び上昇し、2月の73.6に並ぶ水準となっており、米国の消費も底堅い推移が続いている。5月に入っての株安の影響が懸念されたが、この段階では表面化してはいない。


今週発表 … 国内の「4月の鉱工業生産」は好調な出足となる見通し、米国は重要指標の発表が相次ぐ

 今週の内外経済指標は、国内は31日の「4月の鉱工業生産」、そして3日に財務省から「1~3月期の法人企業統計」が発表される。また、月初なので米国では重要指標の発表が相次ぐ。具体的には、1日に「5月のISM製造業指数」、3日に「5月の非製造業指数」、4日に「5月の雇用統計」が発表される。米国以外でも、1日に中国の「5月のPMI製造業指数」、4日に欧州で「1~3月期GDPの改定値」が発表される予定で、海外指標の発表にマーケットが左右される1週間になりそうだ。

 国内の「4月の鉱工業生産」は、コンセンサス予想は前月比2.5%増と、3月の1.2%増からは伸び率が高まる見通しとなっている。前回の予想調査では、4月が同3.7%増、5月が0.3%減となっていた。鉱工業生産は新年度、4月に入っても好調な伸びが続いている見通しには変わりないだろう。電機、自動車を中心に決算説明会では4月は予想外に好調な出足とのコメントが目立っていたことから、コンセンサス予想を上回る可能性は充分にあり得る。「1~3月期の法人企業統計」は既に発表済みの第4四半期決算の好調ぶりからは、好転を示す内容が確認されることになりそうだ。とりわけ注目点は、設備投資動向であり、10年度に上向きに転じる兆しを感じ取れるかどうかだ。

 1日に発表される予定の米国の「5月ISM製造業指数」は4月の60.4に対してコンセンサス予想は59.5と低下する見通しになっているが、高水準なことから問題はなく、仮にコンセンサス予想を下回るとしても、小幅に止まり問題視されることはないだろう。また、3日に発表される「5月のISM非製造業指数」のコンセンサス予想は56.0と4月の55.4からの上昇が見込まれており、製造業に比べて回復度合いが遅れ気味であったものが、ここ数カ月は急速に好転していることが目立っており、サービス産業が中心である米国内の景況感が急速に好転していることを物語る数字でもある。また、4日に発表される予定の「4月の雇用統計」は要注目だ。コンセンサス予想は、完全失業率が3月の9.9%から0.1ポイント改善して9.8%、非農業部門雇用者数は2月23万人、3月29万人から4月は50万人へと急増、50万人を超えれば97年9月の50.8万人以来の記録となる。このところの米国の雇用統計はコンセンサス予想から大きくブレる結果が発表され、同時に過去の数値が大幅に修正される傾向が続いていることから、結果を見るまでは何とも言えないが、南欧諸国の財政問題で世界景気の見方が揺れ動いているだけに、4日の発表が非常に注目される。コンセンサス予想に近い結果となれば明るさが一気に広がるが、大きく下回るようであれば、再び悲観色が強まることになりかねない。


米国の完全失業率、非農業部門雇用者数・前月比増減数の推移
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今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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