マーケットレポート

マーケットの視点

G20の不協和音、米国経済指標の息切れで世界株市場は崩落したが、わが国企業の経営スタンスの前向きさを評価

・ G20の不協和音が世界経済の先行き不安を増長し、米国の弱気な経済指標がダメ押しする格好で世界株市場は崩落した。日米欧の株式市場は軒並み年初来安値を更新、とりわけ米国株市場が厳しく、NYダウは先週末2日まで7日続落、ナスダックは5日続落、この2週間でNYダウ、S&P500、ナスダックとも10営業日のうち9営業日下落、その下落幅、下落率は各々、NYダウ“764.16ドル安、7.3%下落”、S&P500“94.93ポイント安、8.5%下落”、ナスダック“218.01ポイント安、9.4%下落”、欧州株市場は過去2週間での高値が先々週の月曜日で安値が先週の金曜日、土曜日(独DAX)となっており、高安値の下落率は仏CAC40“10.6%下落”、英FTSE100“9.3%下落”、独DAX“7.3%下落”。日本株市場は、いつものことながら87円/米ドル台、107円/ユーロ台に突っ込んだ円高が下落幅を拡大し、日経平均株価は過去2週間で3勝7敗、先々週月曜日の高値から先週金曜日の安値まで“1046.41円安、10.2%下落”、TOPIXは同じく2勝8敗、“74.1ポイント安、8.2%下落”と比較的大幅な下落率となった。世界株市場は、6月上旬の大幅下落から一旦は立ち直りかけたのが、再びストンと急落、2010年に入って新興国経済の高成長回帰を背景に順調な上昇トレンドを続けた日米欧の株式市場は、世界経済の「二番底」を急速に織り込むような格好で上昇分を全て帳消しにした。一方、新興国の株式市場もさすがに下落歩調だが、ブラジル、豪州などの資源国株式市場、上海総合指数を除けば“3%前後”の下落幅と先進国市場に比べれば小幅に止まっている。

・ 26~27日に開催されたG20は、米国対日欧、先進国対新興国の間で不協和音が目立った。景気回復を優先し日欧に内需振興を求める米国に対して緊縮財政を進めることで財政危機脱出を図ろうとする欧州、中国に対して人民元高を要請する米国、一方的に金融規制を強化しようとする米欧に対して自国への投資抑制を懸念する新興国、など底流には対決的側面が見え隠れし始めた。世界的な金融危機、世界不況からの脱出を目的にスタートしたG20は先進国の著しい衰退ぶりと新興国の勃興の中で微妙な力学構図が出来つつある。G20会合は、危機脱出に向けた国際協調による俊敏かつ大胆な財政・金融政策が奏功したことで、非常時対応の金融政策からの出口戦略を模索する場であったのが、欧州が一気に財政危機にまで及んだことで国際協調の姿勢にズレが生じ、今回の不協和音につながっている。結果的に、本来であれば政策支援によるブームアップの段階を経て自律的な回復段階に入って行く過程にあるのが、ギリシャ財政危機を契機に一気に緊縮財政に転じることに加えて、金融規制が強化されることによって世界的なマネーフローが停滞し世界経済が再び足踏みすることで「二番底」に陥る可能性が台頭、リスクマネーの引き上げ、円高を招いている。また、今回の世界不況の震源地であった米国は順調な復興トレンドを歩んできたが、ここに来て住宅関連指標、ISM指数、雇用統計など回復基調が息切れ気味、綻びが散見し始めた。更に、中国は、今回の世界経済回復に対して50%貢献を自負し高い経済成長率を維持する一方で、上海総合指数の下落が止まらない。今の中国に“トヨタ凋落”の姿が重なる気がする。トヨタは08.3期までの数年間、販売、生産台数を年間50万台前後も伸ばすという驚異的な成長力で一気に世界No1の自動車メーカーに駆け上がったが、大量リコール問題をきっかけに品質問題の綻びが噴出、その勢いは暗転した。中国経済が失速することは全く考え難いが、今回、ストライキが全国的に伝播したことで中国内での格差拡大が改めて明らかになり、高成長を持続していることのツケ回しが、人件費高騰など、どのような形で中国の行く末に影を落とすのか、人民元高誘導が思惑通りに実現するかどうかを見守る必要がある。世界経済、そして米国、中国の動向はここ数カ月が正念場を迎えそうだ。

・ 当面、円高も定着しそうで上値の重いマーケット展開となりそうだ。しかし、足下の10年4~6月期決算が予想以上に好調であることと、企業の経営スタンスは前向きにあることを忘れてはいけない。日経新聞が四半期毎に行う「社長100人アンケート」の結果が6月29日に公表された。質問は23項目あるが、その中で「貴社の10年度の経営課題は何ですか(3つまで回答)」の結果に注目したい。詳細な項目に対する回答率を抜粋すると、「新興国など海外事業の拡大」66.4%、「研究開発などによる新製品強化」47.9%と“成長戦略”に注力する姿勢が積極的であり、「人員や設備などコスト削減」28.6%、「有利子負債削減など財務体質の改善」22.1%と“構造改革”はほぼ完了しており、「為替変動への対応」15.0%と株式市場が最も懸念している円高への対応策は比較的進んでおり株式市場が神経質に扱うほどの重要性はないものと判断される。目先の業績回復が順調であることに加えて、中長期的な成長戦略を積極的に進めるわが国企業の経営スタンスに注目したい。ターゲット市場の選択は明確であり、業績拡大に結び付けるための新製品展開も活発となっている。今回の世界株市場崩落の中で、売られ過ぎの銘柄が目立って来ている。この正念場を通過する最中での日本株選択は、遠くなく大きなリターンをもたらすことになろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 国内指標は堅調だが、米国指標は失速気味、世界経済への不安感高まる

 先週は国内で29日に「5月の鉱工業生産」、「5月の完全失業率」、「5月の有効求人倍数」、月が明け7月1日に「6月調査日銀短観」が発表された。海外では米国で28日に「5月の個人所得・消費支出」、29日に「6月のCB消費者信頼感指数」、30日に「6月のシカゴ購買部協会景気指数」、7月1日に「6月の製造業ISM指数」、2日には「6月の雇用統計」が発表された。国内では多少、景気回復の勢いが鈍化した感はあるが、回復傾向は維持している。一方の米国では、先行き不安となる結果の連続であった。

 まず、29日に「5月の鉱工業生産」が発表されたが、結果は前月比0.1%減であり「2月の鉱工業生産」が前月比0.6%減以来、3カ月ぶりの低下となった。主な業種をあげると、普通乗用車などを含む輸送機械工業が同2.7%減、鉄鋼業が同0.1%減、非鉄金属工業が0.4%減、情報通信機械工業が同5.5%増、電子部品・デバイス工業が同0.3%増、ボイラ、タービン用部品を含む一般機械工業が同0.2%増となった。輸送機械工業は09年3月から10年3月まで13カ月連続増加の後、4月、5月と2カ月連続減となっており、政府のエコカー減税による消費力押し上げ効果の息切れが徐々に現れはじめたと思われる。また、輸送機械工業は4月分発表時の生産予測で5、6月は前月比減であることから、十分に予想の範囲内と捉えられ、驚くべきことではない。一方、情報通信機械工業は前月比5.5%増となったが、生産指数上昇に寄与した品目を見ると、「液晶テレビ」、「携帯電話」、「ノート型パソコン」と需要の大きい品目が挙げられる。これらは自動車と比べ、消費者の手の届きやすい価格帯であるだけに情報通信機械工業は当面、大きな落ち込みはないと考えられる。


鉱工業生産指数前月比伸び率の推移
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 同じ29日に「5月の完全失業率」と「5月の有効求人倍率」が発表されたが、失業率は5.2%と3カ月連続の悪化、有効求人倍率は0.50と2カ月ぶりの改善となった。雇用関連の統計は悪化と改善が入り混じった結果となったが、失業率については景気回復の期待から新たに仕事を求める求職者数が増加したことが原因であり、単純に雇用環境が悪化したとはいえない。そのことが有効求人倍率からもいえ、5月の月間有効求人数は前月比3.5%増となっていることから、雇用環境の改善傾向は続いているといえよう。


完全失業率、有効求人倍率の推移
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 7月1日には「6月調査日銀短観」が発表されたが、大企業について述べると、製造業の“最近の業況判断DI”は1、“先行きの業況判断DI”が3、非製造業では“最近の業況判断DI”が-4、“先行きの業況判断DI”が-3とそれぞれ、前回3月調査に対し“最近の業況判断DI”は製造業で15、非製造業で9の上昇となった。また、製造業の“最近の業況判断DI”、“先行きの業況判断DI”の事前コンセンサスではそれぞれ、-3、0となっており、予想以上に国内の業績は改善しているといえる。さらに大企業の雇用人員DIの最近は前回調査に対し-5と過剰感は縮小しており、先行きも今回の6月調査に対し-2と短観からも国内の雇用環境の改善傾向を窺うことができる。


大企業の最近と先行きの業況判断DI
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 米国では1日に「6月の製造業ISM指数」が発表された。事前予想では前月比0.7ポイント減の59.0であったが、結果としてはそれを下回り同3.5ポイント減の56.2となった。項目別では“新規受注”が同7.2ポイント減の58.5、“生産”が同5.2ポイント減の61.4と大きく落ち込んだことが全体の指数に響いた。2週間前の6月17日には「6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」が前月比13.4ポイント減の8.0と急落したことからも伺えるように、米国製造業の生産活動に一旦ブレーキがかかったものと考えられる。15日には「6月の鉱工業生産・設備稼働率」が発表されるが、その結果に注目したい。


ISM製造業指数の推移
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 また、週末の2日には「6月の雇用統計」が発表され、結果として完全失業率は求職者が減少したことで9.5%と前月比0.2ポイント改善したが、非農業部門雇用者数変化幅は前月比12万5000人減と半年ぶりの減少幅となった。前月までは政府の臨時雇用が非農業部門の雇用者数を押し上げていたが、6月は臨時雇用がなくなったため大幅な減少に転じている。事前予想のレンジは前月比-20万~0人であり、それほどの意外感はないものの、民間部門の雇用者数の増減幅は前月比8万3000人増と、事前予想の10万5000人に届かなかったことで、市場の期待を裏切ったといえる。米国の雇用情勢は依然として厳しい状況にあることが指摘され、先月発表された「5月の小売売上高」も前月比1.2%減と09年9月以来8カ月ぶりの減少となり消費回復に影を落とすなど、再び米国経済に対する不安感が募ってきている。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 国内の経済指標の堅調が続くかどうかを注視、週末は参院選の投開票の結果が焦点

 今週は国内で6日に「5月の景気動向指数」、8日に「5月の機械受注統計」、「6月の景気ウォッチャー調査」、海外では米国で6日に「6月の非製造業ISM指数」が発表される。事前のコンセンサスでは、「景気動向指数」の先行きCIが前月比2.8ポイント減、一致CIが同0.1ポイント減、「機械受注統計」が同3.0%減、「非製造業ISM指数」は同0.4ポイント減と、どの指標も悪化の事前予想となっている。また、経済指標以外では国内で8日に「さくらレポート」が発表される。さらに11日の日曜日は参院選の投票日と大きなイベントがあり、結果次第では今後の大きな変化が考えられる。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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