マーケットレポート

マーケットの視点

世界経済に対する回復足踏み懸念が再び台頭しているが、わが国企業の10年度業績はグローバル関連中心に不変

・ 世界経済の見通しに対する疑念が再び台頭している。米国の住宅関連指標が、住宅減税策が打ち切りとなった途端に勢いを失ったことから、従来から指摘されてきた政策効果が消失すると景気回復が足踏みするとの見方が現実的なものになるとの不安が高まったためだ。先週1週間のS&P500の業種別騰落率にその様子が如実に現れている。具体的には、S&P500全体は先週1週間で3.65%の下落率だったが、エネルギーが5.90%の下落率、一般消費財が5.33%、ITが4.46%の下落率と、代表的な景気敏感株の下落率が目立った。その点、今週に関しても米国では「S&Pケース・シラー住宅価格指数」、「CB消費者信頼感指数」、「製造業のISM指数」、「雇用統計」など、重要指標の発表が相次ぎ、最近の傾向としては弱めの数字の発表が相次いでいるため、米国株市場は今週も神経質なマーケット展開が続きそうだ。日経平均株価は、月曜日こそ中国の元高誘導が絶妙にコントロールされることで緩やかに進むとの見方が強まり、円高も限定的な範囲に止まったことから、元高の良い側面、すなわち中国国内のインフレ抑制に貢献することや、輸入価格が下落することで消費者購買力が高まるなどメリットが評価された格好。しかし、それも一日の効果で終わり、火曜日以降は世界経済の失速懸念を映して膠着相場の中で株価下押しする展開が続いた。先週末の日経平均株価は、「9737円48銭」の前週末比“257.54円安”と1万円台を回復した14日の週の上昇分“289.77円高”を打ち消す値下がりとなった。日米欧の株式市場は軒並み3%前後の下落率となった反面、中国、インドなど新興国市場が上昇で終わったのとは対照的なマーケット展開となった。

・ 今週は、24日から始まった参院選に対する様子見や、引き続き米欧経済に対する失速懸念で盛り上がりに欠ける展開が続きそうだ。一時、期待度の高まった菅政権に対して、消費税率を10%まで引き上げるという自民党案追随を発表したことで支持率が低下するなど、『新成長戦略』の内容などがマーケット内で見評価のままといなり焦点ボケとなっていることが株価の頭を抑える格好となりそうだ。7月入りするが、目先、米日の4~6月期の決算発表の動向がマーケットを大きく左右することになろう。米国企業の決算は12日のアルコア、13日にインテル、15日のJPモルガンチェースが皮切りとなり、日本企業の決算発表は7月の最終週以降に本格化する予定となっている。米国企業の決算発表に関しては足下の4~6月期は1~3月期までの回復ムードの余熱を帯びた内容となりそうだが、7~9月期以降、10年後半以降に対する慎重な見方が多くなりそうなことが気になる。一方、日本企業の4~6月期決算は、各社とも予想を上回る好決算が続出と予想され、10年度決算の出足は良好、先行きに対する期待感を高める内容になりそうだ。10年度決算に関しての懸念材料であったユーロ安の影響について、26日の日経朝刊15面で伝えられたように電機各社は為替予約によって10年度の上期は125円/ユーロ前後の実勢レートで落ち着きそうと、想定レートの120円/ユーロよりは円安気味に仕上がりそうだ。但し、10年度全体に関しては、円高方向に修正することで慎重な見通しには変わりなくマーケットインパクトは弱そうだ。

・ 一方、世界経済見通しに関して6月10日に世界銀行が上方修正しており、7月にはIMFも12月時点の見通しを上方修正することになろう。また、わが国の10年度の実質GDP成長率の政府見通しも22日に1.4%増から2.6%増へと上方修正している。世界経済は、破壊的な崩落からは急速に立ち直り、未だに不安定要素は多く存在するものの、順調に回復過程を辿っており、株式市場は再び冷静にそのことを織り込み始めていると考える。菅新政権の『新成長戦略』に対する評価が期待高まるものになる可能性も高い。従って、ここ暫くの弱いマーケット展開は10年度前半最後の絶好の買い場になる公算が大きい。狙い目は、10年度決算の公転幅が大きい自動車、電機を中心とするグローバル企業で、サムスン、アップル追撃の逆襲に打って出るエルピーダ、ソニーなど。また、海外インフラ需要を取り込む企業群にも改めて注目。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 国内のEU向け輸出額の推移から、EU実体経済の動向に悲観的になる必要はない

 先週は国内で24日に「5月の貿易統計」、「5月の企業向けサービス価格指数」、25日に「5月の全国消費者物価指数」、海外では米国で22日に「5月の中古住宅販売家数」、23日に「5月の新築住宅販売件数」、24日に「5月の耐久財受注」、25日に「1~3月GDP成長率(確報値)」、「6月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表された。

 24日には「5月の貿易統計」が発表されたが、輸出額は5兆3110億円、前年同月比32%増、輸入額は4兆9868億円、同33%増、差引で3242億円、同15%増、14カ月連続の貿易黒字となり国内企業収益下支えとなる傾向は続いている。地域別には輸出額の19%を占める中国向け輸出額は1兆212億円、同25%増、これで7カ月連続の増加となり輸出の牽引役となっている。また、米国向け輸出額は7580億円、同18%増、5カ月連続の増加、EU向け輸出額は6158億円、同17%増、6カ月連続の増加となった。5月になりEU諸国の財政不安が深刻化してきており、5月のEU向け輸出額伸び率も4月伸び率の20%増からは鈍化しているが、実体経済に与える影響が大きいとは言えず、敏感になりすぎる必要はないと考えられる。


輸出額前年同月比の推移
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 同じ24日には「5月の企業向けサービス価格指数」、翌日の25日には「5月の全国消費者物価指数」と物価関連の発表が続いた。企業向けサービス価格指数は前年同月比0.8%減、4月伸び率の1.1%減から0.3ポイント改善した。「全国消費者物価指数」は総合指数で同0.9%減、4月伸び率の1.2%減から0.3ポイント改善、直前予想の同1.1%減と比較しても0.2ポイント上ぶれた。改善した理由は灯油やガソリンの石油関連の販売価格上昇が全体の総合指数を押し上げたからであり、コアとなる食料とエネルギーを除く総合指数では同1.6%減、4月伸び率と横ばいとなり、物価下落に歯止めがかかったとは言えず、安定的な物価上昇へは相当の時間を要するであろう。


消費者物価指数前年同月比の推移
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 米国では22日に「中古住宅販売件数」、23日に「新築住宅販売件数」が発表されたが、それぞれ前月比2.2%減、33%減と4月末での住宅減税打ち切りの反動が如実に現れた。とくに「新築住宅販売件数」の減少率は統計上遡れる1963年以降で最大の減少率となり米国住宅市場に関しては先々週に発表された「6月の住宅市場指数」、「5月の住宅着工件数」、「5月の建設許可件数」がともに同5ポイント減、同10%減、同5.9%減となったことを含めて考えると米国住宅市場の悪化傾向逆戻りの可能性も高くなってきた。

 25日には「1~3月GDP成長率確定値」が発表されたが、こちらは前期比年率伸び率2.7%増となり5月27日に発表された改定値の同3.0%増に対し下方修正された。GDPの7割を占める個人消費が5月発表の改定値の同3.5%増に対し今回は3.0%増と0.5ポイント下方修正されたことが大きな要因で、GDP成長率の下方修正が米国経済回復の不安感をより一層増した感じとなった。

 GDP成長率が発表された後に、「6月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表されたが、こちらは6月11日の速報値75.5に対し0.5ポイント上方修正され76.0となり、先行きの経済動向を不安視させる発表が相次ぐ中で唯一、ポジティブな結果となった。


今週発表 … 米国経済指標には弱気な予想が目立ち、神経質な1週間が続く

 今週は国内で29日に「5月の鉱工業生産」、「5月の労働力調査」、7月1日には「6月調査の日銀短観」、海外では米国で28日に「5月の個人所得・消費支出」、4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「6月のCB消費者信頼感指数」、30日に「6月のシカゴ購買部協会景気指数」、7月1日に「6月のISM製造業景況指数」、2日に「6月の雇用統計」が発表される。コンセンサスでは「鉱工業生産」が前月比横ばい、「完全失業率」が5.0、「有効求人倍率」が0.49、「日銀短観」では最近の大企業製造業業況判断DIが-3、非製造業では-7、先行きの大企業製造業業況判断DIが0、非製造業では-3、となっている。一方の米国では「個人所得」が前月比0.5%増、「個人支出」が同0.1%増、「CB消費者信頼感指数」が同0.8ポイント減、「シカゴ購買部協会景気指数」が同0.7ポイント減、「ISM製造業景況指数」が0.7ポイント減、「米国の完全失業率」が9.8%で前月に対し0.1ポイントの悪化、「非農業部門雇用者数前月比」が11万人の減少となっており、米国の経済指標では弱気の予想が目立つため、今週は神経質な1週間となろう。


今週の主な決算発表予定


8今週の主な決算発表予定
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