マーケットレポート

マーケットの視点

米国の追加金融緩和の一方で何も出来ない日本は“立ち往生”、今週は揺動する日本株市場で短期勝負が有効か

・ 日本株市場は、“足下の業績好調、先行きの円高影響”が入り混じり方向感を見失っている。09年11月のドバイ・ショック時以来の85円/米ドル台前半まで円高が一気に進み84円/米ドル台に突入、この時の円の最高値「84円82銭」を更新する勢いにあることがグローバル関連企業の株価を押し潰し、その一方で同じグローバル関連企業の予想以上の業績好調が下押しされた株価をリバウンドさせる。結果的に、先週1週間では前週末比“104.82円高”の「9642円12銭」とかろうじて3週連続の上昇で引けた。依然として、米国マクロ指標の好悪結果の交錯が続いている。「7月のISM景況感指数」は2日発表の製造業が予想ほど悪化しなかったこと、4日発表の非製造業は予想に反して上昇、また4日に民間雇用サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した「7月の全米雇用リポート」で、政府部門を除く非農業部門の雇用者数は事前予想の3万9000 人増を上回り前月比4万2000 人増えたことで6日発表予定の「7月の雇用統計」への過度の懸念が後退したこともあり米国株市場は堅調な推移を辿った。このことで、日経平均株価は3日“123.70円高”、5日“164.58円高”と4日の大幅下落“204.67円安”を帳消しにした格好。週末は朝方“108.51円安”まで一気に下げたが、決算好調、円高一服感と米国の「7月の雇用統計」への不安払拭観測で一時は前日比上昇する場面もあったが、前日比“11.80円安”と様子見気分が広がった。先週の世界株市場は香港ハンセンの5日続騰を筆頭に全般的な上昇が目立った。

・ しかし、一転、週末の6日に発表された米国の「7月の雇用統計」の非農業部門の雇用者数が前月比13万1000人減と市場予想を上回る減少幅、民間部門の増加人数が7万1000人と市場予想の8万3000人を下回り、これで5月以降に3カ月連続で10万人増を下回るペースが続いており、米国景気の自律回復を維持するには“25万人”の増加が必要とされていることから、景気回復の腰折れが指摘され、「2番底」懸念までが再び台頭している。米国での更なる金融緩和策期待が広がり、日本の長期金利も4日に7年ぶりに1%割れまで低下しているが、米国の長期金利は10年債利回りが“2.81%”と09年4月以来の低水準、金融政策の影響を受け易い2年債利回りが0.49%と過去最低水準まで下落と米国の超低金利が長引く見通しから、一段のドル安・円高が進みそうになってきている。焦点は10日に開催される米国FOMCで追加金融緩和策が打ち出されるかどうかで、現段階で追加緩和の手法としては、①金融危機対策で実施した住宅ローン担保証券や中長期国債の購入を再開する、②FOMC声明文でゼロ金利維持に関する文言を強める、③金融機関がFRBに預けている準備預金向け金利の年0.25%をゼロまで下げる、など。バーナンキ議長は前回の議長証言で「異例なほど不確か」と現状の米国経済を表現しており、米国政府が11月の中間選挙を控え財政赤字の大幅拡大から財政政策には限界があり、追加金融緩和策に踏み切る可能性は高い。

・ 一方で、日本は立ち往生し身動きが取れない。無策に近い状態が続く日本国政府は巨額の財政赤字で大型の景気対策は期待薄であり、長期金利1%割れでは更なる金利低下の余地は少なく金融政策も手詰まり状態にある。米欧はデフレ懸念を解消するためにも、また内需不振を輸出拡大による外需によって補うためにも、結果的に“米ドル安、ユーロ安”が歓迎されている。自国通貨安で国内景気をフォローするという、まるで日本のお株を奪うような展開となっている。しかし、もしマーケットが期待している通りにFRBが追加金融緩和に動けば、予想以上の好決算が明らかになっているだけに、まるで乾いた紙に火が着くように米国株市場は大幅高かつある程度のドル安修正に向かう可能性は高い。となると、わが国でも電機、自動車を中心にグローバル企業の決算が素晴らしい結果を出し続けているだけに、株価が急速に持ち直すことになろう。今週以降は夏休み本番で更なる薄商いが予想されることもあり、一層、不安定な株式市場となりそうだ。今週は前半の下落局面で買い下がり、後での戻り局面で即売るという短期勝負が有効だろう。


先週のマーケットの動き


各国マーケットの動き
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今週の主要スケジュール

今週のスケジュール
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◆内外経済指標より

先週発表 … 米国雇用環境は悪化に歯止めがかかったとはいえ、市場の期待には応えられず不安が募る

 先週は国内で6日に「6月の景気動向指数」、海外では米国で2日に「7月の製造業ISM指数」、3日に「6月の個人所得・消費支出」、4日に「7月の非製造業ISM指数」、そして6日に「7月の雇用統計」が発表された。国内の「景気動向指数」については今回の結果だけでは判断のつきづらい感触となった。一方の米国の経済指標に関しては、「7月の雇用統計」以外は直前のコンセンサスほど悪化しておらず概ねポジティブな結果となったが、先週の焦点となった「7月の雇用統計」については不安感が一層増す結果となった。

 6日に国内で「6月の景気動向指数」が発表されたが、先行CIは前月比0.3ポイント上昇し98.9、一致CIは同0.1ポイント上昇し101.3となり、先行CIは3カ月ぶりの上昇、一致CIでは2カ月ぶりの上昇となった。各CIの採用項目をみると、先行CIでは新規求人数や新設住宅着工床面積、一致CIでは投資財出荷指数、有効求人倍率など先行、一致ともに住宅投資、設備投資などの民間部門の投資や雇用の改善が全体を押し上げた。しかし、3カ月移動平均では先行CIについては前月比1.0ポイント下落と09年3月以来、15カ月ぶりの前月比下落、一致CIに関しても同0.3ポイント上昇と09年5月以来14カ月連続の上昇とはなったものの、直近14カ月で最小の上昇幅となり、足踏み状態に陥った。来月、再来月発表の指数を材料に景気の方向感を見極める必要があろう。


景気動向指数の推移
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 海外では2日に「7月の製造業ISM指数」、4日に「7月の非製造業ISM指数」が発表された。「製造業ISM指数」では2カ月連続の前月比下落、「非製造業ISM指数」は4、5月と2カ月連続の横ばいとなった後、6月で1.6ポイント減となっており、直前のコンセンサスでも「製造業ISM指数」は前月比1.7ポイント減、「非製造業ISM指数」は同0.5ポイント減と悲壮感の漂うなかでの発表であった。結果としては、「製造業ISM指数」が前月比0.7ポイント減の55.5、「非製造業ISM指数」は同0.5ポイント増の54.3と、製造業に関してはコンセンサスの下落幅ほどには悪化せず底堅さを発揮、非製造業ではコンセンサスとは逆に好転した。しかし、「製造業のISM指数」では新規受注指数は同5.0ポイント減と先行きに慎重な姿勢は崩せず、「非製造業ISM指数」でも事業活動、新規受注、雇用、入荷遅延の全構成指数が改善したわけではないことから、今後の動向を見守る必要がある。


製造業、非製造業ISM指数の推移
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 6日には注目の「7月の雇用統計」が発表された。完全失業率は9.5%で前月比横ばい、非農業部門の雇用者数増減幅は同13万1000人減となり、直前のコンセンサス同8万7000人減を下回り、大幅に悪化した。非農業部門雇用者数の増減幅の内訳としては、政府部門は一時雇用の効果がなくなった影響が続き、同20万2000人減、一方の民間部門は同7万1000人増と7カ月連続の増加となったが、市場予想の8万3000人増を下回った。米国企業の業績はアルコア、インテルなどを筆頭に堅調に回復しているが、米国内の雇用環境は悪化に歯止めがかかったとはいえ、市場の期待には全く対応できておらず非常に厳しい結果となった。今後は政府やFRBの具体的な対応策に期待が集まる。


完全失業率、非農業部門雇用者数前月比増減幅の推移
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今週発表 … 10日に開催されるFOMCの追加的な金融緩和策に注目

 今週は国内で9日に「7月の景気ウォッチャー調査」、11日に「6月の機械受注統計」、海外では米国で13日に「7月の小売売上高」、「7月の消費者物価指数」、「8月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」、中国で10日に「7月の貿易収支」、11日に「7月の小売売上高」、「7月の消費者物価指数」などの7月の経済指標が発表され、息が抜けない週となろう。コンセンサスでは「6月の機械受注統計」が前月比5.8%増、「7月の小売売上高」が同0.4%増、「7月の消費者物価感指数」が同0.2%増、「7月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)」が前月比2.0ポイント増である。経済指標以外では9~10日に国内で「日銀金融政策決定会合」、米国で10日に「FOMC」が開催される。米国では雇用回復速度が鈍化しており、FRBのバーナンキ議長も「経済の改善が続かないなら我々は動く」と発言していることから、10日に行われる「FOMC」の追加金融緩和策への期待は非常に大きく、今週の注目点となろう。


今週の主な決算発表予定


今週の主な決算発表予定
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