マーケットレポート

マーケットの視点

マーケットは『踊り場』局面を“ピークアウト”と誤認識、企業の良好な実態はいずれ正しく反映されよう

・ 日本株市場は先週予想した通りに膠着状態に陥っている。日経225ベースのPER16倍台、PBR1.0倍台とバリュエーション面では割安感が強まっていることから、13日の米インテルの好決算など好材料に反応し易い状況にはあるが長続きしない。インテルの10年4~6月期決算は予想を大幅に上回り、3期連続の大幅増収を達成、売上高、粗利益率、営業利益、EPSとも過去最高でアナリストが驚くほどの好決算だった。しかも、7~9月期に関しても非常に楽観的な見通しを発表、例えば、売上高は市場予想の「109億2000万ドル」を大幅に上回る「112億~120億ドル」になるとし、慎重なスタンスとなるのではという事前の懸念を払拭した。このインテルの好決算を受けて14日の日経平均株価は前日比“258.01円高”の「9795円24銭」と1万円台回復を窺うような急騰となったが、やはり勢いは続かない。15日“109.17円安”、16日“277.17円安”と2日間合計で“386.88円安”、週末株価は「9408円36銭」、前週末比“176.96円安”で引けた。直接的な要因は、インテルの好決算に対する米国株市場の反応が今一つ鈍いこと、14日に米FRBが米国の実質GDP成長率を2010年:3.2~3.7%増→3.0~3.5%増、2011年:3.4~4.5%増→3.5~4.2%増へと下方修正したことで改めて米国景気に対する不安感が台頭し為替も円高に振れたこと、15日に発表された中国の4~6月期・実質GDP成長率が10.3%増と3四半期連続の二桁増ではあるが、1~3月期の11.1%から鈍化したことが嫌気されたこと、など。しかし、本来的には買い材料が続出しているが、日本株市場に対するマーケット認識は「買いたくない気持ち」が強く、どちらかと言えば全てを悲観的に捉え過ぎている。一方、米国株市場にしても、NYダウは7/5~14までの7営業日連騰で“680.24ドル高”を記録、6/24~7/2までの7営業日続落の下落幅“611.96ドル安”を一気に取り戻し、今回の下落局面(6/21~7/2)の“764.16ドル安”を89%戻したものの、米国景気に対する先行きのマクロ不安で15、16日と続落、特に週末の16日は“261.41ドル安”の大幅下落となり、決算好調を受けた上昇を削ぐ格好となった。

・ 現在の株式市場の底流にあるのは、『踊り場』に対する認識のズレだ。景気は『踊り場』を迎えようとしているが、マーケットは景気、企業業績が“ピークアウト”となり10年後半から11年にかけて“失速”すると認識しようとしている。リーマン・ショック後の世界不況は底が深かった反面、世界的協調の下での大型の政策支援策で急ピッチに立ち直り、世界的に景気回復の局面は一服状態に差し掛かり、回復初期を経て次のステップに移る『踊り場』的な段階にある。マーケットは“二番底”を懸念する展開となっているが、13日にストロスカーンIMF専務理事が韓国で語ったように、そのリスクはほとんどないだろう。この『踊り場』状態を“ピークアウト”と捉えているが故に、企業業績の好調をストレートに反映する本来あるべき相場形成に到っていない。まして日本株市場は、円高に対する懸念、政治に対する失望、銀行に対する不安、継続するデフレ経済、が横たわることで、尚更、その傾向が強い。

・ 先週は、富士フィルムHD、コマツ、リンテック、日本郵船、三益半導体などの業績好調を伝える観測ニュースに対しても、ほぼ無反応に近い。中でも、コマツは11.3期業績を早くも増額修正、通期の為替見通しを90円/米ドル→88円/米ドル、13.5円/人民元→13.0円/13人民元と円高に想定し直した上で、売上高を550億円、営業利益を220億円、純利益を150億円、増額した。しかも不透明感が強いとして下期据え置きとしていることから、更なる増額修正が期待される。今週以降はわが国企業の決算も発表される。インテルの好決算にもあるように半導体は絶好調だ。世界の半導体売上高は4月235億8000万ドル、前年同月比50.4%増と07年11月の売上高を2年6カ月ぶりに更新、5月も246億5000万ドル、同47.6%増と2カ月連続で過去最高を記録、WSTS予測における2010年の世界の半導体需要は09年6月予測の前年比7.3%増が11月予測で同12.2%増に上方修正され、10年6月8日に発表された最新の予測では2910億ドル、前年比28.6%増と07年を抜き3年ぶりに過去最高、11年が同5.6%増、12年が同4.2%増と更新し続ける見通しだ。22日の信越化学、23日の日本電産の決算発表に対する期待が高まる。

・ 16日に発表されたソニー・エリクソンの10年4-6月期決算は予想通りにユーロ安効果と新製品「エクスペリア」の好調で前年同期比黒字転換を達成している。また、先週、ホンダに関して国内工場再編や車種見直しのニュースが流れたが、これに対してはどちらかと言えばネガティブなマーケット反応のようだったが、むしろ好評価すべきだろう。国内での軽四輪専用工場の建設取り止め、寄居工場の新設計画を再開し同工場を環境車の生産拠点とするなど、国内生産能力を現在の130万台から70~80万台に絞り込む。同時に、レジェンド、エリシオンの売れない高級車の開発、生産・販売を止めて経営資源の集中を図る内容だが、これはホンダ得意の“機を見て敏なる行動”の表れであり、グローバルベースでの同社の収益力向上につながる大胆な経営戦略と評価すべきだろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 「7月のNY連銀製造業景気指数」など予想を下回る急落で米国景気の先行き懸念強まる

 先週は国内で12日に「6月の企業物価指数」、海外では米国で14日に「6月の小売売上高」、15日に「7月のNY連銀製造業景気指数」、「6月の鉱工業生産・設備稼働率」、「7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」、16日に「7月のミシガン大学消費者信頼感指数」が発表され、米国経済の現状を表す重要な指標の発表が相次いだ。リーマン・ショックにより世界同時不況に陥った後、各国とも急激な回復傾向を見せていたが、直近では米国で回復の勢いを冷やす指標の結果が続いている。

 12日に国内で発表された「6月の企業物価指数」であるが、前年同月比0.5%増と5月の0.5%増に続き2カ月連続の増加となった。内訳を見ると石油・石炭製品が同22%増、非鉄金属が同14%増と物価上昇に対しての寄与度が大きい。国内の代表的業種でありウエイトの大きい電気機器と輸送用機器の物価指数は同3.3%減、3.1%減となり輸送用機器は9カ月連続の減少、電気機器は長期的な物価下落が続いており、原油や非鉄など資源・エネルギー価格の外的要因に大きく左右される物価環境となっている。


企業物価指数前年同月比の推移
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 14日には米国で「6月の小売売上高」が発表され、全体では前月比0.5%減、変動の大きな輸送用機器を除いた数字では同0.1%減となった。小売売上高全体のコンセンサスは同0.2%減であり、実際の数字は予想をやや下回ったが、輸送用機器を除いた項目のコンセンサスは同0.1%減と予想通りとなった。項目別では輸送用機器が同2.3%減と小売売上高全体の減少に大きく寄与している。他にも4月末で住宅購入促進策が打ち切られた影響で家具が同1.1%減、建設・園芸関連が同1.0%減となっている。しかし、一方で衣料品が同0.6%増、百貨店が同1.1%増、さらにはHDテレビや携帯電話の新規購入で家電製品が同1.3%増となり、ポジティブな結果となった製品も存在する。しかし、米国失業率も高止まりを続けており、5月の住宅関連指標を始め、ISM指数など景気回復鈍化の気配を漂わせる指標の発表が続いていることから、8月発表の「7月の小売売上高」には今後の個人消費の先行きを予想する点で注目したい。


米国小売売上高前月比伸び率の推移
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 15、16日には7月の景況感、消費者心理を表す統計指標の発表が連続した。総じて見ると、この先の景気動向に対して不安感を抱かせるような内容の結果となったといえよう。

 まず、「7月のNY連銀製造業景気指数」と「7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」だが、結果としては「NY連銀製造業景気指数」が前月比14ポイント減の5.08、「フィラデルフィア連銀製造業景況指数」が同3ポイント減の5.1となった。事前コンセンサスはNY連銀製造業景気指数が18、フィラデルフィア連銀製造業景況指数が10であり、どちらもコンセンサス予想を下回った。特にフィラデルフィア連銀は6月分が同13.4ポイント減と急落したことから、わずかながら反動があると予想されたが、その期待も打ち消された。また、項目別に見ると“新規受注”がNY連銀、フィラデルフィア連銀の両方の指数で減少しており、これまで景気回復を牽引してきた製造業の先行きに暗雲が立ちこみ始めた。8月2日に「7月の製造業ISM指数」が発表されるが、この統計の“新規受注”も減少が続く可能性は高い。さらに16日発表の「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」もコンセンサスの74を大幅に下回り66.5と8カ月ぶりに70を下回った。図を見てのとおりに、3指標とも急落しており、この急落が一過性に終わるかどうかは現段階では判断できず、この先も予断を許さない状況が続くであろう。


NY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数、ミシガン大学消費者信頼感指数の推移
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今週発表 … 米国は住宅関連の経済指標が相次ぐ、国内では7月の政府月例経済報告に注目

 今週は国内では主な経済指標の発表は少なく、21日に発表される「7月の政府月例経済報告」が焦点となろう。14~15日に日銀の金融政策決定会合が開催され10年度の実質経済成長率を1.8%増から2.6%増へと上方修正した。これを踏まえての政府の今後の見通しに注目が集まる。海外では米国で20日に「6月の住宅着工・許可件数」、22日に「6月の景気先行指標総合指数」と「6月の中古住宅販売件数」が発表されるが、とりわけ、住宅関連指標に注目したい。コンセンサスは「住宅着工件数」が57万7000件、前月比2.7%減、「建設許可件数」が57万件、同0.7%減、「景気先行指標総合指数」が同0.3%減、「中古住宅販売件数」が520万戸、同8.1%減となっており、やはり政府の住宅購入減税打ち切りの影響が感じられる。また、「7月の住宅市場指数」は既に発表済みであり、結果としてはコンセンサス16に対し14となり、やはり住宅市場の自律的回復には厳しさが感じられる。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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