マーケットレポート

マーケットの視点

“マクロ悲観とミクロ好調の綱引き”は本来的にはミクロ好調が優位なはず、日本企業の決算もすこぶる好調!

・ 世界株市場、中でも米国株市場は「マクロとミクロの戦い」のような様相を呈している。すなわち、“マクロの悲観とミクロの好調の綱引き”だ。先進国における足下の経済指標は『踊り場』突入を示す厳しい数字の発表が続いている。一方、新興国・資源国は、景気過熱感も多少感じられインフレに対する予防策として“利上げ”実施が相次いで来ている。具体的には、豪州がいち早く昨年10月に利上げに転じ本年5月で6回目の政策金利引き上げを実施、6月にニュージーランド、台湾が政策金利引き上げ、7月は2日にインドが3回目のレポ金利引き上げ、8日にマレーシアが3回目、9日に韓国、14日にタイが1回目、21日にブラジルが3回目の政策金利引き上げを実施している。一方、米国においては21日の上院銀行委員会でバーナンキFRB議長が米国経済に対して『異例なほど不確か』と表現し当面はゼロ金利策を継続、景気減速が深刻になれば『さらなる政策行動をとる用意がある』と発言、米国での「出口戦略」のタイミングは大幅に遠のいた格好だ。米国は景気回復トレンドが続くものの、住宅市場の低迷や銀行融資の減少を背景に雇用回復に時間を要するなど、先行きの不安を露わにした。欧州においては、23日に20カ国91行のストレステスト(資産査定)の結果が発表されたが、その査定内容に関して不透明感が強く信頼性回復には不十分で金融不安は払拭出来ないとの評価が主流だ。反面、インフレを心配するほどの新興国経済の高成長が先々週来、発表されている米国企業の決算の予想以上の好調ぶりに結び付いている。今回の米国企業の決算発表は、新興国需要の拡大を牽引役に、インテル、IBM、アップル、マイクロソフトなどハイテク企業のみならず、アルコア、3M、キャタピラー、UPSなど幅広い業種に業績好調ぶりが及んでいる。しかも、4~6月期実績が軒並み予想を上回るどころか、7~9月期以降の見通しに関しても、先進国需要の政策効果が薄れても新興国需要の拡大を背景に強気なコメントが目立っている。勿論、米国企業の場合にはドル安効果の貢献も大きい。株式市場は、マクロ悲観を尊重し弱含むとしても、本来的にはミクロ好調の評価を充分に反映するのがあるべき姿だろう。

・ 一方、米欧景気の先行き不安から、対ユーロ、対米ドルの円高が止まらない。このところはユーロが落ち着いて米ドル安が激しくなっていたが、ストレステストの結果が不満足なものに終わったことから再びユーロの下落トレンドにも拍車がかかる可能性もあり得る。21日に内閣府が発表した「7月の月例経済報告」でも米欧景気の下振れ懸念を訴えた。先週のバーナンキ議長が議会証言で追加金融緩和策の可能性を示したことで米国金利の下落トレンドが継続しそうだ。現在の米国は“デフレ懸念”も指摘されており、デフレ回避のためにも、更には、オバマ大統領が掲げる「5年以内での輸出倍増計画」を実現する上でも、ドル安が好都合である。米国の出口戦略は2012年になるとの観測もある。そして、わが国経済のデフレ脱却が容易ならぬことから、実質金利の点で大きく円安に振れることは望み難く、むしろ円高が一層進む可能性が高そうだ。日本株市場は、円高進行が株価の大きな下押し要因となり22日まで5営業日続落を続け、再び世界株市場の中では戻りが極めて鈍い。直近安値から先週末までの上昇率は、NYダウ7.6%、ナスフダック8.5%、英FTSE100・10.6%、独DAX6.0%、仏CAC40・8.2%、韓国総合5.2%、香港ハンセン4.6%、上海総合8.8%などに対して、日経平均株価は週末23日に6営業日ぶりの上昇に転じたものの2.6%に過ぎない。

・ いよいよわが国も決算発表シーズン到来、先週22日に発表した信越化学の10年4~6月期は、半導体シリコンウエハ事業の好調を受けて売上高が37%増収、営業利益が75%増益の実績で、初めて公表した今通期見通しは売上高1兆400億円、前期比13%増、営業利益1100億円、同31%増と好調な見通しだ。23日発表の日本電産の決算は、HDD用モータの好調、車載用モータの拡大などで10年4~6月期は38%増収、営業利益は2.6倍増益の270億円と3四半期連続で過去最高益を更新した。ただ、6月末にかけてHDDの在庫、生産調整が急速に起こり、4~6月期のHDD用モータの世界市場は期初予想の1億6500万台に対して1億5600万台と900万台下振れした。この調整がなければ4~6月期の営業利益は300億円に達したとの永守社長の発言だ。7~8月も多少、調整色は残るが8月後半以降に正常化、10~12月期以降に再び騰勢が増すと予言した。また、想定為替レートを対ユーロ125円→110円、対米ドル90円→85円と大幅な円高に変更した上で通期見通しを据え置いた。これは、昨今、電子部品メーカーの足下が停滞しているとの指摘を裏付ける事実であり、永守社長の予言を前提にすれば10~12月期以降には一時的な停滞を脱することから、今回の決算で弱気な数字、コメントで株価下落の局面があれば、むしろ買いのチャンスと捉えるべきだろう。更に、株価を大きく下押ししている円高の影響について、ハイテク、自動車の主力企業を中心に、その円高対応力を冷静に評価するべきだ。今週、わが国企業の決算発表が本格化するが、円高が一層進んだとしても、本来的には9800~1万円の水準まで戻しても不思議はない。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 欧州銀行のストレステスト結果は金融不安を拭い去るには不十分、米欧景気への懸念続く

 先週発表された経済指標は、国内では「5月の景気動向指数(改定値)」、「7月の人口推計」などであり、重要な指標の発表はなかった。海外では米国で19日に「7月の住宅市場指数」、20日に「6月の住宅着工・許可件数」、22日に「6月の景気先行指標総合指数」と「6月の中古住宅販売件数」が発表された。経済指標以外では、国内で21日に「7月の月例経済報告」、海外では23日に「欧州銀行ストレステスト」の結果発表があった。

 21日には国内で「7月の月例経済報告」の発表があった。基調判断は「景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」と前月の判断を据え置いたが、先行きについては若干、変更された。一つは企業の業況判断であるが、6月分では“中小企業では先行きに慎重な見方”であったが、7月分では“中小企業を中心に先行きに慎重な見方”と大企業の景気回復への期待感が霞んできつつあり、慎重な判断をとる傾向が強まってきたということ。もう一つは“欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念”から“アメリカ・欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念”へと、不安感の対象が金融不安の発端である欧州のみから、経済指標の悪化傾向が現れ始めた米国にまで広がってきたことである。政府の景気刺激策を除けば国内景気の本格的回復には至っておらず、現状は外需が国内企業の業績回復の牽引役であることから、この点からも国内先行きの懸念が高まってきたといえる。

 海外の米国では19日に「7月の住宅市場指数」が発表されたが、直前のコンセンサスである16を下回り前月比2ポイント減の14となり、リーマン・ショック後のピークであった10年5月の22からは一気に2カ月で8ポイントの減少となった。また、住宅市場指数の項目の1つである購買見込客足指数は前月比3ポイント減となり、先行きについて需要減退が生じる可能性が考えられる。

 20日には「6月の住宅着工・許可件数」が発表された。結果は住宅着工件数が54万9000戸、前月比5.0%減、建設許可件数が58万6000戸、前月比2.1%増となり、直前のコンセンサスではそれぞれ2.7%減、0.7%減であったことから、住宅着工件数では予想を下回り、建設許可件数では予想を上回ることとなった。住宅着工件数の詳細を述べると、一戸建てが同0.7%減と微減に止まったことに対し、変化の激しい集合住宅向け戸数が同22%減と大幅に減少したことがコンセンサスを下回る大きな要因であったと考えられる。しかし、4月末で住宅購入減税政策が終了し、5月の前月比15%減から大幅に減少率が縮小したことを考えると今回の着工件数がボトムラインと考えられ、これ以上の悪化は避けられよう。

 22日には「6月の中古住宅販売件数」が発表されたが、やはり住宅購入減税政策終了の影響が続き前月比5.1%減の537万戸となり、5月分の同2.2%減から減少率が増大した。コンセンサスは同8.1%減であったことより若干はポジティブな結果となったが、在庫比率が前月の8.3カ月から8.9カ月へと0.6カ月分増加し、レポート発表元の全米不動産協会は「7月の中古住宅販売件数」では在庫比率が10カ月まで高まるとの見通しも立てていることから、価格下落の圧力も生じ全体としてはネガティブな結果といえよう。 先週発表された住宅関連統計からは需要の本格的回復力は弱く、当面は供給過多の状態が続くと思われる。


建設許可件数、住宅着工件数、中古住宅販売件数、新築住宅販売件数の推移
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 23日に欧州銀行のストレステストの結果が発表されたが、対象となる欧州銀行91行のうちドイツ1行、スペイン5行、ギリシャ1行の合計7行が資本不足と認定された。ストレステストの内容は、欧州GDP成長率が委員会の想定より悪化した場合や国債相場の下落によって各銀行の保有する資産がどのくらい変化するかを試算することであったが、国の財政破綻の場合は除外され満期保有目的の国債がデフォルトする影響を考えなかったことなど、不十分な面が多々あったとの声が市場から上がった。今回のストレステストの結果からは欧州における金融不安は拭い去れなかったが、各銀行で資本の増強に踏み出す動きも見られることから、この先の動向に注目したい。


今週発表 … 国内では鉱工業生産や失業率、海外では米国で4~6月GDP成長率と重要指標の発表が相次ぐ

 今週は、国内で26日に「6月の貿易統計」、27日に「6月の企業向けサービス価格指数」、週末の30日には「6月の労働力調査」、「6月の全国消費者物価指数」、「6月の鉱工業生産」、海外では米国で26日に「6月の新築住宅販売件数」、27日に「5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数」、「7月のCB消費者信頼感指数」、28日に「6月の耐久財受注」、30日に「4~6月のGDP成長率」、「7月のシカゴ購買部協会景気指数」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」と重要指標の目白押しだ。コンセンサスでは「貿易統計」が6946億円の黒字継続、総務省発表の「完全失業率」が5.1%で前月比0.1ポイント改善、厚生労働省発表の「有効求人倍率」が0.50倍で前月比横ばい、「鉱工業生産」が同0.2%増、米国の「新築住宅販売件数」が前月比6.7%増の32万戸、「CB消費者信頼感指数」が同0.9ポイント減、「シカゴ購買部協会景気指数」が同3.1ポイント減、「GDP成長率」が前期比2.5%増、「ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が同8.5ポイント減となっている。国内では大きな変化は予想されず、特段変わった面はない。一方の米国では、「GDP成長率」に関しては個人消費の伸び率が前期比2.3%増となり、1~3月の個人消費伸び率同3.0%増からの鈍化で多少不安な面も存在する。また、「CB消費者信頼感指数」、「シカゴ購買部協会景気指数」、「ミシガン大学消費者信頼感指数」が3指標とも前月比減となっていることから、当面は慎重な姿勢をとらざるを得ない。


今週の主な決算発表予定


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