マーケットレポート

マーケットの視点

企業自身が驚くほどの好決算発表多い、現時点では円高の業績影響は“幻想”に近く株価は余りに売られ過ぎ

・ 先週は、日本株市場に対する“他人任せ”的な投資家心理を強く反映した典型的な展開となった。28日は発表相次ぐ米日企業の予想以上の好決算に加え、円ドルレートが87~88円/米ドル台へと円高一服感が出たからと言う理由で日経平均株価の終値は前日比“256.42円高”の「9753円27銭」と、先週この場で予想した9800~1万円台に進むような急反騰ぶりとなったが、後が続かない。結局、米国景気の悪化懸念や再び86円/米ドルと円高に向かった為替を理由に29日“57.25円安”、30日“158.72円安”と、先週通じて賑わったわが国企業の10年4~6月の好決算を全く無視し続けるような下落を続けた。前週末比では“106.34円高”の「9537円30銭」と2週連続での上昇、出遅れが目立っていただけに上昇率は“1.13%上昇”と先進国の中では小幅ながらも上位に位置する株価上昇を実現したが、一体、何を日本株に求めようとしているのか理解し難いマーケット展開だ。

・ 現在の日本株の最大の変動要因になっている“為替”に関して、87円/米ドルになったら円高が収まったと言って日本株を“買い”、86円/米ドルになったら再び円高だからと“売り”、というのは如何にも節操がない。企業収益は1年間のレースだ。短期間に1、2円変動したからと企業収益が大きく変動することはない。ましてや、現時点で2010年度通じての平均為替レートの結果が見えている訳ではない。更に言えば、対米ドルはともかく、5~6月にかけて歴史的なユーロ安が進み、110円/ユーロを上回る円高・ユーロ安となり企業収益を懸念し欧州ウエイトが高いとソニーやキヤノンは売り捲くられたが、収益の実態は全く違うということを強調したい。例えば、キヤノンは対ユーロ1円の変動での営業利益への影響額は64億円と公表している。09.12期決算発表の1月27日時点で10.12期の前提を130円/ユーロとし営業利益を3300億円と発表したが、第1四半期決算発表の4月27日時点では10.12期の前提を125.01円/ユーロと5円の円高に見直した上で営業利益を3600億円に増額修正した。対ユーロ円高の条件だけでは64億円×5円=320億円のマイナスであるはずなので、このマイナス分を考慮すれば逆に620億円の増額修正である。そして今回、第2四半期決算発表の7月27日時点では10.12期に関して下期(第3、4四半期)の前提を更に110円/ユーロへと、10.12期の仕上がりで114.74円/ユーロと前回予想比“10.27円”の円高へと修正したにも拘らず、通期の営業利益3600億円を据え置いた。前回予想に対しては64億円×10.27円=657億円のマイナス要因となったのに据え置いたので対ユーロに限ると実質657億円の増額修正、期初前提からにすれば15円/ユーロ強の円高が進んだにも拘らず実質的に1276億円の増額修正を実施したことになる。ちなみに、第2四半期(10年4~6月期)決算は、対米ドルが97.19円→91.96円、対ユーロが132.90円→116.34円と大幅な円高が進んだにも拘らず売上高は9704億円、前年同期比22.2%増、営業利益1134億円、152.6%増の結果だ。ソニーの決算内容も同様で、11.3期の通期見通しを対ユーロ125円前後→110円前後と大幅な円高に見直した上で今回、早くも営業利益を期初計画の1600億円から1800億円へと増額修正したが、同社の場合は1円/ユーロ変動による営業利益の変動額は75億円なので、今回見直しでの円高マイナス要因・年間1125億円を跳ね返しての増額修正だ。

・ ホンダの決算はもっと凄い。第1四半期の当期純利益は2724億円と前期1年間の2684億円を既に上回り四半期ベースで過去最高、移転税制関連の税金の戻り800億円強を含むが、その特殊要因を差し引いてもほぼ2000億円だ。営業利益は、四半期1000億円が実力との公言に対して2344億円、前年同期比9.3倍増の実績で11.3期見通しを期初4000億円から4500億円に増額修正した。為替前提を対米ドル90円→87円、対ユーロ120円→112円としたが、1円/米ドル:120億円、1円/ユーロ:15億円の利益変動なので合計480億円のマイナス要因を跳ね返しての増額修正。ホンダは上期3300億円、下期1200億円と下期を相当、慎重に見ているが、その理由は余りに“苦しい言い訳”であり、更なる増額修正は必至だろう。日産自は「足下の業績は計画以上」とコメント、三菱電も決算説明会の冒頭で「想定以上に強い結果が出た」と胸を張り、通期営業利益を期初1400億円、前期比48%増から1600億円、同71%増に増額修正したが、これは上期増額分200億円を上乗せしただけで下期は見直ししていないと言う。昨今の日本株市場が最大の株価売り材料とした“円高”をモノともしない業績好調、いわば“驚きの好決算”に関して、ソニー、ホンダともその背景を『商品力の充実』とコメントしている。これは、わが国を代表するグローバル企業である両社のみならず、他のグローバル企業の今回の好決算の共通要因でもあり、中期的な業績躍進への牽引役ともなる。この点は、全く株価には反映されておらず、単純にイメージ的な“為替のマイナス幻想”のみが株価を左右している、いわば実態と違う“異常な状態”だ。また、マクロ指標に大きく一喜一憂する展開も依然として続いているが、過去例のない急激な落ち込みとその反動となったことから、季節調整など統計上の歪みが影響している面もあって額面通りには受け取れず、目先の景気再失速は考え難い。となれば、経験上、今回決算のように“大幅増益、黒字転換、増額修正”などの評価が目立つ段階は依然として業績回復初期であり、先行き、現在株価と業績の最終結果とのギャップの大きさを思い知ることになるだろう。株式市場が企業の集積結果である限り、現時点は間違いなく買い局面のはずだ。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 海外景気回復鈍化の兆候が国内の鉱工業生産、輸出数量にも影響

 先週は、国内で26日に「6月の貿易統計」、30日に「6月の完全失業率」、「6月の有効求人倍率」、「6月の消費者物価指数」、「6月の鉱工業生産」が発表された。海外では、米国で26日に「6月の新築住宅販売件数」、27日に「5月のS&Pケースシラー住宅価格指数」と「7月のCB消費者信頼感指数」、28日に「6月の耐久財受注」、30日に「4~6月のGDP成長率」、「7月のシカゴ購買部協会景気指数」、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)」が発表され、経済指標以外では米国で28日に「地区連銀報告(ベージュブック)」が発表された。総じて見ると、国内景気はやはり外需が牽引する型となっており、米国を筆頭とする海外の景気回復鈍化の兆候が影響してきた様子が見受けられる。

 26日に国内で「6月の貿易統計」が発表されたが、貿易収支額は前年同月比41.1%増、29日発表の改訂値では41.0%増となり、09年4月以来15カ月連続の貿易黒字となった。輸出額を見ると同28%増と7カ月連続の増加となったものの、10年2月の同45%増をピークに4カ月連続で伸び率を縮小しており、ギリシャを発端とする欧州財政問題や中国金融引き締めの動きが影響していると思われる。しかし、図からもわかるようにリーマン・ショック後の急激な輸出回復の反動による伸び率鈍化が続いていることも影響しており、新興国の成長余力を考えると景気の2番底を考える必要はなく、一時的な調整段階と捉えるべきであろう。


輸出額前年同月比伸び率の推移
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 30日には「6月の鉱工業生産」が発表された。6月は輸出数量鈍化の影響もあり前月比1.5%減、4カ月ぶりの減少となった。業種別では化学工業が同3.0%減、鉄鋼業が同2.5%減、非鉄金属工業が同2.7%減、情報通信工業が同2.1%減、輸送機械工業が同3.0%減、精密機械工業が同4.5%減とわが国の代表的業種が軒並み減少となった。経済産業省の基調判断も「足踏みの動きもみられる」の文言が付け加えられ、先行きに対し慎重な姿勢となってきた。しかし、7、8月はそれぞれ同0.2%減、2.0%増と減少率を縮小させ、再度増加に転じる予測を立てていることから、減少が長期的に続く可能性は低い。


鉱工業生産前月比伸び率の推移
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 米国では26日に「6月の新築住宅販売件数」が発表され、年率換算で33万戸、前月比24%増と大幅な増加となった。しかし、5月の販売件数が30万戸から26万7000戸へ下方修正され大幅な増加につながったことや未だに低い水準であること、住宅購入減税策が4月末で終了した影響を考えると米国住宅市場の本格的な回復には相当な時間を要すると思われる。

 30日には「4~6月のGDP成長率」が発表された。結果としては前期比年率2.4%増と4四半期連続の増加となったが、直近の2四半期である10~12月の同5.0%増、1~3月の3.7%増から2四半期連続で伸び率が鈍化した。項目別にみると、民間企業の設備投資が同19%増、政府支出が同4.4%増となり全体の成長率を牽引している。しかし、GDPの7割を占める個人消費は同1.6%増とコンセンサスの同2.3%増を大幅に下回ったことや、1~3月の個人消費が同3.0%増から同1.9%と大きく下方修正されたことを考えると、当面は予断を許さない状況が続くであろう。


米国GDP、個人消費、設備投資の前期比年率伸び率の推移
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 GDP成長率発表の後に「7月のシカゴ購買部協会景気指数」が発表されたが、こちらは前月比3.2ポイント上昇の62.3となり2カ月ぶりに60台を回復した。項目別では新規受注が同5.5ポイント上昇、受注残が同6.9ポイント上昇、雇用が同2.4ポイント上昇と、先行きの不安感が漂う指標が相次ぐ中では、非常にポジティブな結果となった。しかし、「7月のNY連銀製造業景気指数」の新規受注が前月比7.4ポイント減少、「7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数」の新規受注が同13.3ポイント減少であったことから、不安要素が大きく拭い去られたわけではない。8月2日に発表される「7月の製造業ISM指数」に注目したい。

今週発表 … 米国の個人消費回復のカギを握る「7月の雇用統計」に注目

 今週は、国内で6日に「6月の景気動向指数」、海外では米国で2日に「7月の製造業ISM指数」、4日に「7月の非製造業ISM指数」、そして6日に「7月の雇用統計」が発表される。コンセンサスでは景気動向指数が先行指数では前月比0.2ポイント増、一致指数では前月比変わらずの横ばい、製造業ISM指数は同1.7ポイント減、非製造業ISM指数は同0.5ポイント減、完全失業率は9.6%で前月比0.1ポイントの悪化、非農業部門雇用者数変化幅は前月比7万人減と米国経済指標はネガティブな予想ばかりである。先週発表された「4~6月のGDP成長率」の大きなウエイトを占める個人消費の回復を考えると、6日に発表される予定の「7月の雇用統計」の結果が大いに注目されよう。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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