マーケットレポート

マーケットの視点

“菅新政権の“日本の成長戦略”を実現する政策、特に「法人税率引き下げ」に注目。今週は1万円台復活、堅調推移へ

・ 菅新内閣の支持率は一気に60%台、日経調査では68%に達し、歴代ランキングでもベスト5という高水準の滑り出しとなった。最大の評価は、菅直人新首相が「小沢氏はしばらく静かにしていた方がいい」と決別した“小沢離れ”である。鳩山首相時代には、小沢幹事長の存在を背景とする“権力の二重構造”的な雰囲気が漂い、自民党政治の延長線上に連なる不透明感が政治不信を強める格好となっていた。それを見事に断ち切ったのが、菅新政権だ。更に、郵政改革法案の問題でスッタモンだの結果、やはり自民党の臭いが強い亀井郵政・金融相が11日未明に辞任したことによって、一層、脱自民党色が強まる結果となった。郵政改革法案の問題は国民新党のゴリ押しが通れば、旧自民党の悪弊であった審議不足で郵政改革法案が成立する恐れがあったが、亀井党首の閣僚辞任でその事態を回避することが出来た。自見幹事長が後任ということに多少の難はあるものの、これで新閣僚、民主党役員の顔ぶれを見ると、近年まれに見る清冽な政権中枢体制となったとの印象を強く受ける。過去、口先だけは“仕事内閣”を謳った時代があったが、今度こそ、真剣に「日本の変革」を推し進めるべく人材を据えた真の“仕事内閣”が誕生したと考える。最大の注目点でもあった参院選に関しても予定通り6月24日「公示」、7月11日「投票開票」のスケジュールで進み、現時点では民主党の参議院単独過半数獲得への期待も高まり、政局安定化が一段と強化されることになろう。

・ 当然、今後のマーケットの中での焦点は菅新政権がこれまで“絵に描いた餅”にしか見えなかった『日本の成長戦略』を現実的なものに出来るかどうかの見極めとなる。菅新首相は11日の所信声明演説で『強い経済、強い財政、強い社会保障』の一体的実現を強調、“2020年まで年平均で実質2%、名目3%の経済成長を目指す”と打ち上げた。実現のためには環境、医療、アジア戦略、観光・地域活性化などに重点的に取り組む方針を示した。重点分野としてはこの通りだろうが、具体的な方法論が今後の大きな焦点となるだろう。重点分野に取り組むためには、必ずその財源が必要となり、その一方で財政赤字の解消をも同時に解決する必要がある。この相反するような命題に対する“解”は、決して縮小均衡でなくて“拡大成長路線”だろう。そして、そのための輪郭も見えて来ている。その根幹となる政策の柱は、6月1日に経済産業省が発表した「産業構造ビジョン2010」案の中にある『法人税率の引き下げ』だ。10日に日経インタビューに答える形で、直嶋経済産業相が「法人税を財政の枠組みではなく、成長戦略の政策の一環として考え、日本経済の閉塞感を打破するために、国際水準よりも10~15%は高い日本の法人税率を中期的に国際水準まで引き下げる」ことで菅首相と確認したと発言。11日に民主党本部で政権公約会議を開いて参院選公約をまとめたが、その中でOECD加盟30カ国平均26.3%に対して40%超という高水準を、中期的には20%台にまで引き下げることを盛り込む予定である。法人税率の引き下げにより、わが国企業にとっては設備投資、研究開発などの中長期飛躍に向けた投資を一層、潤沢に実施することが可能になり、結果的にわが国企業の国際競争力の向上が実現しよう。足下の経済成長率も10年1~3月期が予想に反して実質GDP5.0%増に上方修正、10年度の政府見通しを1.4%から2%台に上方修正し「回帰回復宣言」を行う模様であり、民間の10年度見通しは“3%成長”に近付く見方が多く、1.0%にまで引き下げられた“日本の潜在成長率”が引き上げられることにもなろう。

・ 先週の世界株市場は、月曜日にいきなり年初来安値を更新して始まったNYダウも週後半にかけて落ち着きを取り戻し1万ドル台が復活するなど、欧米市場は最悪な状態を脱した感触が強い。また、週末に発表された一連の中国関連指標も無難な内容となり中国リスクも一旦は遠のくことになりそうだ。日本株市場も、日経225ベースの予想PERが16倍台まで下落(12日でも16.71倍)、騰落レシオ80%割れが5/20~6/10で16営業日連続と今年最長でリーマン・ショック後の08年9/26~11/4の26営業日に次ぐ最長記録となって割安感が強まっていたこと、外国人の売り越しが6月第1週で5週連続となっていたなどから、10、11日の2日間で“266.12円高”となり週末は「9705円25銭」で引けた。反発局面では高水準の信用買い残高が重荷とはなりそうだが、4~6月期の企業業績は間違いなく各社の期初計画を上回る好調ぶりで推移している模様であり、日本株市場最大の変動要因である為替に関しても90円/ドル台を底堅く維持しており、急落が続いたユーロも最安値更新後は落ち着く気配を見せており、今週の平均株価は1万円台を復活する可能性は高く、今週通じては堅調に推移すると予想する。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … GDP成長率の上方修正、予想以上の機械受注の拡大から着実な景気回復を再確認

 先週は国内で8日に「4月の景気動向指数速報値」、「5月の景気ウォッチャー調査」、9日に「4月の機械受注統計」、10日に「1~3月GDP成長率第2二次速報」、米国では7日に「4月の消費者信用残高」、9日に「4月の卸売売上高・在庫」、10日に「4月の貿易収支」と「5月の財政収支」、週末の11日には「5月の小売売上高」、「6月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表された。経済指標以外では9日に米国で「ベージュブック」の公表、10日にはユーロ圏でECB理事会が開催された。全体的に、マインド的にはギリシャ問題に振り回されているが、実体経済としては着実に景気回復のシナリオを辿っていると感じられた。

 8日に発表された「5月の景気ウォッチャー調査」は先行き判断DIは48.7、前月比1.2ポイント下落、現状判断DIは47.7、同2.1ポイント下落で09年11月以来、6カ月ぶりの下落となった。先行きDIの判断理由としては、ギリシャ・ショックによる円高環境が輸出企業の収益力を低下させたこと、ゴールデンウイーク後の日経平均の1万円割れによって消費マインドが低下したことなどが挙げられる。また、現状DIの判断理由としては牛肉の口蹄疫問題や天候不順によるエアコン、夏物衣料の販売不振などが挙げられる。しかし、一方で中国向けに加え米国向けの輸出も増え始めた、新車購入目的の客の動きが活発になってきた、など良好な判断理由も見られることから、景気の回復傾向は変わらず、5月の落ち込みは口蹄疫問題や天候不順など一時的な影響によるものだと考えられる。


景気ウォッチャー調査の先行き判断、現状判断の推移
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 9日には「4月の機械受注統計」が発表された。“船舶・電力を除く民需”は前月比4%増となり3月に続き2カ月連続で前月比増加となった。内訳として、製造業は同5.5%減となり5カ月ぶりの減少、船舶・電力を除く非製造業は同5.3%増と2カ月連続で増加となった。製造業の主要業種では化学が同13%減、鉄鋼が48%減、情報通信機械が同33%減、非製造業では運輸が同15%増、情報サービスが同17%増となった。また、“船舶・電力を除く民需”のコンセンサスでは同0.1%増と微増の予想であったため、結果としては大きく上ぶれたといえるが、企業の設備投資は投資マインド次第であるため、計画の前倒しや後ズレが起こる可能性は非常に高い。よって、5月、6月分の機械受注統計も引き続き注視し、4~6月の数字で企業の設備投資意欲を確認したい。


船舶・電力除く民需の機械受注額推移
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 10日発表の「1~3月のGDP成長率第2次速報」は前期比年率5.0%増と第1次速報の同4.9%から若干上方修正された。第1次速報から変更された項目は、民間最終消費支出が前期比0.3%増→0.4%増、民間住宅が0.3%増→0.4%増、民間企業設備が1.0%増→0.6%増、政府最終消費支出が0.5%増→0.4%増、公的固定資本形成が1.7%減→0.5%減である。事前のコンセンサスでは民間企業設備が同0.1%増と大幅に下方修正され、GDP成長率は前期比年率4.3%増と予想されていたが、結果は予想に反して上方修正されたことで、より一層景気回復への確度が強まったといえる。


GDP成長率の推移
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 週末の11日には米国で「5月の小売売上高」と「6月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表された。「5月の小売売上高」の結果は前月比1.2%減と8カ月ぶりに下落した。政府の住宅購入減税制度が4月で終了したことの反動が主な原因と見られる。そのあとに「6月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表されたが、こちらは市場予測の74.9を上回り75.5と08年1月の78.4以来、約2年半ぶりに75を突破し米国経済の順調な回復を印象付け、直前に発表された「5月の小売売上高」のマイナスイメージを打ち消したといえる。


今週発表 … 18日発表の月例経済報告の政府基調判断の上方修正に注目

 今週は国内で14日に「4~6月の法人企業景気予測調査」、16日に「第3次産業活動指数」、米国では15日に「6月のNY連銀製造業景気指数」、「6月の住宅市場指数」、続く16日には「5月の住宅着工・許可件数」、「5月の鉱工業生産・設備稼働率」、17日に「5月の消費者物価指数」、「5月の景気先行指標総合指数」、「6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」と特に米国の住宅関連指標で重要視される統計が発表される予定だ。コンセンサスではNY連銀製造業景気指数が0.9ポイント増と5月の12ポイントの急落から回復する模様、住宅市場指数が22と横ばい、住宅着工件数は前月比3.3%減、住宅建設許可件数は同2.9%増、鉱工業生産は同0.9%増、設備稼働率は74.5%、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は前月比0.4ポイント減、景気先行指標総合指数は前月比0.4%増と強弱入り混じった予想となっている。経済指標以外では14~15日に「日銀金融政策決定会合」が開催され、18日に「政府月例経済報告」が発表されるが、機械受注で2カ月連続上方修正したことから、月例経済報告においても政府の基調判断を上方修正する見通しであり、注目したい。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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